「ワクチン接種者の把握にはマイナンバーが必須」と誰かが言ったそうだ。医療従事者のワクチン接種は事業所ごとにやれば誰が受けて誰が受けて無いかは事業所内で把握できるし、行政は事業所ごとの接種が完了したことを把握すれば良い。医療関係の事業所の多くは病院関係で、医師・看護師などへの接種であり、ワクチン接種自体だけでなく副反応の判断・対応も自らで行える。介護・福祉関係施設も、事業所ごとに行った方が同一施設内でのスタッフに接種済み・未接種のばらつきが無く、接種後の業務管理などがやり易い。政府は行事開催や経済再開に関してワクチン接種を感染管理の要と位置付けているのだから、事業所とは無関係に個々に接種の日程を決めて行われると、同一事業所内でのワクチン接種の足並みがそろわず、業務管理・感染管理などに心理的影響を及ぼしかねない。
それ以外の一般人のワクチン接種においても、せいぜい個別の健康チェック(問診表?)と年齢チェックの必要性しか思いつかず、年齢は運転免許証で十分確認できるし、顔写真付きの免許証なら本人確認もできる。本人確認の難しいマイナンバーよりも簡単で(今のところは)信用性も高いし、これまで多くの場面でそうだったように免許証が無ければ健康保険証でも問題は生じないと考える。一度受けた人が黙って余分なワクチン接種を望むことにも、他人に成りすまし余分に接種を受けることにも、危険性の可能性こそあれメリットは無く、そのような人が多く出るとは思えない。いわゆる「接種漏れ」を、行政が逐一即時に把握しないといけないと考えるなら、その理由が知りたい。
政策的なワクチン接種は基本的に集団免疫の確立であり、6~7割が接種を受ければ良い。接種を望まない人は受けなくても良いのだから、もし何等かの都合でワクチン接種の機会を逃した人にはいつでも希望すれば受けられる施設を設けておけば良いわけだ。必要なく何度も接種を受ければかえって危険性が増大しかねないことを周知すれば、他人の名を偽り余分の接種を受ける人がやって来るとは考えにくい。ワクチンそのものの量を把握しておけば、それを消費した時点で何人が接種を受けたか(接種率)も分かる。どうしてもワクチン接種をマイナンバーで管理しようとする考え方は、全く理解できないしマイナンバーにいろいろな個人情報を紐づけようとする試みとしか思えない。
春の給付金の際も、各個人にマイナンバーを送ったように、各個人宛てに振込用銀行口座を一つ指定しろという書類を送れば済んだものを、わざわざマイナンバーカードの有用性を見せようと画策し却って混乱と遅延を招いてしまったではないか。ワクチン接種を個別に把握するなら、受けていない人の「受けていない理由(自ら接種を拒否したかどうか)」まで把握しなければ、受けたくない人が行政から機械的な催促を何度も受ける事態にもなり兼ねない。ワクチン接種でそれをやれば、また混乱と遅延を招くだけという危惧を拭えない。