安倍晋三が新たに打ち出した設備投資減税は参院選に勝てばいいのなり振り構わないバラマキ政策

2013-06-12 10:01:51 | 政治

 安倍晋三は2013年6月5日昼、東京都内のホテル開催の内外情勢調査会全国懇談会で「成長戦略第3弾」を発表したものの、成長戦略の柱とした各政策の公表が「新鮮味に欠ける」とか、「想定の範囲内」、「踏み込みが欠ける」とかの理由で株の失望売りにつながり、6月5日の東京株式市場での日経平均株価が大きく値下がりした。

 そして安倍晋三はたった4日後の6月9日日曜日の「日曜討論」で、「成長戦略第3弾」では一言も触れていない「思い切った投資減税」を打ち出した。

 司会「これまでの打ち出された成長戦略の中身、これが様々なこの国の既得権を見直す構造改革につながっていかないんじゃないとか、こういう踏み込み不足だという指摘もあります。こういう指摘にどう応えます?」

 安倍晋三「あの、常にどこまでいけばこの改革は終わるだろうというものはないんだろうと思うんですね。まあ、これは、もう、すうっと改革はその時々の状況に合わせて、状況に合わせていかなければいけません。

 例えば農業の問題。民間の皆さんが今まで農業に参入していなかった方々がですね、えー、農業に参入しやすい状況を作っていきます。

 例えば今まで農地を集約するといっても、担い手がですね、飛び地のように持っていたんですね。これを土地として集約するにはどうしたら良いか。これをいわば県が主体となって農地を集約して、土地を集めていって非常に生産性を高めていく。

 これを企業の皆さんに借りて頂いて、リース方式でどんどん借りていただいてですね、積極的に農地に参入して頂く。これは私は大きな変化だと思います。

 しかしこれで十分だとは思っていません。さらに我々は全力を尽くしていきたいし、そして私たちはそうした政策をどんどん集めていくことによってですね、10年間ですね、10年間で国民総所得、いわば日本人の稼ぎをですね、一人あたり150万円まで増していきたい」――

 安倍晋三はこれまでにアベノミクスの3本目の矢としている「民間投資を喚起する成長戦略」を3回に亘って発表している。

 第1回目は4月月19日午後の日本記者クラブ、「成長戦略に向けて」と題して行なっている。

 第2回目は5月17日、「成長戦略第2弾スピーチ」と題して日本アカデメイアの会合で行なっている。

 第3回目は6月5日、内外情勢調査会の会合で「成長戦略第3弾スピーチ」と題して発表。

 司会はアベノミクスの中身が既得権打破の構造改革に繋げるには踏み込み不足という指摘があるが、その指摘にどう応えるのか問い質した。

 対して安倍晋三は5月17日第2回目発表の成長戦略に羅列した、もう前々から言われていて、未だ実現していない「農地集約の構造改革」と民間企業の農業への参入の効果を改めて説明した上で、10年間で国民総所得を一人当たり150万円まで増やすと約束している。

 要するに踏み込み不足という指摘の存在に対して何らまともに答えていない。

 矛盾はこの一つではない。

 「改革はその時々の状況に合わせて、状況に合わせていかなければいけません」と言っているが、そう言う以上、これまで3回に亘って発表した「成長戦略」の各政策は「その時々の状況に合わせて」練り上げた政策ということになって、踏み込み不足などあってはならないはずだが、そう言う指摘があること自体、「その時々の状況に合わせ」たことと矛盾することになる。

 いわば踏み込み不足という指摘自体が「その時々の状況に合」っていない成長戦略ではないかという指摘であって、自身の政策立案との矛盾を無視して、「その時々の状況に合」っている政策として、既に第2回目に公表した政策を例に挙げて自己正当化の強弁を働かせたことになる。

 しかし第3回目の「成長戦略第3弾」発表後、株価が下がり、為替が円安に大きく触れたこと、内閣支持率がすこじずつ下がり始めていることに不安を感じたからだろう、6月5日の「成長戦略第3弾」を発表4日後の6月9日日曜日にテレビ番組で「思い切った投資減税」を打ち出すことになったに違いない。

 この投資減税はさらに2日後の6月11日の「世界経済フォーラム JAPAN Meeting オープニング・セッション」の会合でも言及している。

 安倍晋三「『三本の矢』で、どんな日本をつくりたいのか。それを、ご説明いたします。

 日本がじっとしていると、世界経済には貢献できません。

 小さくなると、世界には、マイナスの効果を与えることになります。

 日本は、なんといっても、ドイツと、英国を、合わせたより大きな国であります。

 そんな国が、小さくなると、世界に悪影響を与えかねません。それこそ、近隣窮乏化のそしりを免れなくなります。

 逆に、少しずつでも大きくなっていきますと、みんなに、いい影響が及びます。世界との、ウィン・ウィン関係ができてきます。

 経済をもう一度強くして、世界にもっと貢献できる日本をつくる。それが、私が目指す政策であります」――

 安倍晋三が打ち出す成長戦略政策に対する市場評価に応じて株価や為替レートが影響を受けて上下に触れるが、何よりもアメリカが発表する各経済指標に応じて、その影響をより大きく受けている。

 これはアベノミクスだけの問題ではない。断るまでもなく、以前からの傾向としてある。

 アベノミクスも所詮アメリカ経済というお釈迦様とその手のひらの中で踊る孫悟空との日米経済関係にある。単に勇ましい言葉を並べ立てるだけでは片付かないはずだが、既に「成長戦略」として発表した各政策をここでも再度並べ立てている。

 安倍晋三「国際的なまちづくりには、外国人でも安心して病院に通える環境が必要です。外国人がコミュニケーション容易な医師から診療が受けられるようにし、トップクラスの外国人医師も日本で医療ができるよう制度を見直します」

 この制度への見直しは6月5日の「成長戦略第3弾スピーチ」で既に発表した政策である。

 安倍晋三「職住近接の実現もまた、大都市に住む人には課題です。マンハッタンでは、昼間と夜間の人口に、ほとんど差はありません。街の中心部での居住を促進するため、容積率規制も変えます」――

 これも6月5日の「成長戦略第3弾スピーチ」で発表した政策。

 安倍晋三「外国からの直接投資です。2020年までに、外国企業の対日直接投資残高を、いまの2倍、35兆円に拡大します。今日の為替相場で換算すると、3070億ドル以上になります」――

 これも6月5日の「成長戦略第3弾スピーチ」で発表した政策。

 安倍晋三「3年間で、国内民間投資の水準を、70兆円、6000億ドル以上に戻します」

 これも6月5日の「成長戦略第3弾スピーチ」で発表した政策。

 「踏み込む不足」という市場評価があるにも関わらず、そのことに直接反論して市場を納得させる努力を果たさずに既に発表して約束した政策を再び持ち出して何度でも同じ言葉を繰返して約束することになると、言葉で一生懸命成功を約束する状況に陥ることになる。

 無意識下に気づいていて、そうでないことを示すことと、「踏み込み不足」を解消するためにだろう、3回に分けて発表した「成長戦略」に入れていなかった「設備投資減税」を新たな成長戦略として打ち出さざるを得なくなった。

 安倍晋三「日本の習慣として、次の年に手掛ける税制改革は、前の年の年末に決める、というのが、これまでの通例でありました。

 今年は秋に決めることにします。思い切った投資減税や、新陳代謝をうながす税制など。私の成長戦略に切れ目はありません」――

 年末まで待てないから、「秋に決める」ということもあるだろが、それ程に待てないなら、「成長戦略第3弾」発表で加えてもいい政策であるはずだが、加えなかったのは「踏み込む不足」と評価されたことと、言葉で並べ立てている成功の約束に新たに一枚加えて確かにしたい思いも働いたに違いない。

 茂木経産相、麻生副総理兼財務相、甘利経済再生担当相が一致して「設備投資減税」を言い出し、大合唱の様子を呈していることも、成功を思わせる効果となる。

 安倍晋三は「チャレンジ、オープン、イノベーションと、私は成長戦略を3つのコンセプトで説明しました」と前置きして――

 安倍晋三「しかし、いちばん大切なのは4つ目の言葉、『アクション』なのです。

 成長戦略は作文ではありません。官僚たちがお得意の作文。私は行動で1つ1つを示していきます。

 わたしは、今年からの3年を、集中的な改革の期間と位置付けています。

 この改革は、回転ドアみたいに、毎年トップが変わるような政治体制ではやり抜けません。

 3年に一度の半数を改選する参議院議員選挙が7月後半にやってきますが、負ける訳にはいきません。

 そして、選挙が終わったら、いよいよアクションです。国民に実感を与え、世界にも、日本はほんとうに変わったと思って貰えるように、やり抜くつもりであります」――

 「3年に一度の半数を改選する参議院議員選挙が7月後半にやってきますが、負ける訳にはいきません」。要するに「踏み込み不足」をふっ飛ばして参院選に是が非でも勝利するために言葉で約束をする政策としてなりふり構わずに打ち出したバラ撒き政策「設備投資減税」だと見ることができる。

 この見方は次の記事も取り上げている。

 《安倍首相:設備投資減税を指示 党内には戸惑いも》毎日jp/2013年06月11日 07時00分)

 「設備投資減税」について、〈自民党は早ければ8月下旬にも党税調の論議を開始する方向だが、党内では「具体策がない中で『前倒し』だけが独り歩きしている」との戸惑いも出ている。〉――

 財務省幹部「首相官邸が(設備投資減税に)前のめりになっている」

 バラマキ政策に具体策などあろうはずはない。

 記事。〈経済再生を参院選の争点に据えたい首相にとって「アベノミクス」への期待をつなぎ留める必要があるためだ。成長戦略の評価が芳しくないことから、「次の一手」を急いでいるとみられる。〉――

 参院選に勝利するために、もう、なり振り構っていられなくなった。執念と言えば執念と言えるが、いくら選挙のためとは言え、具体策もなく、言葉だけの約束で成功を思わせることは許されるはずもない。

 「投資減税の規模や手法によっては、法人税の税収が大きく減少することになりかねない」(税制調査会の幹部)と財政規律とのバランスの面から懸念する声も出ていると「NHK NEWS WEB」は伝えている。

 いわば財源の満足のいく手当を講じつつ内容を具体的に詰めてから公表する当たり前の手順を踏んで公表した「設備投資減税」ではなかった。

 そうではない以上、言葉だけの約束となる。

 一昨日の当ブログで、安倍晋三が「一人あたりの国民総所得」を一人あたりの年収と間違えて街頭演説したことを、菅無能元首相が消費税増税を打ち出し、低所得者対策として消費税額分の税還付を言い出したものの、街頭演説の行く先々で還付対象の年収を違えたことと同列に置き、「しっかりと頭に入っていなかった」と批判したが、「設備投資減税」発表の手順の違いも菅無能の満足に内容を詰めずに発表した消費税増税の手順と同列に置くことができる。

 言葉だけの約束の上塗りと言ってもいい、なり振り構わないバラマキ政策の「設備投資減税」であることに間違いはない。

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