4月14日午前、自民、公明両党は安全保障法制に関する与党協議を国会内で再開、外国軍支援のために自衛隊を海外に随時派遣できるようにする恒久法に国会承認をどう規定するかを中心に協議。
自民党側は国会閉会中や衆院解散中の場合は、派遣後の国会承認も例外として認めるべきだと主張。対して公明党は例外のない国会の事前承認が必要だと主張。両党は結論を次回以降に持ち越したと4月14日付「TOKYO Web」(東京新聞)記事が伝えている。
今までの前例から言うと、公明党が妥協して自民党の主張通りになる。
自民党主張の理由は例外のない事前承認を規定した場合、衆院解散中に国会を召集できず、「緊急の事態に自衛隊を迅速に派遣できない」からだとしているという。
この主張に公明党は衆院解散中でも「憲法に基づく参院の緊急集会を開けば、国会の関与は担保できる」と反論。
どうせ参議院は衆議院の下請のようなものだから、参議院が衆議院の意思を代行できないことはない。
にも関わらず、衆院解散中は国会を召集できないからと言って、そのような場合の事前承認の例外を設けて事後承認を要求するのは、一つの事後承認を突破口に国会承認が手間取って自衛隊派遣が後手に回ったケースにまで応用して事後承認を主張、そういった事後承認を積み重ねていって自在に事後承認に持っていく狙いがないとは言えない。
結果、事前承認は有名無実化していくことになる。
あるいは国民が納得しないであろうと予測し得る上に与党内でも反対論の強い自衛隊海外派遣であっても、衆議院を解散すれば、事前承認ないしで内閣の意思一つで自衛隊を海外派遣することも可能となる。
勿論、そうした強行解散は選挙に悪影響を与えるが、自衛隊派遣がそうすべきではなかったといった事態を招かない限り、済んだこととして選挙の争点の背景に押しやって国民の生活や景気、経済を人質に取り、選挙の争点として前面に押し立てて選択を迫った場合、人間は基本的には生活の生きものであり、生活を最大の利害としているから、生活関連の政策を選択するよう仕向けることができれば、悪影響を悪影響としないよう、いくらでも手を打つことができる。
2012年12月総選挙で安倍晋三がアベノミクスという国民の生活を争点として前面に立て、集団的自衛権等の安保問題は争点隠しして自民党大勝利を招いた例からすると、事前承認なしで自衛隊を海外派遣するために衆議院を強行解散させるといったウルトラCをやりかねない。
福島第1原発の重大事故みたいな最悪の事態が起きない限り、事前承認なしの自衛隊派遣が取り立てた支障もなく推移して、そのことを実績としていくと、国民は事前承認なしの自衛隊の海外派遣に慣れていき、それが当たり前となって、事前承認の必要性に麻痺していくといった事態も起こり得る。
参議院の緊急集会という事前承認の機会を設けることができながら、衆議院解散中は国会召集ができないことを以って事前承認の例外を設けて事後承認とする狙いが上記指摘したようなことにあるのかもしれない。
参議院での事前承認の機会を無視して、それでも自民党(=安倍晋三)が事後のものとなったとしても、衆議院の優越を楯にその関与を求め、承認を必要とすると主張するなら、自衛隊海外派遣という国家の有事に関わる重大事態の承認・非承認よりも衆議院選挙を優先さる本末転倒の構図を結果的に描くことになる。
優先させるべき前者を優先させるためには国会法なりの法律を改正させて、解散を一時停止できるようにし、選挙戦中であっても衆議院を招集して臨時国会なりを開催、公平を期すために国会解散当時は国会議員ではなかった立候補者も含めて選挙戦を一時停止させて事前承認の手続きを取るべきであり、そうすることによって優先させるべきを優先させない本末転倒を正すことができる。
日程上、一旦決めた投票日は変えることは不可能だったとしても、立候補者不在のまま、投票は行うことはできるし、選挙戦を行うことができない点は立候補者すべてが公平な条件となる。
結果的に何ら支障なく済んだとしても自衛隊の海外派遣はそれ程にも国家にとっての重大事態だとの認識を一般化させない限り、どこでどのような暴走を招かないとも限らない。
安倍内閣によって2015年3月6日、防衛省の内部部局(内局)の官僚が自衛官より優位に立つ根拠してきた、いわゆる「文官統制」規定を廃止し、防衛官僚(背広組)と自衛官(制服組)を対等と位置付ける規定を盛り込んだ防衛省設置法第12条の改正を主とした改正案が国会に提出されている。
防衛官僚と自衛官が対等の地位を築くことによって、自衛官側の戦争の現場や部隊運営の実際を知っているのは我々の方だとする現場知識主義を武器とした場合、両者対等の地位でありながら、自衛官側が心理的に優位な位置に立つことになって、その意見・主張が優先されることになりかねず、自衛隊の海外派遣に張り切っている安倍晋三が張り切りに応じて自衛官側の現場知識主義を優先的に採用した場合、自衛隊の最高指揮官たる首相の指示・命令であったとしても、厳格であるべき文民統制(シビリアンコントロール)が厳格さを失う危険性も考えることができる。
厳格さを失った文民統制のもと、安倍晋三の出動命令によって事前承認もなしに自衛隊が海外派遣される。何らチェック機能が働かないことになる。
例えその派遣が重大な事態を何ら招かずに任務終了に至ったとしても、文民統制やチェック機能の点で、派遣に至る指揮命令系統に欠陥を残すことになる。
衆議院の選挙どころではないはずだ。自民党がどうしても衆議院の関与を必要とすると主張するなら、やはり法律を改正して、衆議院の事前承認を重大なチェック機能とすべきである。
特に安倍晋三が首相である間は以上の懸念を杞憂とせずに衆参の頭数の絶対優位を最大武器として既成事実化していくだろう自衛隊の海外派遣を国民は厳しく監視しなければならない。