・アカエゾマツ論文の考察を進めるにあたり、やはり氷河期以降の分布変遷についてちゃんと考えないといけないな。ということで、もう一度、”五十嵐ほか(2005)北海道中央部・富良野盆地とその周辺山地における過去12000年間の植生変遷史.東京大学演習林報告114,115-132”をちゃんと読み返す。何度かざっと見ていたのだが、周辺知識が浅いせいか、どうにも頭に入ってこなかった論文である。
・この論文では、富良野市盆地と今回のアカエゾマツのサンプリング箇所の一つである前山の湿地帯の花粉分析から植生変遷を推定している。結果をノートに書き付けていくうちに、ようやく全貌がつかめてくる。
・8000年前までは、モミ、トウヒ、マツとカンバ、ナラ、クルミのような現在に近い針広混交林が低標高でも広がっていたようだ。ちなみに、もう少し前の11000年前では、標高650m程度の湿地ではグイマツもあったらしい。8000年から5000年前までは世界的に温暖化し、北海道全域でトウヒが減少し、ナラが拡大した。5000年前から4000年までは、さらに針葉樹が減少し、ハンノキが増加している。
・低標高域と山地の湿地帯での違いは、あまり明瞭には示されていないが、山地にはクルミが低地よりも遅れて侵入したとあり、トウヒの減少は時期的なずれがあったと見ることができそうだ。山地の湿地帯や高山帯では4000年前ごろから気候が冷涼になるにつれて、ナラが減少すると同時にトウヒやモミが増え、2000年前には高山帯ではトウヒは現在と同じくらいの集団サイズを拡大したとある。
・これらのデータを統合すると、標高が高いところでは温度が低かったために、アカエゾマツの急激な個体数減少は低地帯よりも時期が遅かったと考えてもよさそうだ。また、主な分布域は垂直方向で移動したと思われるが、グラフをよく見ると、低地や山地の湿地帯でトウヒが減少したときにも全く花粉がなくなってしまったわけではないようだ。
・今回の遺伝解析のデータでは、集団サイズの大きな山頂付近で有意なボトルネックが検出され、低地帯では2集団しか検出されていない。ボトルネックテストでは、比較的最近のものしか検出されない(Bacles et al. 2004 Mol Ecol)。こう考えると、低地帯では古すぎるためにボトルネックが検出されず、比較的新しい高山帯のボトルネックが検出されたということも考えられそうだ。このアイデアは、実は筑波のTくんが最初に言っていたことなんだが、高山帯に避難地があって低山帯に分布が拡大したと思い込んでいたので、どうも説明がしっくりこなかったというわけだ。
・ようやく、自分の中ではストーリーが固まったような気がするのだが、後はこれをどう英語で表現するかが問題だな。そして、花粉分析の他の論文をもう少し読む必要がありそうだ。
・この論文では、富良野市盆地と今回のアカエゾマツのサンプリング箇所の一つである前山の湿地帯の花粉分析から植生変遷を推定している。結果をノートに書き付けていくうちに、ようやく全貌がつかめてくる。
・8000年前までは、モミ、トウヒ、マツとカンバ、ナラ、クルミのような現在に近い針広混交林が低標高でも広がっていたようだ。ちなみに、もう少し前の11000年前では、標高650m程度の湿地ではグイマツもあったらしい。8000年から5000年前までは世界的に温暖化し、北海道全域でトウヒが減少し、ナラが拡大した。5000年前から4000年までは、さらに針葉樹が減少し、ハンノキが増加している。
・低標高域と山地の湿地帯での違いは、あまり明瞭には示されていないが、山地にはクルミが低地よりも遅れて侵入したとあり、トウヒの減少は時期的なずれがあったと見ることができそうだ。山地の湿地帯や高山帯では4000年前ごろから気候が冷涼になるにつれて、ナラが減少すると同時にトウヒやモミが増え、2000年前には高山帯ではトウヒは現在と同じくらいの集団サイズを拡大したとある。
・これらのデータを統合すると、標高が高いところでは温度が低かったために、アカエゾマツの急激な個体数減少は低地帯よりも時期が遅かったと考えてもよさそうだ。また、主な分布域は垂直方向で移動したと思われるが、グラフをよく見ると、低地や山地の湿地帯でトウヒが減少したときにも全く花粉がなくなってしまったわけではないようだ。
・今回の遺伝解析のデータでは、集団サイズの大きな山頂付近で有意なボトルネックが検出され、低地帯では2集団しか検出されていない。ボトルネックテストでは、比較的最近のものしか検出されない(Bacles et al. 2004 Mol Ecol)。こう考えると、低地帯では古すぎるためにボトルネックが検出されず、比較的新しい高山帯のボトルネックが検出されたということも考えられそうだ。このアイデアは、実は筑波のTくんが最初に言っていたことなんだが、高山帯に避難地があって低山帯に分布が拡大したと思い込んでいたので、どうも説明がしっくりこなかったというわけだ。
・ようやく、自分の中ではストーリーが固まったような気がするのだが、後はこれをどう英語で表現するかが問題だな。そして、花粉分析の他の論文をもう少し読む必要がありそうだ。