福島原発事故メディア・ウォッチ

福島原発事故のメディアによる報道を検証します。

フランス放射線防護原子力安全研究所が原子炉の状況に「強い懸念」を示し始めた

2011-03-26 09:32:52 | 新聞
 フランス放射線防護原子力安全研究所(IRSN)は毎日、福島原発事故の分析を出しています。(情報は日本政府、フランス大使館、派遣した調査員から得ている、時間的には10時間ほど遅れている、と言っている)。
 25日になって、それまでの数日と違って、「原子炉の1号機から3号機の現状に『強い』懸念を持っている」と言い始めました。以下に「原子炉について」の全体分析と3号機についての分析の中で、25日に出てきた部分を要約します。

IRSN
25/03/2011
Situation des centrales nucléaires du Japon - Point de situation du 25 mars 2011 à 08h

原子炉について
 原子炉の1号機から3号機の現状に『強い』懸念を持っている (圧力容器と格納容器の大量の塩による機能低下、熱を除去する持続的システムの不在など)。安定した熱除去方法を実施することが困難なのは自明であり、この不安定状況は数週間、数ヶ月続くと思われる。
 事態深刻化のシナリオとして、3号機の圧力容器破損の可能性がある。こうした場合の実際の展開を想定するのは困難だが、環境への放射線物質放出の影響を検討中。

3号機
 3号機の格納容器の閉じ込め機能が失われているようだ。これが、放射性物質の放出が継続している原因ではないかと思われる。
 3号機の格納容器の閉じ込め機能が失われた原因のひとつとしてわれわれが考えているのは、圧力容器が破損し、それに続いて、燃料溶融物が格納容器のコンクリートと反応を起こすという仮説である。 (IRSN要約ここまで)

 今朝の時点で朝日新聞は

『炉内は周囲より高圧を保っていることから、原子炉圧力容器に亀裂などの大きな損傷があるわけではなく、壊れた配管などから蒸気や水が出て流れ着いたのではないかという 』
放射性物質、原子炉燃料破損し漏出か 3号機に被曝汚水

と言っています。配管からの水・蒸気の漏出の扱いがこれほど軽いのが、まずおかしい。「配管が壊れて蒸気や水が出」たなら、冷却材喪失事故(LOCA)という重大事故でしょう。

 そしてその話を、圧力容器自体の損傷といういっそう深刻な事態が指摘されているときになって、さも大したことではないかのように持ち出す。これは、冷却材喪失事故の重大性と、圧力容器自体の破損という現在の深刻な事態との両方を隠そうとする、二重のごまかしです。圧力容器に「大きな損傷」はなかったと朝日は書いていますが、小さな損傷はありました、などと後になって言うのだろうか。

 今まで、使用済み核燃料プールの話も、海水注入の危険性の話も、IRSNの後まもなく日本のマスコミでも取り上げられ始めました。原発推進のフランス政府当局側組織であるIRSNには日本当局も情報提供を断れないようですが、なぜ私たちに情報が出されないのか。


追記:原子力資料情報室の26日の緊急記者会見をぜひご覧ください。冷却材喪失事故は原子力発電で最も恐れられている、世界で起きたことのない事故であること、それが起きていると考えられる根拠を、田中光彦さんと後藤政志さんが解説されています。

記者会見1.

記者会見つづき





 


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