「生活の党と山本太郎となかまたち」
《9月17日 鴻池委員長不信任動議・賛成討論「断腸の思いで・・」安保特、山本代表》
山本太郎代表は9月17日、鴻池参院安保特委員長の不信任動議に賛成の立場から討論を行いまし
た。その全文をホームページに掲載しました。安保法は成立しましたが、今後の戦いの参考のため、
ぜひご一読ください。
安倍晋三が9月24日、自民党両院議員総会での自民党総裁に再任後、記者会見を行い、柳の下にドジョウ二匹を狙ったのか、「新しい三本の矢」を打ち出し、それぞれに第一の矢「希望を生み出す強い経済」、第二の矢「夢をつむぐ子育て支援」、第三の矢「安心につながる社会保障」と名付けたうえで、「1億総活躍社会」の実現を公約した。
「1億総活躍社会」とは、断るまでもなく、日本人全員が一人の洩れもなく活躍できる社会の実現の公約である。まさか現在1億2千万余の人口の内、1億人のみが活躍できる社会を作り、あとの2千万余の日本人は切り捨てるという意味での「1億総活躍社会」ではないはずだ。
一人の洩れもなく活躍できる「1億総活躍社会」の実現と言うことなら、自殺者をゼロとしなければならない。日本の統計上の自殺者数は1998年以降14年連続して3万人を超えていたが、2012年は2万7858人、1997年以来、15年振りに3万人を下回っている。
これをゼロに持っていく。ゼロに持っていけば、2009年から2014年までの全国の小・中・高生の自殺者数は「学校問題」等の悩みを原因として小学生55人、中学生501人、高校生1376人の計1932人となっているが、この1932人もゼロにすることができる。
1932人のうち、イジメが原因の自殺は26人。イジメを原因とした自殺を確実にゼロにするためにはイジメそのものをゼロにしなければならない。たまたまのイジメが自殺を招かない保証はないからだ。
「1億総活躍社会」が実現すれば、みんなハッピーということで、イジメ自殺で社会が騒ぐこともなくなる。
「1億総活躍社会」とは、「自殺ゼロ社会」ということにもなる。日本人全員が健康で生き生きと活躍できる社会である。
失業しても、次の就職先が即座に見つかるようにしなければ、しかも前の会社よりも待遇が良くなければ、「1億総活躍社会」とは言えない。女性が妊娠出産して育児休暇を安倍晋三が掲げた3年を目一杯取ったとしても、勤めていた会社に前の地位のまま戻れないような事態が1件でも発生したなら、「1億総活躍社会」はたちまちハッタリと化す。
女性の誰に対しても以前のキャリアを捨てて、パート勤めをせざるを得ない意に染まない状況を招くことがあったなら、「1億総活躍社会」は破綻する。
正規社員と非正規社員の平均年収格差約300万円が導き出すことになる一方が年に何回も海外旅行に出掛け、もう片方が国内旅行もままならない消費活動の格差と、他の消費活動にも影響している格差を限りなくゼロに持っていかなければ、「1億総活躍社会」とはならない。
と言うことは、非正規社員をなくす以外に消費活動に関わる「1億総活躍社会」は実現しないということではないか。
少なくとも年間所得200万円以下の世帯をゼロにしなければ、「1億総活躍社会」とは言えないはずだ。
安倍晋三はまた、第三の矢の「安心につながる社会保障」の分野では「介護離職ゼロ」を掲げた。これは「1億総活躍社会」実現の一環でもあるはずだ。介護のために仕事を放棄することによって仕事に於ける本来の活躍の場と活躍の機会を失うことは本人を「活躍社会」から仲間外れにすることを意味することになって、「1億総活躍社会」実現の趣旨に反することになる。
安倍晋三「社会保障は、高齢者の皆さんのみならず、現役世代の『安心』も確保するものでなければならない。そうした観点で、社会保障制度の改革・充実を進めてまいります。特に、仕事と介護の両立は、大きな課題であります。私は、『介護離職ゼロ』という、明確な旗を掲げたいと思います。
直近の調査で、介護離職者が初めて年間10万人を超えました。離職を機に、高齢者と現役世代が、共倒れしてしまうという悲しい現実があります。
東京五輪が開かれる2020年には、団塊世代が70歳を超え、その数は、さらに増えていく。日本の大黒柱である団塊ジュニア世代が大量離職する事態となれば、経済社会は成り立たなくなる。その危機は、もう目前に迫っています。
今、ここから、始めなければなりません。
『介護離職ゼロ』を目指して、介護施設の整備や、介護人材の育成を進め、在宅介護の負担を軽減する。仕事と介護が両立できる社会づくりを、本格的にスタートさせたいと思います」――
「介護離職ゼロ」に持っていく条件に「介護施設の整備」、「介護人材の育成」、「在宅介護の負担軽減」を掲げている。
要介護者が家族の中から出た場合は施設に預けて、全ての介護を専門の介護職員に任せ、自身の持間を介護に取られないようにすることによって介護離職を回避するか、在宅介護であっても、自身の介護持間を介護離職しないで済む範囲内に抑えて、訪問介護職員の介護の持間を長くすることによって介護離職を回避するか、いずれかの方法を採ることになる。
そのための「介護施設の整備」であり、「介護人材の育成」であり、「在宅介護の負担軽減」である。
だが、どちらの方法であっても、国の税金の投入を免れることはできない。2014年の福祉施設の介護職員の全国平均の月給は21万9700円、訪問介護員(ホームヘルパー)22万700円、介護計画を作るケアマネジャーも26万2900円で、前二者は全産業平均32万9600円より約11万円低く、後一者も7万円近く低いと、2015年3月10日付「日経電子版」が伝えている。
この賃金格差が介護職員の離職率を高めている原因の一つだという。
記事は政府は2015年4月から介護職員の賃金を月1万2000円上げる方針と書いているが、他の記事を見ると、「介護職員処遇改善加算」という名目で行うとのことだが、これ以前は「介護職員処遇改善交付金」という制度を設けて、介護職員(常勤換算)1人当たり月額平均1.5万円を交付してきた。
この金額に対する1万2千円の加算ということなのだろう。
月額平均1.5万円の交付によっても尚、介護職員訪問介護員の月給は全産業平均月給32万9600円より約11万円の賃金格差、ケアマネージャーが約7万円近くの賃金格差があったのだから、月1万2千円の加算に持っていくために税金を投入しても追いつかないはずだから、介護職員の月額給与を全産業平均32万9600円に限りなく近づける必要性が生じ、先ずはその実現を図らなければ、「安心につながる社会保障」とはならないし、「1億総活躍社会」も覚束なくなる。
但し巨額の税金の投入は例え10%に引き上げも、さらに引き上げが必要だと言われている消費税増税に跳ね返っていくことが予想されるし、介護保険料にも跳ね返っていくはずだ。
当然、安倍晋三は「安心につながる社会保障」と銘打って「介護離職ゼロ」を打ち出し、そのために「介護施設の整備」、「介護人材の育成」、「在宅介護の負担軽減」を重要政策とするとした以上、国民の負担が年間所得金額階級別にどのくらい増えるのか、計算して数字を示して初めて具体的な政策となるはずだし、それが中低所得層の負担とならない金額でなければ、“安心につながらない社会保障”と言うことになって、「1億総活躍社会」は矛盾を来たすことになる。
だが、具体的な数字も、具体的な政策内容も提示せずに、いわば負担の度合いも分からない「1億総活躍社会」の実現を夜空に燦然と輝く大玉の花火のように威勢よく打ち上げた。
「介護離職ゼロ」の例を見ても具体策が見えないし、自殺ゼロの実現可能性やイジメゼロの実現可能性、育児休暇女性の元の姿のままの社会復帰の実現可能性まで入れると、「1億総活躍社会」はハッタリ以外の何ものでもないようにしか見えない。