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ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『女の穴』

2023-05-17 19:19:06 | 日本映画

日本におけるレズビアン映画の金字塔だと私は思ってる『ちょっとかわいいアイアンメイデン』と同じ2014年に公開された、同じ吉田浩太さんの監督&脚本によるR-15指定作品。女性漫画家「ふみふみこ」さんの短編コミック『女の穴』『女の豚』『女の鬼』が原作になってます。

つまり3つの短編を組み合わせたワケだけど、『ちょっとかわいい〜』も4コマ漫画が原作だったし、吉田監督はそういう構成力に長けた人なんだろうと思います。

この映画は2幕構成になってて、それぞれ独立したストーリーが、実は同じ高校で同時に起きた出来事であることがラストで判る仕掛けになってます。



1幕目は、なんだかブラックホールみたいに吸い込まれそうな眼をした女生徒=幸子(市橋直歩)に、若いボンクラ教師の福田(小林ユウキチ)が「私と一緒に子供をつくって下さい」と迫られる話。

それだけ聞けば少年漫画にありがちなハーレム物かと思うけど、これはなにせ女性作家さんが描かれたストーリーです。そんな都合のいい話じゃありません。

どう見ても、幸子は福田に対して異性の魅力を感じてない。ボンクラ教師でもそこんとこを見抜く眼は持ってる。

「私、17になっても処女というのがイヤで、そろそろ……」

「いやお前、それ嘘じゃん」

「……私、先生がたまらなく好きで」

「いや、それも嘘じゃん。あのさ、いい加減にしないと……」

「私、異星人なんですよ」

「…………」

「今は地球人の体を借りていて、地球人との子供をつくって来るように命令されてるんです」

「……そう来たか」

「合点がいって良かったです」

文字だけじゃ伝わらないかもだけど、この会話に私は凄くセンスを感じました。非凡だし、ぶっ飛んでるようでいて独特なリアリティーがある。

果たして、幸子はただの不思議ちゃんなのか、それとも本当に宇宙人なのか?

とりあえず福田は、幸子のブラックホールみたいな眼に吸い寄せられ、穴に挿れちゃうワケです。



「そんなにいいものでもないですね」

「…………」

「すみません、これって禁句ですか?」

「いや、別に」

ことを終えた直後の会話もリアルというか、生々しいですよね。しかも、こいつ本当に宇宙人かも?って思わせる含蓄もある。

で、もし妊娠しなかった場合は「またお願いします」と来たもんだ。

「いいもんじゃないんじゃなかった?」

「悪くもなかったです」

「…………」

宇宙人かどうかはともかく、幸子はどうやら本当に妊娠だけが目的らしく、キスだとか前戯だとか雰囲気だとかに全く興味を示さない。というか、そういうのが本当に解らないらしい。



で、幸子の穴はメチャクチャ気持ちいいのに……いや、だからこそ、セックスに感情が伴ってないことに福田はストレスを溜めていく。

一般的な男女とは立場が逆なワケだけど、もしかすると女性にもセックスに感情を求めない人がいるかも知れない。ふみふみこさん(原作者)が実はそうで、宇宙人っていうのは自虐の意味を込めたメタファーなのかも?

そんな幸子に、なぜか福田は惹かれていく。いつでもチョメチョメさせてくれる元カノ(青木佳音)にはちっとも欲情しないのに!



それは幸子の方が可愛いからなのか、若いからなのか、穴が気持ちいいからなのか? それとも、得られないからこそ求めてしまうのか?

そこんとこは謎のまま、めでたく子供を宿した幸子は、宇宙へと旅立つのでしたw



2幕目は、チビでハゲでおまけに真正のゲイという、三重苦を背負った中年教師(酒井敏也)に恋してしまった女生徒=小鳩(石川優実)の苦悩が描かれます。

振り向いてくれる筈のない相手を無理やり振り向かせるため、その弱みを握ってブタ扱いしちゃうサドとマゾのお話だけど、LGBTが理解されるようになってきた今となっては、むしろ小鳩の方がよっぽどマイノリティーで息苦しかったりする。

実際、先生がヤケになってゲイであることを授業でカミングアウトしたら、生徒たちが「そんなのとっくにバレてるよw」って、逆に場が和んで先生が救われ、小鳩がますます孤立しちゃう皮肉なシーンもありました。



クラスで孤立したような経験が無い人や、多数派に属することがステイタスだと思ってる人には、まったく響かない作品かも知れません。実際、アマ○ンのレビュアーたちはこの映画をどう楽しめばいいのか全然分からないみたいです。

だけど私は共感しまくりました。幸か不幸かw

いや、意外と、この映画の幸子や小鳩みたいな人は、決して少数派じゃないのかも知れません。みんな必死に隠してるか、自分はそうじゃないと無理して思い込んでるだけで。その方がよっぽど息苦しいのでは?

鑑賞後になぜか爽やかな後味が残るのは、幸子や小鳩こそがよっぽど自分らしく生きてるからかも知れません。

セクシーショットはこの映画のヒロインたち。市橋直歩さん、青木佳音さん、小林優実さんです。本物の女子高生と違うから、消すなや事務局はん。


 


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「尾道、さびしんぼうの旅」後篇

2023-04-01 13:05:03 | 日本映画

まぁホントはポータブルのDVDデッキかノートパソコンで映像と照らし合わせながら探索すべきなんだろうけど、持ってないから仕方ありません。ガイドブックと記憶だけが頼りです。

フェリー乗り場と商店街は誰でも簡単に行けるけど、ここは徒歩だと難しい。『さびしんぼう』の主人公=ヒロキ(尾美としのり)が住んでる設定だったお寺、西願寺です。



山門前の石段は幾度となく登場したけど、特にヒロキとさびしんぼう=タツコ(富田靖子)の別離シーンは思い出すたび胸がキュンとなります。


釣鐘も印象的に使われてました。


浦辺粂子さん扮するお祖母ちゃんとヒロキのとぼけた会話で、お墓のシーンもほんわかした印象。お祖母ちゃんだけが唯一、さびしんぼうの正体に最初から気づいてたんですよね。(と言うより見分けがついてなかったw)





とっても高い場所にあるお寺なので、尾道の町と海が一望できます。道は細いし、もしジムニーでなければスンナリとは辿り着けなかったはず。親友Hに感謝!

そして石段を降りてすぐの坂道。百合子(富田靖子、2役)が自転車でたまたま通りかかる場面も屈指の胸キュン・シチュエーションでした。


その後日、自転車のチェーンが外れて、百合子が「ここで」途方に暮れてたのは偶然じゃないのかも知れません。

尾道ならではの急傾斜。だから徒歩だと難しい!

そして最後に訪れたのは、百合子が通い、ヒロキが望遠レンズで覗き見する女子高の撮影で使われた中学校。実際は共学みたいです。


部活動で生徒さんが沢山いて、不審者と思われたくなかったもんで写メは1枚だけ。

西願寺とはけっこう離れてるから、Hがジムニーで来てくれてホント助かりました。もっと細かく、じっくり探索するにはレンタル自転車を利用するのがベストかも。

だけど私はそこまでこだわる気が無く、ロケ地の空気感を味わいたかっただけなので、これくらいの加減でちょうどいい。

岡山・倉敷も含めて3日間、ずっと快晴で寒くも暑くもなく、ベスト・コンディションで旅が出来ました。そもそも昨年亡くなった父の法事で来ましたから、父が護ってくれたのかも知れません。

帰りの途中、Hと私の共通の友人であるN君とお茶することになり、彼が住む尼崎に向かって出発。

するとモノノフ(ももクロ狂い)のHがなぜか廻り道して福山市民球場へ。



今月、ももクロのコンサートがここで開催されるんだそうです。行く予定してるワケでもないのに、なぜ下見する必要がある?w

こんな風に、いつも我道をいくHには昔から振り回されっ放し。だから遅刻魔なんですよね。予定より到着時間が遅れたのはこれが原因です、N君。全部ヤツのせいなんです!w



予定より1時間近く遅れたけど、N君とも無事に再会できました。3人が揃うのは15年ぶり位だけど、久し振りって感じが全然しない。別に照れることもなく、一瞬で昔の感覚に戻れちゃう。そんな友達がいてくれるのは本当に有難いことです。

そんなワケで3日間、ホントに楽しい旅が出来ました。生き返ったような気がします。もうしばらく、頑張って生きて行けそうです。


 

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「尾道、さびしんぼうの旅」前篇

2023-04-01 00:40:25 | 日本映画

私が広島県 尾道市を訪れた目的はただ1つ。敬愛する大林宣彦監督の代表作である尾道三部作(『転校生』『時をかける少女』『さびしんぼう』)のロケ地に自分の足で立ってみたかったから。

とはいえ、聖地巡りに使える時間はせいぜい半日。つまり多くは廻れないので、マイ・フェイバリット日本映画である『さびしんぼう』のロケ地、その中でも特に印象的だった4箇所に絞ることにしました。



その1つ目が、ヒロイン=橘百合子(富田靖子)が通学に使ってたフェリーの発着所です。

残念ながら春休みなので自転車通学の女子高生は乗ってないけど、まさに『さびしんぼう』の撮影に使われた「福本渡船」のフェリー乗り場。泊まった尾道ロイヤルホテルから近いし、JR尾道駅からでも歩いて行けます。



すぐ前に見える向島との間を頻繁に往復してますから、シャッターチャンスはいくらでもあります。



あの島に百合子さんが暮らしてるんですよねえ……



2つ目は、やはり尾道駅から歩いてすぐの、本通り商店街。自転車で走る百合子を追って、主人公のヒロキ(尾美としのり)が小坊主姿で駆け抜けました。



かつて銭湯だった建物がそのまま飲食店になってたり、ユニークなお店が多いです。



入口には林芙美子さんの銅像が。



すぐ近くに名画座「シネマ尾道」も。その隣の尾道ラーメン店で昼食を頂きました。



周辺も個性的な風景ばかり。いちいち写メしてたらキリがありません。

残りの2箇所は後篇にて。


 

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『前田建設ファンタジー営業部』

2023-03-03 17:25:15 | 日本映画

日本映画のレビューですが、これは「春のマジンガー祭り番外編」とも言えるかも?

ダム、トンネルなど数々の大プロジェクトに携わってきた前田建設工業株式会社が「アニメやゲームに登場する建造物を実際に作ったらどうなるか?」を本格的に検証するWEBコンテンツ「前田建設ファンタジー営業部」を立ち上げ、それが「バズって」話題を呼んだ「実話」を映画化した、上田誠 脚本&英勉 監督による2020年公開作品。もちろん現実の前田建設さんが全面協力されてます。



2003年、前田建設の広報グループ長(小木博明)が突然「アニメ『マジンガーZ』の出撃シーンに登場する地下格納庫を、現状の技術と材料で建設したらどうなるのか?」を検証するWEB連載を提案。

マジンガー世代じゃない若手社員たちは嫌々ながらも、仕事だから仕方なくプロジェクトに携わるんだけど、架空のものに対して真剣に向き合う社内外の技術者たち(もちろんマジンガー世代)の姿を目の当たりにし、無意味と思ってた業務に本気で取り組むようになっていく。

やがて「ファンタジー営業部」と呼称される広報部のメンバーに、高杉真宙、上地雄輔、本多力、そして岸井ゆきのが扮してます。



まず、この世知辛い時代に、よくこんな話を映画化する企画が通ったなあって驚くし、キャストがまた豪華。まだ現在ほど売れっ子じゃなかったにせよ、ヒロインが岸井ゆきのさんですよ!



さらに町田啓太、六角精児、山田純大、鶴見辰吾、濱田マリ、そしてご本人役で永井豪御大まで登場されますから! 全然、そんな大層な話じゃないのに!w

だって、マジンガーZの格納庫(汚水処理プールの地下にあるやつ)を実際に造っちゃう話ならともかく、仮に造るとすれば何が必要になるか、費用と日数は一体どれくらいかかるか等を、ただ検証して見積もりを出すだけのストーリーなんです。



いや、だからこそなんでしょう。こんな地味な話を商業映画として成立させるには、実力があって客も呼べるキャストが必須条件だった。

映画が好きな人であればあるほど、舞台演劇的なオーバーアクションにはアレルギーがあるでしょうけど、本作に限っては受け入れなきゃしょうがない。ことさら賑やかに、面白おかしくやってくれないと寝ちゃいますからw

それを踏まえてのリーダー役=おぎやはぎの小木博明さん、ベリーナイス・キャスティングでした。他の俳優さんたちも皆、いつになく弾けまくっておられます。それを素直に受け入れさえすれば、いっさい退屈せずに楽しめます。

とは言え、やっぱり映画ですから、クライマックスにはこんなシーンも用意されてます。



全ての見積もりを終えた上での、あくまでシュミレーション(妄想)を映像化してるワケだけど、妙に感動させられます。マジンガー世代限定かも知れないけど。



しかし顔の造形がカッコ良くないのが残念! 野中博士さんか越智一裕さんに監修して頂きたかった!

そこはまあ、あくまで格納庫が主役だから仕方ありません。現実には不可能だろうと思われて来た、プールの下から巨大ロボットをせり上げるシステムが、知恵と工夫と大金と、途方もない時間と労力さえ費やせば可能なんだ!っていう事実を、理論と数字で証明しちゃうところにロマンがあるワケです。

そりゃあ、わざわざ映画館で観るべき内容とは言えないけどw、テレビでやるにはターゲットが限定され過ぎちゃう、むしろ映画でしか出来ない企画だったのかも知れません。

あまりに保守的な日本映画界には文句ばっか書いて来たけど、今回だけは「よくぞ(こんな超くだらないことをw)やってくれました!」って、拍手を贈らせて頂きます。マジンゴーッ!!


 


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『レンタル女子大生/私、貸します。』

2022-07-05 23:53:34 | 日本映画

2017年の劇場公開時は『レンタル女子大生/肉欲延滞中』、フェス出品時は『サイコウノバカヤロウ』というタイトルだった、当方ボーカル脚本、竹洞哲也監督によるピンク映画。

レンタル女子大生って聞くとド変態な皆さんはデリバリーヘルス的なもの、つまり風俗嬢の話を想像されるかと思います。ほんとド変態ですね! ああ汚らわしい!

しかし実はそんな話じゃなくて、間違いなく「レンタルなんもしない人」からインスパイアされたであろう、ただ依頼人の話し相手になったり付き添ったりするだけの「自分レンタル」をバイトにしてる若者たちのストーリー。

しかも主人公は女子大生じゃなく、その友達のニート青年だったりする! だから『肉欲延滞中』ってなサブタイトルも完全なる嘘っぱち。そこがまたピンク映画やアダルトビデオの面白さですw

それはともかく、女子大生=有希を演じておられるセクシー女優の、彩城ゆりなさん。しょっちゅう見てる誰か(AVとは違うジャンルの有名人)とソックリなんだけど、その人の名前がどうしても思い出せない。

この表情が一番よく似てると思うんだけど、誰でしたっけ?↓



で、ゆりなさん演じる有希に勧められて自分レンタルのバイトを始めた主人公=輝雄役が、櫻井拓也っていう役者さん。こんな顔の人です。↓ 



言っちゃ悪いけど、絶対にメジャー作品の主役には選ばれないであろうルックスで、ピンク映画でしか有り得ないキャスティング。それはご本人も自覚されてる事でしょう。

けど、この作品は、こういう人が主役だからこそ良いんですよね!

誰から見ても冴えないルックスで、ニートが本当に似合っちゃう彼が、自分レンタルの仕事で根っこにあるピュアな優しさを発揮し、悩める人たちを癒やしていく。

で、有希とはずっと「恋人未満」な関係なんだけど、彼女は輝雄のそのピュアな優しさに惹かれてて、だからこそ自分レンタルの仕事に向いてると直感した。



そんな2人の関係が微笑ましく、観てて心地好いワケだけど、もし仮に、同じストーリーをメジャー作品として創るとなれば、主役は菅田将暉くんとかになっちゃうワケです。それはもう絶対に避けられない。

菅田将暉くんは確かに素晴らしい俳優だけど、もし彼が輝雄役だったら、この作品の良さは伝わらないと私は思います。もちろん彼ならニート役でも完璧に演じるだろうけど、観客は「こんなイケてない役すら上手に演じちゃう菅田くんって、やっぱりステキ!」って思うだけで、そこにリアリティーは存在しません。

となると、輝雄の心根に惚れてる有希の方まで嘘っぽく見えて来ちゃう。菅田将暉のルックスあればこそじゃないの?って思っちゃうワケです。

だから、このストーリーはピンク映画でないと成立しない。マイナー作品にはマイナーでしか表現できない良さがある。たまに観ると新鮮に感じる所以です。



まあ、今回はそういうストーリーなもんで、濡れ場も有希の妄想として描かれるだけ。女子大生が考えることだから大したことはありませんw

ゆえにオカズとしての実用度は低いけど、そこがピンク映画とAVとの決定的な違い。やっぱり、映画は映画。そうであるべきなんです。


 

コメント (2)
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