ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『刑事部屋/六本木おかしな捜査班』2005

2024-10-10 20:40:21 | 刑事ドラマ2000年~

2005年夏シーズン、テレビ朝日系列の水曜夜9時枠で全9話が放映された、テレ朝&東映の制作による刑事ドラマ。先日CATV東映チャンネルにて再放送がスタートしました。

当時『はみだし刑事情熱系』と『はぐれ刑事純情派』が相次いで終了し、それらと入れ替わるように長寿化しつつあった『相棒』シリーズの合間に、シリーズ物じゃない単独作品がいくつか制作された、その第1弾が本作『刑事部屋(デカベヤ)/六本木おかしな捜査班』で、私は今回初めて観ました。



六本木界隈を管轄する警視庁 鳥居坂警察署の「刑事課 強行犯係 第3班」は、管内で起こった窃盗、万引き、痴漢など、他の課から回されてきた小事件を捜査する班で、周囲から3班をもじって“ザンパン”と呼ばれている。

……てな設定は2005年当時でも手垢が付きまくってたけど、国家レベルの大事件を扱いがちな『相棒』との違いを明確にする狙いもあっての事かと思います。

1エピソード内で複数の事件を同時に扱ったり、それらが必ずしもスッキリ解決しなかったりする作劇には往年の『ジャングル』(1987年、日テレ) が見せてくれたチャレンジ精神を感じるけど、やっぱり“ながら見”のテレビ視聴者には伝わりにくいのか、後期は一般的な作風にシフトしていきます。

いつも書くようにクオリティーの高さが数字に結びつかないのがエンタメの難しさで、第3話まで観たかぎりだと長寿番組になってもおかしくない面白さだと私は感じました。

そこはまあ、キャスティングが私のツボを……というより“昭和の刑事ドラマ好き”のツボを絶妙に突いてるせいかも知れません。

まず、事務系の部署からザンパンに新班長として異動してきた、生真面目で腰が低い“53歳の新人刑事”こと仙道晴見に、柴田恭兵。



子育てにも忙しいマミー刑事=“姫”こと姫野百合子に、大塚寧々。



“ポチ”と呼ばれる新米刑事=越智由記夫には、子役からキャリアをスタートしてるジャニーズ(当時)のアクター部門代表、生田斗真。



影で“タヌキ”と揶揄される課長の田所警部には、どうせなら“マユゲ”と揶揄されて欲しかったこの人、石原良純!



副署長の木崎警視にはお懐かしや、“ガッツポーズ”の語源である元プロボクサーの、ガッツ石松。



鑑識係のアイドル=南原亜紀に、これが連ドラのレギュラー2本目となる貫地谷しほり。かわいい!



そして“鳥居坂署の主”と云われる大ベテランにして不良刑事の鵜飼遊佑に、寺尾聰。



本作はタイトルが『刑事部屋』だけにチーム物ではあるけど、同時に“堅物VS不良”の対照的なイケオジ刑事2人によるバディ物でもある。



その組み合わせだけで昭和の刑事ドラマ好きはたまらんワケです。特に寺尾聰さんは『太陽にほえろ!PART2』(’86~’87) 以来となるレギュラーの刑事役。あのとき七曲署で一緒だった新米の“マイコン刑事”が上司になっちゃってるのがまた楽しい!



いや、マイコンは新米と言っても本庁から派遣された実はエリート刑事ですから、課長まで昇進してても全然おかしくない。

寺尾さんが『太陽〜』で演じた喜多刑事は、今回の鵜飼刑事とよく似た不良(ゆえに出世しない)キャラですから、まさに“その後”が描かれてるようで感慨深くもあります。

他の刑事たちにも渾名がつけられてるあたり、本当にスタッフさんは『太陽にほえろ!PART3』を少し意識されてたのかも知れません。

それはともかく豪華なキャスティングで、たとえ人気番組になっても同じメンバーの再結集は難しかったはず。主人公の仙道班長が最初から「3ヶ月限りの赴任」と設定されてる点から見ても、きっと「シリーズ化はしない約束」あればこそ実現したキャスティングなんでしょう。



毎回のゲスト出演者もまた豪華で、第1話は『北の国から』『真珠夫人』の横山めぐみを筆頭に末永遥、徳井優、ダンカン、飯田基祐といった顔ぶれ。

通勤ラッシュ中の駅で横山さん扮する水商売のシングルマザー・長谷川さんが「痴漢よ!」と叫んだのが事件の発端で、それで逃げ出したサラリーマンがホームから転落して死んじゃった。

ところが痴漢被害者は長谷川さん自身ではなく、彼女は別の女性が痴漢されてる現場を目撃して声を上げたと言う。

長谷川さんは3ヶ月前にも同じように痴漢を目撃して声を上げたんだけど、そのときは被害者の女子高生が「痴漢になんか遭ってない」と言い張って立件されなかった。

今回も被害者は名乗りを上げておらず、複数の事件を抱えて忙しい刑事たちは「単なる事故死」で片付けようとするんだけど、仙道班長が「なんとか頑張って被害者を見つけましょう!」と食い下がる。

「なんで痴漢の、いるかいないかも判らない被害者にそんなにこだわるんですか?」と姫野に問われて、仙道はこう答えます。


「怖いんです。このまま長谷川さんを帰してしまったら、明日から彼女は、痴漢よと叫んでくれなくなるかも知れません。それが怖いんです」

「余計なお世話じゃねーの?」

堅物VS不良の対立は、理想主義VS現実主義の対立でもある。鵜飼は言います。


「あんたの気持ちも解んなくはねーけどさ、でも、もしあんたが被害者を見つけ出したら多分あんたは、どういう風に痴漢されたか聞くんだろうな」

「…………」

「いったん忘れかけてた、いや、もしかしたらその人は、忘れたいと思ってるかも知れないのに、あんたの余計なお世話で、今度こそホントの被害者にされるんだよ」



確かにその通りで、正義が罪のない人を結果的に傷つける場合もある。けど、被害者が泣き寝入りしてる場合だって考えられる。

どうしても放っておけない仙道は、部下たちには他の事件を捜査するよう命じ、単独で痴漢事件の捜査を続行。

結果、ようやく見つけた被害者(末永遥)の反応は、鵜飼が予言した通りでした。


「世の中の皆が皆、警察を信じてるワケじゃないんです! 信じて傷つけられた人間だっているの!」

彼女は過去にも痴漢被害に遭い、そのときは勇気を出して告発したのに、担当の刑事から「痴漢に遭うのはあんたも悪い」と言われてジ・エンド。仙道の捜査も徒労に終わりました。

けど、鵜飼も姫もポチも、刑事部屋に肩を落として帰ってきた仙道を、誰も責めたり笑ったりしません。

最初は警察不信を露わにしてた長谷川さんも、「そんなしけた顔しないでよ」と逆に仙道を励ます始末。彼が一貫して自分を信じてくれたことが嬉しかったんでしょう。

署を出た二人が空を見上げると、雨上がりの六本木ヒルズに虹がかかってました。


「きれい……今日ここへ来なかったら、きっと見れなかった」

そんな長谷川さんは少しハッピーになれたけど、痴漢事件はそのまま“幻”に終わりそう。それがリアルなんだと思います。

鵜飼刑事がヤクザと金銭取引する描写といい、やっぱり私は『ジャングル』を思い出します。白でも黒でもないグレーな現実を描いた刑事ドラマは他にもあるけど、この両作は作風も近い。

『ジャングル』は『太陽にほえろ!PART2』と同じスタッフによる後番組ですから、もし『刑事部屋』のスタッフが『太陽〜PART3』を意識したとすれば似て当然と言えましょう。けどまあ、やっぱり寺尾さんと良純さんの存在が私にそう感じさせるだけの事かも知れません。


ちなみに第2話のメインゲストは朝ドラ『ふたりっ子』の岩崎ひろみに加え、アニマル浜口、パパイヤ鈴木とまた多彩な顔ぶれ。そういったキャスティングは『警視庁・捜査一課長』シリーズも彷彿させます。

以下、第2話〜第3話のフォトギャラリー。新宿や横浜が舞台になることが多いこのジャンルで、六本木の風景はちょっと新鮮です。



フィットネスクラブでインストラクターを務める韓国人留学生のケイ・ヨジン(中山恵)は、鵜飼刑事と何やら因縁がありそう。たぶん父娘でしょうけど、ミスリードの可能性もあり。

というワケでセクシーショットは第1話で痴漢被害者に扮した末永遥さんと、中山恵さん、そして横山めぐみさんです。



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