ここに来て安倍自民党が野党優遇の質問時間を見直して議席数割時間配分を要求し出したのは安倍晋三自身が自身に対する森友・加計疑惑の終わりを知らない度重なる散々の追及に懲りたことに対して同じような追及の再現回避が発端となっていたのかもしれない。
もし第1次安部政権が複数の閣僚の不祥事で野党民主党の激しい追及を受けて内閣支持率は急落、持病の潰瘍性大腸炎を悪化させた原因にもなったのだろう、11カ月の短命となったことも安倍晋三が思い出していたとしたら、森友・加計疑惑以外に数多くの閣僚や自民党議員が女性スキャンダルや不祥事、不適切な問題発言の懲りることのない出来(しゅったい)で野党の追及を受け、内閣支持率に影響してきたことも要因となった野党質問時間の削減が狙いということかもしれない。
と言うことは、臭い物に蓋が目的ということになる。
ネットにこれまでの与野党質問時間に関して、〈麻生政権までは「与党4、野党6」、民主党政権で「与党1、野党9」、安倍政権で「与党2、野党8」が慣例〉との記述がある。
民主党政権で「与党1、野党9」と与党側の質問時間が極端に少ないのは民主党政権で幹事長だった小沢一郎が政府・与党一体で政策決定から政権運営に責任を持つ「政府・与党一元化」論を掲げていた手前、既に与党自体が政府と対等に政策決定に関わっていて政策やその狙いに熟知していることから、小沢一郎の「国会は政府と野党の議論の場」という考えが導き出されたのだろう、そのことが影響していたのかもしれない。
尤も与党の政府の政策決定への関与は自民党も同じである。党大会・両院議員総会に次ぐ党の意思決定機関であり、常設機関としては党内最高意思決定機関である自民党総務会は内閣が国会に提出する議案は閣議決定前に総務会で事前承認されることが原則となっていた。
但し小泉政権と安部政権では政府と党の力関係が政高党低となり、自民党総務会が政府案の単なる承認機関化しているとも言われているが、最終的には政府案通りに承認するにしても、国会提出前に政府案の説明を受けて疑義に対しては質問して熟知する点は変わりはないはずだ。
まさか中身を検証せずに無条件に承認するわけではあるまい。
このことは与野党質問時間割変更に反対の石破茂の言葉が証明している。
石破茂「与党は、法案や予算案を国会に提出する前に、政府と散々やり取りしており、その分は割り引いて考えないとフェアではない。議席数に見合った配分というのは、議論として成り立たないのではないか。いかにして野党を立てるのかが大事だ」(NHK NEWS WEB)
政府案を与党内で事前に熟知し、承認を与えているから、国会質問では政府案をヨイショする、あるいは勢いその素晴らしさを宣伝するだけの発言となり、答弁に立つ大臣もヨイショに答えるだけ、宣伝に応じるだけの馴れ合いの遣り取りとなる。
要するに政府案の是非、長所短所、メリット・デメリット等々を国民の前に明らかにする役目は与党ではなく、野党が負っていることになる。
勿論、政府提出の法案だけではない。〈予算委員会の所管事項は予算であるが、予算案の作成と予算の執行は内閣の責任の下で行われるため(日本国憲法第73条)、予算の内容に限らず、広くその執行主体である内閣の政策方針や行政各部の対応、さらには閣僚の資質の問題などが問われることになる。〉(「Wikipedia」)ことから、閣僚の不正行為や女性問題等のスキャンダル、問題発言等の事実関係の追及、事実関係に応じた閣僚の資質の追及にしても、与党という身内ではない野党が負っていて、その資質の適・不適格性を国民の前に明らかにする責任がある。
また、首相が党代表を兼ねていることから、党議員に対する監督責任を有している以上、党所属議員の不正行為や女性問題等のスキャンダル、問題発言等の事実関係の追及、事実関係に応じた党議員の資質の追及も同じく野党議員でなければできない責任となる。
安倍晋三夫人安倍昭恵の存在が官僚の忖度を誘発して森友学園に対する国有地格安売却に繋がったのではないかという疑惑、安倍晋三の30年来の腹心の友加計孝太郎に対する便宜によって加計学園獣医学部新設が認可されたのではないかという疑惑も持ち上がっている。
これらを纏めて、政権監視の役目は野党が握っているということである。人間集団は身内に甘い。不正行為に対して目をつぶったり、なあ、なあの馴れ合いで許したり、隠し立てしたりする。政権監視の役目は与党に相応しくなく、与党では厳格に負うことはできない。
政権監視の役目を野党こそが握っていることから、質問時間が与党対野党比で野党により多く振り分ける慣例となっているはずである。その慣例を破って議席数に応じた割合で配分するということは、野党の政権監視の役目を弱めて、その分、政府の身内である与党に引き渡すということを意味する。
まるで警察が犯罪監視の役目を放棄して逮捕した犯罪者を犯罪者の仲間に引き渡して、その犯罪者を監視してくれと依頼するようなものであって、質問時間を決めるのは国会の役目で、政府は関係していないという立場を取っているが、安倍晋三の意図が働いている安部政権の少しでも臭い物に蓋をしようとする、いわば野党の政権監視の機会を少しでも殺ごうとする魂胆以外に見て取ることはできない。
国会の質疑応答自体が与党・野党・政府全体が行う国民に対する説明そのものであって、与党に任せることができない野党の政権監視は政府側の責任としてある国民に対する説明を間接的に生み出す役割を兼ねる。
10月30日午前の記者会見。
菅義偉「政府としてのコメントは控えたいが、国会議員はそれぞれ国民の負託を得て当選してきており、等しく質問できるよう各会派の議席数に応じた質問時間の配分を行うことは、国民からすれば、もっともな意見であると考える。
現に参議院ではそれに近い時間割で行っているのではないか。全体の質問時間を考慮する中で、国会でよく検討されるべきだと思う」(NHK NEWS WEB)
確かに「国会議員はそれぞれ国民の負託を得て当選してきている」。だからと言って、質問時間を議員数で機械的に割って平等な質問の機会を与えるべきだという質問機会平等論は一見、尤もらしい正当性を与えるが、与党承認を経た政府案の決定過程や野党の政権監視の役割を無視している点、決して正当性ある機会平等論とはならない。
特に野党がその殆どを負っている政権監視の役割とその役割を果たすことで政府側の国民に対する説明とその責任を間接的に生み出すことになる役割を無視して野党の質問時間を削るということはそれぞれの役割を弱めることに他ならない。
当然、政府・与党側の臭い物に蓋の役に立つことになる。
安倍内閣のナンバー2の菅義偉自身が臭い物に蓋の意図を持って質問機会平等論を唱えた。この意図は安倍晋三の指示を受けたそれであって、安倍晋三自身の臭い物に蓋の意図が自民党を介して発動されることになった議席数に応じた質問時間割り振りの要求ということになる。
安倍晋三自身が野党の質問時間を削ることで政権監視の役割を弱めてまでして臭い物に蓋の意図を働かせているということは、安倍晋三自身の森友・加計疑惑がタダの疑惑ではなく、逆に事実であることを証明することになる。