希望の党惨敗と立憲民主党躍進で見えてきたこと 二つの保守政党は要らないということ

2017-11-02 10:30:09 | 政治

 今回の10月22日投開票の総選挙は安倍自民党の再々度の圧勝で終わったが、野党は明暗を分けた。都議選で一時ブームを起こした小池百合子の「寛容な改革保守」を掲げて新党結成した希望の党は、当初はその人気にあやかって民進党からの合流、その他からの入党希望者が雪崩現象的に続出したが、小池百合子が民進党左派を「排除」という言葉を使って選別を開始すると、小池百合子への人気はメッキが剥がれ、当初からその人気に反して薄かった希望の党に対する有権者の関心はなおのこと薄れていった。

 このことは希望の党が公示前57議席に対して当選50議席、希望の党から左派とされて排除されたうち枝野幸男が結党した立憲民主党が公示前15議席に対して当選55議席の野党第1党に躍り出た選挙結果に現れている。

 だが、この現象自体のみが選挙結果から見えたことではないはずだ。「寛容な改革」を名乗ってはいるが、民進党左派を排除してまでその血筋が「保守」であることを標榜した小池百合子の希望の党が有権者には受け入れられず、排除された民進党左派の立憲民主党が公示前議席の3倍以上の議席を獲得して、野党第1党に躍り出た。

 いわば希望の党と立憲民主党の選挙結果を見る限り、保守が排除されて、左派が受容された。

 尤もこのような結果を迎えるまでに色々な経緯がある。

 小池百合子は10月5日の民進党代表前原誠司との会談後の「対記者団発言」(logmi/2017年10月5日)で選挙後の首相指名は、新生党、日本新党、民社党、社会党、公明党等の連立細川護熙内閣の跡を受けた羽田内閣が総辞職、社会党が離脱し、自民党とさきがけを加えて連立を組み、連立の条件だったのだろう、社会党の委員長である村山富市を首班指名して1994年6月30日自社さ連立政権内閣を発足させた例を挙げている。   

 小池百合子「考えてみますと、この首班指名云々のときにこれまで自由民主党の方々は、羽田政権のあと村山政権を担がれたということがございました。こんな形で水と油で手が結ばれたなどということも『首班指名』という言葉で改めて思い出したところでございます」

 要するに小池百合子は希望の党を以ってして自公を過半数割れに追い込む躍進を頭に置いていて、その際は自民党と連立を組むケースも有り得ることを示唆した。

 このことは希望の党が安倍晋三や官房長官菅義偉の選挙区で対立候補を立てているが、自民党内で小池百合子に近い野田聖子や石破茂に対しては立てていないことが「水と油で手が結ぶ」譬えに信憑性を与えて、「ポスト安倍」の連立相手に野田聖子や石破茂を想定しているのではないかと窺わせることになった。

 もし希望の党が自由党と並ぶ保守の政党として成長して連立を組んだ場合、あるいは同じ保守として合流した場合、政策等を競い合う政権交代可能な二大政党制は消滅し、政権を失うことのない安心感から、安倍晋三以上の思い上がり・傲慢が生まれる危険性を抱えることになるだけではなく、同じ保守政党同士ということで、自民党と希望の党がそれぞれに利益を代表する団体・階層が重なって、利益がそれらに偏る危険性まで抱えることになる。

 要するに安倍晋三の上に厚く、下に薄い格差経済政策によって現在がそうであるように中間層以下の中低所得層の利益が置き去りにされる危険性である。

 立憲民主党は中間層の利益を代表することを謳い(政権を獲らなければ実現は不可能だし、政権を獲ったとしても、実現させる能力を発揮できるかどうかは別問題だが)、中間層の再生を訴えている。安倍晋三とは逆の下には厚く、上には薄い比較平等政策と言うことができる。

 その立憲民主党が躍進し、保守を掲げ、自民党との連立をも視野に入れていた希望の党が躍進から取り残されることになった。明らかに二つの保守政党は要らないと言うことであろう。

 政権交代可能な二大政党制とは単に二つの異なる政党が政策を競い合う形で交互に政権を担うことを狙いとしているだけではなく、二大政党のうちの政権を担っている一つの政党が利益を代表する集団・階層の長期政権による利益の偏りを政権交代によって別の党が利益を代表する集団・階層に向けて偏りを是正、それそれの利益をより平均化していくことをも狙いとしている。

 朝日新聞が10月23日、24日(2017年)に行った「世論調査の次の問いに対するの回答にはこの狙いが込められていなければならない。     

 「今回の衆議院選挙で、与党の自民党と公明党は定数の3分の2を超える議席を得ました。あなたは、与党の議席数はちょうどよいと思いますか。多すぎると思いますか。少なすぎると思いますか」
 「ちょうどよい」32%
 「多すぎる」51%
 「少なすぎる」3%
 「その他・答えない」14%

 安倍晋三の国家主義を受けて安倍政権が大企業やカネ持ちの利益を優先的に代表しているために格差が拡大している。このまま円安・株高のアベノミクス経済政策の継続を許したら、格差はなおのこと拡大していくだろう。中間層以下の集団・階層の利益を代表する政党が政権交代を果たしてそれぞれの利益を平均化することが必要となるが、その役を担うべき立憲民主党は野党第1党とは言え、55議席しか獲得していない弱小野党に過ぎない。

 特に安倍晋三のアベノミクスから取り残されている集団・階層に属している国民は政権交代可能な二大政党制とは何を狙いとしているのか、よく考えるべきだろう。
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