花夢

うたうつぶやく

2008年題詠 026~030

2011年04月05日 | 題詠2008感想


ここまではいいよっていうここまでの基準はとても曖昧なもの
026:基(暮夜 宴)

基本使用料金さえもはらわずにただねむってばかりのぼくたち
026:基(下坂武人)

道いっぱいのバスに子供がゆれている 夏のさかりをおぼえておゆき
028:供(我妻俊樹)

ぎぃぎぃと啼く鳥がいて六月の供花はどれもこれもむらさき
028:供(村上きわみ)

ワンカップ供へられたる黒みかげの下よひどれの骨かるからむ
028:供(本田鈴雨)

虎杖の匂う夏の日ふたりからこぼれるようにひとりになった
029:杖(暮夜 宴)

花冷えに蒸籠の湯気は道を行く人をぐるぐるにして放さず
030:湯気(此花壱悟)

やわらかな湯気をまとったいきものが息ととのえる地上と思う
030:湯気(村上きわみ)



短歌の草原を、夏のさかりや、さびしいお墓や、虎杖のにおいや、蒸篭の湯気に囲まれながら歩く。
私にいろんな温度や匂いを感じさせてくれる作品の作者たちは、今まで一度は私のブログで取り上げさせてもらったことのある方ばかり。
いつもいつも、ありがとう。


2008年題詠 021~025

2011年04月03日 | 題詠2008感想


ぎゅううんとサッカーボール雲に触れはねかえるまでひとりがいいの
021:サッカー(やすたけまり)

せんそうのある国ない国 路地裏でサッカーボールがぱあん、と跳ねる
021:サッカー(原 梓)

低脂肪食品ばかりむさぼれば僕は氣弱な狼になる
022:低(酒井景二郎)

こちらからあちらの岸へ にくたいはすずしい舟とあなたは言った
024:岸(村上きわみ)

切るためにいまひとたびをむすばれてもうこの船も岸を離れる
024:岸(久野はすみ)

あられもない姿で芙蓉ひらいては夏を抱いてまたしなだれる
025:あられ(原 梓)



感性が鋭い絵みたいな作品ばかり集まった。

題詠を走るうえで、鑑賞サイトにはずいぶん助けられる。
そこからの交流などがなければ、題詠を続けてなかったんじゃないかなぁ。とさえ思っている。
なので、本当は題詠期間中にこういうことがやれて、交流の糸口になればいいのだけれど・・・・。

こうして勝手に読んでいるだけでも、
はじめましての方や、名前見知りの方、憧れの方や、ブログで交流させてもらっている題詠仲間さんなど、
ほんとうにいろんな方と出会っている気になる。

花夢です。どうぞよろしくおねがいします。
と、こころのなかでつぶやく。勝手に。


2008年題詠 016~020

2011年04月03日 | 題詠2008感想


春の夜成分のうち少なくとも20%は猫である
016:%(水須ゆき子)

削減を2%もできたから地球にやさしいらしいなにがし
016:%(斉藤そよ)

やはらかな言葉 わたしのやさしさは 3%裏切りをもつ
016:%(K.Aiko)

部屋中にころがるわたしのぬけがらを数えて2%の夜明け
016:%(みち。)

誰も彼も△※@&%(ほにゃらら)と話す今日はなぜこんなでわたしプリンが食べたい
016:%(yui)

冒頭の数行のみが辛うじてバランスを保つというありさまで
017:頭(佐原みつる)

思い出を探して歩く古校舎集めるそばからこぼれるくせに
018:集(藻上旅人)

集ひ来るひかり花びらほどかれてしまふもろさを許しておくれ
018:集(萱野芙蓉)

しなだれて豆腐の角を見つめてゐる命は輕くなつてしまふのか
019:豆腐(酒井景二郎)

本当(は怒ってきみが投げつけた木綿豆腐)に申し訳ない
019:豆腐(矢島かずのり)

鳩尾に飛び込んでくる黒髮を僕は愛していいのだらうか
020:鳩(酒井景二郎)

この街の余白を埋めるありふれた鳩鳩ベンチ鳩わたし鳩
020:鳩(村上きわみ)


自分が力のない短歌しか詠めていないのに、
こんな極上の作品ばかり集めて大丈夫だろうか、とすこし心配。

%のお題は面白かった。豆腐も鳩も面白かった。
ものをお題にするとイマジネーションが面白い方向に広がりやすいなぁ。

イメージからかけ離れすぎず、でも誰も思いつかないような角度で、お題が輝いている作品たち。
私の胸ぐらを掴んで、あんたはこれでいいのか、と揺さぶってゆきます。