安倍自民要求の与野党質問時間議員数割に賛成:ムダな贅肉を削ぎ落とした非生産的・不毛な質疑に終止符を

2017-11-21 12:02:18 | 政治

 29年11月17日の安倍晋三の所信表明演説に対する衆議院各党代表質問が2017年11月20日に行われた。この中で立憲民主党代表の枝野幸男と希望の党の玉木雄一郎が与野党議員の国会質問の配分時間について取り上げた。

 従来は「与党2・野党8」が慣例となっていた質問時間を11月1日の特別国会を前にして自民党が国民の負託を得て当選した、いわば負託の平等の原則を持ち出して議席数に応じた時間配分を求め出した。

 対して野党は国会に於ける権力監視の役目を持ち出して従来どおりの質問時間を要求、与野党の国会対策委員が折衝を行い、文科省大学設置審議会の加計学園獣医学部4月開学の答申を受けて文科相の林芳正が開学を認可したことを受けて開催されることになった2017年11月15日の衆議院文部科学委員会では「与党1・野党2」で折り合うことになったが、与野党とも反対論がくすぶっていることから、この時間割が先例となるかどうかは分からない。

 安倍晋三の11月17日の所信表明演説では質問時間に関しては何も取り上げていなかったが、枝野幸男と玉木雄一郎が取り上げたのは「与党1・野党2」に不満、「与党2・野党8」の従来の慣例への回帰を願っているからだろう。

 それぞれの質問時間に関わる追及と安倍晋三の答弁を取り上げてみる。答弁は「YouTub」動画から。

 「立憲民主党代表サイト」   

 枝野幸男「国会では、与野党での質問時間の配分について、自民党から、身勝手な主張がなされています。かつての野党時代の主張と、完全に矛盾する上に、議院内閣制と国会の役割についての、無理解に基づくとしか、思えないものです。
 与党の質問時間割合を拡大しようという提案は、政府与党一体の事前審査プロセスなどが、機能不全の状態にあるからだと、受け止めざるを得ません。今の自民党は、国会提出前の事前審査プロセスなどで、野党議員と同じ程度にしか関与できていない、影響力を行使できていない、ということなのでしょうか。

 政府側から見た総理の認識をお尋ねします」

 安倍晋三「国会に於ける質問時間のお尋ねについて質問がありました。与党に於いては政調各部会に於いて日々熱のこもった政策議論が活発に行われております。

 なお、野党初め(?)、野党各党の政調の活動状況については確認をして存じ上げませんが、各政調の調査チームが日々立ち上がり、各政調が全力で対応して頂けるものと承知をしております。

 一般論として、数万を超える有権者の皆さまから頂いて国会議員となった以上、与党・野党に関わらず、こうした国会議員としての責任を果たすべきであり、その上、有権者の負託に応えるべきであるとの指摘もあります。

 いずれにせよ、質問時間の配分自体についてはまさに国会で国会がお決めになることであり、内閣総理大臣の立場である私が答弁することは差し控えさせて頂きます」

 

 「希望の党サイト」   

 玉木雄一郎「(国会改革)最近話題となっている質疑時間の配分について質問します。与党の期数の少ない議員が中心に、審議時間が足りないので与党の質問時間を増やせと言っておられるようですが、例えば、政府与党は、内閣提出法案(閣法)が審議されているときは毎日でも委員会を開こうと言いますが、閣法が成立してしまうと、定例日さえ国会を開こうとしません。

 定例日には必ず委員会を開くなど、こうした運用にまずは改めるべきではないですか。また、野党からの修正協議には必ず応じるルールとするなど国会審議を活性化させる方策はいくらでもあります。『国会のことは国会でお決めいただきたい』などというお決まりの答弁ではなく、是非、私たちのこうした提案を検討するよう、与党に対して指示してください。

 総理の答弁を求めます」

 安倍晋三「国会改革についてのお尋ねがありました。国会の運営について各党・各会派でご議論頂き、国会に於いてお決め頂く者と考えております」

 安倍晋三は枝野幸男に対しては簡単な答弁となっているものの、簡単な中にも一応は丁寧に答えているが、玉木雄一郎に対しては端折った簡単な答弁のみで終わっているのは同じ内容の答弁の繰返しとなることを避ける意味からだろう。

 安倍晋三の言っている「政調各部会」とはご存知のように「自由民主党政務調査会」の各部会のことで、「自由民主党政務調査会」は「Wikipedia」に、〈自民党国会議員と総裁が委嘱した学識経験者をもって構成され、党の政策の調査研究と立案を担当し、審議決定をする。自由民主党が採用する政策、国会に提出する法案は、政務調査会の審査を経なければならない。政務調査会と部会は全会一致が原則である。

必要に応じて調査会、特別委員会等を設けることができる。

政務調査会の決定機関として、政調審議会が置かれる。政調審議会は政務調査会長と政務調査会副会長で構成され、政調審議会で決定された政策は速やかに総務会に報告し、決定される必要がある。総務会での決定を経ると、党議拘束がかかるとされる。〉と解説されていて、政務調査会の審査を経て内閣が国会に提出する法案は閣議決定前に自由民主党総務会で事前承認されることが原則となっている。

 ここに法案の「政府与党一体」と言う形が出てくる。一つの法案に対して内閣と共に自民党が十分に議論を尽くしている。法案の成り立ち・内容を熟知しているのだから、改めて質問する必要はないということで、野党はより多くの質問時間の配分が慣例となったということなのだろう。

 だが、枝野は「政府与党一体の事前審査プロセスなどが、機能不全の状態」、「国会提出前の事前審査プロセスなどで、野党議員と同じ程度にしか関与できていない」から、質問時間をより多く求めているのではないかと質した。

 安倍晋三が自民党の組織が機能していないという質問に「ハイ、そうです」と答えるわけはないし、機能していないとしても、自民党がより多くの質問時間を要求しているのは野党の質問時間を削ることにより多くの狙いがあるはずである。

 自民党の国会質問は大体が内閣の政策に対するヨイショが大部分で、この傾向は質問時間が多くなっても変わらないだろう。自民党政務調査会と自民党総務会が了承した政策を批判したら、内閣ばかりか、政務調査会と自民党総務会を敵に回すことになる。

 安倍晋三が森友忖度疑惑・加計政治関与疑惑の野党追及で内閣支持率を大きく下げたことに懲りた。野党の質問時間が減れば、比例して疑惑追及の質問時間も減る。

 懲りたが事実であったとしても、野党追求に対して記憶にない、記録は文書にして残していない、正式な会議に諮って決めたわけでもないといった答弁が多過ぎて、結果、決定プロセスが不明確となっているところに却って疑惑を膨らます要因となっているのだから、野党の時間を削ったからと言って、本質的な疑惑解決になるとは限らない。

 野党の疑惑追及の時間を減らすことは逆に森友・加計疑惑が事実であることを証明するのではないかとの内容の「ブログ」を2017年11月4日に載せて、 政権監視の役目は野党にあって与党にはないのだからと質問時間の変更に反対した。   

 だが、ここに至って自民党が主張している議員数割の質問時間にすべきだと思うようになった。理由は「与党2・野党8」と野党が与党の4倍も質問時間を与えられながら、森友・加計疑惑では質問に立った野党各議員は同じ内容の質問を繰返して安倍晋三、その他にその都度同じ内容の答弁で応じさせることになり、結局追及しきれずに幕切れになるといった非生産的・不毛な質疑応答が続いたからだ。

 このことは同じ党でありながら、ある議員が午前中に行ったと同じような質問を別の議員が行って、午前中と同じ答弁を引き出すだけで終わるといったこともあるし、ある野党の議員が前日に行ったのと同じような質問を別の野党の議員が行って似たような答弁で幕を下ろすといったこともある。

 一例を挙げると、2017年5月30日の参院法務委員会で当時は証人喚問ではなく、参考人招致を求めていたが、民進党の小川敏夫は安倍晋三から疑惑があると言うなら、「小川さんはそれを証明して頂きたい」と答弁された際、「総理は私の方で立証しろと仰っている。別にこれ、裁判の場ではありませんから、私が立証する責任はありません。政治はですね、政治を行う者が疑惑を招いたら、自らその疑惑を払拭するために説明するというのは政治家の責任ではないでしょうか」と効き目の全くないごまめの歯ぎしりにしかならない反論を試みたのみであった。

 なぜ、「じゃあ、証明しましょう。証明の重要な機会として参考人招致を認めて貰いたい。自民党総裁として、自民党に認めるよう指示してください」と切り返すことができなかったのだろうか。

 2017年6月5日の参院決算委員会で民進党の平山佐知子が加計学園問題の追及を行った。

 平山佐知子「これ、総理が関与していないのなら、しっかり立証する責任が総理にはあると思うんですが、それ如何でしょうか」

 安倍晋三「先程から申し上げておりますように、えー、これは私が関与したということであれば、関与した証拠を見せて頂きたい、こう思うわけでありまして、私が関与していない・・・、後ろからですね、あのみなさん、静かな雰囲気で、ヤジり倒すということはですね、えー、どういうことかと思うわけでありますが、宜しいでしょうか、皆さん落ち着きました?

 ハイ、これはですね、こういうことについてはですね、いわば立証責任はですね、それはそこに問題があるんだと言う方が立証するのは当然のことであろうと。そして証拠を以ってですね、これは示すことが当然のことであろうと、こう思う次第でございます」

 以前次のようなことをブログに書いた。

 〈殺人事件が起きた。警察はある人物を容疑者として特定した。その人物が殺人を犯したことを立証する責任は警察にあるのであって、その人物にはない。容疑者が自ら殺人事件を立証したとしたら、一遍の喜劇ができ上がる。

 勿論自白ということはあるが、自白はあくまでも警察の取調べという立証の過程で生じる一つの事態に過ぎない。〉

 犯罪容疑者はその多くが実際に罪を犯していたとしても、警察から証拠を出されたら、観念しなければならないが、証拠が出てこない間は自分は罪を犯していないと主張する。安倍晋三とて同じである。関与していないと主張するのは既定の方針と見なければならない。

 与党2の割合に対して野党は4倍の8の割合でかかって疑惑の状態を打ち破って、そこから疑惑の正体をつかみ出すことができなかった。例え野党の疑惑調査チームが全員で安倍晋三の答弁を精査して、矛盾点を見い出し、どう追及したら最も効果的かと戦略を立てて質問したとしても、似たような質問を繰返し、その都度、以前とほぼ同じ答弁を引き出すだけなら、安倍晋三の答弁の精査自体が満足にできていなかったか、満足にできていたとしても、矛盾点の見い出し方や追及の最も効果的な戦略の立て方が不足していることになる。

 こういった状況から脱却するためにも野党の質問時間が少なくなれば、否応もなしに各議員に質問内容を切磋琢磨させることになって、似たような追及を繰返すだけの質問のムダな贅肉を削ぎ落として非生産的・不毛な質疑応答に終止符を打つことが可能になる。

 例え与党のヨイショ質問が増えたとしても、何よりも重要なことは政権監視役の野党議員の質問の質であって、質の改善は野党側の質問時間配分の削減――議員数割の質問時間配分に期待する以外にないのではないのではないだろうか。
 
 議員数割の質問時間配分になったとしても、野党議員が今まで通りの似たような質問を繰返して似たような答弁を引き出すだけの質疑応答が続くようなら、どの議員も国民の負託を受ける資格はないことになるばかりか、負託を受ける資格のない議員が議員のバッジを付けて国会で質疑応答を行っているという喜劇が生じることになる。


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