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ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『太陽にほえろ!』#345

2020-05-06 20:20:19 | 刑事ドラマ'70年代










 

いきつけのスナックだかバーだかでボス=石原裕次郎さんとたまたま遭遇し、意気投合して「お前、太陽にほえろに出たいか?」「えっ? そりゃ出たいです!」てな流れで出演が決まったという、秋野暢子さんの初ゲスト作。この業界、やっぱ営業力が何より強い武器です。

冒頭でお腹を下してたボン(宮内 淳)が秋野さんを見た途端に「治った」と言い、ラストシーンでは秋野さんに礼を言われたボスと、あの山さん(露口 茂)までもが大いに照れちゃう!という、当時はまだ(?)美人女優のカテゴリーに属されてた秋野暢子さんの美貌に、要注目。

そして伊豆への出張捜査が山さん&ボン、取調室における攻防戦が山さん&ゴリさん(竜 雷太)と、珍しいコンビの組み合わせもファンにとっては見所となってます。


☆第345話『告発』(1979.3.9.OA/脚本=長野 洋&小川 英/監督=斎藤光正)

ある日、ボンの下痢が一瞬にして治るほどの美女=和子(秋野暢子)が捜査一係を訪れ、爆弾発言を投下します。

半月前、伊豆の下河原で起きた乗用車転落事故で和子の姉=里子が死亡したんだけど、それは事故を装った保険金狙いの計画殺人であり、犯人はその車に同乗していて奇跡的に助かった、夫(和子にとっては義兄)の鳥飼幸夫(中野誠也)に違いないと言うのでした。

その根拠は、夫婦仲の悪さを和子はよく知ってたこと、そして事故から一週間経って和子に届いた、「私は夫に殺される」と記された里子からの手紙。

届いたタイミングがおかしいし、本当に本人が書いた手紙なのかどうか判定も難しく、財産狙いで和子が嘘をついてる可能性もあり、ボンは下痢を治してもらった恩も忘れて「気が強そうな娘だから、やりかねませんよ」なんて言って、山さんに「印象批評はよせ」と叱られます。

もちろん、山さんがそう言うからには和子はシロに決まってますw 手紙は確かに、和子が里子の筆跡を真似して偽造した物なんだけど、それは何とか姉の無念を晴らしてあげたい一心でやったこと。

山さんの執念捜査により鳥飼幸夫への疑惑はますます深まり、共犯者と思われた女性(工藤明子)が遺体で発見されるに至って、いよいよ山さんの怒りが爆発します。

証拠探しをボンに託し、海外出張の出発時間が数時間後に迫ってる鳥飼を強引に連行した山さんは、取調室で「捜査に協力しないなら緊急逮捕もやむを得ん」などと言って手錠をチラつかせ、あからさまに彼を脅迫します。

「暴力だ! まさに暴力警察じゃないか!」

「その通りだ。だがな、貴様のような男に殺された奥さんの為なら、私は鬼にでも何にでもなる。クビになるくらい痛くも痒くもないんだよ」

もちろん証拠が見つからなければ逮捕できるワケがなく、いよいよタイムリミットが迫り、弁護士が取調べの打ち切りを命じようとしたその瞬間、ゴミ収集場で四苦八苦してようやく見つけ出した証拠品を持って、ボンが駆け込んで来るのでした。

そりゃ最後はそうなるに決まってるし、取調室が中心舞台となる謎解きストーリーを私はそもそも好まないんだけど、こうして山さんがムチャをするエピソードだけは格別で、セリフ通りクビになることなど屁とも思わない山さんによる精神的暴力、そしてドスの効きまくった露口茂さんの台詞回しを見聞き出来るだけでもう、大満足です。

究極的ヒーローのボスがいて、番組スピリットを体現するゴリさんがいて、がむしゃらに走る新米刑事がいて、そして日本を代表する鬼刑事の山さんがいるからこそ『太陽にほえろ!』は面白い。

後にゴリさんが抜けた時は番組ファンを辞めようかと思ったし、ついに山さんがいなくなった時は本当に「これで終わったな」と思ったもんです。

前回、番組内容がお上品になり過ぎて「ボンと殿下の女性人気だけで視聴率を保ってる」みたいなこと書きましたけど、こういうエピソードを観るとやっぱり、山さんのとてつもない存在の大きさを痛感させられます。

とはいえ、その魅力が解るようになるのは大人になってからで、まだまだガキンチョだった本放映当時の私は、やっぱり今回も退屈しながら観てただろうと思います。

主役が山さんだから、演じるのが露口茂さんだからこそ見応えあるけど、内容そのものは「いつも通りの太陽にほえろ」と言わざるを得ません。

ゲストの秋野暢子さんは当時22歳。女優デビューは1974年、ブレイクは翌'75年のNHK朝ドラ『おはようさん』ヒロイン役で、以来これまで順風満帆に女優道をひた走る一方、明るくサバけたキャラでバラエティー番組でも大活躍されてるのは皆さんご存じの通り。

刑事ドラマへのゲスト出演は、同じ『太陽にほえろ!』の600回記念作と『華麗なる刑事』『刑事ヨロシク』、そして近年の『特捜9season2』ぐらいしかWikipediaには記載されておらず、意外とレアだったりします。
 


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『太陽にほえろ!』#343

2020-05-05 19:00:18 | 刑事ドラマ'70年代










 
本エピソードは『太陽にほえろ!』後期を支える若手ライター陣(小川塾 門下生)のお一人で、後にNHKの朝ドラ『わかば』等を執筆される実力派=尾西兼一さんの記念すべき脚本家デビュー作。

『太陽にほえろ!』シナリオコンテストに応募し、激戦を制して選ばれた、フレッシュで刺激に満ちた大傑作!……であって欲しかったんだけど……


☆第343話『希望のサンバ』(1979.2.23.OA/脚本=小川英&尾西兼一/監督=木下 亮)

徹夜の張り込みを終えたボン(宮内 淳)&ロッキー(木之元 亮)がディスコで憂さ晴らししてると、どさくさに紛れて男が刺し殺されたから驚いた!

その遺体のそばにいた若い男が、刑事の存在を知った途端に逃走した為、現場処理をロッキーに任せてボンが追跡します。

で、おんぼろアパートの一室に逃げ込んだ男が、住人の若い女に包丁を突きつけ人質にするんだけど、一瞬のスキを突いてボンが包丁を奪い、格闘の末に手錠をかけて、みごと捕獲。

ところが! その時に落とした拳銃を女に拾われ、銃口を向けられてしまう。そう、逃げた男=ヒカル(森田順平)と住人の女=アイ(三東ルシア)は恋人どうしだった!

とっさに手錠の鍵を窓下の川へ投げ捨てたボンは、ヒカルと鎖で繋がれたまま、なぜか彼を殺そうとする悪者たち(どうやら麻薬組織らしい)の襲撃をかわしながら『手錠のままの脱獄』よろしく逃避行します。

ボンがよくよく話を聞いてみると、ヒカルはただ殺人現場に居合わせただけで、どうやら追っ手の中に真犯人がいるらしい。真犯人はヒカルに顔を見られた(と思い込んだ)ため、その口を封じようとしてるワケです。

じゃあ、なぜヒカルは無実なのに逃走したのか? 実はこの日、ヒカルはアイと一緒にブラジルへと密航する予定だった。恐らく過去にも警察沙汰を起こしており、事件に関わると出航時間に間に合わなくなると直感して逃げたらしい。

ヒカルは、ブラジル人の父親と日本人の母親との間に生まれたハーフなんだけど、ハーフであるがゆえに差別され、不遇な人生を強いられて来た。プロボクサーにはなったけど、ハーフだからちゃんと育成してもらえず、強くなれなかった。……と、彼は思ってる。

生まれ育った日本という国に絶望したヒカルは、母親が父親と初めて出逢ったリオのカーニバルに憧れ、ブラジルという未知の国に夢を託してるのでした。

「俺の故郷はブラジルだ。リオだ。日本じゃない……日本じゃない!」

アホですよねw どうしょうもないアホです。我々が彼を見てなんでアホだと感じるのか、これからボンが解りやすく代弁してくれます。

拳銃で撃てばすぐに切れた筈の手錠の鎖を、一生懸命ヤスリでしこしこ削り、ようやく断ち切ったアホのヒカルは、途中で拳銃を奪い返すチャンスがいくらでもあったのに手を出さなかった、アホのボンにその理由を問います。

「その通りだ。チャンスはいくらでもあった」

「なぜ黙ってついて来たんだ? なぜだっ!?」

「お前が俺に似てるからだ」

「なに?」

「ヒカル、お前、混血だから不幸だったんじゃないぞ。お前自身が弱かったから、ダメな奴だったから、うまくいかなかっただけだ。俺はそう思う」

「なんだと? もう一度言ってみろこの野郎!?」

「苦しい時、お前はいつもその夢に逃げた。リオに行きさえすれば、カーニバルで踊りさえすれば……だけど行ったって何も無いんだ! 俺にもそれだけは分かる」

「…………」

「ヒカル。お前のカーニバルは、リオになんかは無い。彼女と一緒の、この日本にしか無いんだ!」

「やめろーっ!!」

そんなアホの2人に、拳銃を持ったアホの真犯人たちが再び襲いかかり、ボンはすぐに拳銃を返すようヒカルを説得します。

「死にたいのか、ヒカル? 拳銃は俺がプロだ。ボクシングはお前がプロのようにな!」

かくしてボンが拳銃を握り、藤堂チームの仲間たちも駆けつけ、アホの追っ手たちは制圧されるんだけど、そのどさくさに紛れてアホのヒカルはまた逃走しちゃう。

だけど行き先は判ってます。ヒカルが密航予定だった港へとボンは走りますが、時すでに遅し。船は出港してしまいました。

「バカヤロウ!」

そう叫んだボンがふと横を見ると、そこには座って煙草をふかしてるアホの姿が。

「ヒカル!?」

「……俺、あんたの名前聞いてなかったよね」

どうやらヒカルは、思ったほどアホでもなかったみたいです。親身になって本気で諭してくれる相手が、ボンと出逢うまで誰もいなかったんでしょう。

「俺の名前は……」

「いいんだ。アミーゴに名前なんかいらない」

「アミーゴ……友達か」

「もう一度ボクシングやるよ。あんたに負けないプロになるために」

(おわり)


……まあ、悪くはないですよね。悪くはないんだけど、悪くはないとしか言いようがないドラマって、どうなの?って私は思っちゃう。

ワクワクしたり笑えたり、心を揺さぶられたり、心に突き刺さって来るような何かが、もっと無いもんか?って。

この時期の『太陽にほえろ!』は毎回そんな感じで、品行方正なのはいいけど枠に収まりすぎてサプライズが無さすぎて、はっきり言ってつまんないです。

ましてや大物脚本家・尾西兼一さんのデビュー作ですよ? この「平凡」と言うしかないストーリーの、一体どこに原石の輝きを見いだしたのか、起用した制作陣の先見の明があまりに凄すぎる!

もしかすると、実際はもっと個性的で尖った内容だったのに、後にデビューされる君塚良一さんの場合と同じように、原型をまったく留めないほどメインライター(というより監修役)の小川英さんに直されてしまったのかも知れません。

民放ドラマ視聴率トップの座を何年も独占し、強権を持ち過ぎて裸の王様になった岡田プロデューサーや小川さん(生真面目の塊みたいな人たち)が、もしかすると『太陽にほえろ!』の癌細胞になってやしませんか?って、私はタイムマシンに乗って進言しに行きたい気分です。

とにかく意外性がない、刺激がない、ワクワクしない。たまたま裏に強力な番組がなくて、ボンや殿下(小野寺 昭)の女性人気と、私みたいな中毒患者の多さに支えられてるだけっていう事実に、創り手のトップたちが全く気づいてない。

高視聴率がもたらす社会への影響力に責任を感じ、模範を示さなきゃいけないってのは、そりゃ立派な考え方に違いないけど、ファンサービスを二の次にしたある意味ゴーマンな姿勢とも言えなくないですか? ファンを喜ばせる事よりも、立派な自分でいる事を優先してるというか、立派な自分に酔っちゃってるというか……

同じ頃、『特捜最前線』では大滝秀治さんがテレホンセックス魔と戦い、『Gメン'75』では香港でヤン・スエが筋肉をメリメリ言わせ、間もなく『西部警察』や『噂の刑事トミーとマツ』なんかも登場するって時に、ご立派な『太陽』先生は教壇で綺麗事ばっか訓示してる。

そりゃみんな居眠りするし、他に面白い授業は無いかって探り始めますよ。そこに絶好のタイミングで『金八先生』が現れちゃうワケです。

こうして『太陽にほえろ!』は着々と、王座陥落への道を自信たっぷりに邁進するのでした。カウントダウンはとっくに始まってます。

ちなみにヒカルと一緒に渡航する予定だったアイは、途中で足を負傷し、彼を逃がすため自ら山さん(露口 茂)に捕まります。

後に彼女が妊娠してることが明かされますが、だからといって特に感慨はなく、なんだか消化不良。もしかすると尾西さんによる最初のシナリオは、ヒカルとアイの悲恋がメインだったのかも知れません。それを例によって岡田さんが「犯人なんかどうでもいいんだ!」ってw それが『太陽にほえろ!』なんだと言っちゃえばそれまでなんだけど……

アイを演じた三東ルシアさんは、当時20歳。'73年頃からCMモデル「里見レイ」として活動開始、翌年「週刊プレイボーイ」の人気投票でオナペットNo.1の栄冠に輝き、女優としても色っぽい映画を中心にご活躍。

刑事ドラマへのご出演は本作と『特捜最前線』#449しかWikipediaには記されてませんが、もっと他にもあったんじゃないかと推察されます。
 

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『太陽にほえろ!』#340

2020-04-21 00:00:16 | 刑事ドラマ'70年代










 
☆第340話『勝利者』(1989.2.2.OA/脚本=小川 英&高橋紀子/監督=木下 亮)

柴崎という男が時限爆弾で殺害され、その現場で目撃された沢(山西道広)という写真家の顔写真を見て長さん(下川辰平)が驚きます。

数年前、ビル荒しの犯人を長さんが捕まえる際に協力した警備員が、その沢という男。体力には自信のある長さんを凌ぐほどのパワーと持久力で犯人を追った沢が、とても印象的で長さんはよく憶えていたのでした。

あれから写真家に転身した沢は、大手企業「クラウンウイスキー」の専属カメラマンに起用されたばかりで順風満帆。いきなり長さんが訪ねて来ても笑顔で迎え、殺人を犯すような陰は微塵も感じられません。

顔を毛むくじゃらにしてついて来たロッキー(木之元 亮)に「シンデレラボーイと呼ばれてるそうですね」と言われ、沢はサラッとこう答えます。

「いや、僕はそうは思ってませんよ。むしろ幸運だったのは僕を起用したクラウンウイスキーの方ですからね」

冗談めかしてはいるものの、沢がかなりの自信家であることが伺えます。同居してる妹=ゆり子(戸川京子)も、そんな兄を誇らしく思ってる様子。

だけど長さんは、沢の部屋に目撃情報と同じジャケットがあることを見逃しませんでした。持ち前の粘り腰で捜査すればするほど、沢への疑惑は深まるばかり。

そんな長さんにご立腹のゆり子に呼び出され、沢が写真の現像に使ってる廃屋の地下室を訪ねた長さんは、殺す気満々の沢の襲撃を受ける羽目になります。やっぱり犯人は沢だった!

しかし体力じゃ負けない長さんは互角に闘い、あと一歩のところまで追い詰めるんだけど、あろうことか沢が殺人の証拠、すなわち長さんの遺体を吹き飛ばすつもりで用意してた爆弾が暴発! 部屋の出入口が瓦礫で塞がれ、長さんと沢、そしてゆり子が密室に閉じ込められてしまうのでした。

残念ながら長さんの拳銃は、ゆり子に奪われてしまいます。長さんの説得にも彼女は耳を貸しません。ずっと沢に頼って生きて来たゆり子にとって、彼は絶対的な存在なのでした。

「お兄ちゃんは強くて正しいのよ。お兄ちゃんのすることが間違ってる筈なんか無いのよ!」

一方、藤堂チームの面々は長さん流の地道な捜査により、爆殺事件の真相に迫ってました。

どうやらクラウンウイスキーの専務が数年前に起こした轢き逃げ事故が全ての発端で、殺された柴崎はその秘密を握っていた。そして柴崎が死んだ3日後に、沢がクラウンウイスキーの専属カメラマンに採用された。そう、専務がそれと引き換えに殺しを依頼したに違いない!

そこまで判ったのに沢は行方不明で、おまけに長さんまで連絡がつかなくなり、ボス(石原裕次郎)は厭な予感を覚えます。

そのころ地下室では、沢が残った起爆管を長さんの拳銃で撃って爆発させ、出入口を塞いだ瓦礫を吹き飛ばすというミッションにチャレンジしてました。地下に保管してたせいで起爆剤が湿っており、導火線では爆破出来ないのでした。

が、至近距離から撃つワケにもいかず、素人の沢には起爆管に命中させることが出来ません。残った弾丸は僅か1発!

「貸しなさい、俺が撃つ」

「ダメだ、こいつは残しとく!」

「出たくないのか? ここを出たら……」

「俺に命令するな! どうするかは俺が決める!」

妹の命も懸かってるというのに、沢は頑として拳銃を返そうとしません。

残された方法は、ただ1つ。起爆剤を分解し、ドライヤーで火薬を乾かすという超アナログでインポッシブルなミッション。当然、ドライヤーの熱で起爆したら一巻の終わりです。

「あんた、死にたいのか?」

「離れていろ。たぶん、死ぬのは俺一人で済む」

一人で黙々と決死のミッションに挑む長さんを、ゆり子と二人離れた場所から眺める沢は、冷ややかに笑います。

「死ぬぞ、あいつ。しかし、あんな馬鹿げた仕事はあいつ向きだよ」

「…………」

そんな兄の横顔を、ゆり子はただじっと見つめるのでした。

一夜明け、なんとか無事に起爆剤を乾かした長さんは、それを出入口にセットします。

「早く火を点けろ! グズグズするなっ!」

「お兄ちゃん、あのまま火を点けたら、あの人……」

「やらせるんだ! あいつは刑事だ。自分を犠牲にしても人命を救うのが仕事なんだ。そうだろ刑事さん!」

「……かいかぶるなよ。俺はそんな聖人君子じゃない。俺はただ、やらなきゃならないことを、やってるだけだ」

果たして爆破は決行され、出入口を塞いでた瓦礫は見事に排除され、長さんも満身創痍ながら何とか死なずに済みました。

しかし到底自力では動けない長さんを、沢は人質に使うために連れて行くことを決め、ゆり子にタクシーを呼びに行かせます。

ところが、代わりにやって来たのは藤堂チームの刑事たち。沢はあっけなく御用となり、その自白により殺人を依頼した専務も逮捕されるのでした。

「教えろよ、なぜあの場所が判った? 教えろよ!」

取調室でわめく沢の前に、ボスが現れます。

「お前の逮捕を願った人がいるんだ」

「なにっ?」

ボスの傍らにいるのは、これまで自分を頼りきってた筈の妹。

「ゆり子……」

みじめな兄の姿を見て、ゆり子は逃げるように廊下の端まで走り、号泣するのでした。

そんな彼女に駆け寄ろうとする長さんを、ボスが引き留めます。

「分かったんだよ、あの子には。誰が一番強い男かってことが。分かったから、悲しいんだ」

この兄妹の生い立ちについては言及されてませんが、恐らく両親は離婚したか死別したかで、ゆり子は兄以外に頼れる人間がいなかったんでしょう。

沢も沢なりに、妹の期待に応えるべく頑張って来たはず。だから長さんに負けない体力と、爆弾を造るだけの知力も備えてたワケです。

けれど、犯罪に走った時点で彼の負け。この世の中、正しく生きていく方がイバラの道。ラクな道を選んで堕落した沢は結局、弱かったんでしょう。

ゆり子役の戸川京子さんは、当時若冠14歳とは思えない演技力で、このエピソードを見応えあるものにしてくれました。

歌手・戸川純さんの妹としても知られる子役出身の女優さんで、モデル、タレント、ミュージシャンとしても活躍されたけど、2002年に自ら命を絶たれてしまいました。とても明るいキャラクターだったので衝撃を受けた記憶があります。合掌。

『太陽にほえろ!』には'85年放映の第663話にもご登場されたほか、刑事ドラマは『大捜査線』『同シリーズ・追跡』『はみだし刑事情熱系PART2』『同PART5』等にゲスト出演。'92年の『裏刑事/URADEKA』では主人公に殺しの依頼を通達するエージェント・芹沢雅子役でレギュラー出演されてます。
 


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『太陽にほえろ!』#339

2020-04-20 00:00:07 | 刑事ドラマ'70年代










 
☆第339話『暴発』(1979.1.26.OA/脚本=柏原寛司/監督=木下 亮)

1979年の新春第1弾となる第336話『ドジな二人』では、ドジなコソ泥コンビと対比する形で、ボン(宮内 淳)&ロッキー(木之元 亮)のドジっぷりがしつこい位に描かれました。

ロッキーが登場してから約1年半、これまでボンの著しい成長ぶりが強調されて来たと言うのに、殉職が1年延期されたことで半人前の刑事に退化させられちゃったボンが、ちょっと気の毒にも思えて来ます。

今回もロッキーと2人揃って非番日だったボンが、署への定時連絡をサボったせいで殺人事件発生の知らせを受けるのが遅れ、それでも真っ先に犯人と遭遇したというのに、2人でモタモタしてる内に逃げられちゃうという、これまで描かれた成長は一体何だったの?って言わざるを得ないドジっぷりを披露。

「俺たちが主役の回はいつも中身がない」ってw、宮内さんが愚痴られるのも無理ありません。こういうチーム物のドラマにおいては、その時その時のポジションによって同じ人物でもキャラが微妙に変わっちゃう。特にボンは一進一退が激しかったような気がするけど、後のブルース(又野誠治)みたいにどんどんバカになっちゃうよりはマシかも知れませんw

さて、今回殺されたのは筒井という商事会社の社長で、目撃情報から犯人は幸男(飯山弘章)というチンピラであることがすぐに判明。

で、幸男が横浜を根城にしてることから、ボス(石原裕次郎)に横浜出張を命じられたボン&ロッキーがまず訪ねたのが、幸男の幼なじみで恋人の洋子(森下愛子)。

洋子は拳銃で2人を脅してまで幸男を逃がそうとしますが、そこはさすがにボンがモデルガンであることを見破ります。だけど刑事ならそれが当たり前で、気づかずに顔を毛むくじゃらにしながらオロオロしてたロッキーが、単にアホ過ぎるだけw そういうポジションだから仕方ありません。

そんなワケで幸男はあっさり確保されるんだけど、犯行に使われた拳銃が見つからない。「殺すつもりは無かった」と言う幸男の話をよく聞いてみると、彼は暴力団「竜神会」の幹部に被害者=筒井社長を拳銃で「脅して来い」と命じられただけで、全て言われた通りにやったら銃が「暴発」してしまったらしい。

もしかすると、その拳銃は安全装置が効かないよう細工されてたんじゃないか?と、ボンは推理します。

殺意を持って撃ったのと、騙された挙げ句の事故で撃ったのとでは、量刑が大きく違って来る。幸男の話を信じたボンは、彼が堀川に捨てたという拳銃をロッキーと2人、徹夜でドブさらいして見つけ出し、安全装置への細工を証明してみせるのでした。

そんな心優しいボン&ロッキーに感激した洋子が、覆面車を運転中の2人のホッペにお礼のキッス。それで2人が大騒ぎして事故を起こしかけ、無線で聞いてたボスに「いい加減にしろっ!」って怒鳴られちゃう、いかにも日テレ青春ドラマなラストシーン。いい大人がホッペにチューされただけで取り乱す、それが『太陽にほえろ!』なんですよねw

まぁ、かくも他愛ないストーリーではあるんだけど、洋子を演じた森下愛子さん(当時20歳)がとにもかくにも可愛くて、萌えるしかありませんw

前年に出演したATG映画『サード』における大胆演技で注目され、本作の後にセントラルアーツ映画『殺人遊戯』『俺達に墓はない』でジーパン=松田優作さんと共演、'81年にはセントラルアーツの連ドラ『探偵同盟』で宮内淳さんとレギュラーで再共演されてます。

刑事ドラマは他に『明日の刑事』『特捜最前線』等にゲスト出演。近年では宮藤官九郎作品のミューズ的存在で『うぬぼれ刑事』にもレギュラー出演されてます。

現在でも可愛い人だけど'79年当時の輝き方はハンパなく、言っちゃ悪いけど今回みたいな凡庸なストーリーでも、森下さんの魅力で観てられるんですよね。

相手役の飯山弘章さん(東京キッドブラザース)もツッパリ系の役者さんにしては好感度が高いし、チョイ役で本田博太郎さんが顔を見せられる等、ゲスト陣が充実してます。

また、ボン&ロッキーのコンビネーションももはや鉄壁で、横浜へと向かう車内で口喧嘩しながら、ルームランプをボンが点けてロッキーが消すやり取りを繰り返すくだり等も息ぴったり。そんなさりげない描写で楽しませてくれるから退屈しません。

ドラマそのものはハッキリ言って、既にマンネリという名の泥沼に嵌まってるんだけど、ボンの存在とゲストの充実で何とかクオリティーを維持してる状態。王座陥落へのカウントダウンは、もう既に始まってます。
 


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『大空港』#22

2020-04-07 00:00:05 | 刑事ドラマ'70年代










 
☆第22話『雪原の大追跡/大統領令嬢に危機迫る!』

(1979.1.8.OA/脚本=山浦弘靖&井上梅次/監督=井上梅次)

今回は北海道ロケでスキーアクションが展開されるお正月スペシャル。イスマル連邦共和国からお忍びで日本を訪れた大統領令嬢=アニタとして、日本初のグラビアアイドルと云われるアグネス・ラムさんがご登場、空港特捜部の海原刑事(高岡健二)と『ローマの休日』的ロマンスをキュートに演じてくれます。

アニタはテロ集団に命を狙われており、浅原警視正(神山 繁)からの極秘指令により身分を隠してアニタをガードする海原と薮下警部(田中邦衛)が、イスマル連邦国のSPたちを敵だと勘違いして格闘しちゃう等のお約束もこなしつつ、スキーアクションって事で映画『女王陛下の007』を意識したであろう演出も随所に見られます。

もちろんアグネスの歌も聴けるし、海原=高岡健二さんがなぜかアリスの『チャンピオン』を2コーラスもぐだぐだ唄い続ける拷問チックな余興もあり、スキー初体験って設定の薮下=田中邦衛さんが青大将よろしくズッコケ芸を披露される等、お正月らしい楽しさ満載の一編。

応援に駆けつけた立野(岡本富士太)&神坂(片平なぎさ)もロケに加わりますが、重鎮の加賀チーフ(鶴田浩二)と、掛け持ち出演で忙しい鯉沼(中村雅俊)は残念ながら空港でお留守番。全員が雪山へ行っちゃったら『大空港』じゃなくなるもんで仕方ありませんw

アグネス・ラムさんは当時22歳。ハワイ生まれで父親は中国系アメリカ人。地元で日本のコーディネーターにスカウトされ、ハワイからの「通い」を条件にモデルデビュー。数々のテレビCMと雑誌グラビアで人気を博し、前述の通り「グラビアアイドル」の先駆者として大活躍。NHK『紅白歌合戦』にまで複数回(応援ゲストとして)登場されてますから、昭和世代なら知らない人はいないかも?

あどけないお顔立ちにボインぼよよ~ん!が絶妙なアンバランスのエロチシズムを生み、現在でも我々の色んな部分をホット&ホットにしてくれる、まさにグラビア界のパイオニアと呼ぶべき存在。

Wikipediaによるとテレビドラマへのご出演はこの『大空港』第22話と、同年放映の『鉄道公安官』第16話のみ。後者での役名はトロンガ王国の「アグネス王女」ってことで、多分そちらでも『ローマの休日』的ロマンスが描かれたものと思われますw

そうして同じプロットが繰り返し再利用されてる事実は、オリジナルが如何に優れた作品であるかを物語ってます。オードリー・ヘップバーンありきで語られがちな『ローマの休日』だけど、ロマンス、コメディ、サスペンス、アクションと娯楽の全てがバランス良く揃ったこの大傑作を、もし万が一まだ観てない方がおられるとしたら、死ぬまでに観なきゃいけない映画リストに加えておくことを強くオススメします。
 

コメント (7)
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