ささやかな幸せ

SUPER EIGHT、本、美術鑑賞、俳句、お茶が好き!
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『最終飛行』『レイラの最後の10分38秒』

2021-11-02 20:41:38 | 
『最終飛行』 佐藤賢一 文藝春秋
 世界中的ベストセラー『星の王子さま』の作者サン=テグジュペリ。彼は作家であると同時に、飛行機乗りでもあった。純粋で、かつ行動的なサン=テグジュペリは、ナチスドイツ占領下でドゥ・ゴール派とヴィシー派の政治抗争に巻き込まれる。苦渋の選択の末に渡ったアメリカで書き上げたのが、自身唯一の子ども向け作品『星の王子さま』だった。そして、念願の戦線復帰が叶い、ナチスドイツとの戦闘に復帰。危険な偵察飛行を繰り返し――。
 本作でのサン=テグジュペリは、自己中心的で女たらしでお調子者ある。でも、なぜか魅力的な人物。
 フランスのためアメリカに参戦を促すためにアメリカへ渡るが、サン=テグジュペリのネームバリューを利用とする人と一線をひき、中立の立場をとったがために両派から攻撃されてしまう。サン=テグジュペリの愛国心が理解されない場面は、読んでいてもどかしい。とにかく、サン=テグジュペリは、飛行の年齢制限を特例で参加できるようにするなど、フランスのために頑張る。その姿が、我儘だが かわいらしいのだ。
 最後のフライトの場面は、手に汗握るというか、臨場感たっぷり。
 『星の王子さま』を再読しようと思った。

『レイラの最後の10分38秒』 エリフ・シャファク 北田絵里子訳 早川書房
 1990年、トルコ。イスタンブルの路地裏のゴミ容器のなかで、一人の娼婦が息絶えようとしていた。テキーラ・レイラ。しかし、心臓の動きが止まった後も、意識は続いていた──10分38秒のあいだ。1947年、息子を欲しがっていた家庭に生まれ落ちた日。厳格な父のもとで育った幼少期。家出の末にたどり着いた娼館での日々。そして居場所のない街でみつけた"はみ出し者たち"との瞬間。時間の感覚が薄れていくなか、これまでの痛み、苦しみ、そして喜びが、溢れだす。
 人種、宗教、貧富とごった煮のようなイスタンブールの雰囲気がいい。
 さまざまな因習などで転落していくレイラや友人。彼らは、偏見にまみれた社会では地位が低いが、温かく、強い。何より存在が愛おしい。人物の造形に作者の愛を感じた。
 最後に表紙や章立てのサインの意味がわかり、ますます味わい深い。
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