岩手山麓景観形成重点地域を守ろう ★『イーハトーブ通信』

野生サクラソウ大群落を潰し岩手山麓の環境を破壊してきた旧町政。産廃問題に端を発した岩手山麓『誘致公害』の記録

雫石町の責任の重さ

2007年05月30日 | 「しずくいし銀河の森」
写真は、東京ドーム2.5個分の「誘致工場用地」税金で銀河の森は皆伐された。伐採費用も樹木売却金額も昨年9月のうちには決まっていた。

ヤマシャクヤク移植未遂事件 
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5月29日午後3時頃、伐採地の2本の沢の中間点辺りにリュックを背負った人影あり、入ってみましたら「ヤマシャクヤク」堀上げ中!

役場商工観光課主査と川井林業社員2名でヤマシャクヤク計9株をバケツに入れて移植しようとしていた。(シュンラン一株も)
保全計画書が出ていない希少植物まで移植してしまうとはいけません、と元の場所に植え戻してもらった。
植物の植え替えそのものも、やり方がわからない様子。


・川井林業担当者が言うには、
 「県に電話で移植すると伝え了解してもらっている」と。
・「開示請求かけた保全計画書にはトンボソウだけは5月発芽期を待って移植する、と書いてあるが、ヤマシャクヤク、サクラソウ、その他、4月以降発見された希少種についての保全計画書は出ていない。県にも確認してある。」
・雫石町役場商工観光課主査いわく、
 「なんの権利があってそんなこと言うんだ」
・「希少種は町民の学術的財産です。それを、町民が開示請求もかけられない正式な手法でなく、専門家の立会いもなく、勝手に移植することはいけません。」 

・・・沈黙・・・  では生えていたところに戻しましょう
・・・となった。

■しかし、私たちが帰ったあと、彼らは再び希少植物に手をかけた。植え戻したものより更に多くの種類を。
その移植のとき、彼らは何を思い、何を話しながら、どんな顔をして「移植」をしたのだろう…。
ヤマシャクヤクの言葉を聴くことができただろうか…。

「末期的症状」・・・そう表現した人がいる。
雫石町の姿勢とその町が誘致しようとしている企業の有様を。

こういうやり方を止めさせない、というより、率先してやってしまう雫石町。
その強行態度にお墨付きを出した「植物有識者」
この「地域環境保全等用地」と周辺環境の価値が目に入らない。
残念至極。情けないこととしか言いようがない。

植物保護区まで町有地を借り上げる意図などを尋ねたのに対して、企業から一枚の手紙が届いた。
<雫石町の企業誘致施策に応じて進出を決断したのであるから、情報を得ようとする場合は町当局に聞いてほしい>

企業は「町の責任ですよ、雫石町が来て下さいというからですよ。」と言っている。

なりふりかまわぬ企業誘致は誰のため?何のため?
これは、だいぶ前にも表現した。次第に明らかになってきていると言える。

5月24日、サクラソウなどの移植実行

2007年05月27日 | 世話人会発行「イーハトーブ通信」を読む
5月24日、雫石町と企業は移植を強行 

◎昨日(24日)、工場予定地(今はまだ町有地)の2本の沢沿いに多数生息したサクラソウと、トンボソウの一部(他の希少種の一部も)が、移植されてしまいました。 あまりに無残な移植の仕方でした。これが彼らのいう「保全対策」。


◎(原木置き場にいた企業担当者の話によれば)
移植に立ち会ったのは役場商工観光課長、NS環境、川井林業から3名の5名。

移植地は、2本の沢それぞれの伐採していない樹林のなかの下流部流域。
道路側の沢の下流部は日差しも暗く、水辺ではあるものの適地といえるか疑問

道路側の沢沿いなど特に、たくさん出ていた若い葉っぱの部分は、すっかり踏み潰され、“花が咲いていてインパクトがある株だけ移植”という状態です。

目視確認されていた概数のごく一部が移植された模様。
残りのまだ芽が出てきたばかりのものや花が開いていないものは、相当数潰されるかかく乱された状態。

地下で生きている根や、発芽している若葉は、潰されて無残な姿。
(絶滅危惧種保全は、種子や発芽状態のものも含めて責務があるとのことですが。)

◎当会の願いは、(22日付町長宛の申し入れ書) 
『せめて、ヒンジモ生育地周辺の保全区から西側の沢部分は保護区として町が管理する「希少植物保護地域」として残し、川井林業に賃貸せずに、町の学術的財産として残(遺す)してほしい』というものでしたが…。

詳細と経緯は追ってお知らせします。取り急ぎ。

参考:
岩手日報 <<生物の多様性保全 日本の「里山」モデルに
         中央環境審 「21世紀戦略」案>>
http://www.iwate-np.co.jp/newspack/cgi-bin/newspack_s.cgi?s_science_l+CN2007052501000328_1

 <(略)戦略は「里山」をキーワードにした生物多様性の保全などが柱。
   日本が2010年に誘致を表明している生物多様性条約の締結国会議に
   向け、健全で豊かな自然環境保全のため、日本人が自然を利用しながら
   共生してきた「里地里山」の考え方を生かした日本型モデルを世界に発信
   する「SATOYAMAイニシアチブ」の実施を提案した。(略)>

雫石町が率先して「里山保全」を目指してほしいと痛切に思います。

☆おばあちゃん ありがとうございました…☆

2007年05月18日 | 世話人会発行「イーハトーブ通信」を読む
5月15日 産廃溶融炉問題以来、地道にそして精力的に、頭が下がるほど、町内商店街を巡り署名を集めてくださったり、いろいろ文句も言われながらも臆せずに、さまざまな人たちにこの一連の問題性を語り伝えてきてくださった おばあちゃんが、「あんばい悪いから病院さ行ってくる・・」と出かけたまま、帰らぬ人となりました。
最期のときまで「お手本」みせてくれましたね、おばあちゃん。。。


お散歩カーを押して腰が曲がっても元気な笑顔で、「すばらくだったなあ!」と声をかけてくださったお顔・・
3年前、溶融炉問題署名提出のときの町長室で
「ちょうちょうさんは町民のおとうさんだべ。おとうさんはこどもだづが困ることはやらねえもんだべ」
『溶融炉ってなんだのす?』勉強会のとき、
「町長さん、あんたの家の隣さ、こういうの建てられたらどう思いますか?」


私たちにはこう言って励ましてくれましたった…
「あんただづよそからきたひとがこの町ばきれいなまんま伝えていきたいって頑張ってんのに、むかすからいるおらたづがなにもすねわけにいかねがんべよ」と。

工場予定地になろうとしているあの土地を眺めたら、なんて言ったでしょうね、おばあちゃん。


おばあちゃんの「思い残し切符」をしっかりと受け止めていきたいと思います。
ありがとう☆ おばあちゃん! ☆

絶滅危惧種保護地域までなぜ借りる?なぜ貸す?

2007年05月10日 | 「しずくいし銀河の森」
2月末に工場予定地内で発見された絶滅危惧種の移植不可能な水生植物。
事業者は、大規模開発の申請の際に県の条例に則って希少野生動植物が計画地で発見された場合はそれなりの保全対策をしなければならないことになっている。
昨年中に発見された希少植物は12月の移植不適切期に移植してしまった。
今回の水生植物は、「流れ山群」(先号参照)の地形とも密接に関係した湧水地に生息しているため、保全地域は発見場所を含む周辺地区がその範囲となった。
まだ今の時点ではその保護地域は確定していないが、おおよそ4ヘクタールほどの面積が保護地区となる可能性がある。

一方で川井林業は、工場建設場所の変更を4月末に岩手県振興局に届け出た。
(正確には雫石町役場に提出。町が4月27日に県へ進達)

これで、場所と工場建物規模と生産物の変更は3度目になる。

最初は 敷地南側に約19,000平米の「LVL(合板の一種)工場」
昨年末 同じ場所に約10,000平米の「集成材工場」
今回  敷地北側に約 1,600平米の「製材工場」

しかし、敷地面積(=町が賃貸する予定の用地)は、当初の13ヘクタールのまま変更届が提出された。


なぜ???
なぜ 生産に関係ない保護地区まで町は業者に貸すの?
   業者が保全費用を出して未来永劫 死滅しないようにがんばってくれるの?
   保護地区に町民が立ち入ろうとしたとき、借地権者は「どうぞどうぞ、ここは町の自然がいかに豊かなものかの証ですから、観察会などやってください。企業は遊歩道や湧水が涸れないようにしっかりと周辺まで地質などをいじらないようにしていますから。」といってくれるの?

なぜ 製材工場を建設する企業が、敷地の相当程度の面積を占める保護地域まで借り受けようとしているのだろう???


希少種の死滅を待って工場を拡張増築するつもりか…
希少植物をうんと大切にしたい奇特な企業か…

保護地域の住民提案図面を企業に送付した。
4月28日に速達で。
しかし、一日早く、町は開発行為変更届を進達していた。

町も企業も忘れているのではあるまいに。
『環境に配慮した優良企業』
『環境に配慮しなければわれわれの存在価値はない』
自らそう表明した町と企業である。
雫石町の最大の財産は『自然』だと、2005年7月14日、町長は私たちに話した。
それを守る「しかけ」が必要だと。
公約にも環境を守る、と最初に掲げている。


この皆伐されて丸裸になった「銀河の森の跡地=工場用地」にはほかにも希少植物の群落が春になって発見されている。これからもこの地域一帯は希少種の宝庫になるかもしれない。夏には蛍が飛ぶかもしれない。


「流れ山」ってなあに?

2007年05月02日 | 「しずくいし銀河の森」
今年から雫石町観光協会では、「雫石桜めぐりツアー」という企画をしています。
小岩井一本桜~長山弘法桜~雫石川桜並木と鯉のぼり・・・
この地域に「やっぱり(煙突立てる大型工場は)おかしいよ!」

桜の様子を見に来た街中の立ち寄り客の話でした。

場所選びそのものが間違っている

●さて、この間、当会では川井林業工場立地条件の根本的な問題性を指摘してきましたが、現在に至って様々なハードルとなって表面化しています。

 ・観光地域であること 
 ・希少野生動植物生息地であり調査時季の不足により春季に入って新たな絶滅危惧種の確認が相次いで為されていること 
 ・水蒸気を含む白煙騒音等が景観上相当程度の影響を及ぼすとの指摘 
 ・景観条例無視で樹勢など保全すべき樹木まで皆伐した町の配慮のなさ 
 ・地質学的な地盤の軟弱さ 
 ・化学物質過敏症家族の居住など等。

◎先日、読者から次のような「流山とは?」という質問メールが届きまして、杉田修一氏に説明してもらいました。
非常に興味深く、この地に住んでいても“知らないで死んでしまう!類”のことだったかも知れず・・・。(-_-;)
そこで、皆様にもお届けしますのでご熟読くださいませ。
「な~るほど!」です。

◎◎別の読者からも支持基盤についてのメール情報を頂きました。

『県営屋内温水プールを建設した際の基礎杭が20メートルであった。比較的地盤の良い場所を選定しても、それくらいの深さが必要だったそうだ。』

この土地に大型の建造物は向かないんだということが、地質学的に頷ける訳です。  
これを裏付ける杉田氏の研究成果概要です。

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<<質問>>お忙しいとこすいません。初歩的な質問です。
合板工場予定地について、地質学的に流山群であるということですが、
その“流山群”というのはどのような成り立ちで出来る、
どのような地質構造を言うのでしょうか。
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<<杉田修一氏解説(雫石町長山地区在住 農民・日本水草研究会会員)>>

流れ山は火山学と地形学の分野です。
まず、「流れ山」と書きます。英語ではflowed moundと書きます。
flowed mound hillに相当します。加藤武夫(1909年)が北海道駒ヶ岳火山の泥流を流れ山の名称を用いたのが始まりといわれています。
流れ山は火山の山体崩壊によって発生した岩屑(がんせつ)流が作り出した地形です。

北海道駒ヶ岳の流れ山は大沼に点在する岩塊ばかりの島々や陸上の円錐丘として散在し、高さ20mを超えることなく、溶岩の大小の岩塊と浮石質の砂礫が混在しており、流れ山は泥流の終局地点になると、その中に含まれた重い岩塊が惰力のために尚進んで堆積し流れ山を形成するとした。

流れ山形成の目撃例は「明治21年7月15日の磐梯山噴火」です。
これらと類似した地形が岩手山周辺にあります。それらは以下です。

1.松尾アバランシュ   
2.五百森火砕流
3.松川火山泥流
4.大石渡アバランシュ
5.青山火災泥流
6.姥屋敷アバランシュ
7.雫石火災泥流

 以上が東北大学理学部の青木、中川の論文にあるものです。
これらのうち(1)に関しては岩手山というより八幡平系と考えられ、
(7)に関しては鎌倉森、有根(古岩手火山)のカルデラ崩壊がもたらしたものを
葛根田川が堆積したものといわれています。

しかし、合板工場周辺の小鉢森、夫婦石、小岩井農場のなかには円錐丘が多くあり、その地形の構成物質が岩塊と砂礫、火山性シルトなどで河川の礫を混入していないところを見ると明瞭に流れ山と見ることができます。
ではこの流れ山はどこから来たのか。鬼又カルデラという説もあります。
私が旧岩手火山のカルデラを調査した結果から見ると鬼又カルデラが崩壊し鞍掛山で遮られ西に崩壊物が流亡した可能性と御神坂沢上部の崩壊がもたらしたもののどちらかと考えていますが、岩石学の調査をして岩石を特定してから明らかになることなので現在は仮説止まりです。
しかし、流れ山であることは間違いありません。
これらの円錐丘の山が群生していることを「流れ山群」といいます。

 地質的特徴は円錐丘の内部に殻になっている岩塊(転石)がある場合が多いこと。あるいは岩塊が斜面から突出している。この地域では最大6mの直径のものが確認されている。地質は火山砂礫やシルト質(※)で構成され、木片を含んでいる場合がある。・・などです。

地盤については流れ山間の鞍部は火山砂礫、シルト質で軟弱であり、シルトは不透水層を形成します。

湧水の位置と水質は山体形成と崩壊の歴史をひもとく重要な鍵になります。
帯水層の動きに関しては水文地形学の分野になります。
知りたければわかる範囲で教えます。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー(ここまで)

※アバランシュ(avalanche)=仏語 なだれの意
※シルト(silt)=英語 砂と粘土との中間の細かさを有する土。
        地質学上は直径16分の1~256分の1ミリメートル、
        土質力学上は直径0.02~0.002ミリメートルのもの。
        沈泥。微泥。砂泥。

●連休明けごろに、更なる「工場計画変更」の届出が川井林業から振興局へ提出される見通しです。
  
 LVL工場から集成材工場へ
 集成材工場から製材工場へ
 しかし、「当面」という但し書き付き。

 なぜ、「当面」なのか。
 なぜ、絶滅危惧種保護地区まで企業に賃貸しなければならないのか。企業は生産に必要のない保護地区をなぜ借り受けようとしてるのか。
 なぜ、これほど難題が山積しても、尚且つここに工場を誘致しようとする
     背景にはなにがあるのか。
 なぜ、ここ(=日本重化学工業跡地)に、溶融炉や「工場」を建てさせたがるのか。 
 なぜ、景観条例に自らホッカムリしてまでも、町は急いで樹林を丸裸にし、
    誘致工場用地として「安価」に賃貸契約を結ぼうとしたのか。
 
 次第にここのあたりも明らかになってくるでしょう。
 
 はっきりと言わなけらばならない事態がそこまで来ているのでしょう。