花夢

うたうつぶやく

5首選よろしくお願いします。

2009年12月01日 | 題詠2009
「わずかな振動」 ~題詠100首から5首~

夕飯の鯖の味噌煮がわけもなく罵られては煮くずれてゆく

ひっそりと職場のなかに湧いている気泡のことをあなたに話す

真夜中に氷を舐めて呼び覚ますわたしのなかの青いペンギン

天ぷらを揚げてるときのジュッという音を残して記憶が消える

意図的に嫌いになろうとしてみたら涙みたいに星が流れた




生まれて嬉しかった作品です。
これぐらいの静かな震えを書きたい。

中村成志さんの五首選会に参加します。
よろしくお願い致します。

10首ごとに連作仕立てで作ったりしたのですが、
100首のなかから5首選ぶというこのコーナーでは、
むしろ1首1首を見てもらうべきであり、
連作として読んでもらうのはどうだろうという気持ちもあります。

とは言え、まとめたほうが読みやすいということもあり、
コメント欄に連作のほうのリンクを貼っておきます。

完走報告(花夢)

2009年11月23日 | 題詠2009
どうにか、完走しました。

今年はいままでと走り方を変えてみたのですが、
それが吉と出たり凶と出たりしたような気持ちです。

鑑賞してくださった方たちの言葉が走る力となりました。
ありがとうございました。

080~100:体温のないもの

2009年11月23日 | 題詠2009
「体温のないもの」


リサイクルされる慕情が鼻につく匂いを放ちだしてしばらく

その恋はどれだけ水にひたしても思うより早く枯れるのだろう

黒ずんだ汚れみたいな憧れがほら食卓やトイレの壁に

憂鬱なあなたの声をききながら部屋のCOが濃くなる

いつか孵化するだろうにくしみを電気毛布であたためている

加湿器のマイナスイオンを浴びながらまた体温のないもので比喩


ずっと好きでいるのもなにか省エネのように感じて過ごす休日

幸福のパッチテストが陽性と出るひとだけをともだちにする

日が落ちてはるか彼方のウェブログが鬱蒼としてゆくのを見ている

断定をさけてあなたと話し合う未来がそろそろ擦り切れそうで

部屋じゅうに散らかっている感傷を音符の絵柄の靴下で踏む

メランコリック メランコリック ってきこえる時計が告げるクリスマス

苛立ちを棚に戻してそのまんま賞味期限が切れてしまった


曖昧な気分ではなく感情できちんと殺すことを覚える

ゆっくりとこころを染めて決めてゆく夕焼けこやけあなたがにくい

帰り道にエコバックからはみ出て揺れる長い葱みたいな未練

河川敷にいくつもゴミが転がって光を浴びてモザイクになる

その愛はだれかの役に立つはずとか言って資源回収に出す

古本屋に平積みされた短編集も郷愁もいやなにおいだ

できるだけあたたかくして冬支度 わすれるまではまるまっている