古稀からの手習い 水彩ブログ

人生の第4コーナー、水彩画で楽しみたいと思います

まだあげ初めし前髪の・・・(藤村詩 初恋)

2019-09-16 06:59:30 | 書道

書の題材にと、久々に島崎藤村の詩集を開きました。

多くの詩人がそうであるように、その情念、表現力、リズム感など、その感性に驚きます。

そのうちの一つ『初恋』を書にしてみました。(半切1/2大)


まだあげ初(そ)めし前髪の 林檎のもとに見えしとき

前にさしたる花櫛の 花ある君と思ひけり

やさしく白き手をのべて 林檎をわれにあたへしは

薄くれないの秋の実に 人こひ初めしはじめなり


後ろから2行目の原文“紅”を“くれない”としたほか、原文のままです。


こういう漢字と仮名が一緒になった文語体で七五調の定型詩、
「こぼれ松葉を・・・」(佐藤春夫詩 海辺の恋 )(2018.10.1)の時も悩みましたが、
これを書としてどう表現するかは結構難しいものです。

たとえば文字群の塊り(ひいては余白)の構成をもっと自由で大胆なものにしたり、
各行の流れなどももっと自在にしたり、
あるいは相田みつをさん流の表現にする案もあるのでしょうが、
今の自分にはとても出来ません。

そんな中、小さな工夫ではありますが、

同じ仮名字が何度も出てくる“し”や“の”、
あるいは漢字で複数回出てくる“初”、“前”、“花”や“林檎”は
それぞれ違う字形で書いてみました。

“花”、“思ひ”、やさしく”、“秋の実”とかは、それらしい雰囲気の工夫を試みましたが、
こちらは“所詮かなわぬ・・・”(三橋美智也)の話であります。

この試みのもっと根源的な誤りは、傘寿目前の翁がこういう詩を選んだことのようです。
お許し、お笑いあれ。



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2 コメント

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Unknown (mori)
2019-09-16 07:15:08
この度は説明抜きで何とか読むことができました。流れるように流暢に書かれているという印象です。
真ん中の盛り上がりも控えめに表現されたのかと思います。
字形の違いは説明を読むまで分かりませんでした。
若い人が年寄りの心情を理解するのは難しいかもしれませんが、その逆は全く問題ありませんし、老化防止には良いかも知れません。
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Unknown (サガミの介)
2019-09-16 07:47:47
この詩を見ると、懐かしさとチョット甘酸っぱい青春のひと時、高校生の自分を思い出します。
ブログ作者の御性格でしょうか、柔らく優しい文字の並びにやすらぎを覚えます。
文字への思い、工夫の数々に改めて驚きを感じました。
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