岩手山麓景観形成重点地域を守ろう ★『イーハトーブ通信』

野生サクラソウ大群落を潰し岩手山麓の環境を破壊してきた旧町政。産廃問題に端を発した岩手山麓『誘致公害』の記録

特製辞書

2007年02月15日 | 「しずくいし銀河の森」
「合板工場」が「集成材工場」に“当面”変更になり、「ボイラー」が1日あたり64トン燃焼の18トン毎時蒸気製造規模に縮小になり、工場建物面積も約40%縮小になった。ホルムアルデヒドを含まない代わりに吸い込めば肺にべったりくっつく心配があるウレタンの原料で燃やせば青酸ガスが発生するイソシアネート系接着剤に変更になった。

しかし、工場建設用地だけは13ヘクタールと何も変更はなく、あっというまに樹木は伐採が進んだ。チェーンソーの音が毎日のように聞こえてくる。

これらの『へんこう』を、<周辺環境に配慮した結果>と表現する。
環境に配慮というならば、そもそも立地条件から「配慮」すべきだったはず。
「環境保全等地域」として税金で購入した町有地。ここには希少生物があることは判っていたし、周辺に化学物質過敏症家族が住んでいることも判っていた。(はず)
なぜなら、2004年から05年にかけて起きた産業廃棄物焼却炉計画のとき、岩手県知事からの「アセスメントが必要ですよ」判定で指摘されていたのだから。
それを町長はすっかり戸棚の奥にしまいこみ、その理由が「産廃と一緒にされては困る」だった。実際は産廃も燃やす「ボイラー」で、煤塵や窒素酸化物や硫黄酸化物の影響だけでなく接着剤がついた木屑まで燃やそうという「ボイラー」なのだから。
ここのあたりの「いいかげんさ」は、岩手県が「木質バイオマス普及」を政策に掲げているところの大きな「落とし穴」なのだから。

この「変更」は、<周辺環境に配慮した>というより<それだけ環境影響が大きい工場>なのだったことを証明した結果なのだから。

忘れてもらっては困ること。
「環境保全等地域」であること。
ここに工場を建てようとするのだから、企業も誘致した町もそれなりに覚悟してもらわなくては。

移植不適切期のむりくり希少植物移植!
早く早くとせきたてられてのあっというまの森林伐採!
産廃を燃やすというのに「ボイラー」であるとの判断!
国産材を用いる「環境にやさしい」優良企業!
…これまでのいきさつを点検すると、私たちとは違う特製の辞書を引いていることに気付く。


町は、土地利用策定委員会を誘導。住民説明会は「やらせ」賛成意見で強行閉会。
議会はおおまか説明を協議会で行っただけなのに「賛成」したと言ってしまってあとで詫びた。

こういう実情を、『民主主義のルールにのっとり議会で議論を尽くし』た、と表現する。

特別の辞書を引いているとしか思えない。

事業会社もこの辞書を使うのかな?どうかな?

<環境に十分に配慮しないと私たちの存在価値はないと思う>
(町の1月広報掲載 川井林業社長コメント)


「植生守れ」への回答について

2007年02月02日 | 世話人会発行「イーハトーブ通信」を読む
昨年の4月に、「環境保全等地域」に合板工場誘致話がでてきてから、つぶさに行政の動きを見続けてきた者として、この「回答」にみる『事実誤認』を指摘しておきたいと思います。
全国各地のさまざまな住民運動の中で、問題がこじれたり長期化したりしている最たる原因に気づいていただければ、と願いながら。。。

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★自然保護課は自然環境保全をつかさどる岩手県の大本であるにかかわらず、「勧告」を出したこの地域を実際に検証していない。机を離れて現場を見ていただきたい。芽を出すと思われる春の様子も。
★<事業者と雫石町が「協力」して適切な保全対策が講じられた>のではない。事業を急ぐあまり冬の間に伐採する必要に迫られてのゆえである。
★町は<直ちに計画や事業内容を精査していた>だろうか。7月に当会が質問書を出して排ガスや接着剤成分などを企業に問い合わせ結果、11月になって環境影響の大きさから接着剤変更などを余儀なくされたのが実情。
★<木材を燃料とする=環境にやさしい>は、あまりに短絡的。企業は廃プラである接着剤がついた木くずまで燃焼させると言っている。県は燃やさないでほしいと伝えているというが、町は率先して接着剤が付いた端材をボイラー燃料としないよう、最低限文書で確認するべきである。
岩手県では木質バイオマス燃料=環境にやさしいとPR中だが、砒素などが含まれたCCA薬剤入り廃材や今回のように燃焼すれば硫化ガス発生が予想される接着剤まで木屑チップ化させることが混同されることが生じてはならない。
★<議論を尽くした>という形跡は議員から聞いたことがない。議員全員協議会で誘致進展状況が報告された際に反対意見が出なかったことで、議会も賛成と町長が表現したことについて12月議会で謝罪した。町民の知らないところで議論を尽くしたのだろうか。

★「民主的ルール」について役場の対応は非民主的なことが随所に生じた。
  ①町有地「環境保全等地域」利活用策定委員会が開かれた06年5月には、ゾーン策定も周辺に及ぼす環境影響も検討されずに残地だけの策定をしてほしいという町の意向だった。土地利用諮問機関に対する民主的筋道ではない。
  ②7月委員会を聞きに出向いた付近住民の傍聴を役場は拒否した。特に化学物質過敏症で環境悪化はそのまま生存権にかかわる家族に対する傍聴拒否だった。よほどの個人情報や希少種生育場所以外の委員会非公開は民主的とはいえない。
  ③10月に地域で行われた住民説明会は、誘致賛成意見を「やらせ」で行い、質問を封じて予定時間丁度の強行閉会となった。再度の説明会は企業と相談して決めるとマスコミには答えたが、事業内容変更後も2度目の住民説明会は開催することはない。
  ③町有地を賃貸する誘致は議会の議決案件ではなく町長の決済事項だが、住民との協働共治を掲げている町長は、何度でも話し合いを持ち合意形成に努める責任と義務がある。
  
<<この地域は「環境保全等地域」として血税を持って取得したものであり、その目的に合った事業が展開されるべきである。>>

掲載された投稿者の論旨後半の重要部分は、4月以降、当会として主張し続けてきたことでもある。

雫石町1月広報の記事によると、企業の社長は12月20日の立地協定締結日の記者会見において、「環境に十分に配慮しないと私たちの存在価値はないと思う」とコメントしている。
十分に環境に配慮した実際の行動が、今後一層検証されていくことになるだろう。

岩手日報論壇と県と町の回答にみる「環境保全」

2007年02月01日 | 世話人会発行「イーハトーブ通信」を読む
久し振りの更新になりました。
皆様お変わりなくお過ごしでしょうか。
真冬日が1日もなかった異常気温の1月も終わり、今日は雪がしんしんと降り積もっています。しかし、この降り方は春の雪…。夏の水不足が心配です。

さて岩手県では、岩手日報という地方紙がメディア(マスコミ媒体)の中心で大きなウエイトを占めています。
1月24日の岩手日報論壇に「工場建設地の植生守れ」と題した投稿文が掲載されました。いま私たちが直面している工場誘致問題のなかの自然保護の部分だけではなく、さまざまな面で県の希少野生動植物や環境問題で実際に体を張ってデータを調べ提言を続けているメンバーの一人が投稿したものです。
その後、県と町では「回答」を岩手日報に載せましたが、個人の投稿とそれへの回答という次元にとどまらず、私たちの会としても見解を示さなくてはならない部分が実に多いものでした。(長くなりますので、見解は次回に致しますがおおまかなことを指摘しておきたいと思います。)



私たちの運動は、雫石の町是(農業と観光の町)と将来像からみて(特に小岩井農場隣接地に)産業廃棄物焼却炉はふさわしくない、ということから出発しました。そして、署名活動の柱として地域の自然や景観を守るという大きな合意点=共通の思いが出来ていきました。
産廃施設計画が中止になりホッとしたのもつかの間、すぐ隣の土地に「接着剤を使用する合板工場誘致」が出てきたわけです。それも、「環境保全等用地」として税金で購入した町有地に。

町民の健康面(特に産廃問題の時から指摘していた化学物質過敏症家族が付近に居住している点)や、自然景観の保全など、産廃問題から学んだはずの様々なことを、再び繰り返し行政に対して言わねばならない突然で残念な事件でした。

様々な経過がありましたが、具体的に行政に詰めていった事柄の中で、重要な点は次の二点です。
そもそもが産廃である木屑(特に接着剤が付いた端材まで)を燃料とするものを「ボイラー」と認定するには問題がある点。
もうひとつが、今回岩手日報論壇に掲載された、地域に生息する貴重な野生動植物の保全対策でした。一昨年の環境アセスメントが必要であるという判定と同じ地域なのにかかわらず、最低でも1年位の保全対策期間が必要なはずのものが、なぜ12月半ば過ぎという不適切期の移植で済まされることになったのでしょうか。
<<企業側が事業を急いでいる。>>
これが、すべてに優先されてしまったのでした。

論壇投稿文の論旨と「回答」の要旨をピックアップしたいと思います。

(尚、新聞掲載文のなかに訂正を要する箇所がありましたが、掲載前に直接連絡して修正了解がされていますので、その部分は省き、論旨として自然保護と行政のあり方の部分に限って重要な点をまとめてみることにしましょう。)

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★1月24日岩手日報論壇 『工場建設地の植生守れ』の論旨

①工場が建設される地域は、一昨年の産廃施設問題の時にフルアセスメントが必要と判定を受けた地域である。

②「岩手県自然環境保全条例」などに基づき県は有識者から意見を聞き、事業者へ指導、勧告が行われ、町は県の勧告に従うとした。

③有識者からは・春季の調査が必要・やむを得ず移植の場合は適期と場所に十分配慮を要する、という意見が県と事業者に提出されていた。

事業者は春季調査は行わず12月16日の不適切期に移植を行い、12月20日、町と事業者は立地協定を結んだ。

⑤事業者の言い分は移植を行ったことで勧告に配慮したとしているが、勧告のもとになった有識者の意見は満たしていない。

⑥しかも移植不適切期だったため確認されていた絶滅危惧種の多くは、適切な処理ができないまま放置され消滅の運命にある。

このような状況で、県は「勧告に従った」と認めるべきではなく、春の調査も行ってから適切な保護対策をとるよう指導を続けるべきである。
⑩モリアオガエルなどの絶滅危惧動物についても同様に指導を続けるべきだ。

これが市民から信託を受け法を守る行政としての責務であると考える。行政の腰折れで里山の自然が失われるのは慙愧に堪えない。

⑫雫石町は「環境保全等地域」として議会の承認を得て血税で取得している。

取得目的に合った事業が展開されるべき町有地である。

⑭当局の行為が("環境保全等地域として取得した")議会決定を無視しているのに、議員が異議の声を上げないことに民主主義の崩壊を感じるのは私だけだろうか。
  
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(以下、太字部分は問題点です。あらためて見解を書きましょう)

★1月27日掲載、 県自然保護総括課長「回答」の要旨
①学識者の意見は大筋で尊重している。
②大半の希少種は、従前からの場所で、あるいは新たな移植先で芽を出すものと思われる。
③県では条例に基づき希少種の保護をはじめ自然環境の保全に努めており今回の工場建設に当たっても、事業者や雫石町の協力で適切な保全措置が講じられているものと考えている。
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★1月29日掲載、雫石町長「回答」の要旨
①工場の進出要望があった際、直ちにその計画や事業内容を精査した
②その結果、この工場は、林業振興、雇用の確保、木材を燃料とする環境にやさしい内容であり、町の進行発展からもふさわしいと判断した。
議会に説明して議論を尽くし進めてきた。
④町行政としては、まさに民主主義のルールにのっとり進めている