岩手山麓景観形成重点地域を守ろう ★『イーハトーブ通信』

野生サクラソウ大群落を潰し岩手山麓の環境を破壊してきた旧町政。産廃問題に端を発した岩手山麓『誘致公害』の記録

住民から見た川井林業雫石工場誘致

2011年01月22日 | 「しずくいし銀河の森」
2005年に表面化し2006年12月に計画中止となった、小岩井農場隣接地への産業廃棄物溶融炉計画。
その4ヵ月後の2007年に、産廃計画地から町道(通称「長山街道」)を挟んだ西側、「銀河の森」と呼んでいた88.5ヘクタールの町有地(環境保全等用地)に、当時の町長、中屋敷十氏が工場誘致を専決したおおまかな経緯を記しておこうと思う。
これらは、膨大な資料と記録によるものであって推測ではない。この住民からみた記録を、1月21日、正式に町に提出した。(掲載文は会社名を除き個人名は伏せている。)
産廃事件も含めて足掛け6年間、雫石町役場と対峙してみて、つくづく思ったことは、表向き立派な文言の条例も協定も契約書も、運用する人物次第。首長はじめ、役場職員の姿勢ひとつにかかっているということだった。
具体的な提案も添えたが、今後の経過を見つつ、随時掲載していきたいと思う。


ーーーーーーーーーーーーーー

ここ『銀河の森』を、雫石町は「環境保全等用地」という名目で2006年、5500万円で購入しました。
土地開発のスプロール化(無秩序な宅地開発)を防ぐためという購入理由でしたが、工業地帯(準工業地帯)にしたいという前町長の腹案構想がありました。

町が購入する前の2005年秋、A重機を親会社とするマイトリー社による産廃溶融炉計画が表面化。当時の社長が150名の町民を前にしての事業説明会席上、「町の構想が甥の町議を通して耳に入り、近くに社有地もあることだし手はじめに産廃溶融炉を計画した」と述べました。計画の詳細を問い合わせた町民達に前町長は「事業者と県とのパイプ役でしかない」と述べた反面、事業者には「後押ししたい」という姿勢でした。業者との温泉同宿もありました。


岩手県環境影響評価技術審査会(環境アセス委員会)が、この地域の自然と景観環境の特性から二年かけてフルアセスメントが必要と判断し、当時の知事がその判定を出したために、この産廃計画は2006年12月に中止となりましたが、その4ヵ月後の2007年4月の町議会全員協議会において前町長は川井林業の誘致を説明。すでに動き出すばかりとなっていた「環境保全等用地利活用検討委員会」には、川井林業用地13㌶をのぞいた残地の利活用検討が諮られました。

その時、住民委員であった私が、「誘致工場の安全性や周辺への影響の度合いがはっきりしないと残地利活用にも影響する」と発言したことから、10月初め開催の企業立地に係る住民説明会を聞いて安全性が確認されたら再開することになりました。
しかし、その説明会は役場が依頼した雇用確保と林業活性化面からの賛成意見が出され、化学物質飛散(当時はLVL工場計画。のちに製材工場に変更)をはじめとする環境汚染を懸念した住民からの質問には十分な答えが得られないまま、規定時間午後9時で打ち切りとなってしまいました。 以後、利活用委員会は一度も開催されておりません。


産廃事件の際に、この土地が心癒される方向で用いてほしいことと、町の説明責任を求めた署名活動が町民県民あげて展開されましたが、「構想」の本体は町民には知らされず水面下で行なわれ、県知事からアセス判定を受けた地域特性も、川井林業工場はアセス申請規模以下という理由で実質的に無視され、前町長専決で誘致に至りました。
川井林業社長は前町長から、「何も心配ない、問題ないから来てくれ」と言われたと述べています。


会社側は“町の誘致方針にのっとり立地したのだ”と主張するでしょう。しかし二つの住民団体が本社がある岩手県下閉伊郡川井村(現宮古市)の事務所まで立地再考を求める署名をもって出向き、煤煙等に敏感な症状をもつ家族が居住していたり、アセスメントで指摘された地域の特性を説明してありましたから、知らなかったでは済まされません。会社の進出判断として用地特性を重んじて環境保全の対策を充分に行なう社会的責任は大きいものがあると言わざるを得ません。


又、極楽野行政区の工場付近18世帯から、署名付きで環境を守るにふさわしい公害防止協定を求める要望も前町長に提出しました。しかし、町と川井林業による地元説明会では、関連法を数字的にほんの少し下回っただけの、非常にゆるい排ガス・騒音規制などの協定案が示されました。「これでは産廃溶融炉の方がまだまし」といった内容で、1回目説明会で出された意見はひとつも反映されずに2回目説明会も全く同じ案が提示されるというひどい状態でした。

三者協議は、目的を公害防止協定締結に向けての話合いとしていますが、現在生じている煤煙改善と騒音低周波音問題が解決に至らないと、環境保全にふさわしい効力ある協定検討に入れないでいる状態です。その状態が3年続いています。


一方、腹案構想の方は着々と進み、2009年、雫石町の都市計画マスタープラン変更の際に、この用地を「工業地帯(準も含め)」として工場誘致を進めたい方向性が暗に出されました。その際、16通ものパブリックコメント中、7通が、ここの工場問題や地域特性について、十分な説明を町に求め提案する内容でした。しかし、パブリックコメントは形式的な通過儀式でしかありませんでしたから町の方向性はこのときのままが実情です。
環境基本条例を土台にした環境基本計画策定の際も、パブコメは形式的に終始。寄せられた町民からの意見は100%無視され、通常ならホームページに掲載される町の回答もありませんでした。昨年11月23日に実施された事業者向けの環境基本計画説明会の案内を川井林業に出すことも環境対策課はしませんでした。環境がこれからの町政の大きな柱のひとつであるのですから、担当課は積極的に誠意ある対応姿勢になっていってくれることを切に望みます。


新町長が、環境、教育、福祉とそれらを土台にした産業の育成を掲げ施策を推進する際には、この「環境保全等用地」の特性を充分にご理解下さいますようお願い致します。
岩手山麓の自然生態系の回廊にあたり、希少動植物が生育している地域であり、田園景観形成区域にも指定され、町の観光と酪農地帯の重要な地域であることを大前提として、里山保全の大きなカテゴリーのなかで、森林税を活用した間伐などの手入れを行ないながら、雫石町の資産価値が上がるような活用を行なっていただきたいと願っております。
当会の世帯は殆どがこの地域の環境が好きで雫石町民となったように、この地域の魅力は大きいものがあるのです。

私達は、企業誘致そのものを否定しているのではありません。環境規制のハードルが低いところに立地したいような企業誘致は、今回の誘致のように、目に見えて環境汚染が進んでいくでしょう。環境重視の視点を強くもっている自治体こそが、真の雇用確保に繋がる優良な企業誘致や雫石ブランドの産業育成も可能なのだと思います。
環境保全等用地の残地利活用は、川井林業雫石工場の環境対策推進がなければ、その用途は大きく制限されることは言うまでもありません。 
ーーーーーーーーーーーーーー

最新の画像もっと見る