生涯いちエンジニアを目指して、ついに半老人になってしまいました。

その場考学研究所:ボーイング777のエンジンの国際開発のチーフエンジニアの眼をとおして技術のあり方の疑問を解きます

その場考学的働き方改革 その場考学のすすめ(23)

2023年02月22日 07時31分14秒 | その場考学のすすめ
その場考学のすすめ(23)    2023.2.22     
TITLE: その場考学的働き方改革


 働き方改革が叫ばれて久しいが、日本のそれは、効果がはっきりと表れていない。それは、業務内容の価値解析が行われていないためだと思う。
 昔から、新規開発の設計部隊は人手が足りないことに決まっている。程度の差こそあれ、多くの場合は「業務内容の価値解析(VE)」がやられていないことが多い。VE手法は、原価改善としては日本に定着をしているのだが、応用範囲が広いことに気が付かれていない。
Value Engineeringは、工学の基本の一つなので、是非教養学科の必修科目にしてもらいたいものだ。

その場考学的手法による応用例を示す。

手順1 業務内容を分類する
 VE的な考え方で、組織全体としての業務を分類する。
 (1)基本機能    設計なら設計図を書くこと。品質管理部門ならば品質監査を行うこと。
 (2)補助機能1  (必須のもの)現場との調整、専門家会議、設計審査,客先調整
 (3)補助機能2  (必須でないもの);雑務、報告書の作成等
  VEとは良くしたもので、負荷時間の分析をしてみると大体3分の1ずつになる。
   
手順2 補助機能のうち、半分を目処に切り捨てる
 VE的には、補助機能の半分は本来必須ではなく、自己満足や他人を押し測って加えられているものである。このことを念頭に半分を目処に切り捨てる。このとき他部門との折衝が困難だが、最終目的完遂の為に相手を説得すること。説得もVE的な考え方で説明を試みること。先ずは切り捨てが先で、さもなければ基本機能を確実に行うことが不可能になるとの認識が大切である。

手順3 業務内容のトップダウン分析を行う
 全体の工数(人数 X 200時間/月など)をVEのトップダウン分析手法で割り付ける。
例えば「会議」は全体の8%で20人の組織なら月に200X20X0.08=320時間となる。これは、個人単位ではなく(人によって、業務担当内容が異なるので)組織全体の数字として管理する。業務内容は、3桁の数字で表す。それぞれの桁は、大分類(機種など)、中分類(業務内容)、小分類(注目作業)とした。

手順4 全ての業務に番号をつける
 大分類、中分類、小分類の3つのカテゴリーに分けて、それぞれに数字を充てる。すると、全ての業務は3桁の数字で表すことができる。この数字を統計処理する。

手順5 サンプリングで一ヶ月のデータを採る
 例えば、会議時間が全員の累積値で何時間になるかのデータを採る。精度は大まかで良いので、くれぐれも全員の全時間のデータを採ることなく、サンプリング手法を適用すること。サンプリングの頻度や方法は、組織の大きさや内容によって様々になる。私の場合は、70人で週に2回、ある時刻の前後1時間の中での業務番号(3桁の数字で表す)を自分で記録する。
「会議」は大分類5なので、全体の何%かは、ほぼ瞬時に分かる。

手順6 月ごとの業務の価値分析をする
 もし、会議時間が12%であれば、8%に対して会議にかける時間の価値が66%しか無いことになる。業務ごとの価値が数字として現われる。

手順7 価値の低い業務から改善する
 会議時間の価値を66%から100%以上にする対策を立案して、実行する。会議の数を減らすなり、出席人数を減らすなり、開催頻度を減らすなり、論理的な数値目標値があるので立案は比較的簡単なものになる。

手順8 結果を広く公表する
  データ分析の結果と、その結果行った業務価値改善のプロセスを可視化して全員に十分に説明する。

手順9 5年以上は続ける
 精度は粗くてよい。要は、各業務の時間価値が高いか低いか、最終目的を現在のリソースで達成するために必要な改善内容は何かが数字で分かれば良い。少々間違ったデータでも、改善案が正しければ問題は無い。長く続けると(小生は、設計課長時代7年間続けた)数字は安定してくるし、危ない兆候が見えてくる。
例えば、「業務の標準化」は1%から2%の間が良い。1%を切る期間が数ヶ月間続くと標準化は出来ないことが分かってくる。

 この手法は、一時期他部門でも応用を試みたようだが、成果は見られなかった。私は、次の品質保証部長時代にも、当初からこの手法を用いた。品詞保証部の当時の基本機能は社内諸部門の品質オーディット(監査)だったが、それが数年間満足に行われていなかった。雑用が多く、それに欠ける時間が不足していたためであった。事態は初年度から完全に改善された。

 やはり、価値解析 (Value Engineering) 手法の基本が分かっていないと、応用は失敗することが多い。従って、「Value Engineeringは、工学の基本の一つなので、是非教養学科の必修科目にしてもらいたいものだ」という結論になる。






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