4月25日放送、TBS「報道特集」 が入手した昨年2014年8月20日発生の広島土砂災害時の広島県警無線交信記録を元に一コーナーを設けている。ネット上の動画から、文字に起こしてみた。
TBS番組のHPには、〈去年夏に74人の命を奪った広島の土砂災害。JNNは広島県警の無線交信記録を入手した。記録的な豪雨で次々と土砂に飲み込まれる住宅。住民は救助を要請するが、警察や消防はあふれる水に阻まれ、現場にたどりつけない。広島土砂災害の過酷な現実を警察無線の交信記録から明らかにする。〉との案内が載っている。
主に無線記録と各当事者の発言を取り上げてみる。無線の発着はほぼ時系列通りになっているが、なっていない一部は時系列に直した箇所もある。
広島県警本部通信司令部では大家律子警部補が司令無線を担当していたという。ゆえに県警本部発着の無線の女性の声は全て大谷律子警部補の声ということになる。
住民からの通報が相次いだのは1時間に100ミリを超える猛烈な雨が降った午前3時頃から。
県警本部(午前3:21)
「道路が冠水しており、車両内に水が入った状況
現在、ドア付近まで冠水
社内から退避するよう指示済み
司令大屋 どうぞ」
大家律子警部補「3時過ぎから一辺に110番の着信音が鳴り響き出して、もう全く途切れることはありませんでした。当時の勤務員が全員で対応に当たったのですけど、入電してくる数が物凄くて、全てに対応し切れない状況でした」
災害に関する110番通報は午前4時からの1時間で100件を超えたとナレーション。画面には115件の字幕。県警本部の110番回線が全て埋まり、待機状況を告げるプルッ、プルッという待機音まで鳴り出していて、広島県警が初めて経験した状況だったという。
消防署も同様の混乱状態にあったとしている。
県警本部(時間は出ていない)
「119に架電するも、つながらない状況
平番号253 司令大屋 どうぞ」
大家律子警部補「当初は何が起きているか分からなかったんですけども、本当に次々と110番が入電してくることで、今まで経験したことがないような、本当に甚大な災害が起きているということは思いました」
番組は入手した警察無線を全て文字に起こして時間帯別に多く使われている言葉を抽出、その通報傾向から緊急状況の切迫化への推移を割り出している。
午前3時台
「増水」 「氾濫」(大雨に関する言葉)
午前4時台
「土砂崩れ」 「土石流」(土砂災害に関する言葉)
午前5時台
「人命」 「危険」 「倒壊」(人命の危険に関わる言葉)
道路が大雨によって排水機能が麻痺、道路冠水に至り、川の氾濫や山からの鉄砲水を受けてのことだろう、濁流化によって交通不能となり、救助活動が殆どできなくなっていく。
現場警察官(午前3:30)
「現場へ向かう途中 己斐(こい)峠の山を超えた付近、土砂崩れ起きています
道路を塞いでおります なお、現在の当車の位置です
完全に車が通行できない状況になっております」
県警本部(午前3:30)
「広島本部 了解
全止め状態 これでよろしいのか? どうぞ」
現場警察官(午前3:30)
「その通り 当車の現在の位置の道路 上り下り 全止め どうぞ」
8分後
現場警察官(午前3:38)
「道路が100メートル程度、土砂およびがれきにより封鎖状態です
なお、山水(やまみず)が流れ出しており、今後も危険な状況です どうぞ」
西警察署(午前3:38)
「西了解 なお、西83(パトカー)にあっては安全な場所まで退避されたい どうぞ」
県警本部(午前4:17)
「当車が通っている道路、これは土手道路になると思われますが、これ以外に左右の平地、これ全て水没しております
車両または徒歩にて現場、これは非常に危険な状態と思われます
市もしくは安佐南区の町内放送で自主的に非難するよう指示
これ以外に現場に向かうことは非常に危険 このように判断します どうぞ」
大家律子警部補「どうしても無線ですので、直接現場を見ているわけではありませんので、どんな司令をすれば、いいのかと。
住民の方を助けて、現場に向かう警察官が災害に巻き込まれないためにどういう司令をすればいいのか、それをずっと考えながら、司令をしていました」
午前5時過ぎ、無線交信の内容がさらに緊迫度を増し、41人が犠牲となった安佐南区八木3丁目からの通報が集中。
県警本部(午前5:12)
「広島本部から安佐南区へ 一方的に司令
場所八木3丁目 同家の住人が自室の屋根に上がり、何か叫んでいる状況」
「一方的司令」とは通常の無線の遣り取りができない場合の本部からの一方的な発信を言う言葉だと番組が解説。
県警本部(午前5:17)
「八木3丁(目)の関係ですが、本件にあっては胸まで浸水あり、非常に危険な状態です
本件にあっては近づけません
なお八木3丁目付近の急訴あっても、全く近づけないものと考えておいてください どうぞ」
県警本部(午前5:21)
「人命が危険に及んでいる事案
土砂崩れ 場所 緑井7丁目
約30分前に土石流様の土砂崩れが発生
家ごと流されている家あり
生き埋めの可能性もあるとの通報
マル通(通報者)はマル目(もく)(目撃者)の付近の住人」
県警本部(午前5:27)
「広島本部から安佐西へ一方的に司令
人命に危険が及んでいる事案 司令番号419
場所 八木3丁目
現在同家の1階が倒壊しそうな状況で、自宅が既に半分倒壊している状況
現在も鉄砲水が流れており、同自宅には母親がおり、脱出が不可能な状況」
県警本部(午前5:29)
「場所、八木3丁目34の1 県営緑丘住宅付近 同付近が現在土砂崩れをしている状況」
県警本部(午前5:37)
「広島本部から安佐南へ一方的に司令
場所八木3丁目、土砂崩れており、自宅等へ土砂が流れ込んでいる状況」
大家律子警部補「あのとき本当に110番通報というのは住民の方たちの警察に何とか助けてほしいという本当に必死の電話だったと思うんです。現場の警察官も混乱を極めている状況でしたし、警察官も本当に行きたいけれど、行くことができない・・・・」
大家律子警部補「あのときどうすればよかったんだろう、どうやったら一人でも多くの人を助けて、不安を取り消すことができただろうかと、今でも考えます」
番組は当時救助に関わった多くの警察官がどうすればよかったのかと自問自答を続け、そこから抜け出れない姿を伝えている。
誰もが考えていることだが、人間は大自然災害には無力なのだから、それが発生する前に避難する以外に最善策がないことを痛感している。広島市が適切に避難勧告も避難指示も出さなっかことが影響した警察や消防の混乱であり、無力であったことを今では悟っている。
番組は最初の110番通報が午前3時21分であったのに対してツイッター等のSNSでは午前1時台に災害の前触れを知らせる投稿があったことを伝えている。
01:08
「ガチ音がヤバそうw 地鳴りが凄い」
02:50
「川を石がゴロゴロ転がるときみたいな音がずっとしている」
「土の臭がする」という、土砂災害時の現象の一つを伝えるツイッターも映像で紹介している。
既に市に災害専用のツイッター等を登録、市民からの投稿を災害発生に備える動きが出ている。
番組は午前5時台になると、警察無線が人命に危機が切迫している状況を如実に映し出していた。
安倍晋三は広島土砂災害が発生、74人が死亡した2014年8月20日当日、夏休み中の山梨県鳴沢村の別荘を警察無線記録が危機的状況を映し出していた午前5時台から約2時間後の午前7時22分に出発、8時26分に富士河口湖町のゴルフ場「富士桜カントリー倶楽部」に到着、それからゴルフを楽しんでいる。
政府が首相官邸危機管理センターに情報連絡室を設置し、情報収集に当たったのは8月20日4時0分。
広島の現場で午前5時台に既に人命の危機が発生している状況より1時間早い迅速な立ち上げであるが、首相官邸危機管理センターは24時間体制なのだから、当然の動きであろう。
情報連絡室が自らの役目としている情報収集にはリアルタイムに現場の災害状況を刻々と伝えてその進捗状況を映し出す広島県警の110番通報及び広島市消防局の119番通報も含んでいるはずだし、含んでいなければならない。
もし含んでいなければ、「危機管理センター」とか、「情報連絡」の名前に反し、首相官邸の危機管理、もしくは情報処理に不備・欠陥が存在することになる。
当然、県警と消防局の通報状況の把握は情報招集の絶対要件となる。
広島市消防局には8月20日午前4時過ぎ頃から土砂崩れと住宅が埋まって行方不明者が出たという通報が相次いで寄せられ、午前5時15分頃 、午前3時20分頃の土砂崩れで土砂に埋まった子ども2人のうち1人が午前5時15分頃心肺停止の状態で発見されたと発表したとマスコミは伝えている。
人命に関わる危機的状況が現実の姿を表した第一歩でもある。
110番通報及び119番通報の状況、更に消防当局のマスコミ発表等の情報は入手して、「国民の生命・財産」を預かる安倍晋三に昼夜別なく報告を入れなければ、「国民の生命・財産」を預かっていることにはならない。
だが、安倍晋三は現場の情報如何に関係なしにゴルフのプレーに取り掛かった。
古屋防災担当相「最終的に死亡者が出た8時37分とか8分に総理にも連絡をして、その時点ではこちらに帰る支度をしてます」
要するに死亡者が出るまで安倍晋三への報告を待ったと言うことなのだろうか。それとも「国民の生命と財産を守る最終責任者」であることを第一に考えて、警察や消防の無線記録が描き出す様々な状況から午後5時台には人命の犠牲を伴う甚大な災害発生を予測して収集した情報を首相に刻々と報告していたにも関わらず、安倍晋三が死亡者が出たら官邸に戻るとでも言ったのだろうか。
安倍晋三は午前9時19分にゴルフ場を離れて別荘に向かい、午前10時59分に官邸に戻っている。
但し8月20日午後5時54分、公邸を発って再び別荘に戻っている。官邸関係者は「資料などを取りに行くためで、休暇を切り上げることは既に決めていた」と説明したが、実際には葛西敬之JR東海名誉会長と別荘で食事を摂ってから、東京に戻っている。
資料取りに戻るだけなら、秘書官なりに任せるのが国民の生命と財産を守る最終責任者としての配慮としなければならない。だが、資料を取りに行くは口実で、葛西敬之JR東海名誉会長と別荘で食事を摂るのが目的であった。
安倍晋三が再び別荘に向かうべく公邸を発つ午後5時54分を26分遡る午後5時28分の発信時間で、「NHK NEWS WEB」が警察の発表として、「32人死亡9人不明」を伝えている。
官邸情報連絡室は警察発表よりも前にその情報を把握していなければならない。警察が前以て官邸情報連絡室に報告を入れるだろうからである。
4月25日放送のTBS「報道特集」 が改めて安倍晋三の広島土砂災害時のゴルフが人命軽視だったことを証明、暴露することになった。