安倍晋三の今回総裁選のオール安倍体制のスタートは2006年総裁選と似ていて、結末への興味をそそる

2015-09-09 12:03:55 | 政治



      「生活の党と山本太郎となかまたち」

      《9月8日 小沢代表・山本代表記者会見動画 党HP掲載ご案内》   

     小沢代表、山本代表は9月8日、国会内で定例記者会見を行い、統幕長発言問題、安保法案審議、自
     民総裁無投票再選、岩手県議選などに関する質問に答えました。記者会見動画をホームページに掲載
     しました。是非ご覧ください。

 2015年9月8日告示の自民党総裁選への立候補届は安倍晋三一人のみで、無投票再選が決まった。月内に開かれる党両院議員総会で了承されるそうだ。2012年12月26日の総選挙で自民党を大勝させ、その後の2013年7月28日の参院選、2014年12月14日の再びの総選挙で引き続いて大勝の1票を投じたそれぞれの国民の力のお陰である。

 立候補を目指していた野田聖子議員は立候補資格に必要とする20人の推薦人を集めることができずに立候補を断念した。但し20人の推薦人集めはかなりいいところまでいったようだが、推薦人になることを思いとどまらせる様々な圧力があったようだ。「産経ニュース」はその圧力を、〈首相周辺が野田氏の行動を先読みし、女性議員を首相の推薦人に「一本釣り」して囲い込んだとされる。別の議員は推薦人依頼を断った際、「次の選挙が大変なことになる」と圧力をかけられたともいい、野田氏は焦りも募らせているようだ。〉と解説している。 

 野田聖子自身が9月8日午後の立候補断念の記者会見で推薦人の数を「ゼロから始め、派閥もグループも持たない中、奇跡的な数字をいただいた」(毎日jp)と表現したのは、推薦人降ろしの圧力に曝されてもこれだけ集まった、あと一歩届かなかったという思いがあったからだろう。
 

 安倍晋三の側は安倍晋三親分を初め、圧力をかけるのはお手のものである。NHK会長に自身の息のかかった者を据え付け、2014年の総選挙前には自身の側近を使って自民党の要請として在京テレビ局に選挙報道の公平性確保の口実で文書を送り、暗に自分たちに不利となる報道を控える圧力をかけている。

 自分たちに不利となると見做している報道が事実に基づいていないなら、その要請は正当性を持つことになるが、事実に基づいていた場合の不利となる報道を控えさせることは報道を歪めることを求める要請となる。

 安倍晋三は同じく2014年の総選挙前に民放テレビに出演して、番組が「アベノミクスの効果」について街の声を聞いたところ、否定的声が殆どであったのに対して「街の声ですから、皆さん選んでおられる」と、各マスコミの世論調査でも現れているアベノミクスに対する否定的事実を自分たちに不利となる事実に基づかない報道と見做して批判した。

 在京テレビ局に対して選挙報道の公平性確保の要請文を出したのはこの安倍発言の2日後である。事実を曲げてでも自分たちの不利を正そうと報道に働きかけるのは言論の自由に対する侵害以外の何ものでもないのだが、本人たちは侵害だとは思ってもいない。

 このように安倍一派はそれが事実に基づこうと基づかなかろうと、自分たちに不利となることに差別なく圧力をかける危険な体質を有している。野田聖子の推薦人になろうとした議員に圧力をかけたとしても驚きはない。

 また、例え野田聖子が20人の推薦人を得て立候補できたとしても、安倍晋三が圧倒的多数の得票を得て一方的な勝利を収める結果は目に見えていた。党内7派閥すべてが安倍支持で固まり、安倍一頭体制を形成していたからだ。

 安倍晋三は9月8日、無投票再選が決まると、首相官邸で記者会見を開いている。

 安倍晋三「9か月前、われわれは『景気回復、この道しかない』との考え方のもとに総選挙を行い、国民から大きな支持をいただき、大勝した。党内には『この国民の意思に対して、一丸となって責任を果たしていくべきで、継続は力であり、次の任期を務めよ』という議員の方が大勢だったと思う。

 アベノミクスは道半ばであり、全国津々浦々に、景気回復の好循環を届け、地方創生を進めていく。さらには、震災からの復興をさらに加速していく。さまざまな課題に取り組み、結果を出していくことで責任を果たしていきたい」(NHK NEWS WEB

 なかなか巧妙な発言となっている。アベノミクスで国民の支持を得て、選挙を勝ち抜いてきた。ここに来て安保法制の憲法違反の疑いと強引な進め方で支持率低下を招いている。

 その低下を補うために支持率獲得の源であるアベノミクスを改めて持ち出して、新総裁としての再スタート時の安保法制成立以降、再び支持率を高めようという巧妙な魂胆が見える。

 但し、安倍晋三はアベノミクスを経済再生の打ち出の小槌みたいに振り回しているが、アベノミクス自体が満足に機能していないと否定的に見る記事がある。

 〈民間シンクタンク15社を対象に行った緊急調査の結果として、市場関係者が求めている政策と予想される現実に大きな乖離があることが分かった〉と、《ロイター調査:安倍政権への要望と現実に「大きなかい離」》ロイター/2015年 09月 7日 14:43)と題して伝えている。  

 市場関係者が求めている実行すべき政策

 「労働市場の規制緩和+社会保障制度の改革」11ポイント
 「医療分野の規制緩和」4ポイント、
 「財政再建の推進」+「農業分野の規制緩和」2ポイント
 「追加金融緩和」1ポイント
 「補正予算」1ポイント
 「憲法改正」0ポイント

 市場関係者が求めていない実行しそうな政策

 「補正予算」14ポイント
 「追加金融緩和」8ポイント
 「労働市場の規制緩和」2ポイント
 「農業分野の規制緩和」2ポイント
 「医療分野の規制緩和と社会保障制度の改革」1ポイント
 「憲法改正」1ポイント
 「財政再建の推進」0ポイント

 要するに「市場関係者が求めている実行すべき政策」「市場関係者が求めていない実行しそうな政策」がほぼ逆転の乖離を見せている。

 この結果について記事は、〈潜在成長力を引き上げるアベノミクスの第3の矢は、実行されないとの「冷ややかな目」が安倍政権に注がれていると言えそうだ。〉と解説している。

 そしてこのような結果が出たことについての市場関係者の声を伝えている。

 森田京平バークレイズ証券・チーフエコノミスト「円安になっても、製造業を中心に設備投資が伸びていない。これは設備投資の説明変数として、将来への成長期待が不十分であることを示唆し、規制緩和の必要性につながる。

 日銀の目指す物価安定の目標は、実質賃金の増加を伴う形で実現する必要があるが、実質賃金は労働生産性に規定される。労働生産性を高めるうえで、労働市場改革は不可欠」

 小玉祐一明治安田生命・チーフエコノミスト「アベノミクスの第1と第2の矢は共に限界。日本経済の根本的な問題は潜在成長率の低下であり、成長戦略を着実に進めるしかない。財政再建も喫緊の課題」

 ところが平成28年度予算案概算要求の一般会計の総額が102兆円を超えて過去最大規模となっていて、財政再建の姿勢が見えないということなのだろう。

 青木大樹UBS証券・シニアエコノミスト「輸出数量が拡大しにくい状況では、金融緩和による円安も効果が薄い可能性がある。より進めるべきは、生産性向上につながる労働や医療の分野での規制改革だ」

 南武志農林中金総合研究所・主任研究員「成長なくして財政再建なしにとって、ネックは労働供給政策と社会保障制度の抜本改革である」

 市場関係者が上げる実行すべきとしている政策が実行されそうもない。トドメの発言を紹介している。

 国内銀行関係者「海外投資家がアベノミクスのパワーに関し、2年前のような期待感を失っている。国内勢も懐疑的になっており、日本株の積極的な買い手が減っている」

 ここだけ名前を伏せている。それが事実の情報発信であったとしても、安倍晋三一派が不利となる情報の発信者に対して圧力をかける恐れがあることから、オフレコ発言としたのだろか。
 
 但し民間シンクタンク15社は、〈2018年の安倍首相の自民党総裁任期まで安倍政権が存続することを望むのか、という質問に対しては「はい」が12社、「いいえ」が1社〉となったと伝えている。アベノミクスに否定的であっても、いわば格差や規制緩和の不徹底、あるいは財政再建の不徹底といった矛盾を抱えているにしても、現在の景気を構成している為替水準や株価を守らなければならないという意味で任期存続に肯定的な解答を出したのだろうか。

 と言うことなら、今後の実際の成り行きが問題となる。いくら今の景気状況の存続を望もうと、安倍晋三が自信を見せているようにアベノミクスが景気回復の打ち出の小槌となるのか、市場関係者が危ぶんでいる不安が的中して、不安通りの姿を取ってしまうのかである。

 今回の自民党総裁選・無投票再選のような安倍一頭体制の現象は安倍晋三が初めて首相への道を開いた2006年9月20日の自民党総裁選でも、無投票ではなく、対抗馬が存在していたものの、オール安倍体制であったという点で共通点を指摘できる。

 当時他の立候補派閥以外は安倍晋三支持に雪崩を打ち、「勝ち馬に乗る」、「雪崩現象」、「相乗り現象」といったキーワードが飛び交かい、次の自民党の顔として安倍一色となった。

 麻生太郎と谷垣禎一の他の候補は総裁選を成立させるためのコマに過ぎなかった。投票結果を見れば理解できる。

       得票数    議員票    党員票
 安倍晋三  464票    267票   197票
 麻生太郎  136票    69票    67票
 谷垣禎一  102票    66票    36票

 2位麻生太郎に総得票数で300票以上、議員票で約200票引き離す圧倒的強さと圧倒的人気を示した。だが、第1次安倍内閣(2006年9月26日~2007年9月26日)の末路は散々であった。

 以下「Wikipedia」から見てみる。

 首相の諮問機関である政府税制調査会の会長本間正明が公務員官舎の同居人名義を妻の名前にしつつ、愛人と同棲していた不祥事。

 内閣府特命担当大臣(規制改革担当)佐田玄一郎が事実上存在しない事務所に対して1990年~ 2000年までの10年間もの間、光熱費や事務所費など計7,800万円の経費を支出したとする虚偽の政治資金収支報告書を提出していた政治資金規正法違反の不祥事。

 厚生労働大臣柳澤伯夫が「15~ 50歳の女性の数は決まっている。産む機械、装置の数は決まっているから、あとは一人頭で頑張って貰うしかない」と女性は生む機械だとした女性蔑視発言。

 安倍晋三の盟友松岡農水大臣の資金管理団体が光熱水費が無料の議員会館に事務所を置いているのに500万円の光熱水費を計上していたことが発覚、衆参両院で厳しく追及を受け、答弁がその時々て変わり、追及をかわし切れずに東京・赤坂の議員宿舎自室で自殺した不祥事。 

 松岡の後任の農林水産大臣赤城徳彦の政治団体「赤城徳彦後援会」が事務所としての実態がない茨城県筑西市の両親の実家を「主たる事務所」としているにも関わらず、1996年から2005年までの間に約9045万円も経費計上していた政治資金規正法違反疑惑の不祥事。

 事務所費を巡る別の疑惑も浮上、赤城は辞表を提出し受理され、辞任することになったが、実際には安倍晋三が因果を含めた解任だと言われている。

 そして社会保険庁の年金記録のズサンな管理によって生じた消えた年金問題が致命的となり、持病の再発もあって、安倍晋三は1年で首相職を投げ出すことになった。

 洋々たる前途を約束するかのような自民党総裁選での圧倒的人気と圧倒的支持で自民党の頂点に立ち、国家の舵を握るバラ色のスタートでありながら、そのバラ色は1年も持たず、結末はスタートのバラ色とは正反対の灰色一色に包まれていた。

 今回もバラ色のスタートとなっている。安倍晋三を前にして総裁候補と目されていた有力議員が誰もが対抗馬に名乗りを上げる気力を示すことができず、一人が対抗馬に名乗りを上げても推薦人の20人を、立候補降ろしの圧力を跳ね除けでも集めるだけの力を持つことができなかった、誰も怖い者がいないオール安倍体制と言ってもいい前途洋々を約束するような船出を見せた。

 今回のこのような船出がスタートの情景はごくごく似ていても、前回と同じ末路を辿るとは限らない。

 だが、辿らないという保証もない。内外の投資家がアベノミクスに対して以前程の期待感は失っているという指摘に既に触れた。アベノミクスを以てしても個人消費と輸出が力強さを一向に回復できない現状を前門の虎とすると、中国の景気減速が後門の狼となってその姿を現さない危険性は誰も否定できない。

 幸先良ければ全て良しではないことを安倍晋三自身が2006年9月20日の自民党総裁選で証明した。一度あることは二度あると言う。今回の幸先――バラ色のスタートが前回と同じ経緯を取るのか、スタートで先頭を切って飛び出した競走馬が痩せ馬の先走りとならずにそのまま先頭を維持してゴールに駆け込むのか、結末に興味をそそる。

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