ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『友 直子 in 太陽にほえろ!'79』―2

2020-07-14 00:00:10 | 刑事ドラマ'70年代









 
ナーコ(友 直子)がレギュラーに加わって1年が経ち、おでこを出さなきゃいけないっていう髪型のルールが、徐々に緩和されて来たみたいです。

そもそも前髪を垂らしちゃいけないって縛りが意味不明(中学校の校則じゃあるまいしw)なんだけど、トレンディ過ぎて降板を余儀なくされた浅野ゆう子さんの前例があるだけに、マスコットガールの扱いには慎重にならざるを得なかったんでしょう。お陰でナーコや前任者アッコ(木村理恵)のミニスカート姿は想像すら出来ません。

演じる友直子さんが演技経験ゼロの一般人だったもんで、それまでのマスコットガールと比べても台詞は少なめ、一言も発しないまま終わっちゃう回もあったナーコだけど、徐々に出番も増えて来たように思います。

特に第355話『ボス』におけるボス(石原裕次郎)との「本当にバーのマダムとハワイに行ったんですか?」「ホントだよ」のやり取りや、第347話『謹慎処分』でボン(宮内 淳)に対する罵詈雑言のメッセージを恐る恐る伝えるコミカルな場面などは、直子さんの一般人オーラがうまく活かされた名シーンだと思います。

第363話『13日金曜日 ボン最期の日』はナーコにとって初の殉職エピソードだけど、さすがに泣きの芝居はまだムリと判断されたのか、出番はほとんどありませんでした。

次回から新人のスニーカー(山下真司)を迎え、また第356話『制服を狙え』でプレ登場した吉野巡査(横谷雄二)やスニーカーの妹=早苗(山下幹子)もセミレギュラー入りし、芝居が下手な人(当時)が増えたお陰かw、ナーコの存在感も徐々に増していく事になります。

余談ですが、画像8枚目で見られるように、ナーコはレギュラーの刑事さんに(意味もなく)肩を抱かれてる場面がやたら多かったような気がします。(画像の場面ではゴリさんが肩叩きしてました。なぜ?w)

役者さんのアドリブなのか監督さんの指示なのか判らないけど、ナーコ以前の歴代マスコットガール達にそういう描写は無かったと思うので、彼女にはそれが許される雰囲気というか、気にさせないオーラがあるんでしょう。

要するに色気がない、と言ってしまうとミもフタも無いんだけどw、それこそが番組の求めるキャラクターであり、以前にも書いたようにナーコはマスコットガールの完成形じゃないかと、私が思う所以でもあります。
 

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『宮内 淳 in 太陽にほえろ!'79』―2

2020-07-13 00:00:17 | 刑事ドラマ'70年代









 
7月13日はマカロニ(萩原健一)とボン(宮内 淳) の命日です。本放映から40年以上も経ってるというのに、毎年7月13日が来ると(あるいは13日の金曜日が来るたびに)ああ、今日はマカロニとボンが死んだ日だなって、いちいち思い出してしまう人が、実はこの国にはけっこうな数おられます。

いくら『半沢直樹』が視聴率40%を記録しようが、毎年『ドクターX』が人気投票1位に選ばれようが、もし最終回で主人公が死んだとして、その放映日をずっと忘れないファンが果たして存在するでしょうか?

昭和の頃はテレビが娯楽の王様であり、観る姿勢が根本的に違ってたこと。そしてボンの場合は4年もの間、我々はずっと毎週その活躍を見守り続けましたから、半沢直樹や大門未知子なんかとは思い入れの度合いが全然違う、比べものにならないワケです。

まあ、ボンが活躍した4年間は、私が10歳から14歳という最も多感な時期だったせいもあるだろうとは思います。放映日が13日の金曜日だったことも憶え易い理由に挙げられるでしょう。(他の刑事たちの命日まではさすがに憶えてません)

予告編を観たあたりからいよいよソワソワし、その日が近づくにつれ緊張し、当日は誰とも口を聞かないくらいストイックになって、それこそテレビの前に正座して号泣しなから観た第363話『13日金曜日 ボン最期の日』。そりゃ忘れたくても忘れられません。

良い作品でした。『太陽にほえろ!』全ての殉職エピソードの中でも1、2を争う出来だったと私は思ってます。

ボンが致命傷を負ってから息絶えるまでが長過ぎる!って文句言う人がホント多いんだけど、私は全然そうは思いません。むしろ、撃たれて倒れた瞬間に息絶えちゃう方が不自然じゃない?って思う。鉛の毒が回るにしろ出血が限界に達するにしろ、そこそこの時間はかかるでしょう。

そしてボンは、先に撃たれちゃった女性(根岸季衣)を助ける為に、遠く離れた電話ボックスまで辿り着かなきゃならない使命を負ってる。そんな気力が奇跡を起こすことは現実にもあり得るでしょう。

そうやって死ぬまでの時間を引き延ばして、我々ファンの涙を搾り取ろうとする演出がずるい!あざとい!って言うなら、まあ解らなくもないけど、現実に撃たれた人が死んでいく様を見たこともないクセに、なんで「あり得ない」などと断言出来るのか、私は不思議で仕方ありません。それこそテレビの観すぎ(撃たれた瞬間に死んじゃう演出を信じすぎ)じゃないの?って思う。

まぁそんなワケで、ついにボンが殉職し、宮内淳さんが番組から去ってしまわれました。顔を毛むくじゃらにしてそのポジションを受け継ぐロッキー(木之元 亮)の人気が爆発する兆しは微塵もありません。非常に心細いです。

結果論を言っても仕方ないんだけど、かえすがえすもボン&ロッキー体制2年間は長すぎた。こんなにボンが好きだった私でさえ、そして今はレビューの為に飛ばし飛ばし観てるにも関わらず、このコンビには飽きを感じてしまったし、以前にも書いた通り宮内さんの輝きが最後の1年間で衰えてるのを実感しちゃいましたから。

それ以前に番組自体がマンネリなのに2年間もメンバーを替えなかった保守の姿勢が、いよいよこれから存続の危機を招いていくワケです。

たぶん後任のスニーカー(山下真司)には何の罪も無いし、裏番組『3年B組金八先生』の出現がそれほど大きく影響したワケでもない。それ以前に条件は揃ってたことが、こうして順を追って振り返るとホントによく分かります。

逆に言えば、よくぞこの絶体絶命の危機を乗り越え、15年近くも続いてくれました。それこそが奇跡であり、やっぱり凄い番組だったとつくづく思います。
 

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『太陽にほえろ!』#362

2020-07-12 00:50:16 | 刑事ドラマ'70年代










 
☆第362話『デイト・ヨコハマ』

(1979.7.6.OA/脚本=柏原寛司&小川 英/監督=櫻井一孝)

ある土曜日、午前中で勤務を終えた早瀬令子婦警(長谷直美)を、ロッキー(木之元 亮)が顔を毛むくじゃらにしながらデートに誘います。

が、それは暴力団・竜神会が横浜を経由して麻薬を密輸入するという情報を受けての偽装デート。そうと知ってむくれる令子をなだめつつ、ロッキーは顔を毛むくじゃらにして横浜港ターミナルを張り込みます。

ところが現れた竜神会の連中は荷物検査をパスしてしまう。麻薬を忍ばせたブランデーのケースを、とっさに傍にいた留学生・エミリー(ナンシー・チェニー)のバッグに隠したのでした。

顔の毛が邪魔してそれが見えなかったロッキーは、捜査の空振りに落胆するも、令子はせっかくだから横浜デートを楽しもう!とポジティブシンキング。

ところが二人が乗って来たジープを、ロッキーに何度か捕まった事のある自動車泥棒の常習犯=中井(中村ブン)がイタズラ心で拝借し、トンズラしてしまった!

怒りで顔に毛が生えたロッキーは「一体どこへ行きやがったんだ、あの野郎!」とか「一体どこへ行きやがったんだ、あの野郎!」とか「一体どこへ行きやがったんだ、あの野郎!」などと言いながら令子と二人、タクシーに乗って中井を探し回ります。(同じ台詞を何度も言うのが木之元さんのクセみたいです)

一方、中井は竜神会の連中にエミリーが襲われてる現場に遭遇し、勇気を振り絞って彼女を助けます。当然、麻薬を取り戻さなきゃ親分に殺されるかも知れないヤクザたちは二人を追跡。

吸った揉んだあってカップルがロッキー&エミリー、中井&令子に入れ替わりつつ、あえなく(っていうか毎度のごとく)ヤクザに捕まって殺されそうになったロッキーを、次週に殉職を控えたボン(宮内 淳)が颯爽と助けに駆けつけ、ムダに長い銃撃戦を経てヤクザどもを一網打尽、一件落着となります。

ハイクオリティーな脚本に定評ある『太陽にほえろ!』ですが、700本以上も創ってたら当然、スカスカとしか言いようのないエピソードも生まれちゃいます。これがその一例w

マカロニ(萩原健一)殉職回の前週に放映された第51話『危険を盗んだ女』もそんなエピソードでしたw ヤバイもの(あの時は偽札でしたっけ?)を計らずも手にしてしまった女性がヤクザたちに狙われ、緊張感のない銃撃戦で解決する展開もよく似てます。7月6日っていう放映日も同じだし、もしかして意図的に再現した?

そんなエピソードでも、ショーケンさんや優作さんなら演技とアクションの魅力でカバーしてくれるんだけど、ただ「髭が面白いから」というだけの理由で新人刑事に抜擢されたロッキーだと、ひたすら一本調子な芝居で同じ台詞ばかり聞かされて、ちょっとツラい。

今回はその分、どっちが主役か判んないくらいにボンが活躍してくれて、ファンとしては嬉しかったけど、今あらためて観ると宮内さんの三枚目演技も少々やり過ぎ(もはやボンじゃなくてハンソク先生)で、浮いちゃってる感じもします。

おまけにボス(石原裕次郎)が、脚本を気に入らなかったのか体調が悪かったのか、やけにテンションが低いもんで余計にボンが浮いて見えちゃう。他の刑事さんたちも、密かに誰かが欠場しても気づかれないくらい背景化しちゃってるし。(卒業直前のボンに花を持たせた結果なんでしょうけど)

中井役=中村ブンさんの古臭い喜劇芝居も足を引っ張ってる気がするけど、何にせよ間もなく先輩格(本来なら番組の要となるポジション)に就くロッキーの主役回がデンカ並みに凡庸なのは、非常に心もとなく不安しかなくて、視聴率の急降下は当然の結果と言わざるを得ません。もちろん、番組自体がとっくにマンネリを極めてるのが最大の理由でしょうけど。

唯一の救いは、令子=長谷直美さん、エミリー=ナンシー・チェニーさんという明るい2輪の花が存在すること。いっそこのお二人だけで話を創った方が良かったかも?

……すみません、言い過ぎましたw 決してロッキーというキャラも木之元亮という役者さんも嫌いじゃないんです。でも、ボン亡きあとの『太陽にほえろ!』を任せるには、ちょっとやっぱり……

なお、後にロッキーと令子が結婚することは番組ファンなら常識ですが、本エピソードがその伏線になってるワケではありません。ただ、今回の仕上がりを観て「この2人、意外とお似合いかも?」って、スタッフが思った可能性は無きにしもあらず。

ゲストのナンシー・チェニーさんは当時21歳。アメリカ人と日本人のハーフで、深夜バラエティー番組『11PM』のカバーガールを務めて注目され、TVドラマ出演は『特捜最前線』#103・#104に次いで本作が2度目。この後に優作さんの『探偵物語』でレギュラーを務められる事になります。

ほか、刑事ドラマは『鉄道公安官』#19、『噂の刑事トミーとマツ』#17、#45にゲスト出演。そして'80年には杉良太郎さんの『大捜査線シリーズ・追跡』、'81年にはボン=宮内淳さんの『探偵同盟』でレギュラーを務めておられます。
 

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『太陽にほえろ!』#360

2020-06-22 18:18:23 | 刑事ドラマ'70年代









 
殉職編を除けば本作がボン(宮内 淳)最後の単独主演エピソードとなります。ストーリーはありがちなれど、ボン活躍編のエッセンスを全て凝縮させた「ボンならでは」の内容で、ヤクザ軍団相手の格闘やGUNアクション、全力疾走シーンも存分に見られるし、ファンにとっては珠玉の回と言えそうです。


☆第360話『ボンは泣かない』

(1979.6.22.OA/脚本=畑 嶺明/監督=竹林 進)

ある夜、暴力団「戸川興業」の事務所に忍び込んだ三人組の強盗が、3億円相当の宝石類を盗んで逃走します。捜査の結果、犯人の1人で盗んだ宝石を持ってた溝口という男(鶴岡 修)が、戸川興業近くのアパートに逃げ込んだことが判明。

ボンはそこの住人で建築会社の電話交換手を務める独身OL=千佳(紀 比呂子)の挙動に不審を感じ、マークします。

最初は協力を拒んでた千佳だけど、ボンの人懐っこさと誠実さにやがて心を開き、確かにあの事件の夜、溝口が部屋に押し入って一晩籠城し、口外したら殺すぞと拳銃で脅した上、早朝出ていったことを告白します。もちろん、一晩でどれほどエッチなことをされたかは、岡田プロデューサーに口止めされて言えません。

となると、発覚を恐れる溝口たち、あるいは宝石奪還を目論む戸川興業の連中が狙ってくる恐れがあり、ボンは千佳のボディーガードを務めることに。当然ながらいつものごとく、ボンは彼女に惹かれていきます。

「刑事さん。1日、何人位の人と話をします?」

「えっ? そうだな、だいたい20人位ですか」

「私はその10倍の人と話をします。○○建設でございます、お待ち下さい、ご用件をどうぞ、○○建設でございます……でも、誰一人、それが私だってこと知らないんです」

「…………」

真面目で控えめな性格の千佳には、恋人はおろか親しい同僚もいないらしく、そんな彼女の孤独にも守護本能をくすぐられずにいられない、根っから女好きのボンなのでしたw

おまけに徹夜で張り込み中、笑顔で手作りおにぎりを差し入れされた日にゃあ、ボンでなくともイチコロです。

だけど刑事ドラマで若手刑事が恋をすれば、相手は犯罪者かその関係者と相場は決まってます。おそらく刑事ドラマ史上、そういう眼に遭った回数が最も多いであろうボンなのに、ほんと懲りない人ですw(対抗できるのは『俺たちの勲章』の中村雅俊さんぐらい?)

どれだけ捜査しても溝口の足取りは、千佳の部屋へ押し入ったのを最後にプッツリ途絶えたまま。その上、宝石奪還を狙う戸川興業の幹部=倉田(木原正三郎)も千佳の部屋に向かったまま消息を絶ってしまった!

不審に思った山さん(露口 茂)らが千佳の身辺を調べてみると、長年の夢だったヨーロッパ旅行の為に彼女がお金を欲しがってたこと、そして見かけによらず時に大胆な行動をとる性質であること等が判明。

そう、彼女はあの夜、溝口のスキを見て背後から…… そして宝石を探しに部屋へ忍び込んだ倉田も同じように……!

やがて千佳の部屋の床下から2人の遺体が発見されます。リアルに考えればとんでもない腐臭ですぐバレそうなもんだけど、まぁそんな屁理屈はどーでもいいです。

ボンは愕然としながらも、溝口から奪った宝石と拳銃を隠し持って故郷の伊豆へと向かった彼女を追います。

千佳は、実家の隣に住む耳が不自由な少女と一緒にいました。その子にヨーロッパの人形をたくさん買ってあげるのも、彼女が叶えたかった望みの1つだったのです。

海岸まで追い詰められ、銃口を向ける千佳に、ボンは静かに語りかけます。

「キミには撃てないよ」

「撃てるわ! 私はもう2人も殺したのよ!」

「キミはいい人だ。優しい人なんだよ」

「撃てる、撃てるわ!」

「誰も知らなくたって、俺は知ってる。キミがどんな人か……俺だけは知ってるよ。さっき、あの女の子と遊んでる時のように……俺に、おにぎりを出してくれた時のように……キミは優しい人なんだ」

「…………」

「それがあの晩、溝口がキミの部屋に侵入した時から、キミの不幸が……宝石を見た時から……」

「…………」

千佳が一番求めてたのは、電話交換手としてじゃなく1人の女性として自分を見、こうして話をしてくれる相手だったのかも知れません。

「私……別な女になりたかったんです……それだけなんです……」

海岸線に沈んでいく夕日を、並んで見つめる2人の後ろ姿がとても切ないです。もう少し早く出逢っていれば……

「淋しすぎたんですよ。控えめで、優しくて、思いやりがあって……でもあの人には、あの交換室で、知らない人と言葉を交わす生活しか無かったんです」

取り調べを終え、顛末を報告するボンに、一言だけボス(石原裕次郎)が問いかけます。

「……ボン。お前、あの人が好きだったのか」

「……はい」

だけど今回、ボンは取り乱すことも怒りを爆発させることも、そして泣くことも無く、最後まで冷静に対処し、ほとんど1人で事件を解決させました。その成長ぶりこそが次回主演作、すなわち殉職エピソードへの布石になってるワケです。

まぁしかし、それにしても……

浅野真弓さん、桃井かおりさん、高林由紀子さん、麻丘めぐみさん、立枝歩さん、丘みつ子さん、純アリスさん、そして紀比呂子さん……

ボンがこれまで想いを寄せて来た女性(を演じた女優さん)たちの、そうそうたる顔ぶれを見るにつけ思うことは、宮内淳さんが自らDVD映像特典で仰られてた通り、見境なしかよ!?ってことですねw ほんと見事にタイプがバラバラですw

それはともかく、こういう失恋話がよく似合うというか、ちゃんと視聴者に共感させられるキャラクターとして、ボンは本当に貴重な存在だったとつくづく思います。

ベテラン刑事たちはもちろん、ロッキー(木之元 亮)や後任のスニーカー(山下真司)にはとうてい似合わないし、歴代新人刑事の中で対抗できるのは最初のマカロニ(萩原健一)ぐらいじゃないかと思います。

強いて言えばラガー(渡辺 徹)がその路線を受け継ぐワケだけど、あのキャラだから重みが無いし、そのくせ身体は重くなり過ぎてシリアスに受けとれないんですよね。

そういう点でも、ボンが抜けた穴はとてつもなくデカイ。我々はもうすぐ、それを思い知ることになります。
 

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『太陽にほえろ!』#359

2020-06-21 19:55:13 | 刑事ドラマ'70年代










 
ボスに叱られた腹いせにゴリさんが無実のチンピラを絞め殺す現場を目撃してしまった美少女が、ゴリさんにつけ回された挙げ句に捕まり、犯されるという衝撃のエピソード! ……なら面白かったのですが……


☆第359話『ジョギングコース』

(1979.6.15.OA/脚本=渡辺由自&小川 英/監督=竹林 進)

神社の石段で転落死した男が着てるジャージを見て、ゴリさん(竜 雷太)が驚いた!

そのジャージは、出勤途中で知り合った少女=薫(岸本加世子)が、心配そうに探してた男が着てる筈のものと同じデザインなのでした。

現場に駆けつけた薫が叫びます。

「お父さん!? お父さんっ!!」

そう、亡くなったのは薫の父親=藤沢鉄男。ジョギング中に足を滑らせての転落事故に見えるけれど、いくつか不自然な点もある。その朝、薫の心配する様子が気になりながら、遅刻しそうだったもんで見過ごしちゃったゴリさんは、責任を感じて藤沢が転落に至ったいきさつを詳しく捜査します。

すると藤沢が3ヶ月前にジョギングコースを変えていたこと、それ以前のコースで3ヶ月前に傷害事件が起きてたこと等が判明。その事件に関わった為に殺された可能性が浮上します。

「どうしてそんなこと聞くの? 事故なのに……調べることなんか無いのよ、事故なんだから!」

せっかくゴリさんが苦労して捜査したのに、薫はなぜか真実を知ろうとしません。いや、薄々知っていながら認めようとしないのでした。

どうやら、チンピラが写真館の店主=岡本(山本紀彦)に酷い暴力を振るう現場を、ジョギング中の藤沢が目撃してしまった。岡本は被害届を出したものの、藤沢が証言を拒んだ為にチンピラは逮捕されなかった。それがきっかけで仕事も恋愛もうまくいかなくなった岡本が、藤沢を逆恨みして殺したらしい。

そして薫は、藤沢がチンピラに脅され、口止めされてる姿を目撃してしまった。大好きなお父さんが保身のために証言を拒んだことが信じられず、頑なに耳を塞いで来たのでした。

だけど薫の証言が無ければこの事件は解決できません。ゴリさんは心を鬼にして彼女を説得します。

「キミのお父さんは正しくて強くて、世界一いいお父さんだと思いたい……その気持ちはよく解る。弱くて卑怯で、脅しにビクビクするようなお父さんだとは思いたくない。そうだろ?」

「…………」

「しかし本当はね、弱い面も卑怯な面もあったんだよ。だけど、薫くんのお父さんは1人しかいない。1人しかいないんだ。しかも、殺されている」

「…………」

「キミはたった1人の娘として、お父さんを殺した犯人が憎くはないのか? この事件をちゃんと解決するんだ。それから、お父さんの優しい面をしっかり胸の中にしまって、生きていくんだ!」

そこでようやく、薫が心の扉を開きます。

「あの時の顔、お父さんの顔じゃない……お父さんの顔じゃないもん! 知らない方がいいと思ったの! 忘れた方がいいと思ったの!」

泣きじゃくる薫を無理やり……じゃなくて優しく受け止め、抱き締めたゴリさんは、その証言を元にチンピラを傷害罪で、岡本を殺人罪でそれぞれ逮捕します。もちろん抵抗したチンピラにはゴリパンチ100連発のオマケがつきました。

そうして事件は無事に解決し、薫からゴリさんに『優しいお父さんの事だけを心の中に秘めて、これからの人生を生きていきます』と綴られた手紙が届くのでした。(おわり)


……あれから時は流れ、人々の価値観が随分と変わりました。現在ならば、お父さんの優しい面だけを記憶するんじゃなくて、弱い面も卑怯な面も「ありのまま」受け入れなさいって、主人公は言うんじゃないでしょうか? 人間なら弱くて卑怯な面もあって当然だし、それを認めなきゃキミ自身も生きづらいだろ?って。

だからなのか、ゴリさんの説得も薫の手紙も、私のハートにはちっとも響いて来ませんでした。

それより何より残念なのは、このエピソードにゴリさん「ならでは」の個性がほとんど活かされてないこと。こんなストーリーならどの刑事が主役でも代わり映えしないだろうと思います。事件の内容よりも刑事の心情を重視するから『太陽にほえろ!』は面白かった筈で、これじゃ昨今の謎解き「だけ」の刑事ドラマ群と何も変わりません。

はっきり言ってつまんない。'79年はこういった凡作がやたら続き、民放ドラマ王座陥落への道を着実に歩んでることが、今こうして順番に観返してるとホントによく分かります。

今回も見所は2点のみ。自らジョギングして手がかりを集めるゴリさんの珍しいジャージ姿と、当時19歳のゲスト=岸本加世子さんの美少女ぶり。ちょっとアンニュイかつエキセントリックな演技は桃井かおりさんの若い頃を彷彿させ、もしかしたら意識されてたのかも知れません。

'77年のTBS系ドラマ『ムー』やバラエティー番組等ですでに人気者で、刑事ドラマは他に『明日の刑事』#27と#43、『新幹線公安官』第2シリーズ#12等にゲスト出演。'82年のビートたけし主演『刑事ヨロシク』では刑事役でレギュラーを務め、それが映画『HANA-BI』や『菊次郎の夏』など北野武映画への出演に繋がっていきます。

岸本加世子さんと言えば樹木希林さんと長年コンビで出演された富士フイルムCMの印象も強く、今回のエピソードに登場する写真館でもフジカラーのPOPがちらりと見えたりして、なんだか縁を感じました。
 

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