☆第322話『誤射』(1978.9.29.OA/脚本=小川 英&うど・ふみこ/監督=児玉 進)
長さん(下川辰平)が銀行強盗犯(信実恭介)を撃ったら人質(結城しのぶ)に当たっちゃった!という、後に恒例化する「長さんが射撃絡みで失態を犯し、刑事を辞めようとする話」の代表的な一編。
だけど実は長さんが的を外したワケじゃなくて、撃った瞬間に人質が自ら動いたのが本当の原因。
彼女は自殺するつもりでわざと動いたんだけど、その事実を明かそうとしない。生き残ってしまった以上、ろくでなしの兄(金子研三)が作った多額の借金を返さねばならず、警察から慰謝料をふんだくりたい兄に口止めされてるのでした。
けど、長さんがマスコミから袋叩きにされ、刑事を辞めるしかない状況に追い込まれても、一言の弁解もしてないという事実を知って、彼女の心は大きく動きます。人質が自ら動いたことを証明さえすれば、長さんは何の責任も負わずに済むのに!
結末はわざわざ書くまでもありません。どんな理由があろうとも、自分がやったことの責任は最後まで自分で負う。そんな長さんの生きざまを見て、彼女も心を入れ替えるワケです。
……っていうのが本筋なんだけど、このエピソードは他にもいくつかトピックスがあります。まず最大のトピックは、三代目マスコットガールのアッコ(木村理恵)が番組を卒業しちゃうこと。
祖母が亡くなり、実家が営む旅館を手伝うことになったという事情で、ボス(石原裕次郎)に退職願を提出したその日に、たまたま立ち寄った銀行で上記の事件に巻き込まれます。
けれど粗筋を読んで頂ければお分かりのように、このストーリーは別にアッコがいなくても成立しちゃいますから、後から無理やり組み入れた感は否めません。
人質が撃たれた直後、今度はアッコを盾にして犯人が逃走する→民間人を撃っても同僚は撃たない長さんはけしからん!ってことでマスコミの炎上ネタにされちゃう=作劇上の意味は一応あるんだけど、それが余計に取って付けた感を倍増させてる気もします。
でも多分、創り手は承知の上なんですよね。約3年も休まず勤めてくれた木村理恵さんへの餞として、無理にでもアッコの見せ場を作りたかった。愛あればこその不自然さなんだろうと思います。
この場面にはもう1つ見所があって、それはどさくさに紛れて人質=結城しのぶさんのおっぱいを触る長さんと、アッコのおっぱいを触る犯人役の信実恭介さんw(画像参照) 強盗シーンの醍醐味ですw
トピックはまだあります。それは着脱式のパトライトが『太陽にほえろ!』に初めて登場したこと。他の番組じゃ1年以上前から使われてたのに、こちらは随分と遅い登場でした。
最初にゴリさん(竜 雷太)が使い、次に長さんが使う際にはパトライトをわざわざアップで見せ、ボン(宮内 淳)に到っては多部未華子さんの真似をしてw、意味もなく箱乗りしながら装着してました。
DVDのオーディオコメンタリーで、これを最初にやったのはジーパン(松田優作)だと宮内淳さんが仰ってたけど、勿論それは勘違い。たぶん『大都会 PART II 』で徳吉刑事(優作さん)がやってたのと記憶がゴッチャになってるんでしょう。
それともう1つ、ボス=石原裕次郎さんの真っ黒なお顔もトピックですw 9月の放映ですから撮影は8月頃、たぶん夏休みでまたハワイへ行かれたんでしょう。
そんな黒人みたいな顔のボスが、射撃練習場でわざと的を外し、長さんを励ます場面もトピックかも知れません。立会人を務めた警官が「藤堂係長みたいな名手が的を外すなんて!」ってことで驚くんだけど、ボスは長さんがいなくなった後でもう1回連射し、弾丸6発で綺麗な直線を描くという神技をわざわざ披露するんですよねw
このシーンでもオーディオコメンタリーで宮内さんが「カッコ良すぎる!」「ずるい!」「わざわざ見せなくても!」などと愚痴っておられたけど、おっしゃる通りですw なにもそこまで見せなくたって、ボスがわざと的を外したことくらい大方の視聴者は察すると思うんだけど、それでも念入りにフォローしなくちゃいけないのがテレビというメディアなんですよね。
ボスが命中精度の高い6インチの銃で的を外し、逆に一番命中精度の低い2インチの銃で神技を見せるっていうのがまた、実に芸が細かい!w
あと、ここで使われた拳銃=COLTトルーパーMk―lll の6インチ(スコッチ、ロッキーが後に愛用)がたぶん『太陽』初登場であったことも、マニア的にはトピックの1つかも知れません。
前回レビューの#320と、大女優=岡田嘉子さんを迎えた#321は共に豪華ゲストで、次回#323と#324は北海道ロケの超大作。'78年秋の改編期スペシャル月間ってことで、この#322も見どころ満載のエピソードでした。
☆第320話『翔べないカナリア』
(1978.9.15.OA/脚本=小川 英&塩田千種/監督=木下 亮)
通常『太陽にほえろ!』は事件発生から順を追って捜査過程を見せていくスタンダードな見せ方なんだけど、本エピソードはいきなりロッキー(木之元 亮)が顔を毛むくじゃらにして人探しをする場面からスタート。
BGMもやけに少なめで、静かに淡々と話が進んでいくもんだから、当時中学生になったばかりだった私はさぞや退屈しながら観ただろうと思いますw でも大人になった今あらためて観ると、これはズッシリと胸に来ますね。
ロッキーが顔を毛むくじゃらにして探す人物は、いつもカナリアを肩に乗せて町の人々から「カナリアのシンさん」と呼ばれ、2年前に忽然と姿を消して以来ずっと行方不明の立花伸介(米倉斉加年)という中年男。
ちょっと前にロッキーが公金横領罪で逮捕しようとした宮本というサラリーマンが逃走中に事故死したんだけど、その宮本が麻薬中毒者だったことが判明し、彼に麻薬を売ったのがどうやらシンさんらしいのでした。
で、かつてシンさんがよく通ったスナック「ルナ」のマスター(橋爪 功)が、最近シンさんを町で見掛けたと証言。ロッキーはシンさんの友達を装って詳しい話を聞こうとするんだけど、そこにミツエという若い女(土部 歩)が飛び込んで来ます。
「シンさんが帰って来たの!? 今どこにいるか教えて!」
その様子から単なる知り合いとは思えないミツエに、ロッキーはやはり正体を隠して近づくんだけど、彼女は「こんな毛むくじゃらがシンさんの友達なワケがない!」と言って信用しません。うっかり信じたら食糧にされちゃうと思ったんでしょう。
それでもロッキーは、顔を毛むくじゃらにしてミツエに食い下がります。思ったとおり、ミツエはシンさんが現れそうな場所をよく知っており、お陰でいきつけの小鳥屋さんも判明しました。
が、店主(今福正雄)はシンさんが目撃されたと聞いても「そりゃ何かの見間違いだよ」と言って涼しい顔。その確信ぶりに違和感を覚えながら、顔が涼しくないロッキーはそれ以上追及できずにいるのでした。
一方、山さん(露口 茂)は元暴力団の幹部で、立花を売人として操ってた武藤老人(宮口精二)をマーク。折しも武藤の自宅が賊に荒らされる事件が発生し、その現場にカナリアの羽根が落ちていたことから、藤堂チームはシンさんが麻薬を盗みに入ったと睨んで捜査を進めます。
けれど、町の人々から話を聞けば聞くほど、シンさんの人柄は麻薬を売りさばくような悪魔とは程遠く、「あの男と話をしてると、みんな他人への優しさを取り戻すんだよ」とまで言う人もいて、混乱したロッキーはますます顔が毛むくじゃらになります。
「この町のカナリアのシンさんは、まるで立花伸介とは別人のような気がするんです。人が好くて親切で……」
そんなロッキーに、ボス(石原裕次郎)は「噂に惑わされるな」とゲキを飛ばします。そりゃそうです。俺様は麻薬を売りさばく悪魔だぞ参ったか?なんて自己紹介して回るようなヤツはいないのです。
さて、武藤宅に侵入した容疑者として、村上というかつてシンさんと同じように武藤に使われてたチンピラが浮かぶんだけど、そいつが他殺死体で発見され、その現場にもカナリアの羽根が落ちてたもんだから、シンさんの容疑はますます濃くなります。
けど、カナリアのシンさんが殺人まで犯すとはどうしても思えないロッキーは、今度は自分が刑事であることを隠さず、ミツエにアタックします。その気持ちが通じたのか、彼女はようやく重い口を開くのでした。
鹿児島から独りで上京するも東京に馴染めず、死に場所を探して町をさ迷うミツエに声を掛けて来たのが、肩にカナリアを乗せたシンさんだった。
シンさんは、そのカナリアを公園で拾ったんだと言いました。
「逃げないの?」
「逃げたくても飛べないんだ。可哀想に、羽根を切られて…… 可愛がってくれるなら、あげてもいいよ?」
「ダメ、私……自分一人でもちゃんとやっていけないのに……」
「誰だってそうだよ」
「え?」
「誰だって、このカナリアと大して違いは無いんだよ。逃げたくたって、逃げ場はない……跳びたくても、跳べない……少しずつしか歩けない……みんなおんなじだ。みんな哀しいんだよ」
そんなシンさんの言葉には、当時よりも今の若者たちにこそ響く何かがあるかも知れません。
それから何日も一緒にいて話を聞いてくれたシンさんは、ミツエにとって生まれて初めての、本当の意味で友達と言える存在でした。
「友達って、本当にいるんだなって……わたし初めて思った……だから今まで生きて来れた」
ロッキーは、ますます分からなくなります。果たして本当のシンさんは天使なのか、それとも悪魔なのか?
その答えを知りたいロッキーは再び小鳥屋を訪ねますが、店主は相変わらず「いくら探しても無駄だから諦めなさい」と涼しい顔。殺人容疑が懸かってることを告げても「あいつが人殺しなんかするワケない」と信じて疑いません。
なぜそう断言できるのか? あらためて強い違和感を覚えたロッキーは、小鳥屋を張り込みます。すると独りで暮らしてる筈の店主が、2人分の食事を出前で取り寄せたもんだから驚いた! もしかしたらこの店には!?
いよいよロッキーは顔じゅう毛だらけにして店の2階に踏み込みます。そこにいたのは、壁を見つめてただボ~っと座ってる、ゾンビみたいな姿のシンさんだった!
かつて暴力団から栄養剤だと騙されクスリ浸けにされ、麻薬を買う金を稼ぐために売人をせざるを得なかったシンさんは2年前、警察に追われてこの店に逃げ込んだ。店主は彼を匿い、部屋に監禁してヤク抜きさせたんだけど、すでに麻薬で侵された脳は元に戻らなかった。
ボーゼンとするロッキーに店主は言います。
「カナリアのシンさんは死んだんだ……みんなに夢を与えて、2年前に死んだんだ。そう思ってくれんかね、刑事さん?」
もはや廃人状態のシンさんに、窃盗や殺人が犯せる筈がありません。彼に罪をなすりつけようと細工した真犯人がどこかにいる。ボスは言います。
「そいつは多分、立花伸介を最近見たと嘘をついたヤツだ」
そう、橋爪功さんが演じるスナックのマスターが、単なる目撃者のままで終わるワケがありません。もちろん『七人の侍』の宮口精二さんが演じる武藤老人が黒幕で、全ては麻薬ルートを発覚させないための策略なのでした。
そんなワケで、事件は無事解決。だけどロッキーは、カナリアのシンさんの悲惨な末路を、ミツエに告げることを躊躇います。
「教えて、お願い。教えてくれなきゃ私、いつまでもシンさんを待ってなきゃなんないのよ。一生シンさんを探さなきゃなんないのよ!」
「……どうしても知りたいのか?」
その後の顛末を具体的には見せず、無言で小鳥屋から去っていくロッキーとミツエ、その後ろ姿を見つめる店主の表情だけで悟らせる脚本&演出が素晴らしいです。時に多くを語りすぎるBGMも今回はほとんど使用せず、モーツァルトの静かなピアノソナタをワンポイント的に使っただけ。それがまた切なさを倍増させてます。
けど、『太陽にほえろ!』は希望のドラマです。単なる悲劇だけで終わることは絶対ありません。
「大丈夫です、私。もう、カナリアのシンさんだけが友達だなんて思わない」
そう言ってミツエは、ロッキーに初めて笑顔を見せます。最後まで真剣に向き合ってくれた彼に、ミツエは天使のシンさんと通じるものを感じたのかも知れません。
ロッキーはロッキーで、シンさんとミツエから大事なことを学んだようで、ボスにラストシーンでこう言いました。
「俺も結局、跳べないカナリアなんだなって、そう思ったんです。跳べないカナリアだから、みんな助け合わなきゃいけないんだって」
確かに1年経ってもなかなか人気が出ないロッキー刑事は、跳べないカナリアそのものかも知れませんw
それにしてもめちゃくちゃ怖い話です。シンさんは本当に優しい人だったからこそ悪党につけ入られ、骨の髄までしゃぶり尽くされたワケで、反社会勢力と違法薬物の恐ろしさがダイレクトに伝わって来ます。のりピーやエリカ様はもっと早く生まれてこれを観るべきでした。
米倉斉加年さん、橋爪功さん、宮口精二さん、今福正雄さんと、ゲスト陣がまた名優揃いで迫力倍増、当時の『太陽にほえろ!』の無敵ぶりがキャスティングからも伺えます。
ミツエに扮した土部歩(はにべ あゆみ)さんは当時27歳。「劇団民藝」に所属し、後に「劇団四季」そして「東京乾電池」にも所属され、舞台を中心に現在も活躍中の本格女優さん。
テレビドラマへのご出演は日テレ『俺たちの朝』、NHK『なっちゃんの写真館』『雲』、TBS『花嫁の父』ぐらいしかプロフィールに記されておらず、刑事ドラマへのゲスト出演は恐らく本作が唯一。これまた貴重なフィルムと言えましょう。
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殉職した梶警部(緒形 拳)に代わり、華麗なる中年刑事=薮下警部(田中邦衛)が空港特捜部に新加入してから2本目のエピソードであり、第3話に登場された松坂慶子さん2度目のゲスト出演作でもあります。
☆第16話『特捜部 対 ヤクザ/女医 三森亜矢子が敵の手に!』
(1978.11.20.OA/脚本=池上金男/監督=日高武治)
暴力団の隠れみの企業である羽根木総業が麻薬及び銃器を密輸入してるという情報をキャッチした空港特捜部は、その取引現場を見事に押さえるんだけど、あろうことか源田組の鉄砲玉がそこに乱入し、刑事たちの目の前で羽根木社長を射殺しちゃいます。源田組は羽根木総業と密輸の利権を争っていたのでした。
実行犯の中谷(磯部 勉)は加賀チーフ(鶴田浩二)に肩を撃たれたものの、緊急配備の網をかいくぐって逃走。さらに空港ロビーで源田組の幹部を狙った羽根木側の鉄砲玉が文字通り拳銃を乱射、巻き添えで幼い子供が犠牲になり、チーフが責任を問われる事態となります。
そんな折り、沢井空港長(池部 良)の姪っ子で国際保険機構に所属する医者=三森亜矢子(松坂慶子)が海外から帰国します。
亜矢子は加賀チーフ初恋の女性のひとり娘であり、亡くなったお母さんと瓜二つの美女。第3話でチーフと色々あったみたいだけど、私は観てないので知りませんw
ただ、両者互いに異性を意識してるのは確かなようで、そんな二人を運命的に(悪く言えば強引に)再会させちゃうのがドラマってもんです。
親友の信子(倉野章子)に呼び出された亜矢子が彼女のアパートを訪ねると、そこには肩に傷を負って寝込んでる、いかにも怪しい男がいるのでした。そう、冒頭で羽根木社長を射殺し、加賀チーフに肩を撃たれた鉄砲玉の中谷は、信子の別れた元亭主なのでした。
「亜矢子、助けて私たちを!」
信子は犯罪にいっさい関わってないんだけど、自分を頼って駆け込んで来た元亭主を放っておけず、優秀な医者である亜矢子に泣きついたワケです。
で、親友の頼みを断りきれず、亜矢子はその場で中谷の容態を診るんだけど、撃たれた傷より厄介なものを見つけてしまいます。彼は南アフリカから持ち帰った難病を患っており、早く処置しないと命を落としかねないのでした。
亜矢子は信子を説得し、大学附属病院に中谷を運びます。当然ながら警察に連絡が行き、加賀チーフと鯉沼(中村雅俊)がすぐ駆けつけるんだけど、患者の生命を最優先する立場にある亜矢子は、中谷への尋問を拒否。すると普段は犯罪者に容赦しない加賀チーフがあっさり引き下がったもんだから、鯉沼は面食らいます。チーフもやっぱり美女には弱いのか?
ここで鯉沼が、非常に共感できる台詞を吐いてくれました。
「こう言っちゃ何ですけどね、あんな虫ケラこのまま死んだ方がいいんじゃないですかね? どうせ捕まえたってゲロする筈ないし、生かしたって誰かに殺されるに決まってますよ」
おっしゃるとおり! 極道に走るような人間にまともな倫理が通じるワケがなく、情けをかけようもんなら足元を掬われること必至。事態をより悪くするのは眼に見えてます。
なのに加賀チーフは「人の命ってそんなもんじゃないだろう」なんて、面白くも何ともない綺麗事を言って鯉沼と我々視聴者をシラケさせるのでした。
そしたら案の定、中谷の病室に羽根木総業の刺客が侵入し、彼をかばった信子が身代わりに刺されちゃうという最悪の展開に。しかも中谷が敵から奪ったドスで亜矢子を人質にとり、瀕死の信子を置きざりにして逃走するという虫ケラぶりを遺憾なく発揮。だから言わんこっちゃない!
「俺がもっと強引にやれば良かったんだ……病人を何とかして生かそうとする彼女の必死な気持ちが解ったもんだから、つい……」
珍しく弱音を吐く加賀チーフに、亜矢子の叔父(つまりチーフ初恋の女性の兄)である沢井空港長が鋭いツッコミを入れます。
「彼女だから……亜矢子だからそうしたのか?」
「そんなつもりは無かった」
「いや、そうだよ。お前らしくもないじゃないか」
「…………」
初恋の人の娘だからなのか、あるいは空港長の姪っ子だからなのか、否、1人の女性として亜矢子を愛してしまったからなのか……? それは多分、チーフ自身にも分からないんでしょう。(はたから見れば美人だからに決まってるんだけどw)
決して本音を口にしないストイックな役柄が似合う鶴田浩二さんには、こういう禁断の年の差恋愛を演じる機会が多かった印象があります。NHK土曜ドラマの名作『男たちの旅路』シリーズでも桃井かおりさんとのぶざまな(だけど鶴田さんが演じるとカッコいい)ロマンスが描かれ、私は号泣させられた記憶があります。ちなみに桃井さんも松坂さんも当時は若かったw
さて、亜矢子を人質にとった虫ケラは、大学病院に鎮痛剤と逃走用のヘリコプターを要求して来ます。
そこで元特攻隊のパイロットだった加賀チーフ(鶴田さんご自身がそういう経歴の持ち主で、『男たちの旅路』でも設定に活かされました)がヘリを飛ばし、東京郊外の取引現場へと特攻! 他の刑事たちも駆けつけ、さらに中谷の口を封じようとする源田組の連中も乱入し、なかなか派手な銃撃戦が展開されます。ザッツ・刑事ドラマ! ゲッツ!
で、往生際悪く亜矢子に銃口を突きつけてチーフを脅した中谷だけど、肝心なところで発作を起こしてぶっ倒れるという、虫ケラに相応しいぶざまな幕切れ。
しかし虫ケラとはいえ病人は病人、助けてやらなきゃいけません。現場近辺には南アフリカの難病を治療できるような医者はおらず、救出されたばかりの亜矢子を頼るしかありません。
だけど亜矢子は、あんなに尽くしてた信子を見殺しにして逃げた中谷が、女としてどうしても許せない。今回ばかりは治療を拒否します。
仕方なく近辺の病院を片っ端から当たるよう指示するチーフに、鯉沼が言います。
「チーフ、まだヤツを救おうってんですか?」
「あの男がやったことは許せない。だがな、人の命に換わりはないんだ。出来るだけのことはやってみよう」
たとえ綺麗事でも、貫き通せばひとりの人間の生きざまとして説得力を持ちます。そんなチーフの姿を見て考え直した亜矢子は、治療を引き受け、見事に虫ケラの命を救ってみせるのでした。
事件解決後、あらためて礼を言いに来た加賀チーフに、亜矢子は言います。
「怖い方ですよね、加賀さんって」
「え?」
「いつも、命というものと真正面からぶつかり合ってらっしゃるから……お陰で私、自分が医者で良かったって、勇気が持てました。お礼を言うのは私の方ですわ」
「お礼だなんて……とんでもない事ですよ」
その後、三森亜矢子の再登場は無かったようなので、残念ながらノー・チョメチョメ。当時、刑事ドラマのボスはみんな独身で美女にモテモテなのに、我慢してばっかでよく気が狂わなかったもんだと思います。
松坂慶子さんは当時26歳。子役からスタートされ、16歳の頃に『ウルトラセブン』第31話にゲスト出演。ブレイクのきっかけは'73年のNHK大河ドラマ『国盗り物語』における濃姫役だけど、全国的に認知されたのは'79年のTBSドラマ『水中花』とその主題歌『愛の水中花』の大ヒットが大きかったんじゃないでしょうか。私もそれでお顔とお名前を認識した記憶があります。
この『大空港』はまさに大ジャンプに向けたステップの時期に出演されたもの。あまりに美人すぎてイマイチ人間味が感じられず、それが本格ブレイクまでに時間がかかった原因なのかも知れません。
他に刑事ドラマへのゲスト出演は『刑事くん』第3部 ('73) の第6話ぐらいしか見当たらず、そう言えば刑事役を演じられた記憶も無いし、ご本人があまりお好きじゃないのかも知れません。そう思えばこれは貴重なフィルムと言えましょう。
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☆第14話『いのち炎の如く 壮烈!! 梶刑事の最期』
(1978.11.6.OA/脚本=池上金男/監督=日高武治)
青森から東京に向かう特急列車内で某共和国の駐日大使が暗殺され、全国的なニュースになります。
そして新東京(成田)国際空港内のトイレでスリ常習犯の他殺死体が発見され、ワイヤーロープを使った殺しの手口が大使暗殺のそれと酷似してるため、空港特捜部のチーフこと加賀警視(鶴田浩二)は2つの事件の繋がりを探るよう部下たちに指示します。
そんな折り、銃弾の古傷が悪化して入院中の部下=梶警部(緒形 拳)を見舞いに行った加賀チーフは、主治医から梶の余命が良くて3か月であると聞かされ、愕然とします。
それに薄々感づきながら現場復帰する気満々の梶は、以前自分が逮捕して何かと面倒をみたベテランスリのオヤジ(花沢徳衛)が、殺されたスリの仲間だから何か知ってる筈だと息巻くんだけど、チーフは静養を命じて鯉沼(中村雅俊)と海原(高岡健二)にオヤジを当たらせます。
しかし、オヤジは確かに何か知ってる様子なんだけど、梶以外の刑事に協力する気は無いようで口をつぐみます。
オヤジは、殺された若手スリが最後にスッたパスポートを持っているのでした。その持ち主は、特急列車で共和国の大使を暗殺した殺し屋(浜田 晃)。スられたことにすぐ気づき、若手スリを捕まえて取り戻そうとしたんだけど、彼はすでにパスポートを仲間に渡してたワケです。
そのパスポートには大使館にいる黒幕(田口 計)が殺しを指示した証拠となるビザが挟まれており、殺し屋は何としてもそれを取り戻さなきゃいけない。
そこまでは知らないまでも犯罪の匂いを嗅ぎ付けたオヤジは、男手一つで育ててる愛娘の進学費用を稼ぐべく、パスポートの持ち主に取引を迫るという危険な賭けに出ます。
で、当然ながら殺されそうになり、すんでのところで鯉沼と海原に救われるんだけど、それでも捜査には協力しようとしない。
どうやら暗殺事件の背後には共和国の過激派が絡んでおり、早く殺し屋を逮捕しないと間もなく来日する同国の特使も狙われるに違いない!
焦った鯉沼たちはオヤジを説得するため、梶警部が余命3ヶ月である事実をオヤジに打ち明けるという禁じ手を冒します。
その頃、加賀チーフは病院に呼び出され、家族の希望により梶を退院させる意向を主治医から聞かされて、いよいよ大事な部下を失う覚悟を迫られます。
梶の妻(吉野佳子)と一緒に病室を見舞ったチーフは、温泉旅行を手配するから家族で行って来るよう提案するんだけど、退院できると聞いた梶の第一声は「おおっ、じゃあ明日からさっそく仕事だ!」でしたw
「バカ言っちゃいかん。退院はいいが、今言ったように充分家庭サービスをして、今までの借りを返したら出勤したまえ」
「……それは命令ですか?」
「命令だ」
たったそれだけのやり取りでも、鶴田浩二&緒形拳という名優2人が演じるとさすが、切なさが込み上げてきます。
で、仕方なく出勤を諦めた梶だけど、そこに知らなくていいことを知ってしまったスリのオヤジが駆けつけ、殺し屋のパスポートとビザを梶に渡してしまいます。
それを見て、間もなく成田に到着予定の特使が狙われることを察した梶は、病院を飛び出して空港に駆けつけ、その顔を知ってるオヤジと2人で殺し屋を探し回るのでした。
そして爆弾が積まれたトラックをリモコンで遠隔操作する殺し屋を見つけた梶は、特使を乗せた旅客機を守るためトラックに飛び乗り、なんとか衝突を回避させるもフェンスに激突、爆発したトラックもろとも炎上しちゃいます。
「せめて、家族旅行だけはして逝けば良かったのに……」
切ない顔でチーフはそう呟きますが、大好きな刑事の仕事に殉じて逝けたのは、梶にとって本望だったかも知れません。
だけど死に目にも会えなかった家族は切ないどころじゃ済みません。梶夫妻には5人もの子供がいるし、奥さん役の吉野佳子さんは後に『太陽にほえろ!』でもトシさん(地井武男)の奥さん役を演じて、離婚という憂き目に遭われます。
1978年秋、人気絶頂で「お化け番組」と呼ばれた日テレの『太陽にほえろ!』がボン(宮内 淳)の殉職を1年延期し、その隙を狙ったのかどうか分からないけどフジテレビ「月9」枠で放映中だったこの『大空港』は、番組スタートから僅か3ヶ月でベテランの梶を殉職させちゃいました。(緒形拳さんが最初から1クール契約だったんでしょう)
以降、1年半の放映期間で歴代レギュラー全10名のうち実に6名が死亡という、異常に高い殉職率で(全員一挙殉職の『警視庁殺人課』は例外として)『太陽にほえろ!』を遥かに凌駕する鬼畜番組として、この『大空港』も侮れない作品です。
セクシーショットは空港特捜部の紅一点=神坂紀子を演じた片平なぎささん、当時19歳。1年後に海外転勤という形で降板(そして後に殉職。転勤した人までわざわざ殺さなくても!)、一足先に殉職した中村雅俊さん主演の学園ドラマ『ゆうひが丘の総理大臣』の後番組『あさひが丘の大統領』でヒロイン=涼子先生役に抜擢され、やはり『太陽にほえろ!』で殉職したばかりの宮内淳さんと1年間共演することになります。当時のテレビ界はほんと殉職刑事だらけ。それが一種のステイタスになってましたね。
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☆第319話『年上の女』
(1978.9.8.OA/脚本=小川 英&大山のぶ代/監督=木下 亮)
ある日、高校時代にサッカー部でボン(宮内 淳)の先輩だった「ねじねじ」マフラー男=矢倉(中尾 彬)の経営する建設会社が、手抜き工事による崩落事故を起こして多数の死傷者を出し、大きなニュースになります。
そんな折りに矢倉先輩から電話をもらい、ボンは驚きます。手抜き工事は金井という常務の指示によるもので、自分は口封じで金井に殺されるかも知れないと言う矢倉は、最後に「文子を頼む」という遺言じみたメッセージを残し、電話を切ったまま行方をくらますのでした。
文子(丘みつ子)というのは矢倉の妻で、高校時代にサッカー部のマネージャーだった同級生。つまりボンにとっては彼女も高校の2年先輩にあたります。
(劇中で彼女は『文子』とも『ふみ』とも呼ばれており、もしかするとスタッフの記録ミスかも知れないけど、今回のレビューでは『文子』が本名で『ふみ』は愛称であると解釈しておきます)
かくして、矢倉夫妻の挙式以来6年ぶりに文子と再会したボンは、彼女の口から「生活のすれ違いで夫婦仲は破綻していた」という話を聞いて複雑な気持ちになります。そう、高校時代、ボンは文子が好きだった。美人なら見境なく惚れちゃう男なんですw
矢倉もそんなボンの気持ちを知ってて、マフラーをねじりながら「お前がモタモタするならオレが取っちゃうゾ!」なんて冗談めかして言いながら、本当にチョメチョメして嫁にしちゃった。さすがは「ねじねじ」マフラー野郎です。
さて、そんな時に奥多摩で崖から転落&炎上した車から、矢倉らしき男の遺体が発見されます。矢倉建設の金庫にあった多額の現金や小切手も消えており、矢倉を殺した金井常務が持ち逃げしたものと藤堂チームは睨むのですが……
そこでボンは、文子から奇怪な情報を聞き出します。奥多摩で遺体が発見されて以来、家の電話が2コールだけ鳴って切れてしまうことが何度かあったという。それは高校時代、誰からの電話なのか事前に相手に知らせる為に、文子とボン、そして矢倉だけが使ってた合図「2コール切り」を彷彿させる……
だけどボンは文子に電話など掛けてない。そもそも、あの「ねじねじ」マフラー男の出番がこのまま終わっちゃうワケがない!
折りしも、矢倉が金井常務に汚職の指示を下してた疑惑が浮上し、遺体発見後にホテルで矢倉を見たという目撃証言まで飛び出します。実は矢倉は生きている!?
思えば、藤堂チームが金井常務を真っ先に疑ったのは、ボンにかかって来た矢倉の電話がきっかけでした。実は矢倉こそが犯人で、あの焼死体は金井常務だった!?
ボンはあらためて文子を訪ね、例の2コール電話がその後なかったか聞きますが、なぜか彼女は眼をそらし、言葉を濁します。
「いえ、あれ以降は……やっぱり間違い電話だったみたい」
美人に弱いボンはすぐ真に受けるんだけど、鬼のボス(石原裕次郎)は文子に疑惑の眼を向けます。
「でもボス、ふみさんがもし矢倉さんから連絡を受けてたら、必ずオレに知らせてくれる筈です。たとえ矢倉さんがどんなに彼女を愛していても、人殺しの、そんな悪党の言いなりになるようなふみさんでは……」
「ボン、お前が矢倉文子をどう思ってるかを聞いてるんじゃない。矢倉文子と矢倉浩は、この6年間夫婦だったんだ。そいつを忘れるな」
「…………」
その夜、文子は勤め先である劇場に1人でいました。彼女は演劇舞台の美術デザイナーなのです。
探しに来たボンを他の誰かと間違えたらしい文子を見て、ボンは確信します。
「やっぱり気づいていたんですね、ふみさん。矢倉さん生きてるんですね?」
「いいえ……どうしてそんなこと仰るの? だってもう矢倉は亡くなって……」
「あの死体、金井常務ですよ。証拠はまだ無い。でも、不正な金を作っていたのは矢倉さん自身だってことは証明されてるんです」
「そんなの嘘よ、嘘!」
「ふみさん!」
夫婦仲は破綻してた筈なのに、なぜ文子は夫を庇うのか? ボンは理解に苦しみます。
一夜明け、郊外に向けて車を走らせる文子を、ボンは尾行します。そうとは知らず海岸にやって来た文子を、マフラーをねじりながら待っていたのはやはり矢倉でした。
「ふみ、なぜ旅行の支度をして来なかった? お前、まさか田口を!」
文子が呼んだワケじゃないんだけど、確かに田口=ボンはそこにいました。ぼんぼん刑事がねじねじ野郎を捕まえに来たワケです。
「やっぱり生きていたのか……なぜだ矢倉さん? なぜこんな馬鹿なことを!?」
「馬鹿? オレがか? よせよ田口。人間にはな、二種類しか無いんだよ。馬鹿と利口さ。その馬鹿はオレじゃない。オレに騙されたヤツらだよ」
矢倉はねじねじマフラーの下から拳銃を取り出し、ボンに銃口を向けます。入手ルートは不明だけど、昭和ドラマの悪党はみんな当たり前のように銃を持ってました。
「田口、お前もだ。オレが生きてるということに感づきながら、1人でノコノコやって来るとはな。それじゃ刑事は務まらんぞ」
「あなた!」
「ふみ! お前もだ! 何の支度もしてないところを見ると、やっぱりオレと一緒に逃げるつもりは無いんだな。それならそうとなぜ言わないんだよ?」
「違うわ、私はただ……」
「言い訳はよせ! なあ、田口。お前があれほど惚れてた女を女房にしたんだが……やっぱりオレの失敗だったな。こいつの中にはいつもお前がいた。年下の、弟みたいな可愛いお前がな……そいつがオレには我慢ならなかったんだよ!」
「あなた……なんてこと言うの!」
やっぱり、この夫婦の仲が悪くなったのはオレのせいだった……どう考えたってマフラーをねじねじするようなキモメンより、長身イケメンのオレに惚れる方が自然だもんな……と思ったかどうか知らないけど、ボンも隙を見て愛銃COLTローマンを抜いて矢倉に向けます。
ところが当の文子は、意外な反応を示すのでした。
「田口、お前にオレが撃てるか? お前のお陰で惚れた女房に裏切られ続けたこのオレを、撃てるのか!?」
「裏切ってなんかいないわ!」
「裏切ってない?」
「あなた……あなたは、私がどうしてあなたと結婚したと思ってるの? 私は、あなた以外の人と結婚したいなんて思ったことも無いわ!」
「!!」
この「!!」は矢倉じゃなくて、ボンのリアクション。
「昔も……今も、一度もよ!!」
「!!」
これもボンのリアクション。ボスが言ってた通り、6年間を共に過ごした夫婦の絆には、いくらイケメンでも立ち入ることは出来ないのか? なんかオレ、恥ずかしいぞ!っていう意味の「!!」です。
「じゃあ、お前はなぜ旅行の支度をして来なかった? 田口に連絡したからじゃないのか!?」
「支度? どうしてそんなものが要るの? あなたが来いって言ったから私は来たのよ! それだけよ!」
「…………」
この「…………」もボン。そりゃ切ないでしょう。切ないんだけど、恋愛が成就すると死ぬ運命にある七曲署の刑事にとって、これはかえってラッキーなこと。結婚したければ女性ファンに無視されるよう毛むくじゃらになるしか道は無いのです。
結局、ボンが一瞬だけ眼をそらした隙に矢倉が自分のこめかみを撃ち抜き、事件は幕を下ろします。 観念したというよりも、文子を信じなかった自分の愚かさに彼は絶望したんでしょう。
ラスト、恐らく海外へ移住すると思われる文子を、ボンが空港で待ってたんだけど、現れた文子は彼に気づきながら素通りしちゃう。本当にボンのことを何とも想ってないなら、普通に挨拶ぐらいはしそうなもんです。やっぱり女性にしか解らない複雑な心理が奥底にあるんでしょう。
本エピソードはアニメ『ドラえもん』の声優としても知られる女優=大山のぶ代さんが『太陽にほえろ!』で書かれた、5本目にして最後の脚本作(小川英さんと共作)。
大山さんご自身の想いや経験がどれほど反映されてるかは知る由もないけど、冷めた筈の夫に対する愛情や、なのに年下イケメンへの想いも匂わせる女性心理の複雑さは、やっぱり女性でなければ書けないもんだろうと思います。
『太陽~』以外の番組には脚本を1本も提供されてない大山さん(俳優座で同期生だった露口茂さんの紹介?)、つまり5本しかドラマの脚本を書かれてない大山さんだけど、それだけじゃ何だか勿体ないです。
そして文子役の丘みつ子さんは当時30歳。ポルノに路線変更する前の日活で女優デビュー、初の主演作『ある少女の告白/純潔』にて相手役に抜擢されたのが誰あろう、当時まだド新人だった我らがスコッチ刑事=沖雅也さん。丘さん自らのご指名だったそうです。
テレビドラマを中心に多数の作品にご出演、我々世代には『前略おふくろ様』や『池中玄太80キロ』、そして『大都会 PART II 』のヒロイン=吉野今日子役でお馴染みの女優さん。現在も『やすらぎの刻~道』のレギュラー出演など第一線でご活躍されてます。
なお、昨今のテレビ番組やCMに倣って注意書を付け加えると、中尾彬さんは本エピソードにおいて実際はマフラーをされてません。わざわざ書くとホントつまんないですよね。