4月18日午前、安倍晋三が自身主催の「桜を見る会」を都内新宿御苑で開いたとマスコミが伝えている。政財界や文化・芸能人ら約1万5000人が出席したという。
中身よりも形式を後生大事にする安倍晋三のことだから、1万5000人という人数にご満悦だったに違いない。
安倍晋三「桜前線が北上して全国に桜が咲いていくように、昨年は15年ぶりの賃上げを実現できた。今年は昨年を上回る状況だ。周りを見渡すと、桜が咲き誇っている。日本全体がこんな気分になるよう頑張っていきたい」(BIGLOBEニュース)
「桜前線が北上して全国に桜が咲いていく」様子と「昨年は15年ぶりの賃上げを実現できた」状況とどうつながるのか意味不明である。「桜前線が北上して全国に桜が咲いていくように大中小企業、全てに亘って賃上げが広がった」ということなら、前後脈絡がつく。
今のところ盛況なのは安倍晋三の「桜を見る会」と大企業の賃上げ状況ぐらいのものだろう。
安倍晋三「景気回復の暖かい風を全国津々浦々にお届けしていくことが、私たちの使命であり、地方創生を力強く進めていきたい」(時事ドットコム)
アベノミクス3本の矢は日銀の異次元の金融緩和を受けた株高と円安の第1の矢の、利益の殆どが大企業と大量に株を持っている金持ちに集中した成功のみで、第2の矢である経済対策ための10兆円規模の財政出動は成果を上げていないし、成長戦略に向けた規制緩和等の第3の矢である構造改革は殆ど進んでいない。
安倍晋三は「使命」という言葉を拉致問題でも使っている。4月20日の参議院予算委員会。
安倍晋三「すべての拉致被害者のご家族がご親族をその手で抱きしめる日がやってくるまで、われわれの使命は終わらない。国際的にも拉致問題に対する理解が深まるなかで、この問題を解決しなければ、北朝鮮の未来を描くことはできないという認識に北朝鮮側が立つよう強く求めていく。北朝鮮の特別調査委員会が正直かつ迅速に調査結果を日本側に報告するよう強く求めていく」(NHK NEWS WEB)
拉致解決に向けた進展は何も描き出すことができていない。
「拉致問題を解決しなければ、北朝鮮の未来を描くことはできないという認識に北朝鮮側が立つよう強く求めていく」――
前々から同じことを何度も言っているが、金正恩にそのような認識を持たせることができないでいる。
安倍晋三の言う「使命」がオオカミ少年の「オオカミが来た」と同列化しないことを願う。
政財界人、文化人、芸能人約1万5千人招待を受けた中に「爆笑問題」の太田光と田中裕二が混じっていたことに些か驚いた。安倍晋三は1万5千人を招待したものの、1万5千人全員と言葉を交わすことはできないだろうが、「時事ドットコム」記事には安倍晋三が二人と言葉を交わしたと書いてある。
太田光は元々反安倍姿勢の持ち主として名の通っている人物だが、その名の通り、既にネットでも広く取り上げられて知られていることだが、太田光は3月29日TBSラジオ放送の『爆笑問題の日曜サンデー』に出演、安倍政権の沖縄の民意を無視したアメリカ軍普天間基地の名護市辺野古沖移設や安倍晋三が翁長沖縄県知事と面会しないとことを批判、安倍晋三を何回もバカ呼ばわりをしたという。
太田光「これは完全に、沖縄の言っていることが正しいと僕は思う。先ずは安倍というバカ野郎は――」
田中裕二「総理大臣ですから」
太田光「総理大臣でもバカはバカでしょ。私は個人的にバカだと思っていますけど」
太田光「(翁長知事が)会おうと言っているのに、会おうともしない。選挙で翁長さんが県知事になったわけだから、あんたたちは選挙の意味を全部無効にすると捉えられてもしょうがないよね。
安倍っていう男のやっていることは、幼稚すぎると思うんだよね。自分の都合が悪くなったら会いませんみたいなのは、いくらなんでもバカにし過ぎなんじゃないの」
田中裕二「バカを言い過ぎましたけれども――」
太田光「言いすぎてねーよ」(以上Litera&The Huffington Post)
このような反安倍人物を「桜を見る会」に招待した。一国の首相が招待するとは招待され側に招待という名誉を与えることを意味し、招待される側は招待に応じたことで招待という名誉を与えられ、その名誉を得たことを意味する。
当然、与えられる側は与える側の少なくとも心理的下位に立つことになる。
安倍晋三と太田光が並んでいる写真を見ると、二人は笑顔で言葉を交わしている様子が写っているが、バカ呼ばわりしたときの心理的優位性のカケラはどこにもなかったはずだ。
そのカケラでも持ち合わせていることができたなら、招待に応じなかったろう。
安倍晋三はネットの世界で情報発信に大きな力を持つ反安倍姿勢の太田光に招待という名誉を直々に与えることで安倍晋三に対する心理的優位性を奪って、反安倍の毒を抜こうと意図したのだろうか。
もし毒抜きに成功したなら、表向きは「桜を見る会」の招待を通してある種の名誉を与える形を取っているものの、実質的には懐柔を通して好ましくない発言を封じることを狙った暗黙の言論統制を正体とした「桜を見る会」の招待という疑いが出てくる。
安倍晋三の昨年2014年12月28日夜のSPを何人か引き連れた横浜市で開催サザンオールスターズのコンサートを鑑賞も桑田佳祐の反安倍発言封じの懐柔という手を使った暗黙の言論統制を目論んだものだったのだろうか。
だが、桑田佳祐は安倍晋三の目の前で歌詞の一部を替えて「衆院解散なんですと無茶を言う」とアドリブの風刺を披露、懐柔に乗らなかった。
但し桑田佳祐は同コンサートで自身が受賞した紫綬褒章の伝達式での天皇の様子をマネしたり、ステージ後方に「✕印」をつけた日本国旗を掲げたり、「中國領土 釣魚島」と書いた旗の映像を流したして右翼の抗議(威し?)を受けて謝罪コメントを出している。
権力側(国家権力が右翼的姿勢と取っていた場合、右翼はほぼ国家権力側につく)からの様々な言論統制の圧力が働いている。日本国憲法が言論の自由を保障しているからといって安心はできない。