川崎市中1男子殺害事件から見る役所の誰かの犠牲を待ってからの相も変わらぬ類似性把握全国確認・点検調査

2015-03-14 07:48:16 | 教育
 


 文科省が3月13日、川崎市中1男子殺害事件を受けて全国の国公私立の小中高校などに在籍する児童・生徒を対象に不登校等で連絡の取れない児童・生徒の安全に関する緊急調査結果を公表したとマスコミが伝えていたので、文科省のサイトにアクセスしてみた。

 調査結果がpdf記事で公表されていた。中1男子と同じ状況に置かれていないか、安全のための類似性把握の緊急調査というわけである。

 「児童生徒の安全に関する緊急確認調査」(文部科学省/平成27年3月13日)
 
 〈調査の目的

 各学校において、神奈川県川崎市において過日発生した中学1年生殺人事件の被害生徒と同様の危機にさらされている可能性のある児童生徒を的確に把握するとともに、組織として緊急に対応していくことを目的とする。

 調査対象児童生徒

 (類型1)2月27日時点で、学校において7日間(授業日)以上連続して連絡が取れず、その生命又は身体に被害が生ずるおそれがあると見込まれるもの。

 (類型2)(類型1)に該当する者のほか、学校外の集団(成人が主たる構成員であると思われるものを含む。)との関わりの中で、その生命又は身体に被害が生ずるおそれがあると見込まれるもの。

 (類型1)

 小学生  男(27人) 女(22人) 男女合計(49人)

 中学校  男(61人) 女(51人) 男女合計(112人)

 高等学校  男(36人) 女(30人) 男女合計(66人) 

 特別支援学校  男(3人) 女(2人) 男女合計(5人)

 合計  男(127人) 女(105人) 男女合計(232人)
 
 (類型2)

 小学生  男(20人) 女(5人) 男女合計(25人)

 中学校  男(90人) 女(41人) 男女合計(1131人)

 高等学校  男(7人) 女(2人) 男女合計(9人) 

 特別支援学校  男(3人) 女(0人) 男女合計(3人)

 合計  男(120人) 女(48人) 男女合計(168人)

 全合計で400人。

 「学校外の集団」とは成人を含む非行グループを指し、自宅への非行グループの出入りや学校外での交遊の例があるという。

 内藤敏也文科省児童生徒課長「不登校や非行とされている子どもたちが本当に安全かという視点を大切にし、学校は勿論関係機関や地域が一体となって同じような事件を防いでいく必要がある」(NHK NEWS WEB

 文科省「解釈によって報告数にばらつきが出た。全員が危険な状況にあるわけではない」

 「全員が危険な状況にあるわけではない」にしても、文科省は中1殺害事件が起きて、初めて全国的な調査に乗り出した。学校は文科省の通達を受けて、該当する児童・生徒数を割り出した。全て事後対応である。

 2012年4月23日、19歳の少年が無免許の上軽自動車を居眠り運転し、集団登校中の児童10人の列に突っ込み、児童2人と引率の女性保護者1名を死なせた。保護者の胎内の胎児も死亡させている。

 この事件を受けて、文部科学省・国土交通省・警察庁が全国に通知を発し、全ての公立小学校で通学路の合同総点検が実施された。その結果、全国約7万個所が見通しが悪い交差点や交通量が多くて狭いなど、何らかの対策を必要としたという。

 通学路の状況に応じた危険性は児童・生徒や保護者が実感し、学校側に伝えられて把握しているはずだが、行政側に伝えていたのかどうか、何も動かない・動かさないままの個所が全国約7万個所も残されていた。

 2012年4月29日、群馬県藤岡市岡之郷の関越自動車道上り線藤岡ジャンクション付近で居眠り運転のツアーバスが道路左側のガードレールに接触、そのまま金属製の防音壁側面に正面衝突、バスを縦に切り裂く形になって、乗客7人が死亡、乗客乗員39人が重軽傷を負った。

 大事故となった原因はガードレールと防音壁が接続・固定の一体型ではなく、10センチ程離した分離型であったため、車体との接触によってガードレールが外側に曲がった結果、バスが防音壁側面と正面に向き合うことになり、防音壁が大鉈のような役割をして、バス車体を縦に切り裂き、左側座席に座っていた乗客の中からのみ死者を出した。

 1998年の国交省の通達によって、それ以後建設の新しい高速道路はガードレールと防音壁が接続・固定の一体型となっているが、それ以前の建設の高速道路は分離型のままだったという。

 分離型から一体型への変更は余分にコストがかかるから、安全面からの措置であったはずだ。いわば1998年時点で国交省は分離型個所の危険性を把握していた。だが、1998年以前の高速道路は安全面の措置をそのままに放置した。

 国交省は事故を受けて、類似個所の点検を各高速道路会社に通知した。東日本高速道路約2400カ所、中日本高速道路約1000カ所、西日本高速道路約1700カ所、計約5100カ所の隙間が確認された。

 学校は不登校や不登校からの交友関係がその当事者の身の安全に関わる出来事、生命に危害が及ぶ出来事とは考えていなくても、それがどのような事情からのものであっても、特殊な例外は幾つかはあるかもしれないが、その殆どが健全な成長を妨げる、あるいはそのキッカケとなると見做しているはずだ。

 だから、長期の不登校に対して家庭訪問を行ったり、連絡を取ろうと心掛ける。

 当然、学校が不登校に対してよりよく対応することによって、健全な成長の阻害要因を除くことができるばかりか、結果的に当事者の身の安全につながる。 

 いわば心身の健全性を見守る危機管理となる。

 だが、「全員が危険な状況にあるわけではない」としても、少なくとも健全な成長を妨げる、あるいはそのキッカケとなると見做さざるを得ない不登校の児童・生徒がそれぞれの学校の調査で全国で400人も把握された。

 つまり学校はそのような不登校に的確に対応できずに放置していたことになる。対応できていたなら、数の内に入れなくても済む。

 役所の事件や事故を受けてからの相も変わらぬ類似性把握の全国確認・点検調査にしても、役所の指示を受けた学校の対応にしても、前以て危険を予測して自発的に危機管理できない姿を曝しているに過ぎない。

 誰かの犠牲を待たなければ動かない。

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