日々是好日

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怖い京都

2008年02月19日 | 京都
「京都の町は古い」

古くから栄えていただけに、歴史的な価値の高い文化遺産も数多いのは事実です。
しかし亦、その裏で数知れぬ人間ドラマが繰り広げられ、事実とも伝説とも
とれないような形で語り継がれている話も少なくありません。

そんなドラマのなかでもちょっと怖いのが謡曲「鉄輪(かなわ)」で知られる
『鉄輪の女が身を投げた』とされる井戸の存在です。

平安時代の話なので何処から何処までが本当だか良く分からないけれど、
夫に浮気をされた平凡な主婦が嫉妬に狂い、貴船神社へ丑の刻参りをして、
夫と後妻の女を呪い殺そうとするのですが、願い叶わず井戸に身を投げる話です。

夜な夜な頭に鉄輪を巻いた女が都に出没する噂を聞いて、その女を捕らえようと
阿倍晴明まで登場するあたり、八墓村みたいな気がしないでもないのだけれど…

鉄輪の女が身を投げたとされる井戸が今も現存しているのです。

私はもっと通りに面した神社の脇にでもあるのかと思っていたのですが、
その井戸は路地(ろーじ)の奥にありました。
京都の路地(ろーじ)は普通その奥に数件の家があり、家の玄関にではなく
路地の入口に表札がかかっています。
鉄輪の井戸の路地にはその奥にある家の表札と一緒に「鉄輪の井戸」の表札もかかっています。

普通、路地に入ると言う事は他人の家に訪問するのと同じ感覚なので、
シーンとした路地の奥に足を踏み入れるのはやっぱとっても緊張します。
ちょっと井戸を見に行くだけなんだけど、そんな軽い気持ちで
訪れてはいけないような何かを感じます。

路地の奥には小さな稲荷神社が祀られていて、その横に鉄輪の井戸はありました。
ご自由にお持ち帰り下さいと書かれた箱の中には、井戸の由来が書かれた紙も入っていました。

上水道が整備されるまでは、路地のなかに1つの井戸があって、
そこに住んでる人達は井戸を共同で使っていた筈。。。
そんな生活用水に、鉄輪の女は身を投げたのか…と思うと、何だか空恐ろしくなってきます。

この井戸があるのは「鍛冶屋町」(堺町松原下ル)なのですが、この町内の北側が「夕顔町」
南には「六条の御息所」が住んでいたとされる場所があったりするのですから…