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ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『大空港』#19

2020-04-06 00:00:06 | 刑事ドラマ'70年代










 
☆第19話『夕陽の銃撃戦!/幼い恋人が叫ぶ・その人を撃たないで!』

(1978.12.11.OA/脚本=佐藤繁子/監督=長谷和夫)

空港特捜部は海外から凱旋する殺し屋をマークしてたんだけど、そいつが空港駐車場で射殺されちゃいます。

撃ったのは、その殺し屋に幹部を消された暴力団の鉄砲玉。すぐさま特捜部が追跡・格闘の末に逮捕するんだけど、凶器の拳銃が見つからない。薮下警部(田中邦衛)が犯人を暴力で説得し、拳銃を捨てた場所は聞き出せたんだけど、どうやら何者かが持ち去ったらしい。

その現場近くで直子という12歳の少女(荻野目慶子)の持ち物が発見され、加賀チーフ(鶴田浩二)の表情が曇ります。

直子は飛行機を観るのが大好きで、たびたび空港に忍び込んでは警備係に叱られてるんだけど、チーフはそんな彼女の純粋な気持ちを尊重し、仲良くしてたのでした。

家を訪ねてみると、直子は父親を病気で亡くし、母親は他の男と蒸発し、今は祖父母の世話になってて友達もいない淋しい境遇。飛行機が好きなのは、死んだ父親がパイロットだったから。

本人に会ってみると挙動不審で、明らかになにか隠してるんだけど、チーフは彼女が自主的に告白してくれることに期待し、それ以上は突っ込まないのでした。

しかし残念ながら、拳銃は犯罪に使われてしまいます。直子はひょんな事から知り合った「ジョー」と呼ばれるチンピラ=岩城を「お兄ちゃん」と呼んで慕っており、拾った拳銃をそいつに渡してしまった。それで岩城は、かつて妹を食い物にし自殺に追いやった悪徳金融業者の事務所に押し入り、現金を奪った上に1人を射殺し、逃走したのでした。

「アフリカへ逃げるんだ」と言う岩城に、直子は「私も連れてって!」と泣いてすがります。こんな大してイケメンでもないアホなチンピラ、しかも30歳は越えてそうなオッサンのどこがええねん?って思うんだけど、たぶん岩城は直子の死んだ父親に似てるんでしょう。

「直子くん。人間というものはね、自分のやったことには責任を持たなきゃいけないんだよ。悪いことをしたまんま逃げても、決して幸せにはならんのだよ。警察から逃げられても、自分の心からは逃げられない」

チーフは、あくまでも直子が自分の意志で真実を語るよう、粘り強く説得します。

「おじちゃんは、ジョーを捕まえなくちゃならない。ジョーを、本当に幸せにしてやりたいと思うから、捕まえなきゃならないんだ」

それは恐らくチーフの本心で、妹を食い物にされたジョーこと岩城にも同情の余地がある。彼もまた、直子に妹の面影を重ねてるに違いありません。

「おじちゃんは待つよ。キミが本当のことを話してくれると、信じてるからな」

部下の鯉沼(中村雅俊)から「甘い!」と揶揄されながらも、チーフはまだ幼い直子の将来を考え、あくまで待つ姿勢を崩しません。

けれど残念ながら、直子は岩城についていく道を選択し、チーフたちは空港で二人を追い詰める羽目になってしまう。往生際悪く拳銃を振り回すチンピラ野郎に、チーフが一喝します。

「岩城! この子の目の前で、その引金が引けるか!?」

根は悪いヤツじゃない岩城にそんなことが出来る筈もなく、事件はあっけなく幕を引きました。

「お兄ちゃん! イヤだよ、お兄ちゃん! いっちゃイヤ!! いっちゃイヤ!!」

直子がいくら泣いたところで、人殺しの罪は消えません。これからの人生で直子がいろんな人と出会い、免疫をつけるまで、岩城みたいなヤツは隔離しておかなきゃいけません。

「嫌いだ! おじちゃんなんて嫌いだっ!!」

直子の矛先はチーフに向けられ、チーフは黙って受け止めます。それが大人ってもんでしょう。

とにかくゲスト=荻野目慶子さんの演技が素晴らしすぎます。すでに子役としていくらか場数を踏んでるにしても、当時13歳か14歳でこの安定感は凄い!

いや、それより何より、岩城を見つめる直子の眼がもう「オンナ」なんですよね! 脚本上、直子が逃避行の道を選んでしまうのは「まだ子供だから」ってことだと思うんだけど、映像を見てると直子が女性として岩城を愛してるように感じちゃう。慶子さんはたぶん、そう解釈して演じてる。

ご本人がそのつもりでも、子供が演じたら観てる我々はやっぱり「子供だから」って解釈すると思うんだけど、良くも悪くもそうは見えない。疑似父娘あるいは疑似兄妹の感情を描いたはずの話が、立派なメロドラマに仕上がってる。

荻野目慶子さんが当時からすでに演技が上手く、マセておられた事によって生じた誤算。将来、二人の映画監督を狂わせることになる「魔性」が、小学生か中学生の内にもう芽生えてるという、これはある意味「衝撃映像」かも知れません。
 


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『特捜最前線』#094

2020-04-01 17:20:05 | 刑事ドラマ'70年代










 
☆第94話『恐怖のテレホン・セックス魔!』

(1979.1.17/脚本=長坂秀佳/監督=天野利彦)

船村刑事(大滝秀治)の妻=加代(風見章子)の友人である主婦=洋子(八木孝子)が、昼夜問わず掛かってくる性的イタズラ電話に悩まされており、船村が相談に乗ります。

脅迫罪は成立しないし事件としても扱えないって事で、いくら洋子が救いを求めても警察は動いてくれなかった。その汚名を晴らす為にも何とかこれを解決したい船村は、プライベートな時間を全て「イタズラ電話」の捜査に注ぎ込むのでした。

ところが、そんな船村の熱意が裏目に出ちゃいます。洋子の代わりに電話に出た船村を、夫だと思い込んで「俺とあんたは兄弟だぜ、はあはあ」だの「奥さんのカラダは本当に美味しい、うひひひ」だのと調子に乗る犯人に、船村はつい激昂しちゃう。

「いい加減にしろっ! 私は警視庁特命課の船村という者だ! いつまでもこんな事してると為にならんぞ、バカヤロウっ!!」

それがかえって火に油を注いでしまい、その日以来、犯人はターゲットを洋子に絞り、ますます頻繁に電話を掛けて来る。それを妻の浮気だと誤解した夫が家を出ていき、残された洋子は幼い娘2人を抱えて、いよいよ発狂寸前の状態。

とにかくイタズラ電話から逃れたい一心で電話番号を変えようとする洋子を、船村は必死に引き止めます。犯人を割り出すには手懸かりが無さすぎて、かかってくる電話の内容からヒントを得るしかない。番号を変えたらそれが出来なくなる。

「奥さん、ここ数日あなたがどんなツラい思いで過ごされたか私にはよぉく解ります。それだけに私はこのホシが憎い! 何としても必ずあなたのご苦労に報いるように、解決してみせます!」

そんな船村の本気を見て、洋子も覚悟を決めるのでした。

犯人の嫌がらせはますますエスカレートし、宅配便でセクシー下着が送られて来るわ、勝手に救急車を呼ばれるわ、しまいに猫の死骸が玄関先に吊るされるわで、洋子は次第に追い詰められていきます。でも、船村たちにはかえってそれがチャンスになる。

「よし、ここまで来れば立派な脅迫罪だ!」

特命捜査課の刑事たちは、ようやく船村の捜査に堂々と協力できるようになって喜びます。が、当の船村は浮かぬ顔。

「私は恥ずかしい……警察は何もしてくれない、ホシが何かして来るまでは手を出せない、私はそういう現状を何とかして打ち破って見せたかった! だが駄目だった! 多くの警察官がするように私が見過ごしていれば、たかがイタズラ電話と笑って取り合わずにいれば、こんな事にはならなかった! それが悔しいんだ!」

確かに、この手のサイコパスは構えば構うほど図に乗ってしまう。現在のネット世界にはびこる「荒し」と同じようなもんで、徹底的に無視するのが一番の対処法かも知れません。

だけど、それで自分は難を逃れたとしても、サイコパスはまたターゲットを変えて同じことを繰り返す。とっ捕まえて、とことん反省させない限りこの闘いは終わらないのです。

ともかく事件として成立したことで特命課も動きやすくなり、船村の執念と、その妻=加代の協力もあって、ついに容疑者が1人に絞られます。

それは美容師の森浦という一見イケメン風の若い男。演じるは第29&30話でプルトニウム爆弾魔に扮した、西田健さん。「魔」と言えばこの人なんですw

この役を演じて以来、西田さんは「元祖テレホンセックス魔」と呼ばれるようになって困惑されたそうですw 西田さん曰く「それ以前から性的イタズラ電話は蔓延してたから、僕は元祖じゃない」「そもそも『魔』というのは相手を虜にしてこそ『魔』なのであって、あの奥さんに最後まで拒絶されてた僕は『魔』でも何でもない」とのこと。確かにそうかも知れないけど、どうでもいいですw

「どこへ掛けてるんだっ!?」

その森浦をずっと尾行してた船村は、彼が駅の公衆電話で「奥さん、はあはあ」って言ってる現場をついに押さえます。

ところが! 森浦から取り上げた受話器から聴こえて来たのは、天気予報のアナウンス。尾行に気づいてた森浦は、イタズラ電話するフリをして船村を罠に嵌めたのでした。

「森浦、貴様っ!」

「呼び捨てですか? あなたも名乗って欲しいですね」

「俺は警視庁特命課の船村だ!」

「用事は何ですか?」

「電話だよ! お前、あの奥さんに電話したろっ!?」

「電話、電話って……電話で僕が何を言ったって言うんですか?」

「とぼけるな貴様っ! 奥さん、私とテレホンセックスしましょうとか、旦那が家にいなくて寂しいだろうとか、いま何を着てるんだとか、お前、あの奥さんに電話しただろっ!?」

「へえ~、世の中にはいやらしいヤツがいるもんだな。手、どけてくれます?」

全ては、森浦の思う壺。彼はわざと船村に公衆の面前で腕や襟首を掴ませたばかりか、今の会話を小型テープレコーダーで全て録音してました。

翌日、洋子の家に呼び出された船村は、昨夜かかって来たイタズラ電話の録音テープを聴かされ、愕然とします。スピーカーから聴こえて来たのは、今までとは違う新たなテレホンセックス魔の声でした。

『俺は警視庁特命課の船村だ! はあはあ……奥さん、私とテレホンセックスしましょう、ふがふが……旦那が家にいなくて寂しいだろ、はあはあ……いま何を着てるんだ、うひひひ!』

やられました。森浦はあれから自宅に戻ってすぐ、録音した船村の声に自分のいやらしい吐息を足して編集し、洋子のみならずアチコチの家に電話しまくってたのでした。なんたる執念!

「……確かに私の声です。しかしこれはテープを編集したものだ。ゆうべヤツが私を挑発して録音した声を……いやあ、見抜けなかったなあ……迂闊だった!」

そんな船村を涙目で見つめる洋子の、なんとも情けなげな表情がたまりませんw そりゃ内心「じじい、何してくれてんねん?」ってなもんでしょうw

森浦はさらに、船村の暴力によって全治4週間の怪我を負わされたと刑事訴訟を起こし、新聞には『暴力!! ワイセツ電話の老刑事!』との見出しが躍ります。本当に憎たらしい! けど、面白いですw

やることなすこと全て裏目に出て、いよいよ崖っぷちに立たされた船村は、何より妻=加代に心労を掛けるのが忍びなく、自宅で辞表をしたためるんだけど、そんな船村に加代は『妻を辞めます』と書いた辞表を提出するのでした。

「私も刑事の女房です。これしきのことに耐えられない女とお思いなら、私のことが気になって刑事をお辞めになるつもりになったのなら、これを見て下さい」

「………………」

「私は、これまでどんな大きい事件を解決された時のあなたよりも、今この小さな事件に取り組んでおられるあなたを尊敬しております」

エイドリア~ン!! って叫ぶボクサーの映画を知ってるかどうか分からないけど、妻の言葉でがぜん奮起した船村は、再び森浦を徹底マーク。そしてついに、彼がイタズラ電話をかけたことを証明する動かぬ証拠をゲット!

一方、船村にすっかり闘争心を掻き立てられた森浦は、洋子にこんな電話を掛けて来ました。

「俺はこれから面白いことをする。恨むんだったら船村っていう刑事を恨むんだな。奥さんも素敵だけど、娘さんも可愛いんだってな……うひひひ」

それで洋子はまた発狂状態になっちゃうんだけど、幼稚園に通う洋子の娘はすでに特命課の吉野刑事(誠 直也)がガードしてました。そう、鬼刑事の本領を取り戻した船村は、テレホンセックス魔の行動を先まで読んでいた。

森浦に呼び出されて駅に向かう洋子をあえて泳がせ、辛抱強く尾行した船村の前に、いよいよテレホンセックス魔が姿を現します。

「森浦あーっ!!」

老体に鞭打って、走る! 走る! 走る! 頭を禿げ散らかして、走る! 走る! 走る!

若手の津上刑事(荒木しげる)も参戦し、とうとう船村の執念がこもった手錠が森浦の手首に食い込みます。幼児誘拐まで予告したテレホンセックス魔の刑罰は、決して軽くはない筈です。

誤解を解いた洋子の旦那も家に帰って来て、なんとか一件落着。森浦と格闘した際に眼鏡を壊されちゃった船村も、画像をご覧のとおり満面の笑顔。エイドリア~ン!! (おわり)


たかがテレホンセックス魔、されどテレホンセックス魔。このテの粘着質野郎にいったん取り憑かれたら、並大抵のことじゃ逃げられない。このエピソードで描かれた騒動は、決して大袈裟じゃないし他人事でもない。

情報網が発達した現在の方が、もっと陰湿で巧妙な手口の「魔」があちこちに、私やあなたのすぐそばに潜んでるやも知れません。そんな輩に我々を虜にするような魅力は微塵もありませんから「魔」とは呼べないのかも知れないけど、まぁどうでもいいですねw

とにかく、こういうネタを大真面目に扱えるのも『特捜最前線』の強みかと思います。例えば『太陽にほえろ!』では(セックスをタブーにしてることを抜きにしても)山さん(露口 茂)や長さん(下川辰平)が「奥さん、テレホンセックスしましょ!」とは絶対に言いませんw

王道を突っ走る『太陽~』には出来ないことを、こぞって他の番組がやる。ジャンルは同じでも味わいが全然違うから飽きが来ない。演じる役者が違うだけで内容はどれも変わんない現在の刑事ドラマでは、決して味わうことの出来ない面白さです。つくづく、いい時代でした。
 


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『特捜最前線』#085

2020-03-31 00:00:10 | 刑事ドラマ'70年代










 
☆第85話『死刑執行0秒前!』

(1978.11.15.OA/脚本=長坂秀佳/監督=天野利彦)

工事現場から白骨死体が発見され、その特徴から特命捜査課の船村刑事(大滝秀治)が14年前に携わった一家惨殺事件の、ただ1人だけ行方不明になってた被害者であることが判明します。

船村は嬉しそうに、刑務所で服役中の阿久根(河原裕昌)という死刑囚にそれを報告します。船村は所轄に逮捕された阿久根が無実であることを確信してるのに、当時は証拠が無く彼を救ってやることが出来なかった。だけど発見された遺体には、真犯人が誰であるかを示す証拠が残っている!

だけど、あまりに遅すぎた。なんと阿久根はすでに死刑執行日時が決まっているのでした。それは翌日の午後3時。もう残り約26時間しか無く、それまでに真犯人を逮捕しないと死刑執行は阻止できない!

船村は、君塚(桑山正一)という古書店のオヤジを緊急逮捕します。

穏やかそうな顔をして実は誰よりも鬼畜な一面を持つ、伊達や酔狂で頭を禿げ散らかしてない鬼刑事の船村は、17年前に容疑者の1人だった君塚の良き相談相手を装いながら、これまでずっと彼をマークして来たのでした。

17年前に殺されたのは、事業に失敗した君塚を助けたい一心で借金した彼の妻を、自殺にまで追い込んだ悪徳金融業者とその家族。そして1人だけ行方不明になってたのが、用心棒として同居してた暴力団員。ようやく発見された用心棒の遺体はあばら骨が折られており、そして君塚には空手の心得がある。

つまり犯行時に襲ってきた用心棒を、君塚が空手の突きで返り討ちした。ナイフの指紋は消せてもあばら骨は元に戻せず、君塚は証拠隠滅の為に用心棒だけ遺体を山中に埋めた……と船村は推理し、長年彼とつき合う中でそれを確信したワケです。

だけど、用心棒を殴ったのが君塚であることを決定づける証拠は無く、本人を自白させる以外に阿久根の死刑執行を阻止する方法は無い。

就職と結婚を控えた大事な時期の娘が2人いる上、長年親しくして来た船村に裏切られて怒ってる君塚を、担当検事による妨害も受けながら、残り20時間足らずで果たして落とせるのか!?

神代課長(二谷英明)はじめ特命捜査課メンバーたちが全力でサポートするも、やはり取調べは難航を極めます。そりゃ17年間も守り抜いて来たものを、今さら赤の他人を助けるために放棄できない君塚の気持ちもよく解ります。

早朝、疲れ果てて居眠りを始めた君塚に、船村は「盆と正月ぐらいにしか飲まない」というとっておきのお茶を1杯入れてやり、取調べを中断します。

半ばあきらめ、藁をも掴む思いで、君塚と再婚した現在の妻を訪ねてみたら、意外な展開が待ってました。やはり船村を裏切り者として憎んでたはずの妻が、彼を招き入れ、ある場所へと案内するのでした。

そこは、君塚が「古本を整理する」と称してよく籠ってた、ふだんは鍵がかかってる開かずの倉庫。君塚が連行された後、何かありそうな予感を覚えた妻が初めてそこに入ってみたら、中には木彫りの仏像が無数に並んでいたのでした。

「これは、君塚の14年間の苦しみの跡です……こんな物を彫らずにいられないほど罪の意識に苦しんでいた……それなら……それならあの人を救う道は、法の裁きを受けさせてやる以外、無いんじゃないかって……」

救える! 阿久根も君塚も! まだ間に合う!

再び君塚の取調べ……と言うより説得を始めた船村の前に、今度は弁護士になる為の国家試験を間近に控えた、君塚の次女(清水めぐみ)が立ちはだかります。

憶えたての法律を武器に船村たちの捜査の違法性を説く彼女に、船村は例によってハイテンション&早口による長台詞をまくし立てるのでした。

「我々は法律を論じてるワケじゃない。心です! 法律ならアンタの方が詳しいかも知れない。しかし弁護士というものは真実を無視し、無実の人間を死刑にしてまで犯罪者の人権を庇うものだと思ってるとしたらそりゃ違う! あなたも将来弁護士の道を歩もうとしてる人ならこれだけはよぉく解ってもらいたい! 弁護とは、真実に眼を瞑って誤魔化すことじゃない! お互いに真実をさらけ出した上で犯罪者の人権を庇うことだ!」

「…………」

「解るね? 私は、お父さんに真実を語らせることが、お父さんを助けることだと思う。お父さんは14年間、苦しみに苦しみ抜いた。私は、君塚さんを助けてあげたい!」

君塚が法律の専門書を主に扱う古書店を経営し、我が娘に法律を勉強させたのも、決して自分を守る為じゃなく、逃れようのない贖罪の気持ちがそうさせたんだと言う船村の説得に、次女は言葉を失います。そしてそれを横で聞いてた君塚もついに、17年前の犯行を認める供述を始めるのでした。

でも、君塚の自白だけでは決定済みの死刑執行を中止させることは出来ません。客観的な物的証拠、たとえば真犯人しか知らない新事実を君塚が提示しなければ、阿久根の無実を証明したことにはならないのです。

方法はただ1つ、17年前に用心棒の遺体を埋めた場所を君塚が差し示すこと。残された時間は僅か3時間!

特命捜査課がヘリをかっ飛ばし、君塚を現場近くまで連れて行きます。が、手助けしてやれるのはそこまで。君塚が自分の記憶だけで具体的な場所を示さないと証拠にはなりません。

けど、なにせ遺体を埋めたのは17年前のこと。しかも造成工事により地形は大きく変わっており、君塚は場所を特定することが出来ません。もう時間がない!

「オヤジさん、だいたいこの辺だというヒントだけでも教えてやるワケにいかないんですか!?」

焦る吉野刑事(誠 直也)に、橘刑事(本郷功次郎)が釘を刺します。

「素人みたいなこと言うな! 君塚が自分の記憶で此処だと言わない限り客観的物的証拠にはならん! オヤジさんが何のために苦労してると思ってる!?」

「しかし事情が事情です! 分かりっこありませんよ! あと40分で阿久根は死刑になっちまうんですよ!?」

そこで吉野は、気づかなくていいことに気づいてしまいます。いや、むしろ、今さら気づいたんかい!?と言うべきかも知れませんw

「あと40分……この時間さえ逃げきれば阿久根の死刑は執行される。そして来年には時効! まさかあのオッサン、それを狙ってるんじゃないでしょうね!?」

ずっと黙って君塚の右往左往を見つめていた船村が、そこでようやく口を開きます。

「バカなこと言うんじゃない! あの人の眼を見てごらん。無罪になりたければ勝手な場所を指差せばいい。そうすれば簡単に有罪の確証は崩れる。間違いなく無罪になる。それなのにあの人はああして一生懸命思い出そうとしてる。信じて待つ!」

「……すみません」

君塚の家族たちも固唾を呑んで見守ります。もしその場所を君塚が指し示したら、自分たちは殺人犯の家族になってしまう。それでも、彼女らは叫びます。

「お父さん、がんばって!」

そこに覆面パトカーを爆走させた紅林刑事(横光克彦)が駆けつけます。

「オヤジさん、ありました! ありましたよっ!!」

彼が不動産屋からふんだくって持って来たのは、この山を造成する前の下見写真。現在の地形図と照らし合わせれば、当時のこの場所が再現できる!

「そうだ、この道を上がって来た! あの杉の木を右に見て……あっちだっ!!」

降りしきる雨の中、二枚の図面と睨めっこしながら、君塚は用心棒の遺体が発見された位置へと近づいて行きます。

船村は、心の中で叫びます。

「そこだ、君塚さん……そこなんだ!」

そして君塚が振り返り、叫びます。

「船村さん……こっ、ここだ……間違いない、ここだあっ!!」

その瞬間、腰が抜けたように船村が座り込み、観てる我々視聴者の涙腺も爆発しますw

「かっ、課長に報告しろ! 早くっ!!」

「はいっ!!」

間一髪、阿久根の死刑執行が中止されたのは、まさにそのスイッチが押されようとした瞬間でした。けど、タイトル通り「0秒前」なら間に合ってませんw 実際は0.05秒前ってところでしょう。

足に力が入らない船村は、四つん這いになって駆け寄り、泥だらけになりながら君塚と抱き合います。こうして死刑囚=阿久根の生命が救われ、同時に真犯人=君塚の魂も救われたのでした。

「旨いお茶を、ありがとうございました」

「裁判の時には、弁護側の証人になるからね!」

満面の笑顔でOKサインを送る船村の頭は、普段にも増して激しく禿げ散らかってるのでしたw (おわり)


いやぁ~ホント、このクライマックスは何度観ても号泣させられます。冷静に振り返れば矛盾点、強引すぎる点が色々ありそうだけど、とにかく脚本と演出の勢いで突っ走り、芝居の熱量で見せ切っちゃう。

同じヒューマン路線でも品が良すぎる『太陽にほえろ!』じゃ到底できない芸当で、号泣率の高さにおいては『特捜最前線』の独壇場。特に船村刑事=大滝秀治さんの熱量に敵う者はどこにも見当たりません。参りました。脱毛、いや脱帽ですm(__)m

『太陽にほえろ!』にもボス(石原裕次郎)が死刑囚を冤罪から救う話があり、それはそれで名作なんだけど、やっぱり裕次郎さんゆえスマートかつヒロイックな話になっちゃう。観てる我々は心酔しつつも号泣には至らない。

それはそれで『太陽~』の魅力であり、私はどっちも好きだし、いくら『特捜~』が泣けても二者択一なら迷わず『太陽~』を選びます。そこは単なる好みの問題であり、優劣はつけられません。とにかくどっちも刑事ドラマ史に永遠に残る金字塔です。

セクシーショットは、君塚の長女を演じられた朝加真由美さん、当時23歳。ドラマデビューは'73年『ウルトラマンタロウ』のヒロイン=白鳥さおり役(#16にて降板)で、刑事ドラマは『Gメン'75』に5回、『特捜最前線』に2回ゲスト出演されたほか、現在に至るまで数多く幅広く活躍されてる正統派の女優さんです。
 


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「ハイウェイパトロールマン'72~'77」

2020-03-23 09:56:01 | 刑事ドラマ'70年代










 
『太陽にほえろ!』マカロニ編の末期からロッキー登場の直前あたりまで、七曲署の制式拳銃として大活躍したのが、MGC社から発売された初のプラスチック製モデルガン=ハイウェイパトロールマン41、通称「ハイパト」でした。

詳しい解説は以前『太陽にほえろ!とMGCハイパト』と題した記事に書きましたので、今回は割愛します。とにかくボツ画像に陽の目を見させ、処分する為に書いてますw

『太陽~』のみならず'70年代のあらゆるアクションドラマで活躍したモデルガンで、特に『太陽~』ではこれをベースにジーパン、テキサス、ゴリさん、殿下それぞれに専用のカスタムモデルを製作する等、特に重宝してた印象があります。

ロッキー登場後は同じMGC社製リボルバー「コルト・ローマンMk-III」に制式拳銃の座を譲ることになりますが、'70年代ドラマを愛するファンの間では永遠の名機として、今でも愛されてるモデルガンです。

  

  


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「宮内 淳 in 太陽にほえろ!'78」―3

2020-03-23 00:00:15 | 刑事ドラマ'70年代










 
北海道ロケ編を区切りにして『太陽にほえろ!』は新たなシーズンに入り、ここしばらく3パターン位しか無かったボン(宮内 淳)のファッションにバリエーションが加わりました。

その1つが、いつもの黒Tシャツを着ないで胸をはだけ、替わりにベストを着用した一見マカロニ刑事風のコーディネート。

Tシャツ有りのバージョンもYシャツの襟が広くなったことで、以前よりちょっとオシャレになった気はしますが、まぁ相変わらずと言えば相変わらずのセンスですw

でも、当時このスタイルを真似してた男子はけっこういた筈で、何を隠そう私自身もその1人。もちろん、今思えば恥ずかしい限りですw(ボンのファッションがじゃなく、私自身の勘違いが)

後輩ロッキーの髭に負けじと髪の毛のボリュームもアップし、もみあげも更に伸びてちょっとクドくなって来ましたw

個人的にはこれより約1年前、ロッキーが登場する前後の頃の宮内さんが最も精悍で格好良かったと思います。ファッションももうちょい自然でしたからね。

さて、'79年に入ると、神がかり的だった宮内さんのカッコ良さに翳りが見えて来るのと同時に、『太陽にほえろ!』という番組そのものも「マンネリ」という潜在的な問題がいよいよ表面化し、その人気に翳りが見え始めます。

黄金時代の終焉……その足音がいよいよ近づいて来ました。当時、私はもう既に、毎週淡々と事件を捜査するだけの『太陽~』を、なんだかつまんないと思ってました。正直、惰性で観てました。

それでもファンをやめられなかった理由は、前回の記事に書いた通り。私はすでに中毒患者だったのと、まだボンが七曲署にいてくれたからです。
 


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