083：名古屋

前線が名古屋を通過してしまう　ひとり　ひとり　ひとり　つめたい

082：研

夜も更けて研ぎ澄まされた感覚はまるで水晶みたいにひかる

081：嵐

どうせ死ぬともしびでしょう　いっそ砂嵐にでもしてしまいましょう

080：Lサイズ

メンズＬサイズのシャツにつつまれてうまれるまえのきおくをさぐる

079：児

あのひとは電気を消すと幼稚園児の顔をして眠ってしまう

078：合図

触れられて心をゆるす合図には鳥のはばたく音をささやく

077：横

ゆっくりとあなたの横でぬるま湯が水に変わっていくまでを知る

076：ジャンプ

ジャンプする不恰好さをそのままにできるだけ近いところまで跳ぶ

075：量

西向きの玄関にあるサボテンと器量の良さを張り合っている

074：銀行

怖くないって言われてあなたの銀行にすこしづつわたしを預ける