ささやかな幸せ

SUPER EIGHT、本、美術鑑賞、俳句、お茶が好き!
毎日小さな幸せを見つけて暮らしたい。

『御社のチャラ男』『彼女たちの部屋』『江戸の夢びらき』『誓願』

2021-02-11 21:44:39 | 
『御社のチャラ男』 絲山秋子 講談社
 チャラ男って本当にどこにでもいるんです、一定の確率で必ず。すべての働くひとに贈る、“会社員”小説。社内でひそかにチャラ男と呼ばれる三芳部長。彼のまわりの人びとが彼を語ることで見えてくるものとは?
 こんな奴、いるよね~。チャラ男や自分の人生を会社の様々な人たちが語る。年齢も立場も違う人が語ることで重層的に多面的になる。彼らのいる会社は機能不全に陥っている。だが、きっと多いのだろう。うちの会社は大丈夫か?

『彼女たちの部屋』 レティシア・コロンバニ 早川書房
 現代、パリ。大きな挫折のあと、弁護士のソレーヌはある保護施設で代書人のボランティアをはじめた。「女性会館」というその施設には、暴力や貧困、差別のせいで住居を追われた人々が暮らしている。自分とはまるで異なる境遇にいる居住者たちの思いがけない依頼に、ソレーヌは戸惑った。それでも、一人ひとりと話して、手紙を綴るなかで、ソレーヌと居住者たちの人生は交わっていく。約100年前、パリ。救世軍のブランシュは街中の貧困と闘っていた。路頭に迷うすべての女性と子供が身を寄せられる施設をつくる――彼女の計画は、ついに政治家・財界人も動かしつつあったが……。実在する保護施設と創設者を題材に、時代を超える女性たちの連帯を描く。
 現代と過去の二つの世界がつなげていく物語。辛い現実を前に立ちすくむ女性たちのシェルターを作ったブランシュ、挫折を味わいボランティアのつもりで接したシェルターの傷ついた女性たちによって癒されていくソレーヌ。作者の励ましの声が聞こえてきそうな物語だ。

『江戸の夢びらき』 松井今朝子 文藝春秋
 なぜ江戸の民衆は團十郎に熱狂したのか。不世出の天才・初代市川團十郎、空前の一代記!寛文7年(1667)、浪人の娘・恵以はひとりの少年と出会う。子どもながらに柄の悪い侠客たちに囲まれ、芝居に出れば大暴れして舞台を滅茶苦茶にする。その破天荒さに呆れながらも、恵以は自然と人の注目を集める彼の素質に気づく。少年の名は海老蔵。長じて市川團十郎を名乗るのだった。
 人気者に群がるようにおこる数々のトラブル、偉大な父に悩む二代目の葛藤、今に伝わる歌舞伎の話の素など、おもしろかった。松竹座の上にやぐらのような櫓があったが、それは座を開く許可証みたいなものだったとか。歌舞伎ファンなら皆知っている團十郎と成田山の関係とか。知らなかったなあ。團十郎のもとに其角と赤穂浪士の一人がやってきた話は、「土屋主税」を思わせるし。
 歌舞伎の團十郎は、今も続いている。すごいことだ。

追記 6/5
 座を開く許可証みたいなもの 櫓

京都南座

『誓願』 マーガレット・アットウッド 早川書房
 『侍女の物語』から十数年。ギレアデの体制には綻びが見えはじめていた。政治を操る立場にまでのぼり詰めたリディア小母、司令官の家で育ったアグネス、カナダの娘デイジーの3人は、国の激動を前に何を語るのか。カナダの巨匠による名作の、35年越しの続篇。
 見出しの下のアイコンで語る人が誰か、リディア小母、アグネス、デイジーかがわかる。ギレアデの歴史であり、革命であり、冒険でありとおもしろかった。ギレアデの変な体制は、国の中にずっといたり、その教育を受けたものでは奇妙だと理解できないだろう。教え込ませる教育は怖い。
コメント
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