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西東京市・北海道富良野の森林を舞台にした遺伝,育種,生態などに関する研究ノートの一部を紹介します

人工受粉の強み

2008-06-24 | フィールドから
・Yさん、Tさんとともに、アオキの人工授粉後の実の観察を行う。人工授粉した枝と花数をカウントした枝にはビニールテープが付いているので、実をカウントすることで結果率が出せる。ふと見上げると、付けたビニールテープがはげそうになっている。なんでだろうと思ったら、なんとビニールテープの下から発根し、根のせいでビニールテープがはげそうになっていた。いわゆる”空中取り木状態”になっていたのだろうか・・・。ううむ、たくましいぞ、アオキ。



・幸運なことに(?)試験地内で設定した母樹には自生タイプと非自生タイプがある(つまり、試験地内にも非自生タイプは既に定着している)ので、4種類の全ての組み合わせで結果率を比べることができる。問題はコントロール(すなわち、無受粉)の枝に実がついていなければ、受粉が成功したと見ることができるわけだが・・・。

・1個体目の無処理枝は、3花序(10-20花くらい)中、2花序でそれぞれ1個ずつの実が確認された。これはいわゆる受粉エラーであろう。しかし、2個体目、3個体目のコントロールは無受粉枝に実はない。一方、受粉した方の枝は、ある程度の結果率が認められそうだ(全体的に8割程度?)。オープンでもおそらく8割強なので、人工受粉自体は(奇跡的に)うまく行ったようである。結果をまとめて、交配タイプ(自生×自生、自生×非自生、非自生×自生、非自生×非自生)で結果率を比べると面白そうだ。



・それにしても、人工授粉はやはり強力なツールだ。なんと言っても、(うまく受粉が成功さえしていれば)結果がクリアーだし・・・。ところで、富良野にてKさんから「大きくならない実は全てタマバエに寄生されているのじゃない?」という恐ろしい指摘を頂いていたのだが、実を切ってみても昆虫の卵らしいものは見当たらない。やはり、受粉から結実までに時間がかかる(2年越し?)のだろうか・・・。

・と思って少し調べてみると、個体の配置などがアオキの受粉効率とタマバエの寄生率に及ぼす影響を調べた論文があることが分かった。この論文によれば、6月19日までの残存果実数/花数をステージ1の受粉成功率とし、これまでに落下した果実は花粉制限によるものとしている。これは、今回の人工授粉実験とも整合するので、非常によく理解できる。また、この時期からをステージ2として、12月までは果実数を定期的にカウントしている。本日は6月24日。偶然とはいえ、いい時期に調査できたみたい。しかし、特に、2年越しとは書いていない。ということは、これから実が大きくなっていくのだろうか・・・。



・農場への通路にはアカメガシワが花を着けている。これは雄木と雌木があるようで、なかなかに派手な花である。なぜか雌雄異株が目に付くような気がするのだが、単に自分の好みのせいだろうか・・・。