岩手山麓景観形成重点地域を守ろう ★『イーハトーブ通信』

野生サクラソウ大群落を潰し岩手山麓の環境を破壊してきた旧町政。産廃問題に端を発した岩手山麓『誘致公害』の記録

小岩井農場隣接地「産業廃棄物溶融炉計画」意見書ー2

2009年04月23日 | 「しずくいし銀河の森」
昨日、鶴岡啓一千葉市長(68)が警視庁捜査2課によって収賄容疑で逮捕された。鶴岡千葉市長は、旧自治省や旧国土庁などを渡り歩いてから国土庁の外郭団体へ天下りした人である。彼は官僚時代に築いた政官財の癒着システムを利用して、数々の公共事業で企業からの賄賂を受け取り続けて来たと報道された。平成14年の排水施設改良工事(落札額3950万円)、15年の下水道排水施設工事(落札額41億7000万円)、16年下水道施設移転工事(落札額1億5500万円)、17年街路築造工事(落札額4270万円)、19年道路改良工事(落札額2500万円)など、特定の企業から賄賂を受け取り、その見返りとして便宜を図っていたとされている。発覚原因は『内紛』とされている。“うらぎられた癒着企業”なのか、市役所内部からの告発なのか、その両方なのか、今後の捜査で明らかになってくるだろう。報道によれば、政治献金として受け取りはしたが、賄賂ではないと本人は主張しているという。

一連の「お金」の動きが法律的には「違反」に当らない、賄賂ではない、と主張する為政者のなんと多いことか。

2005年3月に、時の環境大臣、岩手県知事、副知事、現職の中屋敷十(たてお)雫石町長あてに提出した意見書並びに要望書に、私達はあえて「地方自治体首長としての雫石町長の責務について」という項目を入れた。
<地方自治法第2条3の一に定められた基本原則を記すまでもなく、住民及び滞在者の安全、健康及び福祉を保持することは、自治体とその首長に課せられた責務の基本であります。地方自治の基本を常に念頭において実行するよう切望します。>
生活環境と自然環境保護のためには、「情報の共有・説明責任・協働・予防の原則・住民参加」が基本である。町長自身が施策の基本に掲げているのだ。
しかし、この産廃溶融炉問題で彼は、ぎりぎりまで町民にも町議会に対しても説明責任を果たさず、産廃問題後に同じ地域に町長裁量権によって誘致した大型木材加工工場(敷地面積13ヘクタール=町有地「環境保全等用地」貸与・工場建屋面積約7千平米)による低周波騒音や排ガス規制についても、町長は一貫して企業擁護の姿勢を崩さず、被害苦情を申し出ている住民の方を向くことはない。「法以内であれば環境は守られる」という答弁を繰り返している。


「民間企業による小岩井農場隣接地における岩手県内最大規模の産業廃棄物溶融炉計画」の時系列推移をのちに記録するが、署名活動を通している最中に、結構な数の町民から「やっぱり…」という声を聞かされたのであった。
そして、この「計画」が破綻した4ヵ月後の2006年4月、降って湧いたように持ち上がった有限会社川井林業雫石工場(本社:岩手県下閉伊郡川井村)の誘致問題は、舞台の背景が変わらない第二幕なのであった。(同社社長は川井村第3セクター「ウッティかわい」の社長を兼任しており、この第3セクターは平成4年から16年まででも国費と県費から14億円以上の補助金が投入されている。)



まずは意見書全文について先号の続きを記録しよう。


4.(現時点で私たちが考える法令上の問題点)

『産業廃棄物を処理する施設を設置するにあたっては、廃棄物処理法で規定する技術上の基準に適合している施設としてあらかじめ知事の設置許可を受けることが必要となっています。また、岩手県では、循環型地域社会の形成に関する条例により、この設置許可に先立って事前に知事に協議することを義務付けています。
なお、廃棄物処理法及び循環型地域社会の形成に関する条例において定められている産業廃棄物焼却施設の技術上の基準、許可の基準には、産業廃棄物焼却施設の過度の集中により大気環境基準の確保が困難となると認められる場合を除き、立地条件に関する規制は特に設けられていません。』
(2月2日岩手県環境生活部環境保全課回答による)

しかし、本計画事業会社が、上記3.に記したところの保全すべき環境内に産業廃棄物焼却溶融施設(県内最大規模)を設置するということは、法令で定められている基準値以内であったとしても24時間連日排出されるガスの含有重金属類、ダイオキシン類などが蓄積され、さらに硫黄酸化物、窒素酸化物等により、雨や雪の酸性化が進むことは明白であり、風評被害も含めた大きな影響が発生することは容易に予測できることであると考えます。

また、上記関連法令は、自治体との間で締結するよう県が指導している民間業者との公害防止監視協定に、住民の側に立った数値及び方法を具体的強制的に指導していないことに加え、倒産などが生じ営業不能になった際の処理にあたって原状回復に費やすべき企業負担責任はなんら規定がなく、血税により補償や撤去などが行われる事例が多々見られます。

これらのことを未然に防止、達成する観点からも、現在存在する自然環境、生活環境に大きな損害が予想される案件に対しては、県、町、更に環境省としても、適切な指導を行うとともに上記したように法令が不備ならば即急に改善する努力が行われるべきものと考えます。

特に、建築基準法第51条による敷地の位置決定をする際には慎重に検討の上、許可を与えないようにご配慮頂きますようお願い致します。


又、我国ではいまだ景観・環境形成のための国土利用のあり方に関する法整備が為されておりません。そのため、貴重な動植物生態系が破壊される事業が、民間、公共事業を問わず実施されてしまい、結果、景観を守るべき地域の中で修復不可能な自然破壊が行われている事例は枚挙に遑がありません。

この案件を機に、「美しい景観を保全すること」を施策の重要な位置づけとしている岩手県から、この法整備の重要性を関係省庁に発信していくことが重要であると考えます。

一方、環境省におかれても、この法整備の検討に早急に取り組まれるよう期待します。

(参考:2000年6月:建設省建設政策研究センター『景観・環境形成のための国土利用のあり方に関する研究~欧州(独・英・仏・伊)の国土計画・土地利用規則と風景保全~』参照)



東海村の臨界事故がそうであったように、「危険なものを危険なものとして扱かわなかった」ために、人の命や一生を破壊するような重大事故は起きるのです。

この地域でのそういった事故や被害の発生は、単に雫石町一町にとどまらず、日本国民の宝をみすみす失うようなものであります。この表現は決して過言ではありません。


5.(地方自治体首長としての雫石町長の責務について)


  『今後、設置予定者が事業計画を進める場合、県としては、循環型地域社会の形成に関する条例の規定に基づく事前協議を通して、技術上の基準等に適合しているか審査するとともに、土地利用の規制等関係する法令の適合状況について関係機関の意見を聴くこととなります。また、設置予定者に対しては、地域住民の方々に設置計画を十分に説明し、合意形成に努めるよう指導することとなります。』
       (2月2日岩手県環境生活部環境保全課回答による)

 
地方自治法第2条3の一に定められた基本原則を記すまでもなく、住民及び滞在者の安全、健康及び福祉を保持することは、自治体とその首長に課せられた責務の基本であります。特に生活環境と自然環境保護のためには、「情報の共有・説明責任・協働・予防の原則・住民参加」が基本であり、加えて、「施策の基本方針」と「環境基本計画の策定」がこの基本を以って十分に実行されなければ、町民と観光客を含む滞在者の安全、及び健康と福祉を保持することは出来ないのであります。

今後、上記回答にある意見聴取や、関連諸法にのっとった手順を踏む際には、これらの地方自治の基本を常に念頭において実行するよう切望します。


6.(岩手県及び雫石町に対する意見及び要望:まとめ)


① 自然環境及び生活環境の保全上、雫石CCについて、徹底した環境アセスメントを実施するよう、業者に対して指導すること。更に、環境アセスメントの結果次第では、雫石CCの建設申請を不許可とすること。

② 雫石CCだけではなく、表記周辺土地に関する開発計画案が提出された際にも同様の措置を講ずること。

③ 雫石町は、都市計画審議会に諮る建築基準法第51条による敷地の位置決定申請、及び、農業振興法解除の申請が業者から提出された際には、本意見書に記したところのすべての条件(公共性に乏しく、農地水利への影響の面)から、許可を与えないこと。

④ 調査の際、既存の動植物生態系を破壊しないよう、アセス調査前にも周辺住民の聞き取り調査などを実施し、アセス手法にも問題がないよう常に監視すること。

⑤この地域(雫石町長山地区)を「鳥獣保護区」に指定するよう、環境省はじめ関係省庁に働きかけること。

⑥ 生活環境影響調査に関しては、住民に対しての十分な説明責任と情報の公開と共有が為され、健康被害については特に綿密な事前調査と、万一の事態に備える企業責任の所在を明確にすること。

⑦雫石CC建設予定地から1300mに居住する化学物質過敏症の家族は、化学物質でショック症状(急激な血圧低下などを起し意識がなくなる。適切な治療をしないと死に至る。この患者の場合、有機リン系の化学物質とベンゼン環を含む化学物質を同時に吸入した時にはかなり危険性が高い。)を起こす危険性が大きいことから、排気ガス中のこれらの化合物含有予想量を即急に提示するよう、業者に対して指導すること。
 尚、化学物質過敏症は、有害物質に大量に、あるいは微量でも長期間にわたって
さらされた結果発症する疾患であり、誰でも発症する可能性がある。特に子どもたちは体の大きさの割に呼吸量が多いため注意が必要である。呼吸から入ってきたものは、直接血液の中に入って全身に運ばれる。雫石町は、緊急時の避難対策も含めて近隣の学校の関係者にも建設計画について明確な説明責任を果たすべきである。

⑧「ダイオキシン類対策特別措置法」では、調査研究を推進し、研究結果によって対策を講ずる、と規定されていることから、雫石CCの稼動による排気ガス中のダイオキシン類(塩素化ダイオキシン・臭素化ダイオキシンなど)と他の内分泌撹乱作用のある物質(環境ホルモン)全てについての予測データを早急に提出させること。合わせて、計画地の土壌、隣接沢地の水質並びに大気中のダイオキシン類の測定を事前に住民に公開する方法で行うよう業者に指導し、且つ下記協定に明記すること。

⑨ 建設計画が申請され協議されるに当たっては、上記物質類の協定値のみならず、定期的な点検、不具合、故障、事故などの監視体制についても、公共事業にも劣らない手法で十分に実施することを盛り込んだ公害監視防止協定を事前に締結するよう県は雫石町に対して指導を行うこと。
また、この協定締結にあたっては、排ガス濃度規制値を盛岡市や滝沢村などの公共焼却溶融施設の基準値以上に厳格に設定し、定めのない重金属類及び内分泌撹乱物質についても明記し、これらの検査費用は業者負担とすること。

⑩ 本計画には「公共性」が認められないことから、万一、営業不能になった際には、民間所有地における民間企業の営業とはいえ、土質、及び水質などを含めて原状に戻すべき項目を盛り込み、その費用はすべて実施した企業(親会社を含む)が負担し、公費負担は行わない旨を覚書として締結したのちに着手するよう指導すること。

⑪ 具体的な企業責任として、2月22日開催された業者説明会において説明された焼却溶融のシステムフロー図を翌日23日の岩手県環境影響調査技術審査会においては固形物は溶融炉に入れないと明言し、一夜にして図面を差し替えると発言した雫石CC設置申請企業は、そのシステムの安全性と管理責任上の資質が問われることは疑いの余地のないことである。それゆえ、このプラントの安全保障上から、明確なシステムフロー図及び「マテリアルバランスシート」(物質収支対照表)を町民及び県と町に対して早期に提出するよう業者を指導すること。又、今後岩手県は第一種第二種事業についてマテリアルバランスシートの提出を義務付けること。

⑫ 雫石町は、地球温暖化防止京都議定書による二酸化炭素4%削減をまず達成し、さらに長期にわたる対策を町及び町民が協働して地球温暖化防止を着実に進めていく必要があることから、この具体策を示すこと。

⑬ 表記周辺地域の今後の利用計画について、全国各地で展開されているところの「エコタウン」またはそれに類する産業廃棄物施設関連熱再利用を含めた構想は、景観保全の観点からは言うに及ばず、本意見書に記したすべての見地から、これに反対する。

雫石町は、表記周辺地域(約90ヘクタール)を町として取得ののちは、地方自治法の基本にのっとり、滞在者も含めた町民の健康と安全を確保し、福祉を標榜するに値する利用のデッサンを、広く住民および周辺企業と情報を共有しながら構想を描き、広く住民参加の下で立案すること。

⑭ 景観・環境形成のための国土利用のあり方を国政レベルにおいて提言していくためにもまず、岩手県に於いて「美しい県土の形成と保全に関して強制力のある」法整備を実施するよう、早急に検討に入ること。
又、環境省も同時に国として、この法整備の検討を行うこと。

⑮ 岩手県は指導監督責任上、雫石町に対して地方自治法の基本にのっとり、町民に対して十分な説明責任と情報公開をするよう、指導勧告すること。

以  上 

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