11月27日
神代からつづくこの風身に享けてしばしわたしのかたちをとどむ 本田鈴雨 柘榴ひとつ神父にわたす自覚なきわが原罪をあづけるやうに 萱野芙蓉 いとなみが神話になってしまうから設定温度を2℃下げる 田崎うに 神さまのなみだのように流星はひっそりと冬の野を流れた 笹井宏之 精神がふらふら百合のように揺れ今宵の酒はかなしくきれい 萩 はるか すごく面白い題だと思います。 「神」という存在に、とても興味があります。 本田鈴雨さんの作品。 神代からの栄枯盛衰の営みのなかで、「わたし」自身が存在するということを認識するような作品でしょうか。 神代からつづくこの風身に享けてしばしわたしのかたちを残す から改稿されているようですが、私は「残す」のほうが好きです。 「とどむ」はわたし自身が存在していることがまず前提にあるのですが、 「残す」は風によって「わたし」の輪郭がはじめて見えたような効果を感じるのです。 萱野芙蓉さんの作品。 原罪が柘榴のようなものだとすれば、それは救いである気もします。 田崎うにさんの作品。気になります。 人間の「いとなみ」と考えれば、 地球のことを考えた現実的な作品と取れるのですが、 あなたとわたしの「いとなみ」なんて考えると、 全然違う意味でヒートアップしてしまいそう。 笹井宏之さん、萩はるかさんの作品は、そっと感じとるしかないです。 |
11月25日
七度目の卒業を迎えてもまだ桜の花の奴隷であります 橘 こよみ ぐらぐらと螺旋に下るばねづたい卒業のない春をふらつく やすまる 「卒業」というイメージが固定されている言葉は、かえって難しい気がします。 作品の内容が似たようなものになってしまいがちですね。 そのなかでも突出して好きなのが橘こよみさんの作品。 作者自身が教師という体験をもとに詠まれたうたでしょうか。 しかし、そういうふうに現実的に捉えるよりも、「桜の花の奴隷」として囚われている心に注目したい作品です。 「奴隷」というドキッとする単語を用いられるのが、こよみさんの手腕。 やすまるさんの着眼点は「卒業のない」現在に。 「ぐらぐらと螺旋に下る」という途方のなさが印象的。 区切りなく存在し続けることはなんてことだろう。それが大人になるってことらしいけれど。 |
11月25日
歩いたらアレルギーです杉並区つらそうだけどぜんぶだいすき 短歌製造機メカ麦3号(オペ:佐々木あらら) ほんとうにわたしは死ぬのでしょうか、と問えば杉並区をわたる風 笹井宏之 杉花粉の作品が予想以上に多かったです。 短歌製造機メカ麦君は、佐々木あらら氏がオペをすると妙に馴染む気がする(のは気のせいか)。 杉並区に住む杉花粉アレルギーの誰かさんのうたのように思われました。 |
11月18日
※勝手に作品をお借りするのも恐縮ですが、さすがに2008年の題詠も終わってしまったので、トラックバックは諦めることにしました。
※勝手に作品をお借りするのも恐縮ですが、さすがに2008年の題詠も終わってしまったので、トラックバックは諦めることにしました。
あまかくる通信網を切断しおまへひとりをつらぬく今宵 小籠良夜 風切羽欠いたつばさではばたいて砂の足から崩れてゆくの ひぐらしひなつ うつくしい切り口のため切るたびにふきんで拭っていくとよいでしょう 小野伊都子 小籠良夜さんの「あまかくる」は「数掛かる」という意味でしょうか。文語に詳しくなくてお恥ずかしいです。 「通信網」という現代的な語句をまじえることにより「おまへひとりをつらぬく」という古典的な姿勢が際立って見えました。 ひぐらしひなつさんの脆さは怖くて美しいです。 ミロのヴィーナス像みたい。 小野伊都子さんは料理のうたでしょうか?? それとも・・・。などと考えてしまう余韻があります。 |
10月20日
三日ゐりや大阪弁にも慣れまんがな突つ込むタイミング計つてをりぬ 野州 たくましく厚かましくてお人好しうんざりだけど沁みる大阪 すずめ 大坂で助けた亀につれられていった風俗店でぼられて 市川周 大阪人すべてが面白いと思うのは大間違いだと俺を見て知れ カー・イーブン あほやなあ あんたほんまは あかんたれ 大阪来たら泣いてもええよ 睡蓮。 DREAMS COME TRUEの「大阪LOVER」という名曲もこの年に発売されているのですねぇ。 睡蓮。さんのように、関西弁で短歌を書くというのは憧れます。親しみが出ていいですね。 同様に、すずめさんにも大阪への愛を感じます。身内じゃないと詠めないうた。 私は関西人じゃないからできない。残念。 だけど関西人じゃないだろう野州さんのノリもいいです。 そして、市川周さんの面白さのルーツはどこだろう。とも考える。 (「大阪」の漢字が違うのは意図的なのかしら?) そして、勝手ながらカー・イーブンさんもかなり面白いかただと思っています。 |