安倍晋三は単細胞にも米中首脳会談に対抗、日米同盟を米の対日存在感の証明とする貧弱な外交能力

2013-06-11 09:16:25 | 政治

 オバマ米大統領と習近平中国国家主席の米中首脳会談が7、8日(2013年6月)の2日間、米カリフォルニア州パームスプリングズ近郊の保養施設サニーランズで開催された。

 両首脳会談はロシアのサンクトペテルブルク20カ国・地域(G20)首脳会合開催の9月に予定されていたが、米側が早期の会談を提案、中国側が迅速に応じた結果、今月の開催となったものだと「MSN産経」記事が伝えている。

 会談時間は2日間で計約8時間。他の首脳会談と比較したこの8時間という異例な長さが儀礼的意味合いを一切排除し、如何に双方が相手国を国際秩序維持とそれぞれの国益確保に欠かすことのできない重要な国家に価値づけているかを見て取ることができる。

 対して米国から見た場合の日本の価値はどのくらいか。

 2012年12月26日に二度目の首相に就任した安倍晋三は昨年12月の衆議院選挙直後のオバマ大統領との電話会談で1月訪米で調整を進めることを確認し合ったというが、アメリカの「財政の崖」問題や二期目の大統領就任式が1月下旬に予定されていたことから断られ、2月の訪米となった。

 要するにオバマ大統領は日本を忙しさを押してでも会わなければならない必要性を与える相手と見ていなかった。

 アメリカ側が安倍晋三を受け入れるに当たって準備に時間を取られるとしても、オバマ大統領自身の拘束時間は討議内容のレクチャーを受ける時間と、多分、会談前にトイレに行って小便をする時間と会談そのものに要する時間ぐらいのものだろうから、必要性さえ感じたなら、作って作れない会談時間ではなかったはずだ。

 しかも安倍晋三との日本時間2月23日午前2時過ぎからの日米首脳会談はホワイトハウスで開催。そこまで行く拘束時間はほぼゼロに等しい。会談時間は約1時間50分だったというから、1月の首脳会談であっても差し支えなかったはずだ。

 日米首脳会談の約1時間50分に対して米中首脳会談が延べ2日、約8時間という会談時間の長さから見る、アメリカの日中それぞれの国に対する価値づけの差は安倍晋三にしたら当然、無視できない、気になる価値づけとなる。

 マスコミも「米中2強時代の幕開け」とか、「霞む日本の立ち位置」とかの価値づけを行なっている。

 こういった価値づけに対して安倍晋三や菅官房長官は中国のアメリカに対する存在感に対抗した日本のアメリカに対する存在感をアピールする必要からの発言が続いた。

 《官房長官「米は日本の立場踏まえ対応」》NHK NEWS WEB/2013年6月10日 12時15分)

 6月10日午前記者会見。

 菅官房長官「アメリカと中国が相互に関与を進めていくことは、地域や国際社会の平和と安定の観点から歓迎したい。

 日本とアメリカは、米中首脳会談の前に、緊密に意思疎通を行っており、アメリカ側は、わが国の立場を踏まえながら対応したと理解している。引き続き、日米同盟の強化に努めるとともに、中国との間では、個別の問題が関係全体に影響を及ぼさないよう、戦略的互恵関係の原点に立ち戻るようにしたい」――

 前段の「アメリカと中国が相互に関与を進めていくことは、地域や国際社会の平和と安定の観点から歓迎したい」は事実だとしても、儀礼的な意味合いを含んでいるはずだ。

 この米中関係の進化が――会談で米中の戦略的協力関係の強化が打ち出されたというが、――日本の存在感を相対的に低下させるものなら、例え「地域や国際社会の平和と安定」に寄与しようが、歓迎どころではなくなるからだ。日本が存在しなくても米中二カ国で「地域や国際社会の平和と安定」構築の力となることを意味することになる。

 後段の「日本とアメリカは、米中首脳会談の前に、緊密に意思疎通を行っており、アメリカ側は、わが国の立場を踏まえながら対応したと理解している」は情けない話だが、日本のアメリカや中国に対する存在感のアピールとは無縁の、対米依存を暴露する発言以外の何ものでもない。

 如何なる国家も自国国益を最優先・最大事項として行動する。いくらアメリカが日本と緊密に意思疎通を行い、日本の立場を踏まえて中国に対応しようとも、そのためにアメリカが自国国益を犠牲にするわけではないのは断るまでもないことである。

 いわばアメリカがどれ程に日本の立場を踏まえて中国に対応しようとも、自国国益を基準とした対日配慮であって、対日配慮はアメリカ国益に組み込む必要度と重要度に応じて生きることになるが、常にアメリカ国益が優先される相対化の力を受けることになることは国際関係に於ける道理であって、そうである以上、日本はアメリカの国益を背景として日本の国益を図ることになるアメリカ仲介で中国と対峙するのではなく、自らの力にって直接的に中国と対峙して日本の国益を確保する自助外交が何よりも要求されているはずだ。

 であるにも関わらず、菅官房長官はアメリカが自国国益を優先させる道理を弁えもせずに、「アメリカ側は、わが国の立場を踏まえながら対応したと理解している」と頼った発言をしている。
 
 例えば日中の国益が衝突する尖閣問題についての両首脳の対応を次の記事――《米中首脳会談:尖閣巡り平行線 オバマ氏が対話解決要請》毎日jp/2013年06月10日 11時21分)が伝えている。
 
 ドニロン米大統領補佐官(国家安全保障担当)の会談後の紹介だという。

 オバマ大統領「事態の沈静化と、軍事行動ではなく外交的な対話による解決を求める」

 習主席「国家主権と領土の統一を断固として守る。関係国が責任ある態度で挑発ともめごとを起こすのをやめ、対話を通じて問題を解決する路線に戻ることを望む」――

 尖閣問題でオバマ大統領がどれ程に日本の立場を踏まえて対応したか、領土紛争や軍事衝突が発生した場合によく使われる常套句を使って要請したのみで、その程度が分かる。少なくとも現在のところ、尖閣問題という日本の国益をイコールアメリカの国益としていないということである。

 対して習主席は以前と変わらない中国国益を正面から主張している。

 安倍晋三がどのように日本の存在感をアピールしているか見てみる。《首相 日米同盟基軸の外交を強調》NHK NEWS WEB/2013年6月9日 15時39分)

 6月9日のNHK「日曜討論」

 米中首脳会談で戦略的な協力関係の強化が打ち出されたことについて――

 安倍晋三「中国は世界戦略で当然、米中関係をよくしていこう、米中で接近してオバマ大統領と信頼関係を築こうとすると思う。その方向は間違っていないし、世界の平和と安定にとってはいいことだろうと思う。

 (アメリカと中国の接近を懸念する見方に)日米関係は同盟関係であり、第7艦隊の拠点が日本にあるからこそ、アメリカはアジアのプレゼンスを守ることができる。これは決定的な差と言ってもいい。アメリカが、日本から上海に基地を移すということはありえない」――

 前段は菅官房長官発言の前段と同じで、儀礼的な発言であろう。後段は、米中接近の見方に対して日米同盟関係を持ち出して日本の対中、対米存在感をアピールしている。

 いわば日本とアメリカは切っても切れない同盟関係にあり、中国とは違う、中国にしてもアメリカから日本を切り離すことはできないと同盟関係を糧に米国に対する日本の必要性を強調している。

 確かにアメリカにとって中国は軍事的には気を許すことのできない、常に警戒してかからなければならない、経済の力が強大な軍事力を支えている経済的・軍事的大国であって、そのためにも日米同盟関係の維持を日本のみならずアメリカも自国国益としている。

 だが、日米中、それぞれの国益は日米の同盟関係のみで決まるわけではない。アメリカは中国を中国に対する軍事的警戒をコントロールして関係を深めていかなければならない自国国益確保上の大国と位置づけているからこそ、あるいはその軍事的警戒をコントロールすること自体が自国国益確保の一つの方策につながる大国と見ているからこそ、オバマ大統領は戦略的な協力関係の強化を必要とし、そのための今回の2日間、延べ8時間に亘る米中首脳会談を設定したはずだ。

 いわばアメリカの国益からしたら、日米の同盟関係も相対化の力学に曝されることになる。日米の同盟関係を最優先の国益として対中行動を決めるわけではない。外交関係は常に国益をリトマス試験紙とするということである。

 「アメリカが、日本から上海に基地を移すということはありえない」が不変の事実だとしても、決してそれだけで国益というものが片付く問題ではない。

 だが、安倍晋三は単細胞にも日米同盟に頼って、それだけで片付くかのようにアメリカの日本に対する存在感の証明とした。

 その外交能力の貧弱さは見事と言う他ない。「世界に勝つ」とか、「地球儀を俯瞰するように外交を進めたい」を常日頃からの常套句としているが、安倍晋三の外交能力の貧弱さを見た場合、明らかに言葉だけの外交能力だと、その正体を曝すことになる。


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