米国の大統領交代を前に、これまでの新型コロナ感染症による犠牲者数を伝えていた。約40万人、驚くほどの数の多さだ。過去の戦争での死者と比較してみると、ベトナム戦争の7倍近く、第2次世界大戦の2倍弱、南北戦争での死者数にあと9万人に迫っている。すでにワクチン接種が進んでいるとはいえ、今年中に南北戦争の死者数を超える可能性もある。そうなれば、対新型コロナの戦いの犠牲者は米国の過去の戦争での犠牲者数を超えることになる。あらためて、その数字の余りの大きさに驚かされた。
前大統領が新型コロナ感染症に対する当初の楽観視が、ここまでの感染拡大と死者数増大の少なくとも一因となったのは確かなのだろう。だがそれ以上に、新型コロナの致死率や感染抑止におけるマスクの有用性が明らかになってからの、前大統領の言動がそれ以上の大きな影響を与えたように思えてならない。おそらく犠牲者の多くが60代後半以降の人々で、その中には若い頃にベトナム戦争で洗浄に駆り出され凄惨な体験を潜り抜けて来た人が多いだろう。新型コロナの感染が治まった後、彼らはかつてのベトナム戦争を遥かに超える仲間を失ったことにあらためて衝撃を受けるに違いない。人類には、互いに争う前にやるべき事があったのだと感じる人も多いのではなかろうか。
新大統領は前大統領を批判して新型コロナ対策に力を入れると思うが、果たしてどこまでこのコロナ感染拡大を抑えられるだろう。ワクチン接種が功を奏せば米国の感染者拡大はやがて鈍ってくるのだろうが、ワクチン接種が感染増加に追いつくまでは、これまで通り死亡者が増えて行く。ワクチン接種が感染拡大の抑制にどのような効果を示すか、それは後に続く日本にとっても大いに気になるところだ。