【口寄せ】「生者または死者の霊や神霊を呼び寄せ、その意思を言葉で語ること。また、それをする人。東北地方のいたこ、奄美・沖縄のゆたなど。」(デジタル大辞泉)
鳩山由紀夫元首相が3月10日、ウクライナのクリミアを訪問、3月14日に帰国している。「The Voice of Russia」が解説している鳩山首相の発言を会話体に直してみる。
鳩山由紀夫「2014年3月16日にクリミア半島全体で実施された住民投票は平和裏に民主主義的プロセスを通じて行なわれたものであり、クリミア市民の実際の意思表明が反映されたものだ。
残念なことにクリミアでの出来事について日本のマスコミは信憑性のある形では伝えていない。クリミア市民は自らの領土問題を解決することができ、そのお陰でクリミア半島はロシアの構成体に平和裏に移行することが叶った。
クリミアでの住民投票が如何なる形で行なわれたか、民主主義的に実施された住民投票の結果、領土問題が(どう)解決されたかという事実は世界史のなかで最も意味のある出来事の一つとして記憶されるだろうと確信する。
国際社会は未だにクリミア住民投票に対し、あたかもウクライナ憲法に反するとして、批判している。今日(11日)得られた情報からは、クリミア住民投票はウクライナ法典にも合致していることを知り、非常に喜ばしく思う」――
このようなプーチン・ロシアの領土拡張の野望をあっさりと認めた発言に対してネット上では「ロシアのスパイか、ただのアホか」といった批判が流されている。
恐れ多くも元日本の首相である。「ただのアホか」はあまりにも失礼である。
以上の発言は安倍晋三の魂の奥底の叫びを口寄せしたものと見たら、どうだろうか。
プーチンは住民投票で決したクリミアのウクライナからの独立とロシア連邦への編入のみで、その領土拡張欲求を満足させず、ウクライナ東部のドネツィク州やハルキウ州、その他の州にも領土拡張の食指を動かし、親ロ派分離独立武装勢力に武器を流して、その野望を果たそうとしている。
それを辛うじて押し止どめているのは欧米の対ロ制裁である。
クリミアが分離独立を果たしてロシア編入後の2014年5月9日、プーチンはクリミアを訪問、黒海艦隊の拠点であるセバストポリで軍事パレードに出席、市民や軍人、退役 軍人を前にして演説している。
プーチン「2014年はクリミア市民がロシアと共に生きることを決定し、歴史の真実や祖先の記憶に忠実であることを確認した年として、我々国家全体の歴史に残るだろう。
多くの仕事が残っているが、困難は克服することができる。なぜな ら我々は共にあり、一段と強くなったからだ」(ロイター)――
クリミアの領土とクリミアの住民がロシア国家(ロシアの領土とロシア国民)と共にあるのは、「歴史の真実や祖先の記憶に忠実」な出来事だと断じている。1922年成立のロシア・ソビエト連邦社会主義共和国を前身としたソビエト社会主義共和国連邦の時代、ロシア人は各共和国に移住した。各共和国とロシアが一体となって広大な領土を以って体現していた大国ソ連こそが「歴史の真実」であり、「祖先の記憶」であって、その忠実な実体化こそが、かつての大国の復活へとつながっていく。
かくこのようにプーチンの「歴史の真実や祖先の記憶に忠実」という言葉からは、旧ソ連時代に国家が体現していた大国意識への回帰願望を見て取ることができる。
このようなプーチン・ロシアの領土拡張欲求にロシア国民は万全の支持を与えている。ロシア国民の領土拡張欲求はプーチンの領土拡張欲求と共にある。
もしプーチンがその領土拡大欲求をクリミア、その他の共和国のロシア領土化で満足したなら、北方四島に対する自国領土化欲求は淡白となりはしないだろうか。
淡白となったろころを突いて、経済協力で懐柔する。ロシア領土に編入した共和国の経済発展には日本の経済協力が不可欠である。
安倍晋三がそう狙ったとしても不思議はない。何しろ日本の対ロ制裁が欧米の制裁に単に形式的に追随したもので、毒にも薬にもならない内容であることがプーチン・ロシアの領土拡張野望に欧米の首脳程には激しい忌避感・嫌悪感を必ずしも示していないことを証明している。
それもこれも安倍・プーチン間で北方四島返還を果たしたいと激しく願っているからだろう。プーチンが旧ソ連時代の共和国をロシアに編入することでその領土拡張欲求を満足させてくれたなら、勿怪(もっけ)の幸いである。
このような安倍晋三の魂の奥底の叫びが鳩山由紀夫宇宙人によって自ずと口寄せされて、鳩山由紀夫によって語られた。
尤もプーチンが共和国を取り戻すだけではなく、北方四島に対しても自国領土としての頑迷なる執着を示したなら、虻蜂取らずとなって、鳩山由紀夫の口寄せも空振りで終わることになる。