岩手山麓景観形成重点地域を守ろう ★『イーハトーブ通信』

野生サクラソウ大群落を潰し岩手山麓の環境を破壊してきた旧町政。産廃問題に端を発した岩手山麓『誘致公害』の記録

住民から見た川井林業雫石工場誘致

2011年01月22日 | 「しずくいし銀河の森」
2005年に表面化し2006年12月に計画中止となった、小岩井農場隣接地への産業廃棄物溶融炉計画。
その4ヵ月後の2007年に、産廃計画地から町道(通称「長山街道」)を挟んだ西側、「銀河の森」と呼んでいた88.5ヘクタールの町有地(環境保全等用地)に、当時の町長、中屋敷十氏が工場誘致を専決したおおまかな経緯を記しておこうと思う。
これらは、膨大な資料と記録によるものであって推測ではない。この住民からみた記録を、1月21日、正式に町に提出した。(掲載文は会社名を除き個人名は伏せている。)
産廃事件も含めて足掛け6年間、雫石町役場と対峙してみて、つくづく思ったことは、表向き立派な文言の条例も協定も契約書も、運用する人物次第。首長はじめ、役場職員の姿勢ひとつにかかっているということだった。
具体的な提案も添えたが、今後の経過を見つつ、随時掲載していきたいと思う。


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ここ『銀河の森』を、雫石町は「環境保全等用地」という名目で2006年、5500万円で購入しました。
土地開発のスプロール化(無秩序な宅地開発)を防ぐためという購入理由でしたが、工業地帯(準工業地帯)にしたいという前町長の腹案構想がありました。

町が購入する前の2005年秋、A重機を親会社とするマイトリー社による産廃溶融炉計画が表面化。当時の社長が150名の町民を前にしての事業説明会席上、「町の構想が甥の町議を通して耳に入り、近くに社有地もあることだし手はじめに産廃溶融炉を計画した」と述べました。計画の詳細を問い合わせた町民達に前町長は「事業者と県とのパイプ役でしかない」と述べた反面、事業者には「後押ししたい」という姿勢でした。業者との温泉同宿もありました。


岩手県環境影響評価技術審査会(環境アセス委員会)が、この地域の自然と景観環境の特性から二年かけてフルアセスメントが必要と判断し、当時の知事がその判定を出したために、この産廃計画は2006年12月に中止となりましたが、その4ヵ月後の2007年4月の町議会全員協議会において前町長は川井林業の誘致を説明。すでに動き出すばかりとなっていた「環境保全等用地利活用検討委員会」には、川井林業用地13㌶をのぞいた残地の利活用検討が諮られました。

その時、住民委員であった私が、「誘致工場の安全性や周辺への影響の度合いがはっきりしないと残地利活用にも影響する」と発言したことから、10月初め開催の企業立地に係る住民説明会を聞いて安全性が確認されたら再開することになりました。
しかし、その説明会は役場が依頼した雇用確保と林業活性化面からの賛成意見が出され、化学物質飛散(当時はLVL工場計画。のちに製材工場に変更)をはじめとする環境汚染を懸念した住民からの質問には十分な答えが得られないまま、規定時間午後9時で打ち切りとなってしまいました。 以後、利活用委員会は一度も開催されておりません。


産廃事件の際に、この土地が心癒される方向で用いてほしいことと、町の説明責任を求めた署名活動が町民県民あげて展開されましたが、「構想」の本体は町民には知らされず水面下で行なわれ、県知事からアセス判定を受けた地域特性も、川井林業工場はアセス申請規模以下という理由で実質的に無視され、前町長専決で誘致に至りました。
川井林業社長は前町長から、「何も心配ない、問題ないから来てくれ」と言われたと述べています。


会社側は“町の誘致方針にのっとり立地したのだ”と主張するでしょう。しかし二つの住民団体が本社がある岩手県下閉伊郡川井村(現宮古市)の事務所まで立地再考を求める署名をもって出向き、煤煙等に敏感な症状をもつ家族が居住していたり、アセスメントで指摘された地域の特性を説明してありましたから、知らなかったでは済まされません。会社の進出判断として用地特性を重んじて環境保全の対策を充分に行なう社会的責任は大きいものがあると言わざるを得ません。


又、極楽野行政区の工場付近18世帯から、署名付きで環境を守るにふさわしい公害防止協定を求める要望も前町長に提出しました。しかし、町と川井林業による地元説明会では、関連法を数字的にほんの少し下回っただけの、非常にゆるい排ガス・騒音規制などの協定案が示されました。「これでは産廃溶融炉の方がまだまし」といった内容で、1回目説明会で出された意見はひとつも反映されずに2回目説明会も全く同じ案が提示されるというひどい状態でした。

三者協議は、目的を公害防止協定締結に向けての話合いとしていますが、現在生じている煤煙改善と騒音低周波音問題が解決に至らないと、環境保全にふさわしい効力ある協定検討に入れないでいる状態です。その状態が3年続いています。


一方、腹案構想の方は着々と進み、2009年、雫石町の都市計画マスタープラン変更の際に、この用地を「工業地帯(準も含め)」として工場誘致を進めたい方向性が暗に出されました。その際、16通ものパブリックコメント中、7通が、ここの工場問題や地域特性について、十分な説明を町に求め提案する内容でした。しかし、パブリックコメントは形式的な通過儀式でしかありませんでしたから町の方向性はこのときのままが実情です。
環境基本条例を土台にした環境基本計画策定の際も、パブコメは形式的に終始。寄せられた町民からの意見は100%無視され、通常ならホームページに掲載される町の回答もありませんでした。昨年11月23日に実施された事業者向けの環境基本計画説明会の案内を川井林業に出すことも環境対策課はしませんでした。環境がこれからの町政の大きな柱のひとつであるのですから、担当課は積極的に誠意ある対応姿勢になっていってくれることを切に望みます。


新町長が、環境、教育、福祉とそれらを土台にした産業の育成を掲げ施策を推進する際には、この「環境保全等用地」の特性を充分にご理解下さいますようお願い致します。
岩手山麓の自然生態系の回廊にあたり、希少動植物が生育している地域であり、田園景観形成区域にも指定され、町の観光と酪農地帯の重要な地域であることを大前提として、里山保全の大きなカテゴリーのなかで、森林税を活用した間伐などの手入れを行ないながら、雫石町の資産価値が上がるような活用を行なっていただきたいと願っております。
当会の世帯は殆どがこの地域の環境が好きで雫石町民となったように、この地域の魅力は大きいものがあるのです。

私達は、企業誘致そのものを否定しているのではありません。環境規制のハードルが低いところに立地したいような企業誘致は、今回の誘致のように、目に見えて環境汚染が進んでいくでしょう。環境重視の視点を強くもっている自治体こそが、真の雇用確保に繋がる優良な企業誘致や雫石ブランドの産業育成も可能なのだと思います。
環境保全等用地の残地利活用は、川井林業雫石工場の環境対策推進がなければ、その用途は大きく制限されることは言うまでもありません。 
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新町長への期待と課題

2011年01月09日 | 「しずくいし銀河の森」
昨秋 2010年10月24日、雫石町長選挙が行なわれた。
表面的な表看板には「環境に配慮した町づくり」「キラリ輝く雫石」云々など、きれいな文言いっぱいで、内実は私利私欲むき出しの前町長は、約1000票差で落選。
環境・福祉・教育とそれらを土台にした産業の育成を掲げた深谷政光氏が当選した。

このブログ更新を一定期間行なわずにじっと耐えていた。
首長が替わらなければ何も変わらない。自己流に言わせてもらえば、これまでの町政はまるで詐欺行為であったのだから。

首長が替わって、では一朝一夕に変化するか。
そんなことは期待していない。
しかし、私利的な思惑で立地的な条件や環境対策は提示せずに企業誘致を行なうようなことはしないだろう。

それだけでも大変な喜ばしいことと歓迎している。

私達が『しずくいし銀河の森』と名付けていた88.5ヘクタールもの小岩井農場に隣接する町有地は、山林地と一部畑の地目で構成されている。30年以上も手入れもされていない銀河の森は、倒木も多く、人の手がほど良く入るのを待っている。

岩手森林税の活用、一部有償ボランティアの活用などを行ないながら、大きな里山保全のカテゴリーの中で、町の資産価値も上がり岩手山麓の自然環境を活かしながらの活用方法が必ずや在る。

銀河の森のなかの13ヘクタールを賃貸している川井林業雫石工場が、これまでのような環境対策を遅々として進ませない経営手法で稼動を続ければ、残地町有地75ヘクタールの活用保全に大きな負荷を与えることは明白であり、最低限、排煙と低周波騒音の対策が必要であることは、残念ながらブログ更新前と変わっていない。

川井林業には、企業経営倫理上の社会的責任からも一刻も早く有効な対策を行なう「責務」がある。立地協定書、土地賃貸契約書、雫石町環境基本条例、等々の根拠があるのにかかわらず、これまで何も有効対策をつよく企業に求めてこなかったのはなぜか。
書かなくても読者は想像がつくことと思う。


前町長が専決で誘致してしまったこの企業への町の環境施策の姿勢、残地『銀河の森』が雫石町の未来に宝として遺されるかどうか、
これは新町長の手腕のひとつの試金石となるであろう。

期待しつつ協力していきたいと思っている。

本音を隠した「都市計画マスタープラン見直し」

2009年07月28日 | 「しずくいし銀河の森」
(写真は、町長が誘致した大型製材工場のために伐採され希少動植物を押しのけて整地された13ヘクタールに及ぶ大規模開発行為の現地。2007年2月撮影。「雇用確保」を言うならば、仮にここを盛岡広域を含めた地域医療福祉のために用いたならば、サクラソウの日本四大群生地の一つを保全して活用したならば、十数名の工場従業員以上の雇用創出と地場農産物消費が行われただろうに。なぜに企業誘致にこだわるのか。それしか雫石町の生き残る道はないというのだろうか。)


最も端的にいまの雫石町政の本質を物語っている4年前に起きた小岩井農場隣接地産業廃棄物焼却(溶融炉)問題。
この推移と背景の記録について膨大な資料を整理しているうちにも、次々と生じてくるさまざまな問題点がある。


雫石町ではいま、平成10年(前町長時代)に定められた都市計画マスタープランの「見直し」が着々と進められている。並行して環境基本計画策定の検討が行われている。


見直し案には町の北部・中央部・南部、ともに、
『雇用確保のために工業地帯を』という内容が含まれている。
銀河の森=町有地「環境保全等用地」を工業用地にしたいという町長の本音の目論見を議論のまな板に乗せて是非を問うのではなく、町全体に広げた書き方。
八幡平・岩手山麓景観形成区域内で実行していくため既成事実(誘致してしまった大型工場)を作って、あからさまに目的を書くことによる反対や異議を封じ込めるいつもの町長流施策実行の布石。

マスタープラン見直しの行政区回覧を読んだときに真っ先に感じたことである。

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どんなコメントが寄せられたか、それに町はどう回答しているのか、活かそうとしているのか、又もや表向きは民主的風に内実は潰そうとしているのか、興味のあるところだった。

  (掲載全文は雫石町ホームページから。是非ともすべてのパブリックコメントをお読み頂きたい。)
http://www.town.shizukuishi.iwate.jp


正直意外だったのは、公表されたもの全てで16通も寄せられたこと。
そのうち7通が、「通称、長山街道」「岩手山麓を含む北部地域」の“観光客が魅力を感じて来る地域”の森林観光ゾーンとしての保全にふれたものであること。
更に直接に、「極楽野地区」「環境保全等用地」「煙モクモクなど環境問題が未解決」「景観形成」「里山自然環境保全」「観光交流ゾーン」等々の表現で提言がなされたこと。


特に、ストレートに表現し、問題点を指摘していると感じたコメントを抜粋してみると::::
                  ↓

【雫石町の近郊には県都盛岡市と大都市に発展した滝沢村があります。都市近郊林・農村田園風景の「自然涵養地」としての機能がここ北部地域には求められているように思えます。
外から企業を呼び込まなくても、地域でこうした取り組みがすでに始まっていますので、行政には、地元の活力を側面から応援するような施策が望ましいのではないでしょうか。
今現在、極楽野では、白や黒の煙をモクモク吐いたり、操業中うるさい音を出す工場などの問題で住民からの苦情が出されるようになり、しかも、公害防止協定すら未だに住民と企業との間で締結されていない現状があります。このままでは、地元の人たちの努力があっても、「この音ではねぇ」「この煙ではねぇ」と折角都会から来た人たちが黙って2度と来なくなるでしょう。
マスタープランでは、ここ北部地域のまちづくりの目標を「山とまきばを活かした観光交流」としながら一方で工業系土地利用の項目で「本町への新たな企業誘致等に備え…工業等導入地区等の候補地選定に向け、…立地条件の調査を行い町内における新たな雇用の場の確保の場を図っていきます。」とあります。雇用の場の確保を口実に、工場用地選定をこれからするという「マスタープラン」では北部地域のまちづくりの目標である「山とまきばを活かした観光交流」さえ守れず、地元の折角の活力を削いでしまうような事態に至ってしまうように思います。
北部地域のまちづくりでは(北部地域だけに限らないかも知れませんが)、決して景観や自然環境を壊すような開発などしないよう、また、地元に今ある産業を地元の人たちがやっていけるようマスタープランを作っていただきたいと思います。少なくとも、企業誘致に関しては、雇用の場の確保をいうならば、「町内どこにでも誘致可能」なマスタープランではなく、「工業等導入地区等の候補地選定」を済ませ、その地を明記したマスタープランにして下さい。】


(こういった町民からのコメントを、今年3月議会で「排ガスや音について観光客からの苦情は寄せられていない」と答弁した前商工観光課長、現雫石観光協会事務局長の広瀬武氏は、どういう思いをもって読んだのだろうか・・と思う。
観光協会の工藤会長は「環境問題は観光問題ではない(・・ので、誘致工場環境影響の問題は観光では取り上げない)」「木材工場がイケないというなら、普通の家だってペンションだって建てられないということだ」という考え。産廃に反対したのは単にイメージ的なものだったのか。補助金誘導、既得権益の臭いは、国政だけではない。)


しかし、このようなコメントに対する町当局の回答はどうかというと::::::
               ↓
               
【都市計画マスタープランの見直しの時点において、工業適地等の候補地が具体化しておりませんが、今後のまちづくりを考える上で雇用の確保は欠かすことのできない用件であり、工業適地の検討を行う旨の方針とさせていただきました。
なお、検討を行う際には、交通アクセス等の利便性のほか、周辺の土地利用や環境への影響に配慮するとともに、住民の皆様のご意見を聞きながら進めさせていただきますのでご協力をお願いいたします。】


【当地区の町有地の活用につきましては、雫石町地域環境保全等用地土地利用計画策定検討委員会でその方向を検討することとなっておりますが、現時点では土地利用の方向が具体化されていないことから、当面は森林地域として現況を保全する方針とさせて頂き、委員会での方針が具体化された段階で、必要に応じた見直し等を検討させて頂きます。】


『環境保全等用地土地利用計画策定検討委員会』なるものは、2007年9月以降、一度も開催されていない。
委員任期は2008年3月末までであった。
2007年10月3日に行われた、『誘致川井林業木材加工工場立地に関する住民説明会』で、周辺環境に悪影響を及ぼさないものかどうかその「安全性」を確認したうえで、次の委員会を行い、町有地(環境保全等用地)の利活用ワークショップを行うはずだった。再度、この委員会を立ち上げるのだとするならば、町長寄りの人物で委員のすべてを選出するだろう。


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7月13日、雫石環境基本計画策定を主な議題とする「環境審議会」が行われた。
美辞麗句だらけで具体性がない素案に対して、町外の学識者委員からの主な意見をピックアップしてみるとーー


T委員
:町民の意見をいかに上手に汲み取っていくか見えてない。方向性を出した方がいいのでは。

H委員
:条例趣旨実現の戦略が必要だと思う。「住民意識の向上」などはいわずもがな。いかに実現して行くか。それがうかびあがってくるものがあればよかったと感じた。


TK委員
:環境基本条例検討委員会からの付帯意見を受けて町独自のものを考えているか。


環境対策課中村主査:環境アセスは他の町村でもしていないし、町レベルでは必要ないのではと考えている。規制は、別条例での規制することを考えている。(町長大きくうなずく)


では「環境基本計画」も環境条例と同様、お題目だけの「精神基本計画」なのか?

“町長の意向に沿うように”作られた環境基本計画「役場素案」で
表面的にいくら美辞麗句を並べても、本気で雫石町の最大の宝と言われる自然環境や景観を守り育てていくか、その具体性となるとまったくピシッとした回答が出来ないし、委員から指摘されたように環境条例の趣旨実現の戦略は具体性に欠けている。都合の悪い部分は【更なる条例を作って…】とするのなら、無駄な税金を使って暇でもない学識者を委員にしてまで行う審議会の意味はない。

ここでも本質的には、追って記録するところの、{雫石町役場の環境対策課は環境を合法的に破壊する為に作られた住民対策課である}という経緯に遡ることなのだ。

このように言われない為にはたったひとつ、
町政の志向を換えれば良い。
本質を換えることはなかなか出来ないだろう。
しかし、換えていくしか、変えていくしかないことに、早く気づいていただきたい。


町内外からの、上記のような意見提言の行く末を見届けていきたい。

「雫石町民」Q&A ・ 民主的風?看板からの脱却を

2009年07月06日 | 「しずくいし銀河の森」
今年3月に一回目の雫石町環境審議会が行われた。
諮問は、一般廃棄物処理計画と、環境基本条例に基づいた(はずの)「雫石町環境基本計画」策定検討である。二回目は7月13日に行われるという。

この審議会は平成19年度(20年2月末締め切り)に住民委員の公募が行われたが、町長が選出した住民委員は、前助役と前町議会議長夫人であった。

「応募者」はなかったのだろうか。…期限翌日ではあったが一名あったのだ。

行政区回覧が回ってくるのが遅く、期限ぎりぎりだったので環境対策課長に聞いたところ、まだ誰も応募者がないという事だった為、期限翌日ではあったが3月1日に町長宛に遅れた理由も書いて委員に応募したということだった。
経営推進課に問い合わせたところ、その人だけとのことだったので、受理されたと思っていた。ぎりぎりで遅れた理由も書き、課長も知っていた上のことであり、委員確定まで1年経過していることといい、期限内ではなかったという理由だけでは疑問を感じる。環境対策課からも何の知らせもなかったので、審議会はまだ開かれていないと思っていた、ということだった。
しかし、町は期限過ぎの理由だけで切った。
環境基本条例検討委員会(委員10名)では、町の環境を守るに値する規制を取り入れることが委員10名全員一致で挙げられたが、環境対策課は条例は精神条例とするという姿勢を崩さず、規制等は基本計画で策定するとのこと。そこで、条例委員会委員長を基本計画策定の審議会委員にすることを意見として出した。
町長はそれをしなかった。
<協議中における意見であり、決定したものではないと認識しています>
問い合わせに対しての総務課長(環境対策課に確認した上での)回答である。
環境基本計画策定に際して環境条例検討委員会から「付帯意見」も提出したが、一回目の審議会に提示されなかったため、これについても質問した。
回答では、二回目の審議会に提示するとのこと。


『雫石町環境基本計画』が、雫石町の環境を守るに値するものかどうか、この審議会で答申される「環境基本計画」を大いに期待して待ってみようと思う。



町が誘致した大型木材工場の立地説明会では、雇用確保と林業活性化の面から、「やらせ」の誘致賛成意見が出された。(時間切れというだけで質問に答えず打ち切った説明会。それを司会したのが前述の委員に選出された前助役である。)
私は思わず叫んだ。
このような説明会では雫石町は泣く・もう一度開催してもらいたいと。

マスコミのマイクには「再度の開催を検討します」と答えた町長だったが、二度と行われることはなく環境保全等用地として血税で取得した町有地に「特定騒音発生施設」「ばい煙発生施設」付きの大型木材工場を独断誘致した。

パブリックコメントも形式的に行いましたという事実を経ているだけに過ぎない。
活かそうとしない、出来ないのはなぜか。

「住民参加・協働・官治から共治へ・ひとりひとりがきらり輝く・・・・」
これら、しゅっちゅう出てくる民主的臭いのする言語を表看板にしたワンマン手法の詳細は、追って明らかにしていこう。



さて、
先日、町長が誘致した大型木材工場の隣りの花卉栽培ビニールハウスで働いているという「雫石町民」の方から質問のコメントが寄せられた。
前に投稿があった「雫石町民」とは違う方のようだが、この質問は、この地域で起きている問題どころか、誘致工場がここにあることさえ知らない町民が多い現実の中で、一般的な疑問質問だと思うので改めて紹介しよう。
(質問は原文のまま・回答は一部加筆)



(質問コメント)

このような活動を行っている方ならご存知だと思い、3点ご質問致します。

1.工場を建設することで付近の動植物に悪影響が出るとの事ですが、実際に悪影響がでた動植物はありますか?

2.工場が出す物質によって健康被害を被る方がいるとのことですが、実際に健康被害に遭われた方はいますか?

3.騒音が気になるとの事ですが、私は工場の横にある園芸施設で働いております。長い時は朝から夕方まで園芸施設内におりますが、騒音が気になった事は一切ありません。ましてや、数km離れた所で騒音が気になりますか?

ご回答をよろしくお願い致します。



(回答コメント)

ご質問ありがとうございます。

発行人自身がこの工場敷地から500~600mに住んでおり、半径1km付近の範囲には約18世帯が住んでいます。
又、ご存知かと思いますが、2006年12月に正式に計画中止となった産業廃棄物溶融炉計画地とこの工場は、町道を挟んで同じ地域に在って、産廃問題の際に、環境影響調査(環境アセスメント)を二年かけてしっかり行うように当時の県知事から判定された地域に当ります。
判定基準に照らした主な理由は、
・八幡平・岩手山麓景観形成重点地域内であること。
・オオタカの営巣等、岩手県レッドデータブック記載の希少動物・植物が生息していることから、四季を通しての調査が必要であること。
・付近には、ペンション、篠崎民宿群などがあり、人と自然のふれあい活動があること。
・国が定めた名勝「宮澤賢治文学の風景地」が付近にあり、水蒸気を伴う白煙は景観に相当程度の影響を及ぼすと予想されること。
等でした。

この工場の立地場所はそのまま当てはまります。
但し、アセスメントが必要な事業規模ではないために、不十分な調査だけで立地場所の町有地を町は工場に賃貸しました。

このような背景の上で、大雑把ですがお答え致します。


1.工場を建設することで付近の動植物に悪影響が出るとの事ですが、実際に悪影響がでた動植物はありますか?

工場の敷地内(原木置き場)にはかつて、二本の沢が流れていて、野生サクラソウが群生していました。ここ岩手山麓は日本4大サクラソウ群生地のひとつだったのです。2007年5月、開花している株を中心に沢の下流の方に移植。町道側の沢下流域に移植されたものは減衰しています。実生のサクラソウ達は整地のための重機によって大半は潰されました。他の貴重ランク上位のものは移植地で育っているようです。
広葉樹は1200本ほどが伐採されましたから、ツキノワグマ、カモシカなどの行動生態にはすでに影響が出ているかもしれませんね。
サンコウチョウの鳴き声はめっきり少なくなっています。

開発は人間生活にとって避けては通れないものでしょう。しかし自然の生態や景観などへの配慮が欠けてしまうと様々なゆがみが出てくるでしょうし、特に大規模事業開発では雫石町の最大の宝の自然や景観などに負荷がかからないような施策であってほしいと願っているところです。
(写真は強制的に移植された開花中の野生日本サクラソウ。サクラソウは結実媒体となるマルハナバチ~その営巣となる野ねずみの巣など含め、生態系全体を保全する必要があるため、沢一本スジの区域だけでも残すことを提案もしましたが、町と会社は一部の移植で済ませました。)


2と3は合わせてお答えしたいと思います。

2.工場が出す物質によって健康被害を被る方がいるとのことですが、実際に健康被害に遭われた方はいますか?
3.騒音が気になるとの事ですが、私は工場の横にある園芸施設で働いております。長い時は朝から夕方まで園芸施設内におりますが、騒音が気になった事は一切ありません。ましてや、数km離れた所で騒音が気になりますか?



この工場はご存知のように、いまは製材だけですが、将来は集成材工場にする計画があります。そのときに用いる接着剤は、ホルムアルデヒドを含んだフェノール系を当初予定していたとのことですが、高分子イソシアネート系に変更するということでした。しかし、可塑剤や硬化剤といって、一緒に用いるものについての回答がありませんでした。(ちなみに住田町にある集成材工場では、可塑剤硬化剤のなかにホルムアルデヒド含有のものが使われています。)

現在、この工場が設置している毎時10トン蒸気製造の木くず焚きボイラーから排ガスとして排出される物質の中で法律で規制されているのは、①煤塵②窒素酸化物③硫黄酸化物ですが、たとえば煤塵が法律にふれる量というのは、白いシーツが汚れていると見て判るほどなのだそうです。(盛岡市焼却炉公害監視委員の先生談)
煤塵とは文字通り、すす・ほこりの類いです。
窒素酸化物、硫黄酸化物等は酸性雨の原因であり、喘息などの呼吸器系疾患の原因となります。

いま現在、医師から診断書で「○○による症状」と診断されている「健康被害」は出ていません。「ない」のではなく「出ていない」だけなのです。
出てからでは遅いのです。

化学物質過敏症という病いを知っておいででしょうか。
化学物質過敏症というのは例えて簡単に言うなら花粉症と同じで、微量でも長期間さらされていると誰にでも発症する可能性があります。
産廃溶融炉問題のときから幾度も町役場には、大気環境の良さは「農業と観光の町しずくいし」には大事なものなんですよ、ということを申し入れたりお願いしたりして参りました。
空気や水の綺麗さというのは、無くなってみてはじめてその有り難味がわかるものだからで、取り戻すには膨大な時間と費用が必要になるからです。


この工場は、昨年8月から10月にかけて、川井村から接着剤木くずを運んできて燃やしていて、保健所から届出燃料ではないので燃料としないよう指導されました。
しかし、1月のボイラー修理後も黒い煙、黄土色の煙はしょっちゅう見られましたし、4月には深緑色のばい煙が出ていましたが、5月連休明けからはずいぶんと改善されているように見受けられます。
「接着剤木くず・防蟻防腐処理木材を燃料としない」ことは、このような立地環境を知っていた上でこの地域に進出した会社の経営倫理の現われとして、町役場には誘致した社会的責任として公害防止協定に反映してもらいたいと願っているわけです。


「騒音」のことです。
騒音とは文字通り「騒がしいうるさい音」で、これはある程度慣れます。
私達付近の世帯が困っているのは、「騒音」に加えた「低周波音」というものなのです。音量を測る器械で計測をつづけてみて判りました。
これは慣れることがなく、ますます敏感になっていくのが特徴なのだそうです。特に体の弱い人などは。
同じ世帯でも、人によって感じ方は違うのだそうです。
ある人は、日によってですが頭に響いたり胸の動悸がしたりで建物の陰に車を移動してそこで寝たり、ご近所で工場に向いた部屋で寝ていたおばあさんは、“あたまがゴンゴンして”気が休まらず元の家に帰りたいと言われました。
不思議なのは、工場とこの近辺の間には、500mほどの森林地帯があるのにです。
工場の隣りで働いていても気にならないとおっしゃるとおり、近くで聞く音と困っている低周波音+騒音の聞こえ方はまったく違っています。
例えていうなら、遠雷のような音・ガスバーナーが燃えているような音・ジェット機の音が遠い雲間から響いてくるような…と例えることができます。
とても不気味で耳ざわりな不快音です。

この音はいまのところは工場から500~600mの限られた地域の数世帯で起きていますが、
四六時中聞こえる日もあれば、朝と夕方が特にひどかったり、日によって夜中午前2時頃もぼ~~~っと聞こえます。
訪ねてきた人が、飛行場があるのかと思った、と言ったことも何回かあります。

そこで、低周波音などというものはどのような対策をとったら良いものか、初めて出っくわすことなので大変困りました。
環境省の対策マニュアルに示されているように、専門家を入れて、苦情世帯を入れて、地元で計測した資料も交えて、検討していただきたいと役場に頼み続けていますが、昨年8月と9月に来たっきりで、まだ生かされていません。独自の調査は会社と協力して行っているようですが、被害苦情世帯を抜きに改善された実証はできません。
環境省参照値という参考の数値以内だから、一部の人しか苦情を訴えていないからと議会答弁で町長は言いましたが、実際はオーバーしている数値もあるのです。


ちなみに、自然生態系や景観が岩手県の宝と言われている地域ですのに、「騒音」も排ガスのなかに含まれる硫黄酸化物の排出規制も、『指定区域外』として最低レベルの法規制しかありません。法以上に守るには、会社との独自の契約(公害防止協定)できちんと決めて事業者に守ってもらうしかないのが現状ですので、
「接着剤木くずを燃料としない」ことと同様に、会社の経営倫理の現われとして、町役場には誘致した社会的責任として、有効な対策をとり、雫石にふさわしい公害防止協定を結んでいただきたいと願っているわけです。


このような状態が、閑静な観光地、小岩井農場の隣接行政区であるこの地域で起きています。

雫石町長による岩手山麓景観形成区域の環境破壊

2009年05月17日 | 「しずくいし銀河の森」
写真は、中屋敷十(たてお)現雫石町長が、企業との立地協定や自ら定めた環境条例の責務を守らず、環境対策の約束もせずに裁量権によって誘致した有限会社川井林業雫石工場の『木くず焚きボイラー』から排出された黒煙。
4月10日午後5時20分には、深緑色の煤煙が目視されている。
1月13日には電気集塵機のダストが燃焼してショートしてしまい、200本の電極棒が曲がってしまった。警報機がなっても稼動を続け、「本格修繕」は「大気汚染防止法排出基準をクリアすることが担保できなければボイラー稼動を停止せよ」という検査機関の指摘を受けた後のことであった。
「環境配慮」も、ワンマン体質の町長と事業者にとっては絵に描いた餅なのか。


このような加圧式木くず焚きボイラーは、接着剤木くずや乾燥させて一定の形状にするべきという一般の木質チップボイラーや家庭用薪ストーブの燃料指針は適用されず、売り物にならない濡れたままの樹皮くず、化学物質が付着したままの端材など、本来は産業廃棄物の指定を受けている木くず類他何でも燃焼させてしまっている実態がある。
売れる物は売り、売れないものは燃やす。これでは本来の環境配慮資源循環型木質バイオマスボイラーとはいえず、処理費用をけちっているだけにしか過ぎない。

「役場と川井林業の協定案」として一年前に同じ案文を二度も地元に示したなかに、排ガス規制値は隣村の廃棄物焼却炉と比べると2.5~20倍もゆるい、法基準すれすれのものだった。

なぜ、ボイラー性能として届け出た「計画値」を協定値とできないか。

一年稼動した経緯を見るとその真相が明らかである。
濡れたまま、場内散乱の樹皮粉、他から運んできた接着剤木くず、緑色の煤煙の原因となっていたであろう化学物質、重金属を含んだ何か、これらを燃焼させたのだから、ボイラー性能が保障できないで異常な煤煙が発生し、機器にも故障が生じるのは当然の結果なのだ。


この姿勢でいる限り、この木屑焚きボイラーは焼却炉併用のボイラーといえる。
このことは2006年11月10日、岩手県環境生活部長に意見書を提出した。


2006年12月20日、盛岡地方振興局長立会いで立地協定締結。
川井林業社長は記者会見席上で『環境に配慮しないと私たちの存在価値はないと思う』とコメントし、1月の雫石広報に掲載された。
産廃溶融炉建設に反対し、この大型木材工場誘致については、他のモデルと言えるような環境配慮が反対しない前提であるという姿勢だった小岩井農場も、その後は誘致工場による環境悪化には口を閉ざしたままである。
小岩井115年以上の歴史と創立精神から見れば、実に悲しむべきことと言えよう。



新緑がとても美しい季節を迎えた極楽野 クロツグミのさえずりが泣いているように聞こえる。

宮澤賢治文学の舞台風景として国の名勝指定を受けている5箇所のうち、鞍掛山、狼森(おいのもり)、七つ森。3箇所がこの地域の周辺に在ることの価値は、まったく無視されている。
国の名勝指定地の周辺地域であり希少動植物生息地であり、人と自然のふれあい活動が行われているとして、2005年に当時の岩手県知事からフルアセスメントが必要と判定を受けた地域・・・

その地域が今後ますます“産廃でなければ良いものだ”地域活性化と雇用確保のためと称しての工場進出に異議を唱えない地元、町議会。
土台には飲ませ食わせ利権私利私欲の渦・・・
修復不可能な環境悪化が広がるか、利権がらみの捜査が入るような事件が起きてからでなければ、気づく人の輪は広がらないのだろうか。一寸先はだれにも判らない。

雫石広報には相変わらず「きらり輝くしずくいし」「一人一人が輝く町づくり」の文字が並んでいる。



今朝の行政区回覧に、『町のマスタープランの見直し』について説明会とパブリックコメント募集を行うというものがあった。
町の北部・中央部・南部、ともに、『雇用確保のために準工業地帯を』という内容が含まれている。
「銀河の森=環境保全等用地」を準工業地帯にしたいという現町長の目論見を堂々と述べて問題点を洗い出し賛否を問い議論するやり方ではなく、町全体に広げた書き方。
しかし、町長の目的は『銀河の森』=(環境保全等用地として購入した町有地)を準工業地帯にすることなのである。


景観形成区域内で環境破壊を実行していくため既成事実を作り、反対や異議を封じ込め、広報とマスメディアを使ってプロパガンダする、住民参加を装い、パブリックコメントや審議会委員会は実施するがそれは形式上住民同意のお墨付きを得るためだけのこと。中屋敷町長流施策実行の布石である。それに気づいている町民は少なからず存在する。
一縷の灯りのごとく。


一人の首長の、小岩井農場の隣に産業廃棄物溶融炉を建設することを“後押し”する感覚。
この計画が中止となったとき、彼が学んだのは自然と生活の環境を守ることの大切さではなかった。
岩手県民の宝、引いては国の宝と言われている岩手山麓が、このような感覚の首長の胸先三寸で破壊されていこうとしている。


記録を続けよう。


小岩井農場隣接地「産業廃棄物溶融炉計画」意見書ー2

2009年04月23日 | 「しずくいし銀河の森」
昨日、鶴岡啓一千葉市長(68)が警視庁捜査2課によって収賄容疑で逮捕された。鶴岡千葉市長は、旧自治省や旧国土庁などを渡り歩いてから国土庁の外郭団体へ天下りした人である。彼は官僚時代に築いた政官財の癒着システムを利用して、数々の公共事業で企業からの賄賂を受け取り続けて来たと報道された。平成14年の排水施設改良工事(落札額3950万円)、15年の下水道排水施設工事(落札額41億7000万円)、16年下水道施設移転工事(落札額1億5500万円)、17年街路築造工事(落札額4270万円)、19年道路改良工事(落札額2500万円)など、特定の企業から賄賂を受け取り、その見返りとして便宜を図っていたとされている。発覚原因は『内紛』とされている。“うらぎられた癒着企業”なのか、市役所内部からの告発なのか、その両方なのか、今後の捜査で明らかになってくるだろう。報道によれば、政治献金として受け取りはしたが、賄賂ではないと本人は主張しているという。

一連の「お金」の動きが法律的には「違反」に当らない、賄賂ではない、と主張する為政者のなんと多いことか。

2005年3月に、時の環境大臣、岩手県知事、副知事、現職の中屋敷十(たてお)雫石町長あてに提出した意見書並びに要望書に、私達はあえて「地方自治体首長としての雫石町長の責務について」という項目を入れた。
<地方自治法第2条3の一に定められた基本原則を記すまでもなく、住民及び滞在者の安全、健康及び福祉を保持することは、自治体とその首長に課せられた責務の基本であります。地方自治の基本を常に念頭において実行するよう切望します。>
生活環境と自然環境保護のためには、「情報の共有・説明責任・協働・予防の原則・住民参加」が基本である。町長自身が施策の基本に掲げているのだ。
しかし、この産廃溶融炉問題で彼は、ぎりぎりまで町民にも町議会に対しても説明責任を果たさず、産廃問題後に同じ地域に町長裁量権によって誘致した大型木材加工工場(敷地面積13ヘクタール=町有地「環境保全等用地」貸与・工場建屋面積約7千平米)による低周波騒音や排ガス規制についても、町長は一貫して企業擁護の姿勢を崩さず、被害苦情を申し出ている住民の方を向くことはない。「法以内であれば環境は守られる」という答弁を繰り返している。


「民間企業による小岩井農場隣接地における岩手県内最大規模の産業廃棄物溶融炉計画」の時系列推移をのちに記録するが、署名活動を通している最中に、結構な数の町民から「やっぱり…」という声を聞かされたのであった。
そして、この「計画」が破綻した4ヵ月後の2006年4月、降って湧いたように持ち上がった有限会社川井林業雫石工場(本社:岩手県下閉伊郡川井村)の誘致問題は、舞台の背景が変わらない第二幕なのであった。(同社社長は川井村第3セクター「ウッティかわい」の社長を兼任しており、この第3セクターは平成4年から16年まででも国費と県費から14億円以上の補助金が投入されている。)



まずは意見書全文について先号の続きを記録しよう。


4.(現時点で私たちが考える法令上の問題点)

『産業廃棄物を処理する施設を設置するにあたっては、廃棄物処理法で規定する技術上の基準に適合している施設としてあらかじめ知事の設置許可を受けることが必要となっています。また、岩手県では、循環型地域社会の形成に関する条例により、この設置許可に先立って事前に知事に協議することを義務付けています。
なお、廃棄物処理法及び循環型地域社会の形成に関する条例において定められている産業廃棄物焼却施設の技術上の基準、許可の基準には、産業廃棄物焼却施設の過度の集中により大気環境基準の確保が困難となると認められる場合を除き、立地条件に関する規制は特に設けられていません。』
(2月2日岩手県環境生活部環境保全課回答による)

しかし、本計画事業会社が、上記3.に記したところの保全すべき環境内に産業廃棄物焼却溶融施設(県内最大規模)を設置するということは、法令で定められている基準値以内であったとしても24時間連日排出されるガスの含有重金属類、ダイオキシン類などが蓄積され、さらに硫黄酸化物、窒素酸化物等により、雨や雪の酸性化が進むことは明白であり、風評被害も含めた大きな影響が発生することは容易に予測できることであると考えます。

また、上記関連法令は、自治体との間で締結するよう県が指導している民間業者との公害防止監視協定に、住民の側に立った数値及び方法を具体的強制的に指導していないことに加え、倒産などが生じ営業不能になった際の処理にあたって原状回復に費やすべき企業負担責任はなんら規定がなく、血税により補償や撤去などが行われる事例が多々見られます。

これらのことを未然に防止、達成する観点からも、現在存在する自然環境、生活環境に大きな損害が予想される案件に対しては、県、町、更に環境省としても、適切な指導を行うとともに上記したように法令が不備ならば即急に改善する努力が行われるべきものと考えます。

特に、建築基準法第51条による敷地の位置決定をする際には慎重に検討の上、許可を与えないようにご配慮頂きますようお願い致します。


又、我国ではいまだ景観・環境形成のための国土利用のあり方に関する法整備が為されておりません。そのため、貴重な動植物生態系が破壊される事業が、民間、公共事業を問わず実施されてしまい、結果、景観を守るべき地域の中で修復不可能な自然破壊が行われている事例は枚挙に遑がありません。

この案件を機に、「美しい景観を保全すること」を施策の重要な位置づけとしている岩手県から、この法整備の重要性を関係省庁に発信していくことが重要であると考えます。

一方、環境省におかれても、この法整備の検討に早急に取り組まれるよう期待します。

(参考:2000年6月:建設省建設政策研究センター『景観・環境形成のための国土利用のあり方に関する研究~欧州(独・英・仏・伊)の国土計画・土地利用規則と風景保全~』参照)



東海村の臨界事故がそうであったように、「危険なものを危険なものとして扱かわなかった」ために、人の命や一生を破壊するような重大事故は起きるのです。

この地域でのそういった事故や被害の発生は、単に雫石町一町にとどまらず、日本国民の宝をみすみす失うようなものであります。この表現は決して過言ではありません。


5.(地方自治体首長としての雫石町長の責務について)


  『今後、設置予定者が事業計画を進める場合、県としては、循環型地域社会の形成に関する条例の規定に基づく事前協議を通して、技術上の基準等に適合しているか審査するとともに、土地利用の規制等関係する法令の適合状況について関係機関の意見を聴くこととなります。また、設置予定者に対しては、地域住民の方々に設置計画を十分に説明し、合意形成に努めるよう指導することとなります。』
       (2月2日岩手県環境生活部環境保全課回答による)

 
地方自治法第2条3の一に定められた基本原則を記すまでもなく、住民及び滞在者の安全、健康及び福祉を保持することは、自治体とその首長に課せられた責務の基本であります。特に生活環境と自然環境保護のためには、「情報の共有・説明責任・協働・予防の原則・住民参加」が基本であり、加えて、「施策の基本方針」と「環境基本計画の策定」がこの基本を以って十分に実行されなければ、町民と観光客を含む滞在者の安全、及び健康と福祉を保持することは出来ないのであります。

今後、上記回答にある意見聴取や、関連諸法にのっとった手順を踏む際には、これらの地方自治の基本を常に念頭において実行するよう切望します。


6.(岩手県及び雫石町に対する意見及び要望:まとめ)


① 自然環境及び生活環境の保全上、雫石CCについて、徹底した環境アセスメントを実施するよう、業者に対して指導すること。更に、環境アセスメントの結果次第では、雫石CCの建設申請を不許可とすること。

② 雫石CCだけではなく、表記周辺土地に関する開発計画案が提出された際にも同様の措置を講ずること。

③ 雫石町は、都市計画審議会に諮る建築基準法第51条による敷地の位置決定申請、及び、農業振興法解除の申請が業者から提出された際には、本意見書に記したところのすべての条件(公共性に乏しく、農地水利への影響の面)から、許可を与えないこと。

④ 調査の際、既存の動植物生態系を破壊しないよう、アセス調査前にも周辺住民の聞き取り調査などを実施し、アセス手法にも問題がないよう常に監視すること。

⑤この地域(雫石町長山地区)を「鳥獣保護区」に指定するよう、環境省はじめ関係省庁に働きかけること。

⑥ 生活環境影響調査に関しては、住民に対しての十分な説明責任と情報の公開と共有が為され、健康被害については特に綿密な事前調査と、万一の事態に備える企業責任の所在を明確にすること。

⑦雫石CC建設予定地から1300mに居住する化学物質過敏症の家族は、化学物質でショック症状(急激な血圧低下などを起し意識がなくなる。適切な治療をしないと死に至る。この患者の場合、有機リン系の化学物質とベンゼン環を含む化学物質を同時に吸入した時にはかなり危険性が高い。)を起こす危険性が大きいことから、排気ガス中のこれらの化合物含有予想量を即急に提示するよう、業者に対して指導すること。
 尚、化学物質過敏症は、有害物質に大量に、あるいは微量でも長期間にわたって
さらされた結果発症する疾患であり、誰でも発症する可能性がある。特に子どもたちは体の大きさの割に呼吸量が多いため注意が必要である。呼吸から入ってきたものは、直接血液の中に入って全身に運ばれる。雫石町は、緊急時の避難対策も含めて近隣の学校の関係者にも建設計画について明確な説明責任を果たすべきである。

⑧「ダイオキシン類対策特別措置法」では、調査研究を推進し、研究結果によって対策を講ずる、と規定されていることから、雫石CCの稼動による排気ガス中のダイオキシン類(塩素化ダイオキシン・臭素化ダイオキシンなど)と他の内分泌撹乱作用のある物質(環境ホルモン)全てについての予測データを早急に提出させること。合わせて、計画地の土壌、隣接沢地の水質並びに大気中のダイオキシン類の測定を事前に住民に公開する方法で行うよう業者に指導し、且つ下記協定に明記すること。

⑨ 建設計画が申請され協議されるに当たっては、上記物質類の協定値のみならず、定期的な点検、不具合、故障、事故などの監視体制についても、公共事業にも劣らない手法で十分に実施することを盛り込んだ公害監視防止協定を事前に締結するよう県は雫石町に対して指導を行うこと。
また、この協定締結にあたっては、排ガス濃度規制値を盛岡市や滝沢村などの公共焼却溶融施設の基準値以上に厳格に設定し、定めのない重金属類及び内分泌撹乱物質についても明記し、これらの検査費用は業者負担とすること。

⑩ 本計画には「公共性」が認められないことから、万一、営業不能になった際には、民間所有地における民間企業の営業とはいえ、土質、及び水質などを含めて原状に戻すべき項目を盛り込み、その費用はすべて実施した企業(親会社を含む)が負担し、公費負担は行わない旨を覚書として締結したのちに着手するよう指導すること。

⑪ 具体的な企業責任として、2月22日開催された業者説明会において説明された焼却溶融のシステムフロー図を翌日23日の岩手県環境影響調査技術審査会においては固形物は溶融炉に入れないと明言し、一夜にして図面を差し替えると発言した雫石CC設置申請企業は、そのシステムの安全性と管理責任上の資質が問われることは疑いの余地のないことである。それゆえ、このプラントの安全保障上から、明確なシステムフロー図及び「マテリアルバランスシート」(物質収支対照表)を町民及び県と町に対して早期に提出するよう業者を指導すること。又、今後岩手県は第一種第二種事業についてマテリアルバランスシートの提出を義務付けること。

⑫ 雫石町は、地球温暖化防止京都議定書による二酸化炭素4%削減をまず達成し、さらに長期にわたる対策を町及び町民が協働して地球温暖化防止を着実に進めていく必要があることから、この具体策を示すこと。

⑬ 表記周辺地域の今後の利用計画について、全国各地で展開されているところの「エコタウン」またはそれに類する産業廃棄物施設関連熱再利用を含めた構想は、景観保全の観点からは言うに及ばず、本意見書に記したすべての見地から、これに反対する。

雫石町は、表記周辺地域(約90ヘクタール)を町として取得ののちは、地方自治法の基本にのっとり、滞在者も含めた町民の健康と安全を確保し、福祉を標榜するに値する利用のデッサンを、広く住民および周辺企業と情報を共有しながら構想を描き、広く住民参加の下で立案すること。

⑭ 景観・環境形成のための国土利用のあり方を国政レベルにおいて提言していくためにもまず、岩手県に於いて「美しい県土の形成と保全に関して強制力のある」法整備を実施するよう、早急に検討に入ること。
又、環境省も同時に国として、この法整備の検討を行うこと。

⑮ 岩手県は指導監督責任上、雫石町に対して地方自治法の基本にのっとり、町民に対して十分な説明責任と情報公開をするよう、指導勧告すること。

以  上 

小岩井農場隣接地「産業廃棄物溶融炉計画」

2009年04月21日 | 「しずくいし銀河の森」
立法趣旨、条文の「目的」「理念」を為政者が遵守しなければならない仕組みがあれば、いま国中で起きている様々な自然・生活、両面の環境破壊は「歯止め」がかかり、限度はあったとしても守られるだろう。

小岩井周辺のような農村景観を重要視すべき地域に、環境基準はどうあれ、環境負荷が大きい工場などを建設することが出来ない土地利用規制について、国は実はすでに気づいているのだ。2005年旧建設省は『景観・環境形成のための国土利用のあり方に関する研究~土地利用規制と風景保全~』という調査研究をまとめてもいる。

しかし残念なことに、法令も県レベルの条例も、目的や理念には崇高な文章を掲げてはいても、実際にはなんら歯止めとなっていない。正確に近づけて言えば歯止めとして活用されていない。環境影響評価(環境アセスメント)然り、種々の環境条例然りである。為政者はいとも簡単に遵守すべき理念や目的をサッと戸棚の奥にしまいこみ、環境破壊を実行あるいは「後押し」している実例が沢山ある。
なぜ、いとも簡単にできるのか。ここにこそこの国の政治と為政者の本質が浮き出てくるといえるだろう。言わずもがなキーワードは「政官業の癒着」である。

先に記録した県内外からの提言がどのような背景から行われたのか、2005年3月25日に提出した6ページにわたる意見書を分割して掲載する。

当時の環境大臣小池百合子氏、当時の岩手県知事・副知事・加えて雫石町長 中屋敷 十(たてお)氏あてに2005年3月25日、各資料とともに提出したものである。彼ら役人は交代して行く。雫石町長は二期目後半だが。しかし、遺された環境破壊の地域の中で住民や生き物は暮らし続ける。意見書末尾には、この時点で確認された貴重動植物を掲載した。


(猛禽類)
クマタカ  環境省絶滅危惧 I B類(岩手県レッドデータAランク)
オオタカ  環境省絶滅危惧 II類(岩手県レッドデータBランク)
ノスリ   岩手県レッドデータ Dランク
ハイタカ  環境省準絶滅危惧種(岩手県レッドデータ Cランク)
(鳥類)  岩手県レッドデータ Dランク
ノビタキ・コサメビタキ・フクロウ・ヤマドリ・クロジ・イスカ他オオルリ・サンコウチョウ等多数      
(哺乳類) 岩手県レッドデータ Dランク
ニホンカモシカ ツキノワグマ 他 ホンドキツネ、ホンドリス、タヌキ、ノウサギ など多数 
(昆虫) 雫石町天然記念物指定
チョウセンアカシジミ 環境省絶滅危惧 II類(岩手県レッドデータBランク)他多数
(植物)
エビネ 環境省絶滅危惧 II類(岩手県レッドデータBランク
サクラソウ 環境省絶滅危惧 II類(岩手県レッドデータBランク)
トンボソウ(岩手県レッドデータ Cランク)
イガホウズキ(岩手県レッドデータ Cランク)他 ギンラン、ノビネチドリ、コケイラン等多数

(この後、2006年秋から07年2月にかけ、加えて絶滅危惧種の水生植物「ヒンジモ」、「キンセイラン」が発見された。野生サクラソウは大群落が発見された。この地域(岩手山麓)は日本四大サクラソウ群生地のひとつであることも判った。しかし、この産業廃棄物溶融炉計画が事業中止となった2005年12月からたった4ヵ月後の2006年4月、中屋敷町長は同じ地域の町有地に大木材加工場を二つ返事で誘致。産廃溶融炉『以上』の環境負荷を周辺地域に与えてしまっている。産廃問題から彼が学んだことは、『環境保護』の重要性ではなかったのである。サクラソウ群落は一部の開花していたものを移植し、実生の殆どは重機によって潰された。写真は群生地だった場所から望む早春の岩手山。)

この「意見並びに要望書」の記録を経た上で、岩手県環境影響評価技術審査会(アセス審査会)前後の動きと、雫石町議会(特に地元である西山地区選出議員)の動きを記録しておきたい。計画業者との癒着がいかにあからさまであったか、避けては通れない実態がある。



2005年3月25日

環 境 大 臣   小池 百合子 様
岩手県 知 事   増田 寛 也 様
岩手県 副知事   竹内 重 徳 様
雫 石 町 長   中屋敷  十 様

  提出者21団体 連名
  提出責任者「イーハトーブ雫石を守る会」世話人代表 嘉糠 くに子
  

本年3月31日までの間に岩手県知事が第2種事業環境影響評価調査の要否を判定するところの「産業廃棄物焼却施設、雫石クリーンセンター(仮称)」建設計画、並びに周辺地区町有地の開発計画に付きまして、次の点から、建設及び開発の許認可を与えないよう、また、雫石町長 中屋敷 十 氏に対しては、地方自治体首長としての責務を果たすよう、ここにこれまでの経緯及び事由を記して、意見、並びに要望として、雫石町ほか全国からの署名(第二次分4,751名・累計5,981名)を添えて、次の通り申し入れます。


1.(本意見書提出までの雫石町の対応の経緯)

2004年12月上旬、岩手県ホームページ審議会報告の議事録から町民に発覚した標記「雫石クリーンセンター(仮称)計画」(以下、雫石CCと称する)は、町民団体のその後の調査によって、2004年4月以前から、町長及び民間業者の間で話し合いが始まっていた形跡がみられます。

 町民からの問い合わせに対し町長は、建設予定地は本計画事業会社の親会社の所有地であることから、民間のやることなので町としては関知していないという説明でした。

しかし、2004年8月に事業計画書が事業者から雫石町土地開発調整委員会に提出され、10月には、山形県最上町に所在する同規模同タイプの産業廃棄物処理業を経営する民間建設会社に公費出張(町長以下計4名、1泊2日)、10月29日に手続きに関する指導要項が公文書として町長から事業者宛に送付されたにもかかわらず、一貫して町民や町議会議員の説明請求を拒んできました。

2005年1月31日に事業者から「第2種環境影響調査要否判定」に関する事業概要計画書が県に提出され、それに対する町長としての意見を県に伝える必要が生じて初めて、2月15日に町議会議員に対してアセス要否の意見を問う形で事業概要が説明されました。

しかし、その後も2月17日の小岩井農牧(株)からの書面による反対の申し入れに対しても「町長の立場は、県と町とのパイプ役でしかない。」と語っております。

2.(雫石町 町民運動の経緯)

2004年12月初旬、当会代表が岩手県ホームページ11月15日開催の環境影響評価技術審査会議事録から「雫石CC」の議題を知りました。

雫石町役場環境対策課に問い合わせたところ、「審議経過等その内容は町として把握していないので、県環境保全課に問い合わせて送られてきた資料を送付する。これ以外の情報については県環境保全課に問い合わせを」との、FAXが送られてきました。

更に「産業廃棄物焼却施設」としての計画内容を問い合わせましたが、情報公開条例により開示できないとのことでした。(環境対策課長・環境対策推進監1月7日談)(雫石町情報公開条例第7条の(5)を示す。)

不安に思った町民有志が独自で、産業廃棄物焼却と溶融に関する資料や事故例などを収集した結果、立地条件からみて、風評被害も含めたところの予想される損害、健康被害、自然生態系破壊等々に関して、多大な影響が予測されることに気付き、『知っていますか?』というチラシをつくり、情報を付近住民に知らせました。

その後、2005年1月18日、地元新聞社がこの問題を取り上げたのを皮切りに複数のメディアが記事として掲載したことで、町民有志による「署名活動」が始まり、1月30日町民任意団体『略称:イーハトーブ雫石を守る会』が発足。

2005年2月7日、同会は署名目標の約4倍(1230名)の第一次署名を添えて、岩手県知事(含関係部局)と雫石町長に対し、住民合意のないままに許可推進しないよう、並びに事業計画者であるマイトリー(株)に対しては立地条件その他に鑑みて計画を白紙撤回するよう要望書を提出しました。

2月21日、『イーハトーブ雫石を守る会』は雫石環境パートナーシップの共催を得て、全戸に新聞折込チラシを入れ、公民館を会場にした産業廃棄物と溶融炉について町民による勉強会を企画開催。
翌2月22日にはマイトリー社主催の住民説明会。
その翌日23日に、岩手県環境影響評価技術審査会が行われました。

 現在、本計画に反対する第3次署名活動を岩手県内から全国に拡大し、継続しております。


3.(本計画立地場所、及び表記周辺地域の保全の必要性)

① 雫石CCが計画されている場所及び、表記周辺地域は、岩手山南麓の小岩井農場隣接地であり、長山街道と銘打った本計画場所を通る町道から網張温泉に至る道路沿いも含め、岩手県内のみならず全国から観光客が訪れている岩手県第一の観光地の一画であり、岩手山麓景観保全条例による景観形成重点地域内の「田園形成重点地域」に位置している場所です。

② 雫石町は「農業と観光の町」を標榜しており、周辺農業地は有機栽培農家も存在するグリーンツーリズムなどの「地産地消型農業」の重要な拠点でもあります。

③ 本計画予定地から1300mの地点には「化学物質過敏症」の家族が居住しており、仮に建設が実行された場合、生命にかかわる重大な事態の発生が予測され、且つ他の住民へも大きな健康被害が予想されます。

④地元住民によって、オオタカやフクロウ類などの絶滅危惧種鳥類、オオルリやサンコウチョウ(三光鳥)の渡り、ツキノワグマ、天然記念物のニホンカモシカ、チョウセンアカシジミの生息や野うさぎ、ホンドキツネ、タヌキ、リス、なども目撃され、移植困難な希少植物の生育も確認されている貴重な生態系が存在している地域であります。

これらの点から、黒沢川東側にあたる隣接の小岩井農場地域だけでなく、この西側の長山地域全体を「鳥獣保護区」に指定する必要がある地域であると考えます。

⑤本計画地の東側隣接の沢は黒沢川上流として御所湖に流れ入り、一部上水道及び盛岡市太田周辺の米畑作灌漑用水として使用されており、その水質管理は重要であります。また、東側隣接の小岩井農場森林地は、水源保安涵養林として重要な働きを持っています。


上記の主な観点からだけでも、本計画予定地及び表記周辺地域は、自然環境と生活環境の両面から保全すべき地域であり、単に民間所有地であることや法令をクリアすれば進めざるを得ないというものではありません。

岩手県の施策の土台であるところの『美しい岩手の景観を大切にする』ということを実行することは、そのまま雫石の町づくりにとっても大切な基本であり、それが破壊されることが予想される際にこそ、雫石町長は自治体首長としての住民とともに歩む姿勢と適切な条例の整備や交渉、指導力を発揮されるべきであります。


4.(現時点で私たちが考える法令上の問題点)… 続く

公開討論会と町づくりーその5 「雫石町の自殺行為」

2009年04月07日 | 「しずくいし銀河の森」
昨日記録した町民から町長への提言に加え、もうひとつ札幌市民の方から当時の増田岩手県知事と中屋敷雫石町長に当てた提言を記録したい。
2005年2月7日、町長の説明責任と立地の不適正さを求めた第1次署名を添えて県庁へも要望行動を行った際もこの提言を読み上げた。【小岩井農場隣接地に産業廃棄物焼却溶融炉】という問題は、沖縄から北海道まで知られることとなっていた。
多くの人々が驚きそして落胆したこの「計画」
提言者はこう述べた。「景勝地のど真ん中に作ることが、雫石町にとって自殺行為に近いものだと申し上げているのです。」
しかし町のリーダーであるはずの町長にとっては「後押ししたい」ものだった。

(地図写真はマイトリー社産廃溶融炉計画の場所。国道46号線から車で15分、小岩井農場隣接の土地5ヘクタールに「雫石クリーンセンター」は計画された)



小岩井農場隣接地における産廃施設計画についての提言

<私は雫石町民ではございませんが、表題の件につきまして、思うところがあり、提言させていただく次第です。
私は妻が岩手出身のため、何度も雫石町には訪れておりますが、毎回、雫石町、特に小岩井農場から岩手山に至る地域の景観の質の高さには脱帽いたしております。
私は先だってまで環境コンサルタントに勤務しておりましたので、消して素人考えで意見を述べているのではなく、プロの視点から見て、すばらしい景観であると申しているのです。

特に北海道の観光地と比較しましても、町並み、景観、観光資源としての質はきわめて高いと感じておりました。これは雫石町民をはじめとした、岩手県の方のすばらしい県民性から来るものと考えておりました。特に、歴史あるものが、現在もあるべくして厳然としてそこにあり、景観ひいては風土を形作っている様は、全国に多くある即席の観光地では決して見ることができないものです。

しかしながら、今回、景観の心臓部とも言える小岩井農場の隣接地に産業廃棄物施設を建設すると聞き、非常に落胆した気持ちでおります。

通常の環境アセスメントの手続きで進めれば、計画自体は難なく進めることが可能だと思いますが、もし工事が着工されることがあれば、雫石町の観光資源を致命的に破壊するものとお考えになったほうがよいかと思います。

特に首都圏を中心とする県外からの観光客は、都会のまずい空気と水にウンザリして、2時間半以上もかけて岩手に訪れ、うまい空気と水、そしてすばらしい景観を求めて来ているのです。首都圏の人間は環境問題に対して岩手県民ほど鈍感ではありません。
平たく考えて、ダイオキシンや医療廃棄物などの処理施設が隣にある牧場の牛乳を誰が好んで飲むでしょうか? そんなところに誰が休日ファミリーで余暇を過ごすでしょうか?考えられないことです。
牛乳も観光地も全国どこにでもあるのです。少しでも気に入らなければ、お客は他に逃げて行くでしょう。施設の温排水を利用して花壇をつくっても、何のごまかしにもなりません。消費者の目はそれほど甘くはありません。

今のままの雫石であれば、他県と比較しても、十分にレベルの高い観光地だといえるのです。
私は、環境基準のことを申しているのではありません。世の中が感じているイメージや、田舎の観光地に対するニーズのことを申し上げているのです。
この件は、町が主導となって建設のあり方を考えるほかは打開策はないと考えております。

私は廃棄物工場を作るなと申し上げているのではありません。景勝地のど真ん中に作ることが、雫石町にとって自殺行為に近いものだと申し上げているのです。少なくとも建設地の選定のところから計画を見直されたほうがよいと考えます。

景観や風土は現在の人間だけのものではありません。孫子の代まで受け継ぐものです。そして、一度変更してしまった土地利用は二度の元の姿に戻すことはできません。
一雫石ファンの意見としてお聞きいただき、よくお考えいただければ幸いです。>


のちに提言者から次のような便りをいただいた。

<農村景観が守られず、地域の方の健康な生活が脅かされなければならない元凶は、田中角栄氏の日本列島改造論に始まる、土建国家日本の呪縛を未だに政府が引きずっているためだと思います。
最初にこの件をニュースで見たときに感じたことは、スイスのハイジの山小屋の隣に廃棄物処理場を作るというイメージです。ですから、これは雫石にとっての自殺行為だと思ったのです。>


「日本列島改造論」
産業廃棄物焼却溶融炉計画がなぜ出てきたのか、その背景には かの時代の呪縛が大きく覆いかぶさっていたのだった。

なぜ町長はこの「自殺行為」を「後押ししたかった」のか
それは産廃施設計画を生んだ母体計画があったからなのである。

公開討論会と町づくりーその4:公約と「構想」の矛盾

2009年04月06日 | 「しずくいし銀河の森」
(写真は2009年3月1日撮影:町長の裁量権によって独断的に誘致した大型木材加工工場からのばい煙が傘状に広がっている様子。岩手山頂から煙突まで11km。工場から撮影場所まで8km。この地域一帯は2005年3月11日、当時の岩手県知事によって環境影響評価(フルアセスメント)が必要と判定を受けた。判定文には『施設の稼動に伴うばい煙により、人と自然のふれあい活動へ相当程度の影響を及ぼすおそれがある』。しかし、中屋敷町長は「産廃でもなく放射能でもなく化学工場でもないから」として誘致。たった4ヶ月前に事業計画中止になった産廃溶融炉問題から彼が学んだものは「環境の大切さ」ではなく、岩手県を巻き込んだ“法以内であれば環境は守られる”という『合法的環境破壊』の構想実現の手法と『根回し』であった。)



公開討論会を経て町長に当選した彼は、会場での約束どおり、翌年1月23日同じ野菊ホールで「町長との対話」と銘打った会を町長主催で行った。町長は舞台の上。原則一問一答。自然エネルギー活用など多岐に亘る質問と彼の応答…。対話は深まることなく時間が来て終了となった。

帰り道、公開討論会主催のメンバーは下を向きがちだった。
『約束したから仕方なくやったって感じだったねえ。心配していたような気配が感じられたねえ…』
選挙の際、もっとも心配だったのが、中屋敷氏の支持基盤(票田)が建設業界だということと、人の話を聴く耳を持たない、という結構な数の人々からの指摘だった。<盛岡市の某建設会社の使いっ走りでその会社が町内に産廃の粉砕施設を建てるとき近所にハンコもらいに歩いたのが県議の中屋敷よ。そのうち、ピタッと来なくなったな。住民同意は要らないことが判ったからなんだと。煩いのには変わりねえのによ。調子のいいやつだ。>…こういった声を聞くにつけ、建設業界が支持基盤で選挙集会にも動員されたとなれば利権がらみの町政になってしまうのではないか…。当然少なからずの人がこういった心配をした。

そして任期一年目、彼の「南畑開発構想」は前述の通り第一場は幕となった。(第二場は全く別の形で実現された。アグリリサイクルセンター建設である。目的からみれば彼にとっての「構想」は福祉でもなんでもないことが判るだろう。詳しくは後述)

彼の「構想」の最大のステージは、小岩井農場隣接地に計画され、2004年11月に町民が知ることとなった民間企業「マイトリー(株)による岩手県内民間最大規模の産業廃棄物焼却溶融炉「雫石クリーンセンター」であった。これについての記録を先に遺すのは、この手法にこそ彼の「構想」の底に流れる本質が在るからである。


私の元へ、ある町民の方から送られてきた町長への提言文を転写する。
昨日要否判定申請がなされた云々…とあるので、第二種事業環境影響評価判定申請が岩手県に出されたのが2005年1月31日だったから、提言文は2月1日に書かれたものだろう。町長から「回答」があったのかどうかは不明。

町民の不安、町長に求める説明責任、雫石のような農業と観光を町是に掲げる町のリーダーに対して実に率直に且つ的確に意見を申し述べている。
わたくしが『雫石クリーンセンター』なる計画を岩手県審議会記録から“発見”してしまったのも、宿命だったのかもしれない。この提言に書かれている本質は、事業計画中止となった4ヵ月後の誘致工場問題の本質と流れはまったく同じなのである。

私達町民には町長はこう「釈明」していた。「自分は事業者と県とのパイプ役でしかない。」
しかし事業者は岩手県環境影響評価技術審査会の席上、委員の質問に対し「町からは後押ししたいと言われています」と述べた。すでに2004年10月26日に町長は山形県最上町の提携先産廃焼却施設を「視察」。その夜は由緒ある温泉宿に宿泊。マイトリー社重役も“偶然同宿”(町議会町長答弁)であった。詳細は後述する。



以下、一般町民から町長への提言 転写

<本日は今町内で重大な関心の寄せられている「(株)マイトリーの産業廃棄物焼却溶融施設建設計画」についてです。
昨日、マイトリーより県の方にアセスの要否判定申請がなされたようですが、町ではこの件に対してどのように対応していくおつもりなのでしょうか?
聞くところによりますと、この件に関しての住民からの町への問い合わせには「コメントなし」とのことですが、わが町の未来を左右する重大な問題ですので、いつまでも町当局の動きが見えてこないのは、住民としてとても不安です。
「バイオマスパワーしずくいし」や「雫石町ふるさと景観条例」など、環境と健康を守る町というイメージが強い雫石町ですので、当然県と業者に対して計画の見直しと撤回を求めることと思われます。

最悪この産廃溶融炉が建設された場合、この町の環境と、住民の健康に与えるダメージは計り知れないものがあります。
確かに排気ガス濃度は環境基準値以下に抑えることが可能とはいえ、それはあくまで排ガス濃度の問題で、総量で考えれば毎日365日かなりの量の発ガン物質・酸性雨原因物質・環境ホルモン物質・粘膜皮膚刺激性物質などが空気中に放出されることになります。

あわせて当雫石は盆地を形成しているため、その排出されたガスが気象条件によっては、長時間盆地の中にとどまることも十分に考えられます。
また、いったんガス漏れ事故などが起こった場合の周辺への健康被害・林業農業に与えるダメージ・町の売りである美しい環境に与えるダメージは相当大きなものとなります。

また、毒性の強い産業廃棄物を積んだトラックが多数走行することによる交通の危険の増加、万が一の横転事故などによる汚染物質の周辺への離散の危険もあります。

計画されている場所はとても美しい場所です。あの周辺には小岩井農場をはじめ、我々のそして旅人の心を癒してくれるすばらしい場所がたくさんあります。
そんな中に「産業廃棄物焼却溶融炉」がもし建設されたら・・・・、訪れた人はとても落胆してしまうことでしょう。
それは現在の「美しくすばらしい、また訪れたい町」から、「美しさを台無しにする施設の建設を許した、もう訪れたくない町」への転落を招くことになります。

町内には少数ですが建設を歓迎する向きもあります。その多くは建設業関係で、おそらくは工事が始まることによって地元へ仕事が来ることを期待してのことでしょう。
確かに、工事により建設業界にいくらかの利益が発生することと思います。
ですが、それによって町に得られる利益は、溶融炉が建設されてしまった場合のマイナス効果により消えてしまい、それどころか将来にわたって重い負債を残すこととなります。

工事によって町に得られる利益は数字をはじき出すことができますが、建設されることによって現在と将来にわたってこうむる損害は具体的に出すことができません。
当方はどう予想しても町の現在と将来の利益にはならないと考えますが、当方の心配するほどでもなく損害は少ないものかもしれません。
ですが、もしかしたら我々の予想を越える損害が発生するかもしれません。
規模の小さな案件であれば、「デメリットが予想されるが、メリットを期待して・・・」ということもあるかもしれませんが、今回の場合は町全体の環境と農業と健康が影響を受ける大きな問題です。
このような大きすぎる問題に対しては、ギャンブルをするべきで無いことは誰でも理解できることです。

町の一般焼却炉が立替の時期が近いとはいえ、計画されているものは産業廃棄物の焼却溶融炉ですので、同じラインで考えることのできる問題ではありません。
どこかに必ず造らねばならない施設であるというのならまだしも、必ずしも雫石に必要な施設ではありません。
ましてや相手は、県でもなく公益法人でもない一般の企業です。町は断固としてこの企業の計画に拒否を表明するべきと思われます。

町民が安心して暮らせる町、この町の住民でよかったと誇りをもてる町、多くの訪れた人が心楽しく過ごせる町、そのような町づくりを積極的に進めているすばらしい町長以下、町の議員・職員の皆様であれば、多くを語らなくても今回の溶融炉建設に反対の志を持っているものと思われます。
多くの町民がこの建設計画によって、町の未来への不安を感じています。町当局が自身の良心に従って町民の不安を払ってくださることを期待しています。

町として溶融炉建設に反対する意見を、県と業者に届けることを期待します。
心からお願い申し上げます。

追伸
こういった計画に反対した町は、全国にとても高い評価をされることでしょう。それによる宣伝効果と雫石ブランドのイメージアップによる経済効果も相当なものが期待できます。
ですが、もし環境を後回しにした態度を町がとったとしたら・・・・。それによるイメージダウンは、相当大きなものになると予想されます。 >



雫石町は「農業と観光の町」「山とまきばといで湯の町」を町是に掲げてきた。
町長の「構想」は町是に基づき、町是を伸ばす魅力が根底になければならないだろう。賢治童話の舞台になった場所の原風景が「宮澤賢治文学の風景地」として名勝指定まで受けている町なのだ。その価値に気づいてくれることを、私はいまも心から願っている。

公開討論会と町づくりーその3:賢者の直感と町長の「構想」

2009年04月04日 | 「しずくいし銀河の森」
(写真は、雫石町南西部の南畑地域 女助山付近からの遠望 )

2002年10月の町長選の4年前1998年秋、二期目現職と元町長、それに中屋敷十氏の三つ巴の選挙戦が行われたときのこと。町内在住のある賢者が、町にふさわしいリーダーを捜し求め、年齢が三人のうちで一番若い中屋敷事務所に彼を訪ねた。帰り道、一息入れに立ち寄って下さったとき私は聞いた。
「いかがでしたか、推挙できる人でしたか?」
その方は首を横に振りながら言った。『いやいや、年が若いから夢があるとかじゃないんだねえ。日本の政治の世界は世襲や親戚が多いとか業界がついているとかの票集め基盤がないと立候補さえも難しいことなのか。がっかりしましたねえ。』そしてこの時は現職だった町長が二期目の当選を果たし、残る二人は岩手県議会選挙に出て二人とも当選した。
賢者の面談感想はその後、随所で脳裏に浮かんでは消え、消えては浮かんでくることになったのだが。


それから4年後の2002年の秋、公開討論会を行うに当り、私の家に立候補予定者四人を一人づつ招き、主催者の会員4~5名ほどで公開討論会の趣旨を説明したり立候補を決めた動機などを直接伺う機会を持ったときのこと。

中屋敷氏は大きなカラー図面をテーブルに広げ、自分が当選したらこの「構想」を実現したいと話し出した。それは雫石町南西部の南畑(みなみはた)にあるコテージ村周辺開発の図面だった。当時、岩手県農業公社(理事長は天下り)がコンサルタント会社に委託して作成した構想図面だった。都会から農業をするために移り住んだ10世帯ほどの住民がいる地域の隣接地を区画整理して農地付き分譲地に、奥まった場所には老人施設、その隣接地にはなんと墓地公園といった「開発構想」の図面だった。県職員、県議員時代を通して県土整備部とつながりがあった彼は、自分が雫石町長になったら岩手県や公社と連携してこれを実現させたいと意気込み、素晴らしい構想だと思ってわたし達に披露したのだったろう。

私たちから即座に意見が出された。
「いま 町では町立病院の接遇を改善して患者を大切にするような地域医療機関のあり方を模索している最中。近い将来迎える高齢化社会の中で、医療と福祉の連携構想は必須である。当会でもそれに町民として取り組んでいる。構想は、見れば老人施設の隣に墓地公園…老後を農地付き分譲地で野菜作りを楽しみ、弱ってきたら施設、そして墓地まで用意する。これは町民にとって望ましい医療福祉のあり方なのか。南畑がそれにふさわしい用地選定なのか疑問である。こういった構想を策定するときは住んでいる人たちの意見も聞いたりしたうえで決定までのプロセスを大事にすることが必要だ。この構想は唐突すぎる。」

図面をたたみ、中屋敷氏が拙宅から帰る際の細かな成り行きはにはふれない。玄関先まで見送りに出たわたしが、ちょうどその夏頃に建設された道路向かいの大きな牛飼料倉庫が見事な岩手山の景観を塞ぐ形で建てられたときだったので、わたしはその倉庫を指差して言った。「お客様も配達の人も折角素晴らしい景色の場所だったんだから、場所とかデザインをもう少し配慮してほしかったと話して下さる。わたしもそう思う。中屋敷さんから見ていかが思いますか?」と聞いてみた。彼の答えは「あ・・これね、これ仕方ないんだよねえ」
仕方ないのかもしれない、法律的には確かに。
しかし、こういうことには鈍感な感性の持ち主なんだなあ…と感じたことははっきりと記憶している。

彼が広げた「構想」は町長当選後に「株式会社生活科学運営」という東京の民間企業が名乗り出て住民説明会などを行い、企業の社長は『町に引っ越して町民となって皆さんと共にこの構想実現に取り組みたい』と新聞報道された。しかし、コテージ村住民の皆さんは、押し付ける形ではなく住民の意向を汲んだプロセス重視の方法で再検討してほしい考えを行政に申し出たのだった。芸術やもの作りの人などが移住しやすい村になることが夢なのだとも。
「住民参加」「協働」といった看板を打ちたてていた町長一年生の中屋敷氏と企業は、採算性の面からもこの構想を断念するに至ったのは当然の結末だったといえる。

彼の「構想」とは、どこから出てくるものだったのだろうか。
町がその時点で抱えている町民生活の改善ポイントや農業と観光の町を標榜している雫石の未来像(ヴィジョン)を土台に考えられ、住民と十分に検討し合う余地をもって提案されたものだったのだろうか。残念ながら違うようであった。
そしてこのような「構想」は、町長在任が長くなるにつれ、そして「協働」とか「官治から共治へ」といったトレンディな用語に隠されながら、わたし達町民はある日突然降って湧いたように唐突に知らされることになる。