オババのように、毎日舞台に立っていますと、夕方ハネたときにはぐったり疲れているわけですね。
ああー、今日の仕事もつらかったーとつい口ずさんでしまうほど、ぐったりですね。
いやしかし、稽古をたっぷりしているせいか、なんとか台詞も言え、アドリブもそこそこ飛び出したりして、
あ、あたし調子いい~なんて自画自賛したりしてね。
オババは家に帰っても一人なので、鍵は自分で開けます。
真っ暗な家に犬一匹。オババが帰ると犬が少し吠えます。
ああ、さみしい。もう、こんな生活いやだ。
誰か誰か、いつもそばにいて…。
一人で起きて一人で食事して一人で鍵を締めて、一人で帰ってきて一人で食事して、一人で寝て。
ああ、明日の舞台、ドタキャンしたいな。
おなかが痛いんです。休んでいいですか?
そうはいっても、オババは舞台が大好き。
せっかく主役をやらせてもらっているんだもの、立たないわけにはいかない。
小道具持って毎日重い荷物をしょっていくのよ、最寄り駅まで歩いたらそれだけでぐったり。
毎日毎日、舞台は続くよ、どこまでも。
野を越え山越え谷越えて。遥かな町まで行くのかなぁ。
毎日毎日、オババはいつまでこの舞台を続けなければいけないの?
明日、劇場に行ったら、劇場がなくなっていて、オババは舞台に立つことができませんでした。
すなわち、それはオババの死。
オババは地面に崩れ落ちました。
そして砂がアリ地獄のようになりオババをのみこんで行きました。
…てなことを考えますが、まずそんなことは起こりえませんね!