フィクション『同族会社を辞め、一から出直しオババが生き延びる方法』

同族会社の情けから脱出し、我が信ずる道を歩む決心をしたオババ。情報の洪水をうまく泳ぎ抜く方法を雑多な人々から教えを乞う。

結婚

2018-05-24 22:38:17 | ショートショート

レイ子は結婚してもうすぐ30年になる。

夫婦仲は良くも悪くもない、と言ったところか。

妻として夫に尽くす良い女である。

 

レイ子は高校の頃から細々と日記を書いていた。

日常の出来事を細かく書いていた。

その日記は数々の引っ越し、もしくは結婚で失われることなく、いつもレイ子のそばにあった。

かといってしょっちゅう読み返していたわけではない。

……だって暗くて嫌なことしか書いてないんだもの……

 

さて、不意に日記を読んでみたくなったレイ子は、

始めの方から読み始めた。

『何これ』

誰が書いたの?私?

そこに登場する女の子は、 

とにもかくにも男好きで女の子っぽくて、

今の貞淑な妻であるレイ子と同一人物とは思えなかった。 

 

私は思った。

女は結婚と言う儀式で過去の出来事をリセットするのだ。

 

レイ子は日記の中の自分を、

まるで他人を眺めるかのように、

よく書けているなぁよく書いたよな、と、

他者として見ることが出来るようになっていた。

 

 

 

コメント (1)
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