安倍晋三の独裁者に近い所有姿勢を露わにした「我が軍」発言とその釈明に見る天性の自己発言正当化の大名人

2015-03-29 09:39:23 | 政治


 3月27日午後の参院予算員会で安倍晋三は小野次郎維新の党議員から自衛隊を「我が軍」と発言したことの真意を尋ねられた。

 安倍晋三「どういう発言をしたかと言いますとですね、真山委員(維新の党議員)からですね、共同訓練の意義等について質問がございまして、その中で絆が強化をされていくという趣旨のことを申し上げた後、『また我が軍の透明性をまさに一緒に訓練するのでありますから、上げていくということに於いては大きな成果を上げていくだろうとこう思います。自衛隊が規律をしっかりしていると、しっかりとした責任・監督・規律のもとに平和に貢献していこうということが多くの国民によく理解されているんではないだろうかと思います』

 このように述べたわけでございますが、この答弁はですね、まさに共同訓練に関する質問があって、これに対する質疑の流れの中でお答えしたものでありまして、共同訓練の相手国である他国の軍との対比をイメージを致しまして、自衛隊を『我が軍』と述べたものでありまして、それ以上でも、それ以下のものでもないわけでございまして、そもそも自衛隊の発足時ですね、昭和29年でございいますが、当時の大村防衛庁長官が政府解釈として、『自衛隊は外国からの侵略に対処するという任務を有するが、こういうものを軍隊と言うならば、自衛隊も軍隊と言うことができる』と答弁をております。

 また、国際法的には軍と認識をされているというのが政府の答弁であります。

 また民主党政権に於いてもですね、一川防衛大臣が『自衛隊というのは我が国が直接外国から攻められるということがあれば、しっかりと戦うという姿勢でございますから、そういう面では軍隊だという位置づけでいいと思う』

 これが当時の民主党政権時代の政府の統一見解でもあるわけでもございまして、発足当時からこれ(自衛隊に対する軍としての位置付け)は一貫をしているいうことを申し上げて置きたいと思います」

 小野次郎「日頃思っていたことが口を突いて出ただけなんですかということを聞いてるんですよ」

 安倍晋三「今、答弁、丁寧に答弁させて頂いたので、十分にご理解頂けると思います」

 小野次郎「自衛隊はあたなの軍隊なんですか?」

 安倍晋三「違います」

 小野次郎「これで終わります」

 面白くなりそうだったが、時間切れで、残念なことをした。

 要するに安倍晋三は3月20日の参院予算委員会で真山維新の党議員の自衛隊が他国の軍隊と共に訓練を行う意義についての質問に対して「我が軍の透明性をまさに一緒に訓練するのでありますから」云々と答弁して、共同訓練の意義に関わる説明とした。

 そしてこの説明は、「共同訓練の相手国である他国の軍との対比をイメージ」して「自衛隊を『我が軍』と述べたもの」で「それ以上でも、それ以下のものもない」と釈明した。

 更に「自衛隊」と呼ばずに「軍」と呼称したことに関しては、昭和29年の自衛隊発足時の大村防衛庁長官が自衛隊を軍として位置づけていることが政府解釈となっていることと、国際法的には軍と認識をされていること、民主党政権時代も一川防衛大臣が軍として位置づけていて、このような自衛隊発足以来の政府統一見解としての位置づけの一貫性から言って、軍と呼称することに矛盾はないといった趣旨の答弁をしている。

 本人はこれでうまく言い抜けたと思っているのだろう。小野次郎に「自衛隊はあたなの軍隊なんですか?」と問われたのに対して、「違います」と一言答えて自席に戻るとき、うまくいったときの笑いを浮かべていた。

 確かに自衛隊の位置づけは誰が見ても立派な軍隊である。グローバル・ファイヤーパワーが公表した「世界の軍事力ランキング2014年版」によると、日本はアメリカ、ロシア、中国、インド、イギリス、フランス、ドイツ、トルコ、韓国に次いで世界第10位の軍事力を誇っている。有事に際しては軍隊として機能する。

 国際法的にも一般常識的にも軍として存在している。

 だが、安倍晋三が「我が軍」と答弁したとき、自衛隊を軍として位置づける文脈で述べた発言ではない。共同訓練の意義を述べる過程で「自衛隊」と単に呼べば済むのに「我が軍」と呼称したのである。

 そうであるのに政府統一見解としての自衛隊の軍としての位置づけを持ってきて、「それ以上でも、それ以下のものでもない」などと言って「我が軍」と呼んだことの自己発言正当化を狡猾にも成功させている。

 自衛隊を単に「自衛隊」と呼んだか、「我が軍」と呼んだか、軍としての位置づけとは何ら脈絡のない言葉の遣り取りの中で発生したあくまでも呼称の問題である。

 どう呼称するかは呼称する人の姿勢に関係してくる。例えば天皇を「天皇様」と、自己を最大限に低い位置に置いて天皇を最大限に高みに置いた呼び方をする者もいるし、「天皇陛下」と一般的な敬称で呼ぶ者もいるし、単に「天皇」と敬称を付けずに呼ぶ者もいるし、吐き捨てる言い方で「天皇」と言う者もいる。

 天皇という存在に対してのそれぞれの姿勢によって呼称は変わってくるし、その存在に込めた意味は限定されることになる。

 日本の首相、あるいは閣僚がその位置づけがどうであろうと一般的に「自衛隊」と呼ぶのに対して安倍晋三は首相の立場から「我が軍」と呼んだ。「我」と「軍」を結びつけ、一体化させたのである。

 前者の呼称はあくまでも自衛隊を独立した組織として扱う姿勢を示しているのに対して後者は、いくら自衛隊に対する最終指揮権を握っているとしても独立した組織と見做す姿勢を忘れてはならないはずだが、「我が軍」と呼ぶことによって自衛隊を独立した組織とはせずに安倍晋三自身に限りなく引き寄せたのである。

 独裁者は自国軍隊と自身を一体化させ、軍隊を自己所有物と見做す。 

 安倍晋三はそれに近い姿勢をふとした弾みに露わにしたのである。

 だが、そのことを巧妙に隠して天性の自己発言正当化の才能を発揮して、政府統一見解としての自衛隊の軍としての位置づけを述べたに過ぎないと誤魔化すことに成功した。

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