安倍晋三が「規範意識」重視である以上、人づくり革命と生産性革命が少子高齢化打破の車の両輪とはならない

2017-11-13 12:01:55 | 政治

 「2012年衆院選自民党政策パンフレット」  

教育を、取り戻す。
Action2 教育再生

「人づくりは国づくり」
日本の将来を担う子供たちは、国の一番の宝です。
自民党は、世界トップレベルの学力、規範意識、そして歴史や文化を尊重する態度を育むために「教育再生」を実行します。
日教組の影響を受けている民主党には、真の教育再生はできません。

 

 「自民党参議院選挙公約2013」(平成25年度) 

教育は、国家の基本。
将来を担う子供たちは、日本の宝です。
教育再生を断行し、
世界トップレベルの学力と規範意識、歴史や文化を尊ぶ心を持つ子供たちを育みます。

「 教育再生実行会議」を設置するなど、自民党の提言に沿った「教育再生」が本格的にスタートしました。
また、「いじめ防止対策推進法」を制定しました。

2020 年までに、留学生数を倍増します(大学生等6万人→12 万人)

 第2次安倍政権発足となった2012年12月の衆議院選挙と2013年7月参議院選挙の教育に関わる公約を挙げてみた。

 2012年衆院選公約では、「『人づくりは国づくり』」と謳って、「国づくり」の基本となる人材に子どもを置き、「世界トップレベルの学力、規範意識、そして歴史や文化を尊重する態度」を人材育成の要点として掲げている。

 2013年参議院選挙公約には「人づくり」という文言は出ていないが、国の将来を担う主たる人材を子どもと看做して、衆院選公約と同じように「世界トップレベルの学力、規範意識、そして歴史や文化を尊重する態度」を国の将来を担う人材育成の要点に置いている。

 このことは第2次安倍政権発足当日に閣議決定までしている。

 基本方針 安倍内閣閣議決定(2012年12月26日)  

3.教育の再生

 人づくりは、国づくり。日本の将来を担う子供たちは国の一番の宝である。 子供たちの命と未来を守るため、道徳教育の徹底を始め、統合的ないじめ対策を進めるとともに、公教育の最終責任者たる国が責任を果たせるよう改革を行うなど、教育再生に取り組む。

 これにより、世界トップレベルの学力、規範意識、そして歴史や文化を尊重する態度を育む。

  ここに来て安倍晋三は「人づくり革命」と「生産性革命」、そして「教育の無償化」を掲げ出した。「教育の無償化」を動力にして「人づくり革命」を成し遂げ、その「人づくり革命」を「生産性革命」に役立てようという魂胆なのだろう。

 「安倍晋三解散記者会見」首相官邸/2017年9月25日)  

 安倍晋三「急速に少子高齢化が進むこの国が、これからも本当に成長していけるのか。この漠然とした不安にしっかりと答えを出してまいります。それは、生産性革命、そして人づくり革命であります。この2つの大改革はアベノミクス最大の勝負です。国民の皆様の支持を頂き、新しい経済政策パッケージを年内に取りまとめる考えであります」

 4年連続の賃金アップの流れを更に力強く、持続的なものとする。そのためには生産性を高めていくことが必要です。ロボット、IoT、人工知能、生産性を劇的に押し上げる最先端のイノベーションが今、世界を一変させようとしています。

 この生産性革命を我が国がリードすることこそ、次なる成長戦略の最大の柱であります。2020年度までの3年間を生産性革命集中投資期間と位置づけ、中小・小規模事業も含め、企業による設備や人材への投資を力強く促します。大胆な税制、予算、規制改革。生産性革命の実現に向かってあらゆる施策を総動員してまいります」

 

 「第48回衆議院総選挙の結果をうけた記者会見」(自民党/2017年10月23日)    

 安倍晋三「「我が国の持続的な成長のカギは、少子高齢化への対応です。アベノミクス最大の挑戦であります。


 「生産性革命」によって、全国津々浦々に至るまで、賃上げの勢いを更に力強いものとすることで、デフレ脱却を目指す。

 そして、「人づくり革命」を進めていく。幼児教育の無償化を一気に進め、真に必要とする子どもたちには、高等教育を無償化していきます」

 

 「第4次安倍内閣発足記者会見」首相官邸/2017年11月1日)   

 安倍晋三「生産性革命と人づくり革命を車の両輪として、少子高齢化という最大の壁に立ち向かってまいります。

 2020年までの3年間を生産性革命・集中投資期間と位置付け、大胆な税制、予算、規制改革、あらゆる施策を総動員してまいります。生産性を大きく押し上げることで4年連続の賃上げの勢いを更に力強いものとし、デフレからの脱却を目指します。

 人づくり革命を断行します。幼児教育の無償化を一気に進め、真に必要な子供たちには高等教育を無償化していきます」

 既に触れたように選挙の公約では「国づくり」の基本となる人材に子どもを置き、人材育成の要点――「人づくり」は「世界トップレベルの学力、規範意識、そして歴史や文化を尊重する態度」にあるとして、この3点を重点的な育成課題としている。

 当然、幼児教育無償化や高等教育無償化が「世界トップレベルの学力、規範意識、そして歴史や文化を尊重する態度」の育成に役立ち、この育成が「国づくり」の基本的な人材と目した子供を始めとした「人づくり革命」となって現れ、ゆくゆくは「生産性革命」という成果となって現れなければいけないことになる。

 安倍晋三は第1次安倍内閣でも「世界トップレベル」とまでは大風呂敷を広げてはいないが、「高い学力と規範意識」を教育の重点的な育成項目に掲げていた。文飾は当方。

 「2006年安倍晋三所信表明演説」首相官邸/2006年9月29日)  

 安倍晋三「私が目指すこの国のかたちは、活力とチャンスと優しさに満ちあふれ、自律の精神を大事にする、世界に開かれた、『美しい国、日本』であります。この『美しい国』の姿を、私は次のように考えます。

 1つ目は、文化、伝統、自然、歴史を大切にする国であります。

 2つ目は、自由な社会を基本とし、規律を知る、凛とした国であります。

      ・・・・・・・・

 先ず、教育基本法案の早期成立を期します。

 すべての子どもに高い学力と規範意識を身につける機会を保障するため、公教育を再生します。学力の向上については、必要な授業時間数を十分に確保するとともに、基礎学力強化プログラムを推進します。教員の質の向上に向けて、教員免許の更新制度の導入を図るとともに、学校同士が切磋琢磨して、質の高い教育を提供できるよう、外部評価を導入します。

 こうした施策を推進するため、我が国の叡智を結集して、内閣に「教育再生会議」を早急に発足させます」

 この所信表明演説で、今回のブログのテーマに関係しないが、次のような発言もあったことを参考までに取り上げてみる。

 安倍晋三「国政を遂行するに当たり、私は、先ず、自らの政治姿勢を、国民の皆様並びに議員各位に明らかにいたします。私は、特定の団体や個人のための政治を行うつもりは一切ありません。額に汗して勤勉に働き、家族を愛し、自分の暮らす地域や故郷を良くしたいと思い、日本の未来を信じたいと願っている人々、そしてすべての国民の期待に応える政治を行ってまいります。みんなが参加する、新しい時代を切り拓く政治、誰に対しても開かれ、誰もがチャレンジできる社会を目指し、全力投球することを約束いたします。」

 「私は、特定の団体や個人のための政治を行うつもりは一切ありません」なる安倍晋三の一大宣言は有言実行の鑑として後世にまで語り継がれるに違いない。

 どうも安倍晋三は「高い学力と規範意識」「文化、伝統、自然、歴史」の優れた素養が「人づくり革命」の重要な鍵を握っていると見ているようだ。

 「規範意識」とは「ある対象について価値判断を下す際、その前提になっている価値を価値として認める意識」を言うと「goo辞書」には書いてある。    

 「規範」とは「行動や判断の基準となる模範。手本」を言う。いわば「規範意識」とは「行動や判断の基準となる模範。手本」を守ろうとする「意識」、上記の「価値を価値として認める意識」と言うことになる。

 「世の中はこうなっている」という規範を「こうなっている」通りに守らなければ、言い替えると、「こうなっている」としている価値を価値として認めて、その通りにしなければ、規範意識を働かせていることにはならない。

 もし強い規範意識を持っていたなら、その規範意識は固定化された価値として存在する伝統を守る、あるいは受け継ぐには優れて役に立つことになるだろう。

 だが、伝統を破って、今までにない独創性を追求するには、つまり伝統の殻を破るには規範意識は逆に阻害要件として立ちはだかることになる。

 伝統以外にも「歴史や文化」にしても、一般化した型通りの解釈で扱われることになった場合は同時に規範意識を育むに優れて役に立つことになるが、その規範意識が伝統・歴史・文化に挑戦して新しい解釈や新しい形態を創造し、時代を先取りする、あるいは時代の先端をいくといった斬新な変革を妨げることになるだろう。

 要するにいくら「世界トップレベルの学力」を身につけさせる教育再生に成功したとしても、学力に考える力が伴わなければ、学力に応じて規範意識だけは育むことができるが、かつて「総合学習」で言っていた「自ら課題を見付け、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、よりよく問題を解決する資質や能力」――自律的・主体的な思考・判断能力は置き去りにされて、その程度の「人づくり革命」であった場合、被雇用者個々の生産性を高めて少子高齢化による人口減の解決策とする「生産性革命」は覚束ないことになる。

 考える力なければ、生産性は基本のところで高まることはないからだ。

 安倍晋三が言っている「人づくり革命」と「生産性革命」には自律的・主体的な思考・判断能力に対する視点が抜けているということである。このことは上に挙げた9月25日の「解散記者会見」の次の発言に現れている。

 安倍晋三「4年連続の賃金アップの流れを更に力強く、持続的なものとする。そのためには生産性を高めていくことが必要です。ロボット、IoT、人工知能、生産性を劇的に押し上げる最先端のイノベーションが今、世界を一変させようとしています」

 確かに「ロボット、IoT、人工知能」は「生産性を劇的に押し上げる最先端のイノベーション」ツールではあるが、コンピューターという機械関連はすぐに真似される。いわば「ロボット、IoT、人工知能」に頼って生産性を上げたとしても、自国だけの土俵として守ることはできず、他の国も簡単に同じ土俵を作ることになって、差引きの生産性は元のままということになる。

 このことはスーパーコンピュターを見れは理解できる。かつて日本はスーパーコンピュター「京」が世界一の計算速度を誇ったが、今では中国勢に押されて、世界一の中国の計算速度9京3014兆回に対して7位につけた東大・筑波大のスパコンは1京3554兆回と約7分の1の速度で甘んじている。

 かつて世界一の理研「京」の1京0510兆回は約9分の1。

 いくら優れたコンピューターを発明したとしても、計算速度を早めたり、情報の記憶容量の膨大化を可能にして、その中から欲しい情報が短時間で常に手に入れることはできるが、コンピューター自身が自律的・主体的な思考・判断能力を備えているわけではない。ノーベル賞-などが与えられる画期的な創造的発案は自律的・主体的な思考・判断能力を力にして人間だけが持つ。

 安倍晋三が言っている「教育無償化」が言葉通りの無償化であろうとなかろうと、無償化で就学の機会の幅を広げた教育の力で「国づくり」の基本となる人材に据えた子どもたちに「世界トップレベルの学力、規範意識、そして歴史や文化を尊重する態度」を涵養できたとしても、「規範意識」重視の態度である以上、何よりも重視しなければならない自律的・主体的な思考・判断能力の視点が抜けていることになって、それらの涵養不足が教育無償化を力とした人づくり革命と生産性革命を少子高齢化打破の車の両輪とすることは決してない。

 自律的・主体的な思考・判断能力を持たなければ、「世界トップレベルの学力」は大風呂敷に過ぎない。

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