安倍晋三の11/22日参院代表質問対敵基地攻撃能力答弁は「国民の命と平和な暮らしを守る」をウソにする

2017-11-23 10:49:25 | 政治

 2017年11月22日、参院本会議で11月17日の所信表明演説に対する各党代表質問が行われ、敵基地攻撃についての質問と答弁があった。

 勿論、敵基地攻撃対象国は北朝鮮。

 「自民党参院幹事長代行岡田直樹」自民党/平成29年11月22日)

 岡田直樹「北朝鮮は、国際社会を挙げての制止と非難にもかかわらず、去年から今年にかけて核実験を3回強行し、ミサイル発射は39回という暴挙を繰り返しております。北海道納沙布岬上空を飛び越えた長距離ミサイルはもとより、たびたび日本海に打ち込まれるものも深刻な脅威です。本年3月6日には『スカッドER』と推定される弾道ミサイル4発が同時発射され、そのうちの1発は日本海のわが国排他的経済水域の内側、石川県舳倉島の北わずか150キロの地点に落下しました。これは、わが国の領土に最も接近した事案の一つです。

 新たな脅威の段階に達した北朝鮮のミサイルに対して、国民の皆様の生命、安全を守り抜くには、わが国は従来とは異なるレベルでの迅速かつ有効な対処を講ずる必要があり、そのためには、あらゆる角度から検討し、議論しなければなりません。

 いわゆる敵基地反撃能力についても、わが党安全保障調査会の『弾道ミサイル防衛に関する検討チーム』で議論され、小野寺防衛大臣が当時の検討チーム座長として提言をまとめていますが、総理は8月6日、広島で、現時点において、敵基地反撃能力の保有に向けた具体的な検討を行う予定はないと発言されています。まずは、この方針に変わりはないか、この本会議場で総理に改めてお伺いします」

 以下答弁は「YouTub動画」から。 

 安倍晋三「いわゆる敵基地攻撃能力については日米の役割分担の中で米国に依存しており、今後共、日米共同の基本的な役割分担を変更することは考えておりません。

 その上で我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しくなる中、国民の命と平和な暮らしを守るため、何をなすべきか、我々には常に現実を踏まえて様々な検討を行っていく責任があると考えています。

 もとより、今後とも専守防衛の考え方には些かも変更はありません」
 

 岡田直樹が「小野寺防衛大臣が当時の検討チーム座長として提言をまとめていますが」と言っていることは小野寺五典が防衛相を離れている間の今年2017年3月に自民党検討チームの座長として敵のミサイル基地を叩く「敵基地攻撃能力」の保有検討を求める提言を政府に提出したことを指す。

 要するに自民党内の敵基地攻撃能力保有論に対して安倍晋三は敵基地攻撃能力は米国に依存していて、日米に於けるその依存の役割分担は今後共変更する考えはないと断っている。

 いわば役割分担維持の確約ということになる。その一方で「国民の命と平和な暮らしを守るため」には安全保障環境の変化に応じて「様々な検討を行っていく責任がある」と保有の余地を残している。

 保有しない確約の一方で保有の余地を残す。
  
 安倍晋三は2017年1月26日の衆議院予算委員会でも小野寺五典の質問に対して同じ趣旨のことを答弁してる。

 安倍晋三「先般、北朝鮮は一度に3発ミサイルを撃って、そして狙いどおりの場所に着水させたという事案もございました。

 このような脅威に対しては日米の共同対処によって我が国の防衛を図ることとしておりまして、その中でいわゆる敵基地攻撃能力、すなわち打撃力の使用を伴う作戦については、委員が御指摘になったように、米国に依存をしているのは事実であります。

 そのような中で、北朝鮮が、弾道ミサイルの長射程化や核兵器の小型化、弾頭化を行うことによって、米国に対する戦略的抑止力を確保したとの過信を持つ危険性があるのは事実であります。つまり、米国を射程に入れる核能力を持ったとなれば、米国は報復しない。いわばほかの国に対する攻撃に対して、その能力を持っている北朝鮮に対しては、みずからの国に撃ち込まれる危険性を冒してまで報復しない。つまり、それが抑止力になったと過信する、誤認する危険性というのがないわけではないだろう、このように思うわけであります。

 もしそうなれば、弾道ミサイルの発射を含む軍事的挑発行為のさらなる増加につながっていく可能性もあるわけでありまして、議員御指摘のように、我が国自身によるいわゆる敵基地攻撃については、政府として、従来から、法理上の問題として、他に手段がないと認められるものに限り、敵の誘導弾等の基地をたたくことも憲法が認める自衛の範囲に含まれ、可能であると考えているわけでございます。

 一方、現実の自衛隊の能力に関して言えば、これはもう防衛大臣を経験された委員はよく御承知のように現在、我が国は、敵基地攻撃を目的とした装備体系を保有しておらず、また保有する計画もないわけでございます。その上で、我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しくなる中、日米間の適切な役割分担に基づき、日米同盟全体の抑止力を強化し、国民の生命と財産を守るためには我が国として何をすべきかという観点から、常に様々な検討は行っていくべきものと考えているわけであります」

 敵基地攻撃能力は米国に依存した役割分担となっているが、安全保障環境の変化に応じて保有を検討することも有り得ると保有の余地を残している点は代表質問答弁と同じ内容となっている。

 違う点は法理論上は他に手段がない場合という条件付きで敵基地攻撃も憲法が認める自衛の範囲に含まれ、可能であるとしていることである。

 安倍晋三にとっては敵基地攻撃能力保有はいつかは辿りつく道と言うことになる。

 同じことを述べているもう一つの例を挙げてみる。

 参院外交防衛委員会(2017年4月13日)

 安倍晋三「いわゆる敵基地攻撃能力については米国に依存しており、現在、自衛隊は敵基地攻撃を目的とした装備体系を保有しておらず、また保有する計画もないわけでありますが、その上で、我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しくなる中、日米間の適切な役割分担に基づき日米同盟全体の抑止力を強化し、国民の生命と財産を守るためには我が国として何をなすべきかという観点から、常に様々な検討は行っていくべきものと考えているところであります」

 他の機会でも同じ趣旨の答弁を行っているはずだ。

 敵基地攻撃能力の保有に関してここまでで分かったことは敵基地攻撃能力を米国に依存していて、日米に於けるその依存の役割分担は今後共変更する考えはないとしているということ。そしてその一方で敵基地攻撃は法理論上は他に手段がない場合は憲法が認める自衛の範囲に含まれ、可能であるとの考えに立って「国民の命と平和な暮らしを守る」ための手段として敵基地攻撃能力保有の余地を残しているということとなる。

 安倍晋三は2017年11月6日のとランプとの日米首脳会談後の共同記者会見で次のように述べている。

 安倍晋三「日本は、全ての選択肢がテーブルの上にあるとのトランプ大統領の立場を一貫して支持しています」

 と言うことは、トランプが北朝鮮のミサイル基地を攻撃目標とした敵基地先制攻撃を決意した場合、前以って連絡があるだろうが、「全ての選択肢がテーブルの上にあるとのトランプ大統領の立場を一貫して支持」しているとした以上、応じなければならないことになる。

 例え米国の優れた敵基地先制攻撃によって北朝鮮の全てのミサイル基地に対して徹底的な破壊力で臨んだとしても、完璧に破壊するまでに通常兵器をも含めた全ての反撃を100%封じ込めることは不可能だから、米国の敵基地先制攻撃に日本の米軍基地が使用されたなら尚更、日本も反撃の対象となり得る。

 そして反撃に対する100%の防御も存在しない。何らかの被害や犠牲を覚悟しなければならない。

 安倍晋三は2017年9月25日の解散記者会見で次のように述べている。

 安倍晋三「圧力の強化は北朝鮮を暴発させる危険があり、方針転換して対話をすべきではないかという意見もあります。世界中の誰も紛争などを望んではいません。しかし、ただ対話のための対話には、意味はありません」

  トランプとの「日米共同記者会見」でも同趣旨の発言をしている。

 記者「北朝鮮との偶発的な軍事衝突を避けるためにどのような対応が必要と考えるか」

 安倍晋三「誰も紛争などを望んではいません。私もトランプ大統領もそうです。しかし、北朝鮮は国際秩序に挑戦し、挑発を繰り返している。この北朝鮮に対し、国際社会が連携しながら、その政策を変えさせるために圧力をかけていく。北朝鮮側から『政策を変えるから話し合いたい』という状況を作っていくことが極めて重要だと考えています。そうした考え方についてはトランプ大統領と完全に一致をしたところであり、多くの国々とも一致できているのではないかと思っています」

 例え敵基地攻撃は米国に依存していると役割分担を義務付けていたとしても、トランプが対北朝鮮敵基地先制攻撃を行って北朝鮮の何らかの反撃を受けた場合、その反撃に対して100%の防御が不可能である以上、「世界中の誰も紛争などを望んではいません」をウソにするばかりか、「国民の命と平和な暮らしを守る」を詐欺まがいにウソにすることになる。

 要するに安倍晋三は「全ての選択肢がテーブルの上にあるとのトランプ大統領の立場を一貫して支持」する姿勢を取っているなら、「敵基地攻撃能力については日米の役割分担の中で米国に依存している」とか、安全保障環境の変化に応じた将来的な保有の検討とかを言っている場合ではなく、アメリカの敵基地先制攻撃を現実的な選択肢の一つとした安全保障上の国家危機管理に立った発言をしていなければならなかった。

 そうしていれば、何もウソとはならない答弁を行うことができたはずだ。対北朝鮮圧力一辺倒政策を取り続ける以上、「世界中の誰も紛争などを望んで」いなくても、「紛争」の危険性は常に存在して、現実化しない保障はないし、現実化した場合、「国民の命と平和な暮らし」も部分的には保障できないことになる。

 不正直だから、安倍晋三は自分に都合のいいことしか発言せず、ウソとなる答弁を繰返すことになるのだろう。
 

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