岩手山麓景観形成重点地域を守ろう ★『イーハトーブ通信』

野生サクラソウ大群落を潰し岩手山麓の環境を破壊してきた旧町政。産廃問題に端を発した岩手山麓『誘致公害』の記録

企業にではなく町民の安全と未来に軸足を

2007年03月23日 | 世話人会発行「イーハトーブ通信」を読む
▲▲広報掲載の「許容濃度」は引用に大きな間違いが!▲▲
◎化学物質過敏症家族が訂正記事を広報に載せることを町に要請。  (返事はまだなし)


計画変更前(LVL工場構想の際)に工場で用いることになっていた「フェノール系接着剤」
その成分許容濃度の表が、昨年の10月広報に載りました。

その引用の仕方が、日本産業衛生学会の注意書きを無視したものであったことは、前に通信でお伝えしましたが、
広報掲載のどこがどう間違っていたのか。(正確に言うと「安全だということを強調したいがために、引用注意事項を無視して掲載していた)

以下、訂正文を町の広報に載せることを要請しているご本人からの投稿です。

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雫石町議会12月定例会で、町長は一般質問したY議員に同調する形で、
「本当にいい企業が来てくれたというふうに思っておりますが、一番のネックは
化学物質過敏症のご家族がいること、それ以外は大きな問題が無い」との見解を示していました。

この“本当にいい企業”は、当初計画ではホルムアルデヒド・フェノール・メタノールを含む接着剤を1日8t使う計画でした。
町は、工場からの化学物質の放散量について、計画値は日本産業衛生学会の示す許容濃度以下で安全であると説明していました。

つまり、ホルムアルデヒドの許容濃度が0.5ppmで計画値0.5ppm以下、フェノールでは5ppmに対し5ppm以下、メタノールは200ppmに対し200ppm以下となっていて、次のような注釈がついています。

10月広報の【許容濃度】記事注釈として
<労働者が1日8時間、週40時間程度肉体的に激しくない労働強度で有害物質に曝露される場合、当該有害物質の平均曝露濃度がこの数値以下であればほとんどすべての労働者に健康上の悪影響が見られないと判断される濃度。 >

と町の記事は書いていました。 

 そうか、この濃度以下であれば安全性に問題はないんだ!!では安心安心…・・と思ったら大間違いでした。

日本産業衛生学会 平成16年4月13日付「資料 許容濃度等の勧告」を確かめたところ、これには、「許容濃度等の性格および利用上の注意」というのが冒頭についていました。
一部抜粋で紹介します。

 1 許容濃度等は、労働衛生についての十分な知識と経験をもった人々が
   利用すべきものである。

 5 人の有害物質等への感受性は個人毎に異なるので、許容濃度等以下
   の曝露であっても、不快、既存の健康異常の悪化、あるいは職業病の
   発生を防止できない場合がありうる。

 6 許容濃度等は、安全と危険の明らかな境界を示したものと考えては
   ならない。従って、労働者に何らかの健康異常が見られた場合に、
   許容濃度等を越えたことのみを理由として、その物質等による健康障害
   と判断してはならない。また逆に、許容濃度等を越えていないことのみ
   理由として、その物質等による健康障害でないと判断してはならない。

 7 許容濃度等の数値を、労働の場以外での環境要因の許容限界値として
   用いてはならない。

 10 許容濃度等の勧告を転載・引用する場合には、誤解・誤用を避ける
   ために、「許容濃度等の性格および使用上の注意」および「化学物質
   の許容濃度」や「生物学的許容値」等に記述してある定義なども、
   同時に転載・引用することを求める。


★「許容濃度等は、安全と危険の明らかな境界を示したものと考えてはならない。」「労働の場以外での環境要因の許容限界値として用いてはならない。 」等の注意を無視して、あたかもこれ以下なら、周辺環境に対しても安全であるかのような説明をしていたのです。

でも、ここで留まらないもっと重大な問題がありました。           

合板工場の接着剤からの有害物質の推定放散量は全て単体としての許容濃度以下でした。

ところが、実際に使われる化学物質はホルムアルデヒド・フェノール・メタノールの混合物です。
 
では学会の「許容濃度の勧告」に再登場して頂きましょう。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「表示された許容濃度の数値は、当該物質が単独で空気中に存在する場合のものである。2種またはそれ以上の物質に曝露される場合には、個々の物質の許容濃度のみによって判断してはならない。現実的には相加が成り立たない事を示す証拠がない場合には、2種またはそれ以上の物質の毒性は相加されると想定し、次式によって計算されるIの値が1を越える場合に、許容濃度を越えると曝露と判断するのが適当である。」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 

というわけで、式は書きにくいので省略しますが、計画値をこの式に入れると、
3種とも単体での許容濃度ギリギリが計画値ですからI=3という数値がでて
きます。

 
★相加で見るわけですから、単純計算で同工場の有害物質の放散量は、そもそも労働環境における許容濃度の3倍に設定されていたことになります。 これでも、”本当にいい企業”といえるのか、問題が無いといえるのか。

 事業計画が合板製造から集成材の製造に変更になったとしても、安全性に関するごまかしがあったのですから、
 ”計画は集成材工場に変更になり、接着剤も変更になったのだから、いまさらそんなこと指摘されても…”で片付けられる問題ではないのです。

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★引用は以上ですが、原発の臨界事故寸前、または起こしていたことさえも隠蔽していた企業体質に共通しますね。
 日本産業衛生学会に問い合わせたところ、
 『あなた様の指摘は正しいので、行政当局に指摘するよう』と、返事をもらっています。


★ 問題の奥深い根は、これが誘致工場単独のコマーシャル記事ではなく、雫石町役場として公に、町民が安全だと思い込むような書き方(引用)をしていたという点です。

“いまさらそんなこと指摘されても…”で片付けられる問題ではありません。
計画が変更になり、接着剤も変更になるようです。
ただし、『当面』という但し書き付き。

今後、詳細にわたって、町民の健康と安全に軸足を置いた公表の仕方をするよう望むものです。

初歩的なミス=地質工学的な調査の不十分さ

2007年03月13日 | 雫石便り&Sumireの花の郷便り
写真は、発見された絶滅危惧種と同様のランクにある「ベニバナヤマシャクヤク」
工場予定地の調査が十分に季節を通して行われていたら、この美しい花も咲いていたかもしれない…。しかし森はまるはだかにされてしまった。復元には沢山の年数と自然からの恵みと守り、多くの人の英知と努力が必要になるだろう。

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昨年9月から複数回、次のようなことを企業に伝えてきた。

「ここは環境保全等用地として購入した町有地です。町長個人の土地ではありません。」
「ここに排ガスが出るタイプの工場を建てようとしたら、前年に計画中止になった産業廃棄物焼却炉の時に岩手県知事から指摘されたアセス必要の判定内容からみても、希少動植物調査や生活環境影響調査など、相当の時間と経費を覚悟しておく必要があります。」
「近くに住む化学物質化敏症の家族に影響が出る可能性があるなら、その賠償問題も含めて覚悟はあるでしょうか。」
「ここは何も問題がない、なんて町長が語ったそうですが、逐一調査確認しなければ経費が嵩み痛みが出るのは企業ですよ。」


こういった、いまとなって当たってしまった指摘に加え、初歩的な点で大きな見誤りが企業にはあった。

マイホームを建てようとした時、不動産屋さんが紹介した土地物件があったとしよう。
そこは、便利だし、買えば高いが、20年は安く貸してくれるという。
大いに乗り気になった。しかし、待てよ!そこは地盤はどうなんだろう?湿気は大丈夫か?敷地の東西に沢地があるようだが… 周りには結構な倒木があるぞ。こりゃ、きちんと地質など調べてからでないと!!心配だなあ。いくら便利で安いといってもなあ…。

ましてや、重い重い工作機械類を置く工場や1日64トン以上も燃やす大型のボイラーを建てるんだ、しっかり地盤調査をしてみないと!


これが、決定的に欠けていた。


『県営屋内温水プールは、どうして道路の角の一等地に造らないで西側に建てるようになったのかねえ?』

弱い地盤を避けて、県営プールは建てられたのだった。


『産廃と違う』と町は言い続け、町の広報に安全性を強調した『化学物質の濃度基準』を掲載した。しかし、化学物質許容濃度等の性格と利用上の注意を無視した誤解を与える書き方で安全性根拠のないものであった。
このことについては、改めて書きたい。

無理に安全性を強調し道理を踏まずして進めてきた工場誘致は、もっとも基礎的な建設用地として適切かどうかの点検が後手後手になったことにより、最低限の採算性にも支障が生ずるようになっていくことになる。


ここは「地域環境保全等用地」なのである。
伐採され、丸裸になった森に、貴重な植物が再び発見された。雫石町の『学術的財産』である。この価値を尊重するものは、岩手山の景観も大切にするだろう。ましてや、生きること自体がかかっている付近住民の暮らしにはことさら心を留めるだろう。

ふくろうが棲み、三光鳥の声が聞こえ、オオルリの渡りがあり、ホンドキツネ・野ウサギ、ツキノワグマなどが行動圏としてきた里山が、町の財産として大きな付加価値を生み出すか否か、いまこの時期の人間世界の決断にかかっていると言えよう。

県と町のための『復習』講座

2007年03月12日 | 世話人会発行「イーハトーブ通信」を読む
一昨年、小岩井農場隣接地に「環境アセスメントが必要ですよ」という知事判定が出た。
おっと、その判定が出る前、定めに従って雫石町長の「意見」が文書で提出された。
先に中屋敷町長からの意見の内容、次に岩手県判定を掲載してみよう。
とくとご熟読、復習あれ。

この区域に希少植物が生育していることは判っていた。それを、調査データをそろえてからにせよ、という意見書も無視して、立地協定後のあっという間の森林伐採(皆伐=まるはだかにした)。そして、更なる絶滅危惧種の発見。
アセス対象事業であろうがなかろうが、希少種は町の学術的財産であるという認識がまるでない。
この責任は誰にあるのか。

町長は特に、原点に戻って考え、「雫石町の最大の財産は自然だ」と、かつて懇談会で語った「町のリーダー」としての初心に立ち返ることが、賢明なリーダーがいま為すべきことではないだろうか。

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2005年2月雫石町長意見(同じ地域へ)
事業の技術、その環境に対する知見が明らかでない
②計画地から遠い気象観測所や大気汚染常時監視局のデータだけでなく実測など土地の特性を踏まえるべき
計画地と周辺は希少動植物がおり、繁殖期や四季を通じたアセスが必要
景観形成重点地域や国の名勝指定があり景観上の配慮や眺望も含めたアセスメントが必要である。

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2005年3月11日 岩手県知事から「アセス必要ですよ」 判定内容

(1)事業計画区域内及びその周辺には国及び岩手県のレッドデータブックに該当する貴重な動植物であるチョウセンアカシジミ、エビネ及び猛禽類(クマタカ、オオタカ、ハイタカ、ノスリ等)が存在しており、特に計画地周辺でオオタカの営巣地が確認されている。工事の実施及び施設の稼動に伴い、これら貴重な動植物の生息環境等へ相当程度の影響を及ぼすおそれがある。


(2) 事業計画区域に隣接する小岩井農場は、現在、年間約80万人が訪れ多くの人に利用されており、また、森林体験事業が行われている。さらに、周辺一帯を利用した森林とのふれあい活動も計画されているが、施設の稼動に伴うばい煙により、これらの人と自然のふれあい活動へ相当程度の影響を及ぼすおそれがある。


(3) 事業計画区域は、岩手山麓・八幡平周辺景観形成重点地域内の「田園景観形成区域」に該当している。また、計画区域北側は雫石町景観形成基準により「西根=堀切・篠崎民宿群~極楽野ペンションロード地区」に指定され、さらに、計画区域の周辺には、国指定名勝「イーハトーブの風景地」として、鞍掛山、狼森、七つ森が存在していることから、事業計画区域は景観に配慮を要する区域と認められる。事業計画区域での施設の稼動に伴い、煙突から排出される白煙(水蒸気)の発生が予想され、この地域全体の景観に対して相当程度の影響を及ぼすおそれがある。

『ここはもともと環境保全等用地』 現地調査、協議の結果

2007年03月11日 | 世話人会発行「イーハトーブ通信」を読む
写真はここに設置予定の半分規模のボイラーから、朝の立ち上げ時に出ているススが多量に含まれる排ガスの黒煙。こういう排煙と水蒸気白煙が、観光地であり環境保全等用地に建設されて、「問題はない」というのだろうか?
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==絶滅危惧種ⅠB、岩手県レッドデータブックAランク植物の運命は==
『移植は行わず地形改変も行わず保全する方向』という協議結論に。


企業、有識者、コンサル会社、岩手県振興局、岩手県環境生活部自然保護課、
役場商工観光課==合計約13名ほどで、10日午前中、現地調査が行われた。

その後地形、地質、地下水脈、水温、様々なデータを広げ、協議の結果として
『移植は行わず地形改変も行わず保全する方向』と結論付けられた。

今後の推移を厳重注意で見守りたい。


今後、役場商工観光課で協議議事録を作成。
それを調査・協議参加者に配布、了解を得た後、
川井林業がやはりこの地で工場建設を実行するならば、その「保全策」を
踏まえた工場建設計画を建てなければならないことになる。
建設断念になれば、町が保全対策として原状回復を行うことになるだろう。

(彼らにとって順調に進めば、3月中には賃貸契約を交わし、4月からは
 重機による抜根、整地作業に入る予定だった。)


しかし、森はすでに皆伐されてしまい、いま、産廃として処分するために
枝などを集める作業が進んでいる。(これも税金で行われている)

どのように保全対策をとるのか。。。
加えて、南側工場予定地の地盤が、深さ8m掘っても硬い地盤に達せず、
川井林業としては採算性に合わないことから南側の建設は無理の模様。
北側原野部分(原木置き場になっている場所)も、更なる地質調査が必要。
(世界アルペンの駐車場として砕石を入れたとき、沈み込んでしまい、
車両乗り入れができるまでに時間がかかったとのこと。)

川井林業の決断にかかってきた、といえる。
もうひとつは、振興局と町長の動き。
よくよく、厳重注意しつつ、見つめていかなければならない。

◎「環境保全等用地」は「保全」するべきものであった・・・この当然の帰結こそが、自然な成り行きなのである。
ずいぶんと費用も掛け、労力も費やしたがすべて「学び」だったと思い、今後に生かせば良いのだから。


絶滅危惧種の植物群生発見!「環境配慮」「優良企業誘致」の実像が浮かび上がるだろう

2007年03月09日 | 世話人会発行「イーハトーブ通信」を読む
写真は13ヘクタールが皆伐採された『銀河の森』
岩手山を望む景観は、この土地が本当に煙タイプの工場立地としてふさわしいのか、とセンスを問いかけている。
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昨日(3月8日)雫石町議会一般質問を傍聴した。
なんと!こともあろうに、わが町のちょうちょうは、しゃべってしまった!

「ご存知と思いますが○○藻が見つかりました。昨年見つかった○○ラン同様、どうするかを検討します。」

この工場誘致を心配した化学物質過敏症家族のおじいちゃんが「誘致は頭越えに決められて残りの分だけ検討委員会」を傍聴に役場を訪れたとき、「今日は非公開だから」と空戻りさせられた。ところが非公開情報であるレッドデータ植物所在地と種名を、べらべらとしゃべるあの感覚は、一体何なのだろう?

どうぞ、取っていって下さい、生命力があるやつみたいですよ(生命力あって絶滅危惧種になるか!)、売り買いもされているとWebに載ってましたよ(おいおい、絶滅危惧種売買は法律違反なんだよ!)、天然記念物でもないし…(天然記念物のモリアオガエルだっていることが判っているのに!)
と言っているようなものだ。(生命力と売り買い、天然記念物でもないことはホントに言った)
これは議会議事録にも載る。

岩手山麓の湧水にのみ、生育していて、岩手では6例目。2番目の見事な群生だと発見者は語っている。

しかし、今朝の岩手日報には、もう堂々と掲載された。
<雫石町長山の木材加工工場建設予定地で絶滅危惧種の○○藻の群生が見つかった。中屋敷町長が明らかにした。建設決定前の専門化調査では発見されていなかった。>

町は、10日午後に、県や環境省、事業者、有識者らと現地調査し、保全や移植などに向けた対応を協議するのだそうだ。

守るのか、移植して工事を続行するのか、地下水脈や土質の問題などと複雑に絡み合って、基本的に移植は不可能な植物をどこかへやってしまって、ブルドーザーを入れるのか、最後の良識を発揮するのか!

町長よ、そもそも「環境保全等用地」として購入した土地ではありませんか?
「環境に配慮しなければ私たち企業の存在価値はない」と社長は仰いましたね。

言うこととやることがこんなにも違うなんてことにはならないように祈るだけである。