「体温のないもの」
リサイクルされる慕情が鼻につく匂いを放ちだしてしばらく
その恋はどれだけ水にひたしても思うより早く枯れるのだろう
黒ずんだ汚れみたいな憧れがほら食卓やトイレの壁に
憂鬱なあなたの声をききながら部屋のCO2が濃くなる
いつか孵化するだろうにくしみを電気毛布であたためている
加湿器のマイナスイオンを浴びながらまた体温のないもので比喩
ずっと好きでいるのもなにか省エネのように感じて過ごす休日
幸福のパッチテストが陽性と出るひとだけをともだちにする
日が落ちてはるか彼方のウェブログが鬱蒼としてゆくのを見ている
断定をさけてあなたと話し合う未来がそろそろ擦り切れそうで
部屋じゅうに散らかっている感傷を音符の絵柄の靴下で踏む
メランコリック メランコリック ってきこえる時計が告げるクリスマス
苛立ちを棚に戻してそのまんま賞味期限が切れてしまった
曖昧な気分ではなく感情できちんと殺すことを覚える
ゆっくりとこころを染めて決めてゆく夕焼けこやけあなたがにくい
帰り道にエコバックからはみ出て揺れる長い葱みたいな未練
河川敷にいくつもゴミが転がって光を浴びてモザイクになる
その愛はだれかの役に立つはずとか言って資源回収に出す
古本屋に平積みされた短編集も郷愁もいやなにおいだ
できるだけあたたかくして冬支度 わすれるまではまるまっている