hakuunの未来ノート

将来のため、人生やビジネスに関して、考えたこと、感じたことを綴ります。

「ストロー現象」と「ドラッカー氏の顧客定義」

2012-04-21 | 企業経営
新幹線等の高速鉄道は、移動時間を短縮し、快適な移動空間を提供してくれる。
東京から大阪への出張は、今や日帰りが常識(?)になっている。
その結果、宿泊費はなくなり、コスト削減につながり、企業に貢献している。

高速道路を利用すれば、短時間に多くの観光地を回ることができ、時間の有効利用できる。

新幹線や高速道のメリットは他にも、物流の効率化などたくさんあると思う。

メリットがあればデメリットもあるはずである。

社員の視点でみるとどうであろうか?

東京から地方への出張で、日帰りか宿泊かでは、社員にとって肉体的な負担が異なる。
また、宿泊することができれば、温泉などに入り、非日常空間で、気分転換を図ることができる。
リフレッシュができ、次への活力となる。

地方都市の立場からすればどうであろうか?

出張客が宿泊する場合はどうであろうか?
地元の宿も宿泊客が増えれば、旅館やホテルも活性化して潤うし、そこで働く従業員にもボーナスを払うことができる。
地元の飲食店にもお客が流れ、お店にお酒を収める酒屋さんも潤う。他にも魚屋さんや他の商店にも潤う。

地元の商店が潤えば、お店を改装したり、増築したりする。そうすれば、住宅・設備関連の業種にもお金が回る。
その結果、地元に雇用が生まれる。雇用が生まれれば、若者も地元に就職し、シャッター通りもなくなり、街の活性化につながる。

逆に、日帰りの場合はどうか?
当然、宿には留まらないから、ホテルや旅館の宿泊客は増えない。収入も落ちるので従業員へのボーナスも出せないかもしれない。
地元の飲食店にもお客が流ないから、売上が上がらず、酒屋さんもお酒を収めることができない。
旅館に商品を収めることができないので、他の商店も衰退化がはじまる。
商店が衰退するので、増改築はしないし、シャッター通りとなる。そうなれば雇用先もなくなり、若者も地元から離れる。

「風が吹けば桶屋が儲かる」方式で言えば、
「交通網が発達することで、シャッター通りが増える」ということになる。

Wikipediaによると
「ストロー現象」とは、交通網の開通により都市が発展したり衰退することをさす。
交通網とは、高速道路や新幹線をはじめとする高速鉄道である。

さらに、恐ろしいことが書かれている。
地方では、「新幹線が通れば、観光客が増え、街の活性化につながる。ぜひ、新幹線の開通を」

本当だろうか?

しかし、現実は違うようである。サラリーマンの出張の場合のメリット・デメリットで書いたように、想定と異なる結果となっている。

地方に住む住民にとっては、高速道路や新幹線をはじめとする高速鉄道は、どうとらえているのか?

現実は、地元住民は、魅力ある商品や品揃えを求め、またより多く良い仕事を求め、より良い学校に通学するため、域外に出ることになる。

では、観光客はどうであろうか?
その街に滞在する必要性が薄くなるため、宿泊や食事などの減少を招くことにつながり、客単価が低下する面がる。
このため、より大都市へと購買力が集中し、田舎側の地方都市は衰退することにつながる。

このような例は全国各地にある。

関東地方では
・東京湾アクアラインにより、京浜地区に買い物客が流れ、木更津駅前は一気にすたれてしまった。
・つくばエクスプレス線開業により、つくばエリアから東京へ大幅に時間短縮が図られ、東京の秋葉原に買物客が流れ、つくば地区の家電量販店が撤退している。

四国地方では
・岡山と香川県を結ぶ瀬戸大橋等の本四連絡橋の完成により、高松都市圏が岡山都市圏に吸い上げられ、ストロー効果が発生している。
・明石海峡大橋等の本四連絡橋の完成により、徳島都市圏や淡路島では、それまで地元で行われていた消費者とその消費活動が京阪神へ流出している。


本四連絡橋が非常に悪者のようだが、本四連絡橋の建設構想は、宇高連絡船紫雲丸の沈没事故の再発を防ぐことが目的だったことを忘れてはいけない。


話がそれたので、ストロー効果に話を戻す。
東北地方では
・高速バス路線の発達により、東北地方各地から仙台経済圏に集まる傾向がある。
・今後東北新幹線により、競争が激化し、さらなる仙台経済圏への集中が予想される。

同様な事例は、九州や北陸地方でも見られる。


これらの原因はなんだろうか?

当時、日本列島改造論が発表され、全国を高速鉄道や高速道路で結ぶことにより、地方都市がバラ色になる、と言われていた。

しかし、現実はどうであろうか?

ここで、ヒントになる言葉ある。

ドラッカー氏の言葉を借りれば、『顧客』とは誰なのか?

新幹線等の高速鉄道の『顧客』とは誰なのか?

新幹線を利用する出張サラリーマンや観光客だけなのか?
一般的に考えればそうかもしれない。また多くの経営者もそのように考えるだろう。

しかし、もう一段階高い視点で考えれば、乗客が利用する地方都市の旅館、街の商店街も『顧客』ではないのであろうか?
本当は、『街』そのものが『顧客』ではないのだろうか?

『顧客の定義』により、『戦略』は大きく異なる。

さらに、ドラッカー氏は「三つの役割」の中で、
『自らが社会に与える影響を処理するとともに、社会の問題について貢献する』と書かれている。

このことを、関係者はどのようにとらえているのだろうか?

改めて、ドラッカー氏のすごさがわかった事例である。