今月9月11日から13日にかけて行ったNHK世論調査を9月14日付の「NHK NEWS WEB」記事から見てみた。
「安倍内閣を支持する」43%(先月比+6ポイント)
「安倍内閣を支持しない」39%(先月比-7ポイント)
見事支持率を回復している。ネバリ腰の安倍晋三といったところか。7月の大方の世論調査で支持と不支持が逆転し、中には支持率が40%を切るところもあり、8月の殆ど世論調査では40%以下に下がったところと、40%台を回復したところがあったが、それでも支持と不支持は逆転状態にあった。
今回のNHKの世論調査で少なくとも一気に6ポイントも回復させて支持・不支持の逆転現象を正常な状態へとひっくり返して40%台を回復させるには安倍内閣が政策面や国会運営、あるいは党運営に於いてそれなりの業績を上げていると国民は評価していると見なければならない。
国民はどのように評価しているのだろうか。
先ず支持・不支持それぞれの理由を見てから、次に評価している政策、その他を見てみる。
「支持する理由」
「他の内閣より良さそうだから」39%
「実行力があるから」22%
「政策に期待が持てるから」12%
「支持する政党の内閣だから」12%
「支持しない理由」
「政策に期待が持てないから」47%
「人柄が信頼できないから」21%
「支持する政党の内閣でないから」9%
「安倍内閣の経済政策についての評価」
「大いに評価する」6%
「ある程度評価する」44%
「あまり評価しない」33%
「まったく評価しない」12%
いわばアベノミクスについて、「大いに評価する」6%に対して「まったく評価しない」が12%。「ある程度評価する」44%に対して「あまり評価しない」が33%。
これがどういうことかと言うと、「ある程度評価する」が「あまり評価しない」に対して11ポイント上回っているものの、合わせてみると、程々の評価というレベルに77%も集中していて、積極的肯定・否定性という点では「まったく評価しない」が「大いに評価する」を6ポイント上回っているとしても、合計して18%という少数しか集めることができていないということである。
要するにアベノミクスは全体的に見た場合、程々の評価の対象としかなっていない。
加えて「大いに評価する」6%に対して「まったく評価しない」が2倍の12%を占めている以上、アベノミクスは安倍内閣の支持率を上げる要因とはならないはずだ。
このことは次の質問と回答を見れば理解できる。
「景気が回復していると感じるかどうか」
「感じる」12%
「感じない」48%
「どちらともいえない」36%
プラス・マイナスを含めた明確な評価が「感じる」12%+「感じない」48%=60%と大勢を占めていて、しかもマイナス評価が36%も上回っている。
このような明確な評価に対して「どちらともいえない」という不明確な評価が36%も占めていると言うことは、少なくとも3分の1の国民はアベノミクスはプラス・マイナスどちらとも評価することはできないと見ているとすることができる。
マイナス評価が36%差、プラス・マイナスどちらとも評価できないが36%、プラス評価がたったの12%。
景気回復の実感という点についても、安倍内閣の支持率を上げる要因とはならないはずだ。
「集団的自衛権行使可能等を盛り込んだ安全保障関連法案を今の国会で成立させる政府・与党の方針に賛成か否か」
「賛成」19%
「反対」45%
「どちらともいえない」30%
今国会成立「反対」が45%と「賛成」を26%も上回って、半数近くを占め、「どちらともいえない」の態度保留者が反対に次いで30%も占めていて、「賛成」の19%を11%も上回っている。
態度保留者とは安倍晋三たちが「説明を尽くして国民の理解を得る」と常々公言している努力を実を結ばせることができず、法案に対する賛否の態度を決めさせるに至っていないために、そのことのそのままの反映として今国会での成立の是非についても態度も決めさせるに至っていない状態にある者たちを言うはずである。
この30%という点だけを見ても、安倍内閣の支持率を上げる要因の一つとすることはできず、「反対」の45%を加えると、逆に支持率を下げてもいい要因にしか見えない。
「安保関連法案の国会審議・議論は尽くされたか」
「尽くされた」6%
「尽くされていない」58%
「どちらともいえない」28%
「どちらともいえない」28%は判断する材料を持たないということなのか、どちらとも判断できないということなのだろうか。
どちらであっても、「尽くされていない」が「どちらともいえない」を30%上回って58%に達している。「尽くされた」6%と比較したなら、52%も「尽くされていない」が優勢となっている。
当然、安倍内閣の支持率を上げる要因の一つとはならないはずである。
「安保関連法案成立が抑止力高め、日本が攻撃を受けるリスクが下がるという政府の説明に納得できるかどうか」
「大いに納得できる」6%
「ある程度納得できる」25%
「あまり納得できない」37%
「まったく納得できない」26%
この質問に対しても程々の評価というレベルの扱いしか受けていない。「ある程度納得できる」25%と「あまり納得できない」37%を合わせて、62%もが程々の評価に抑えている。しかも程々の評価の中でも、「納得できない」が「納得できるを12%上回っている。
さらに「まったく納得できない」26%に対して 「大いに納得できる」はマイナス20ポイントの6%しか占めていない。
双方を合わせると、とてもとても安倍内閣支持率を上げる得点となるどころか、逆に失点となってもいい回答となっている。
「安保関連法案は『憲法違反だ』という意見と『憲法違反ではない』とする意見があるが、どう思うか」
「憲法違反だ」32%
「憲法違反ではない」16%
「どちらともいえない」46%
「どちらともいえない」46%は判断材料がないということではなく、憲法違反とも違反ではないとも判断できないということであって、安倍政権と与党の「憲法違反ではない」とする主張=自らが掲げている正当性を理解させて、それを共有させるに至っていない状況にある半数に近い確率であるはずである。
しかも「憲法違反ではない」の正当性共有者16%に対して「憲法違反だ」の不当性主張者が32%の2倍となっている。
どこに安倍内閣を支持してもいいとすることができる要素を見つけることができるのだろうか。
「安倍晋三の自民党総裁選無投票再選は好ましいと思うか」
「好ましい」18%
「好ましくない」44%
「どちらともいえない」32%
判断がつかないが32%を置いておくとしても、無投票を否定的に把える「好ましくない」44%が肯定的に把える「好ましい」18%を26ポイントも上回っていて、判断がつかない32%と比較しても、12ポイント上回っていて、全体的に否定的評価――バッテンが支配的となっている。
最後の質問、「消費税率の10%への引き上げに合わせて財務省が飲み物と食料品を対象に支払った消費税のうち2%分を後から還付する軽減税率の制度案に賛成か反対か」
「賛成」14%
「反対」51%
「どちらともいえない」27%
判断不能が27%。但し「賛成」14%に対して「反対」51%と半数以上を、僅かにだが、上回っている。
以上の回答から全体を通して見たとしても、安倍内閣の支持率上昇に結びつけることができる総合的な評価を見つけることはできない。
当然、下がってもいい安倍内閣支持率だし、下がってこそ、整合性が取れる世論調査とすることができるのだが、逆に内閣支持率は先月比で6ポイントも上回って43%と、40%台に跳ね上がる怪奇現象を見せている。
これをどう理解したらいいのだろうか。安倍晋三のお友達をNHK会長に据えた人事を利用して手を回した、全部の数字をいじるわけにはいかないからと内閣支持率の数字だけをいじった情報操作なのか、それとも安倍晋三の政策等に関しての個々の評価は与えることはできないが、安倍内閣として見た場合は評価ができるとする、奇妙なねじれが回答者に働いた結果の安倍内閣支持率上昇ということなのだろうか。
後者だとしても、怪奇現象の謎は残る。