政府が「3回目のワクチン接種の検討を始めたらしい」というニュースを見た。「1回目・2回目もまだ打ててない人が多い中で、3回目の検討って何なの?」という疑問も出ていた。その疑問を持つ人はかなり居ると思うが、必要となるのなら検討は早く始めた方が良いという事も確かである。
「手を付けるのが遅い」と言われ続けた政府としては、半年・一年先の必要性を考えて検討を始めて当然とも思う。しかし一方では、そんな先の事より、目の前の1回目・2回目のワクチン接種についての見通し、ワクチン入手状況の正確な情報を出すのが先だということは間違いなく言える。
出す情報はきちんと出して、丁寧に説明を行いながら、その一方でかなり先の別の状況をも検討していくというのがあるべき姿だろう。マスコミが先走りし過ぎるのか政府の姿勢がバラバラなのか、内情を正確には知るわけでは無いが、マスコミを通じて流れてくるニュースを聞く限り、政府に一貫した方針と態度があるようには聞こえてこない。
「3回目のワクチン接種」の必要性にしても、報道では「新たな変異株の感染に対しては、2回のワクチン接種では十分でない可能性がある」と言うだけ。従来株には95%程度の有効性があるのに、なぜ変異株には有効性が下がると考えるのか根拠の説明もない。ただ漠然と、もう一度ワクチンを接種すれば抗体価が上がって予防効果があるのだろう?というニュアンスだけが伝わって来る。ワクチンメーカーの見解も「低下する可能性がある」というだけ、どの程度のデータに基づく考察なのか分からない。
ワクチン効果の低下の原因が抗原タンパク質の変異にあると考えるなら、同じ抗原を使ったワクチンを接種して抗体を増やしても、その有効性には疑問が残る。とにかく血中抗体価を高く保つというのならば、数か月ごとに何度も打ち続けないといけないことになるが、例えば麻疹や風疹の予防接種を「血中抗体価が下がらないように何度も打ち続ける」なんて聞いたことも無い。
「3回目」が変異株への対応だと言うのなら、それは変異株に対して設計された新しいワクチンの導入を考えての事でなければ理屈に合わない。ウイルスの持つ1種類のタンパク質だけを接種し続けるという、奇妙な対応としか思えない。ワクチンに関しては何故か「中和抗体」の効用だけが説明されるが、抗体の持つ作用は細胞への感染を阻害する「中和作用」だけじゃない。
抗体にはウイルス排除につながる別の作用もあるわけで、それにはウイルスが持つ様々なタンパク質に対する多種多様な抗体を作らせる「弱毒化・不活化ワクチン」の方が有効なのでは、という気もする。国産を含めていくつかの「不活化ワクチン」が開発中と聞くが、なぜその点に言及することもせず「ファイザー、モデルナのワクチン」の取り合いだけを想定するのか不可解だ。自分が3回目を接種するなら、そのような不活化ワクチン(できれば国産)の方が良いのではないかという気がしている。