岩手山麓景観形成重点地域を守ろう ★『イーハトーブ通信』

野生サクラソウ大群落を潰し岩手山麓の環境を破壊してきた旧町政。産廃問題に端を発した岩手山麓『誘致公害』の記録

公開討論会と町づくりーその4:公約と「構想」の矛盾

2009年04月06日 | 「しずくいし銀河の森」
(写真は2009年3月1日撮影:町長の裁量権によって独断的に誘致した大型木材加工工場からのばい煙が傘状に広がっている様子。岩手山頂から煙突まで11km。工場から撮影場所まで8km。この地域一帯は2005年3月11日、当時の岩手県知事によって環境影響評価(フルアセスメント)が必要と判定を受けた。判定文には『施設の稼動に伴うばい煙により、人と自然のふれあい活動へ相当程度の影響を及ぼすおそれがある』。しかし、中屋敷町長は「産廃でもなく放射能でもなく化学工場でもないから」として誘致。たった4ヶ月前に事業計画中止になった産廃溶融炉問題から彼が学んだものは「環境の大切さ」ではなく、岩手県を巻き込んだ“法以内であれば環境は守られる”という『合法的環境破壊』の構想実現の手法と『根回し』であった。)



公開討論会を経て町長に当選した彼は、会場での約束どおり、翌年1月23日同じ野菊ホールで「町長との対話」と銘打った会を町長主催で行った。町長は舞台の上。原則一問一答。自然エネルギー活用など多岐に亘る質問と彼の応答…。対話は深まることなく時間が来て終了となった。

帰り道、公開討論会主催のメンバーは下を向きがちだった。
『約束したから仕方なくやったって感じだったねえ。心配していたような気配が感じられたねえ…』
選挙の際、もっとも心配だったのが、中屋敷氏の支持基盤(票田)が建設業界だということと、人の話を聴く耳を持たない、という結構な数の人々からの指摘だった。<盛岡市の某建設会社の使いっ走りでその会社が町内に産廃の粉砕施設を建てるとき近所にハンコもらいに歩いたのが県議の中屋敷よ。そのうち、ピタッと来なくなったな。住民同意は要らないことが判ったからなんだと。煩いのには変わりねえのによ。調子のいいやつだ。>…こういった声を聞くにつけ、建設業界が支持基盤で選挙集会にも動員されたとなれば利権がらみの町政になってしまうのではないか…。当然少なからずの人がこういった心配をした。

そして任期一年目、彼の「南畑開発構想」は前述の通り第一場は幕となった。(第二場は全く別の形で実現された。アグリリサイクルセンター建設である。目的からみれば彼にとっての「構想」は福祉でもなんでもないことが判るだろう。詳しくは後述)

彼の「構想」の最大のステージは、小岩井農場隣接地に計画され、2004年11月に町民が知ることとなった民間企業「マイトリー(株)による岩手県内民間最大規模の産業廃棄物焼却溶融炉「雫石クリーンセンター」であった。これについての記録を先に遺すのは、この手法にこそ彼の「構想」の底に流れる本質が在るからである。


私の元へ、ある町民の方から送られてきた町長への提言文を転写する。
昨日要否判定申請がなされた云々…とあるので、第二種事業環境影響評価判定申請が岩手県に出されたのが2005年1月31日だったから、提言文は2月1日に書かれたものだろう。町長から「回答」があったのかどうかは不明。

町民の不安、町長に求める説明責任、雫石のような農業と観光を町是に掲げる町のリーダーに対して実に率直に且つ的確に意見を申し述べている。
わたくしが『雫石クリーンセンター』なる計画を岩手県審議会記録から“発見”してしまったのも、宿命だったのかもしれない。この提言に書かれている本質は、事業計画中止となった4ヵ月後の誘致工場問題の本質と流れはまったく同じなのである。

私達町民には町長はこう「釈明」していた。「自分は事業者と県とのパイプ役でしかない。」
しかし事業者は岩手県環境影響評価技術審査会の席上、委員の質問に対し「町からは後押ししたいと言われています」と述べた。すでに2004年10月26日に町長は山形県最上町の提携先産廃焼却施設を「視察」。その夜は由緒ある温泉宿に宿泊。マイトリー社重役も“偶然同宿”(町議会町長答弁)であった。詳細は後述する。



以下、一般町民から町長への提言 転写

<本日は今町内で重大な関心の寄せられている「(株)マイトリーの産業廃棄物焼却溶融施設建設計画」についてです。
昨日、マイトリーより県の方にアセスの要否判定申請がなされたようですが、町ではこの件に対してどのように対応していくおつもりなのでしょうか?
聞くところによりますと、この件に関しての住民からの町への問い合わせには「コメントなし」とのことですが、わが町の未来を左右する重大な問題ですので、いつまでも町当局の動きが見えてこないのは、住民としてとても不安です。
「バイオマスパワーしずくいし」や「雫石町ふるさと景観条例」など、環境と健康を守る町というイメージが強い雫石町ですので、当然県と業者に対して計画の見直しと撤回を求めることと思われます。

最悪この産廃溶融炉が建設された場合、この町の環境と、住民の健康に与えるダメージは計り知れないものがあります。
確かに排気ガス濃度は環境基準値以下に抑えることが可能とはいえ、それはあくまで排ガス濃度の問題で、総量で考えれば毎日365日かなりの量の発ガン物質・酸性雨原因物質・環境ホルモン物質・粘膜皮膚刺激性物質などが空気中に放出されることになります。

あわせて当雫石は盆地を形成しているため、その排出されたガスが気象条件によっては、長時間盆地の中にとどまることも十分に考えられます。
また、いったんガス漏れ事故などが起こった場合の周辺への健康被害・林業農業に与えるダメージ・町の売りである美しい環境に与えるダメージは相当大きなものとなります。

また、毒性の強い産業廃棄物を積んだトラックが多数走行することによる交通の危険の増加、万が一の横転事故などによる汚染物質の周辺への離散の危険もあります。

計画されている場所はとても美しい場所です。あの周辺には小岩井農場をはじめ、我々のそして旅人の心を癒してくれるすばらしい場所がたくさんあります。
そんな中に「産業廃棄物焼却溶融炉」がもし建設されたら・・・・、訪れた人はとても落胆してしまうことでしょう。
それは現在の「美しくすばらしい、また訪れたい町」から、「美しさを台無しにする施設の建設を許した、もう訪れたくない町」への転落を招くことになります。

町内には少数ですが建設を歓迎する向きもあります。その多くは建設業関係で、おそらくは工事が始まることによって地元へ仕事が来ることを期待してのことでしょう。
確かに、工事により建設業界にいくらかの利益が発生することと思います。
ですが、それによって町に得られる利益は、溶融炉が建設されてしまった場合のマイナス効果により消えてしまい、それどころか将来にわたって重い負債を残すこととなります。

工事によって町に得られる利益は数字をはじき出すことができますが、建設されることによって現在と将来にわたってこうむる損害は具体的に出すことができません。
当方はどう予想しても町の現在と将来の利益にはならないと考えますが、当方の心配するほどでもなく損害は少ないものかもしれません。
ですが、もしかしたら我々の予想を越える損害が発生するかもしれません。
規模の小さな案件であれば、「デメリットが予想されるが、メリットを期待して・・・」ということもあるかもしれませんが、今回の場合は町全体の環境と農業と健康が影響を受ける大きな問題です。
このような大きすぎる問題に対しては、ギャンブルをするべきで無いことは誰でも理解できることです。

町の一般焼却炉が立替の時期が近いとはいえ、計画されているものは産業廃棄物の焼却溶融炉ですので、同じラインで考えることのできる問題ではありません。
どこかに必ず造らねばならない施設であるというのならまだしも、必ずしも雫石に必要な施設ではありません。
ましてや相手は、県でもなく公益法人でもない一般の企業です。町は断固としてこの企業の計画に拒否を表明するべきと思われます。

町民が安心して暮らせる町、この町の住民でよかったと誇りをもてる町、多くの訪れた人が心楽しく過ごせる町、そのような町づくりを積極的に進めているすばらしい町長以下、町の議員・職員の皆様であれば、多くを語らなくても今回の溶融炉建設に反対の志を持っているものと思われます。
多くの町民がこの建設計画によって、町の未来への不安を感じています。町当局が自身の良心に従って町民の不安を払ってくださることを期待しています。

町として溶融炉建設に反対する意見を、県と業者に届けることを期待します。
心からお願い申し上げます。

追伸
こういった計画に反対した町は、全国にとても高い評価をされることでしょう。それによる宣伝効果と雫石ブランドのイメージアップによる経済効果も相当なものが期待できます。
ですが、もし環境を後回しにした態度を町がとったとしたら・・・・。それによるイメージダウンは、相当大きなものになると予想されます。 >



雫石町は「農業と観光の町」「山とまきばといで湯の町」を町是に掲げてきた。
町長の「構想」は町是に基づき、町是を伸ばす魅力が根底になければならないだろう。賢治童話の舞台になった場所の原風景が「宮澤賢治文学の風景地」として名勝指定まで受けている町なのだ。その価値に気づいてくれることを、私はいまも心から願っている。

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