岩手山麓景観形成重点地域を守ろう ★『イーハトーブ通信』

野生サクラソウ大群落を潰し岩手山麓の環境を破壊してきた旧町政。産廃問題に端を発した岩手山麓『誘致公害』の記録

小岩井農場隣接地「産業廃棄物溶融炉計画」

2009年04月21日 | 「しずくいし銀河の森」
立法趣旨、条文の「目的」「理念」を為政者が遵守しなければならない仕組みがあれば、いま国中で起きている様々な自然・生活、両面の環境破壊は「歯止め」がかかり、限度はあったとしても守られるだろう。

小岩井周辺のような農村景観を重要視すべき地域に、環境基準はどうあれ、環境負荷が大きい工場などを建設することが出来ない土地利用規制について、国は実はすでに気づいているのだ。2005年旧建設省は『景観・環境形成のための国土利用のあり方に関する研究~土地利用規制と風景保全~』という調査研究をまとめてもいる。

しかし残念なことに、法令も県レベルの条例も、目的や理念には崇高な文章を掲げてはいても、実際にはなんら歯止めとなっていない。正確に近づけて言えば歯止めとして活用されていない。環境影響評価(環境アセスメント)然り、種々の環境条例然りである。為政者はいとも簡単に遵守すべき理念や目的をサッと戸棚の奥にしまいこみ、環境破壊を実行あるいは「後押し」している実例が沢山ある。
なぜ、いとも簡単にできるのか。ここにこそこの国の政治と為政者の本質が浮き出てくるといえるだろう。言わずもがなキーワードは「政官業の癒着」である。

先に記録した県内外からの提言がどのような背景から行われたのか、2005年3月25日に提出した6ページにわたる意見書を分割して掲載する。

当時の環境大臣小池百合子氏、当時の岩手県知事・副知事・加えて雫石町長 中屋敷 十(たてお)氏あてに2005年3月25日、各資料とともに提出したものである。彼ら役人は交代して行く。雫石町長は二期目後半だが。しかし、遺された環境破壊の地域の中で住民や生き物は暮らし続ける。意見書末尾には、この時点で確認された貴重動植物を掲載した。


(猛禽類)
クマタカ  環境省絶滅危惧 I B類(岩手県レッドデータAランク)
オオタカ  環境省絶滅危惧 II類(岩手県レッドデータBランク)
ノスリ   岩手県レッドデータ Dランク
ハイタカ  環境省準絶滅危惧種(岩手県レッドデータ Cランク)
(鳥類)  岩手県レッドデータ Dランク
ノビタキ・コサメビタキ・フクロウ・ヤマドリ・クロジ・イスカ他オオルリ・サンコウチョウ等多数      
(哺乳類) 岩手県レッドデータ Dランク
ニホンカモシカ ツキノワグマ 他 ホンドキツネ、ホンドリス、タヌキ、ノウサギ など多数 
(昆虫) 雫石町天然記念物指定
チョウセンアカシジミ 環境省絶滅危惧 II類(岩手県レッドデータBランク)他多数
(植物)
エビネ 環境省絶滅危惧 II類(岩手県レッドデータBランク
サクラソウ 環境省絶滅危惧 II類(岩手県レッドデータBランク)
トンボソウ(岩手県レッドデータ Cランク)
イガホウズキ(岩手県レッドデータ Cランク)他 ギンラン、ノビネチドリ、コケイラン等多数

(この後、2006年秋から07年2月にかけ、加えて絶滅危惧種の水生植物「ヒンジモ」、「キンセイラン」が発見された。野生サクラソウは大群落が発見された。この地域(岩手山麓)は日本四大サクラソウ群生地のひとつであることも判った。しかし、この産業廃棄物溶融炉計画が事業中止となった2005年12月からたった4ヵ月後の2006年4月、中屋敷町長は同じ地域の町有地に大木材加工場を二つ返事で誘致。産廃溶融炉『以上』の環境負荷を周辺地域に与えてしまっている。産廃問題から彼が学んだことは、『環境保護』の重要性ではなかったのである。サクラソウ群落は一部の開花していたものを移植し、実生の殆どは重機によって潰された。写真は群生地だった場所から望む早春の岩手山。)

この「意見並びに要望書」の記録を経た上で、岩手県環境影響評価技術審査会(アセス審査会)前後の動きと、雫石町議会(特に地元である西山地区選出議員)の動きを記録しておきたい。計画業者との癒着がいかにあからさまであったか、避けては通れない実態がある。



2005年3月25日

環 境 大 臣   小池 百合子 様
岩手県 知 事   増田 寛 也 様
岩手県 副知事   竹内 重 徳 様
雫 石 町 長   中屋敷  十 様

  提出者21団体 連名
  提出責任者「イーハトーブ雫石を守る会」世話人代表 嘉糠 くに子
  

本年3月31日までの間に岩手県知事が第2種事業環境影響評価調査の要否を判定するところの「産業廃棄物焼却施設、雫石クリーンセンター(仮称)」建設計画、並びに周辺地区町有地の開発計画に付きまして、次の点から、建設及び開発の許認可を与えないよう、また、雫石町長 中屋敷 十 氏に対しては、地方自治体首長としての責務を果たすよう、ここにこれまでの経緯及び事由を記して、意見、並びに要望として、雫石町ほか全国からの署名(第二次分4,751名・累計5,981名)を添えて、次の通り申し入れます。


1.(本意見書提出までの雫石町の対応の経緯)

2004年12月上旬、岩手県ホームページ審議会報告の議事録から町民に発覚した標記「雫石クリーンセンター(仮称)計画」(以下、雫石CCと称する)は、町民団体のその後の調査によって、2004年4月以前から、町長及び民間業者の間で話し合いが始まっていた形跡がみられます。

 町民からの問い合わせに対し町長は、建設予定地は本計画事業会社の親会社の所有地であることから、民間のやることなので町としては関知していないという説明でした。

しかし、2004年8月に事業計画書が事業者から雫石町土地開発調整委員会に提出され、10月には、山形県最上町に所在する同規模同タイプの産業廃棄物処理業を経営する民間建設会社に公費出張(町長以下計4名、1泊2日)、10月29日に手続きに関する指導要項が公文書として町長から事業者宛に送付されたにもかかわらず、一貫して町民や町議会議員の説明請求を拒んできました。

2005年1月31日に事業者から「第2種環境影響調査要否判定」に関する事業概要計画書が県に提出され、それに対する町長としての意見を県に伝える必要が生じて初めて、2月15日に町議会議員に対してアセス要否の意見を問う形で事業概要が説明されました。

しかし、その後も2月17日の小岩井農牧(株)からの書面による反対の申し入れに対しても「町長の立場は、県と町とのパイプ役でしかない。」と語っております。

2.(雫石町 町民運動の経緯)

2004年12月初旬、当会代表が岩手県ホームページ11月15日開催の環境影響評価技術審査会議事録から「雫石CC」の議題を知りました。

雫石町役場環境対策課に問い合わせたところ、「審議経過等その内容は町として把握していないので、県環境保全課に問い合わせて送られてきた資料を送付する。これ以外の情報については県環境保全課に問い合わせを」との、FAXが送られてきました。

更に「産業廃棄物焼却施設」としての計画内容を問い合わせましたが、情報公開条例により開示できないとのことでした。(環境対策課長・環境対策推進監1月7日談)(雫石町情報公開条例第7条の(5)を示す。)

不安に思った町民有志が独自で、産業廃棄物焼却と溶融に関する資料や事故例などを収集した結果、立地条件からみて、風評被害も含めたところの予想される損害、健康被害、自然生態系破壊等々に関して、多大な影響が予測されることに気付き、『知っていますか?』というチラシをつくり、情報を付近住民に知らせました。

その後、2005年1月18日、地元新聞社がこの問題を取り上げたのを皮切りに複数のメディアが記事として掲載したことで、町民有志による「署名活動」が始まり、1月30日町民任意団体『略称:イーハトーブ雫石を守る会』が発足。

2005年2月7日、同会は署名目標の約4倍(1230名)の第一次署名を添えて、岩手県知事(含関係部局)と雫石町長に対し、住民合意のないままに許可推進しないよう、並びに事業計画者であるマイトリー(株)に対しては立地条件その他に鑑みて計画を白紙撤回するよう要望書を提出しました。

2月21日、『イーハトーブ雫石を守る会』は雫石環境パートナーシップの共催を得て、全戸に新聞折込チラシを入れ、公民館を会場にした産業廃棄物と溶融炉について町民による勉強会を企画開催。
翌2月22日にはマイトリー社主催の住民説明会。
その翌日23日に、岩手県環境影響評価技術審査会が行われました。

 現在、本計画に反対する第3次署名活動を岩手県内から全国に拡大し、継続しております。


3.(本計画立地場所、及び表記周辺地域の保全の必要性)

① 雫石CCが計画されている場所及び、表記周辺地域は、岩手山南麓の小岩井農場隣接地であり、長山街道と銘打った本計画場所を通る町道から網張温泉に至る道路沿いも含め、岩手県内のみならず全国から観光客が訪れている岩手県第一の観光地の一画であり、岩手山麓景観保全条例による景観形成重点地域内の「田園形成重点地域」に位置している場所です。

② 雫石町は「農業と観光の町」を標榜しており、周辺農業地は有機栽培農家も存在するグリーンツーリズムなどの「地産地消型農業」の重要な拠点でもあります。

③ 本計画予定地から1300mの地点には「化学物質過敏症」の家族が居住しており、仮に建設が実行された場合、生命にかかわる重大な事態の発生が予測され、且つ他の住民へも大きな健康被害が予想されます。

④地元住民によって、オオタカやフクロウ類などの絶滅危惧種鳥類、オオルリやサンコウチョウ(三光鳥)の渡り、ツキノワグマ、天然記念物のニホンカモシカ、チョウセンアカシジミの生息や野うさぎ、ホンドキツネ、タヌキ、リス、なども目撃され、移植困難な希少植物の生育も確認されている貴重な生態系が存在している地域であります。

これらの点から、黒沢川東側にあたる隣接の小岩井農場地域だけでなく、この西側の長山地域全体を「鳥獣保護区」に指定する必要がある地域であると考えます。

⑤本計画地の東側隣接の沢は黒沢川上流として御所湖に流れ入り、一部上水道及び盛岡市太田周辺の米畑作灌漑用水として使用されており、その水質管理は重要であります。また、東側隣接の小岩井農場森林地は、水源保安涵養林として重要な働きを持っています。


上記の主な観点からだけでも、本計画予定地及び表記周辺地域は、自然環境と生活環境の両面から保全すべき地域であり、単に民間所有地であることや法令をクリアすれば進めざるを得ないというものではありません。

岩手県の施策の土台であるところの『美しい岩手の景観を大切にする』ということを実行することは、そのまま雫石の町づくりにとっても大切な基本であり、それが破壊されることが予想される際にこそ、雫石町長は自治体首長としての住民とともに歩む姿勢と適切な条例の整備や交渉、指導力を発揮されるべきであります。


4.(現時点で私たちが考える法令上の問題点)… 続く

最新の画像もっと見る