福島原発事故メディア・ウォッチ

福島原発事故のメディアによる報道を検証します。

福島の子どもに甲状腺がん(疑いを含め)10人:『被曝』との関係は意図的に隠されている

2013-02-14 15:04:08 | 新聞
福島の子で、昨年9月につづいて新たに、甲状腺がん、もしくは『約8割の確率で』毎日)その可能性のある子どもがみつかった。例によって、県の検討委員会は『被曝の影響は考えにくい」と説明している』朝日)が、被曝とがんとの因果関係は、『考えにくい』のではなく、意図的に考えないことにしているとしか思えないふしがいくつもある。
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毎日新聞によれば、

『県が行っている子ども(震災時18歳以下)の甲状腺検査で、新たに2人が甲状腺がんと診断されたことが、13日の県民健康管理調査の検討委員会(座長・山下俊一福島県立医大副学長)で報告された。昨年9月に判明した1人と合わせ計3人になった。他に7人に甲状腺がんの疑いがあり、追加検査を行う。・・・疑いのある人を含めた10人の内訳は男性3人、女性7人で平均年齢15歳。11年度に受診した原発周辺13市町村の3万8114人の中から見つかり、地域的な偏りはないという。甲状腺がんと判明した3人は手術を終え、7人は細胞検査により約8割の確率で甲状腺がんの可能性があるという。7人の確定診断は今後の手術後などになるため、最大10人に増える可能性がある。』

7人に認められた『疑い』というのが『約8割』の確率であり、その『7人の確定診断は今後の手術後などになる』、ということは、すでにこの時点で直ちに手術しなければならないレベルの『疑い』であることに注意しよう。同じ毎日の記事によれば、

『記者会見した鈴木真一・県立医大教授によると、子どもの甲状腺がんの発生率は「100万人に1人」が通説。今回の検査は大きく上回る』

そう、検査対象、約38,000人のうち10人だから、通説の260倍以上(2/14書き込みは計算間違い、2/15訂正)になる。放射性ヨウ素が甲状腺がんを引き起こすことがわかっているから、この膨大な倍率を説明するには、東電福一原発事故時に放出された放射能被曝とがんとの関係を考察するのが常道なのは明らかだ。しかし、この御用医師はまったくそうした努力をしていない。それどころか、こうした考察に導くデータを隠し続けている。

おしどりマコ氏の報告がこの点をよくついている。

『筆者はこの悪性もしくは悪性の疑いと診断された10名のうち何名かを個人的に知っているが、線量の低いところでは全くない。線量の高いところで、原発事故以降、避難をせずに生活をしていたご家族である。この甲状腺検査の結果を、線量評価と相関しないのか、と筆者は質問した。鈴木俊一氏はまだ調査途中なので、そのような検討は公表しない、という回答。では、悪性もしくは悪性の疑いと診断された10名の線量評価を把握しているか、と聞くとそれは把握しているが、公表はしない、という鈴木眞一氏の回答であった。』

子どもが受けた被曝とがんとの関係は『調査途中』だから公表しない、子どもたちが受けが被曝量も『把握しているが、公表しない』。したがって、山下俊一率いる御用医師グループは情報を独占し、情報に基づく考察を圧殺している。

その一方で、鈴木医師は、『(原発事故との因果関係は)考えにくい」と語った』(毎日)そうだ。子どもたちの被ばく量を把握し、被ばくとがんとの関係は『調査途中』ではなかったのか?いやいや、結論は最初から出ている。被ばくとがんは関係ない。それを支えるのが、お得意のチェルノブイリのデータである。

『チェルノブイリ原発事故では最短で4年後に発症が増加している』

から、今フクシマで、子どもの甲状腺がんが増加しても、それは2011年3月11日の原発事故とは関係ない、という理屈である。まず、チェルノブイリのデータの検討については、私たちがすでに紹介したように、『ベラルーシの小児甲状腺ガン 発生率は、明らかにチェルノブイリ事故直後から上昇している。』という研究もある(当ブログ『福島の子どもの甲状腺がんは「放射線の影響ではない」というのは本当か?』参照)。また、毎日のインタビューに答えた北海道がんセンターの西尾正道院長によれば、

『チェルノブイリ原発事故では4~5年後に小児甲状腺がんの増加が認められたが、その検査を実施したのが4~5年後だっただけで、もっと早くから発症していた可能性もある』

4~5年後に顕著な増加が認められたのは、その時点で多くの検査が実施されたからだという。4年以前は調べた数が少なかったから、発見数も少なかったということだ。被ばくの影響は、被曝後4~5年前にはあり得ない、という独断は、この点からも切り崩される。したがって、西尾氏も言うとおり、今回の発症が『原発事故との関係があるか断定も否定もできない』と言うのが最低線の「科学的」態度だ。

一方、鈴木御用医師は、フクシマにおける通説を260倍も上回る甲状腺がんの発症今回の結果を、東電福一原発事故による放射線被曝とは関係なく、ただ精度の高い調査によって、

『元々あったものを発見した可能性が高い』

としている。チェルノブイリのときは、発症数の少なさを説明する要因として、調査範囲と発症数の関係を無視しておいて、今度はフクシマにおける発症数の多さをごまかすために同じ関係を専一的に持ち出す不誠実さ。これが、放射能を恐れる「エセ科学」をさげすんで批判し、『フクシマは世界一になる、ヒロシマ・ナガサキは負けた!』(山下俊一)と豪語する科学的疫学の実体である。それは、科学的なるよそおいで無理やり、かつ非科学的に被曝を強制することにほかならない。

甲状腺検査について、ついでに、『子の甲状腺の嚢胞「放射線影響考えにくい」 専門家指摘』という朝日新聞の記事にのった疫学調査についても一言、疑問をていしておこう。この記事によれば、東京の病院の医師が日本甲状腺学会で研究発表し、

『2003年から今年8月まで、同病院で甲状腺の超音波検査を受けた15歳以下の子ども2753人の結果を集計した。この結果、36%の子に嚢胞が見つかった。・・・福島県は18歳以下の子どもに甲状腺検査をしている。昨年度実施分の35%で、今年度は42%で嚢胞が見つかっていた。これまで、他地域と比較できるデータがないため、福島第一原発事故による影響か心配する声もあがっていた』

すなわち、東電福一原発事故前も含む東京の子どもデータと、事故後の福島のデータでは差がない、という観察をもって、福島における甲状腺嚢胞の多発と東電福一原発事故との関係を否定するという結論に至るのである。しかし、この東京の医師たちは、福島の鈴木俊一医師の言う『今回のような精度での疫学調査』(毎日)を行ったわけではないだろう。原発事故もない「平常時」に、子どもたちにランダムに甲状腺の超音波検査を行うわけはないからだ。それだからこそ、『今回のような精度での疫学調査は前例がなく比較できない』という屁理屈が支えられたのではないか。東京の医師たちが甲状腺の超音波検査を行った2753人の子どもたちは、どういう子どもたちだったのか?どういう理由でその検査をしなければならなかったのか?検査に至る診断の根拠はどういうものだったのか?、山下(ダマシタ)俊一氏がにらみを利かせる日本甲状腺学会の研究発表会では問題になった形跡はないし、この研究成果を報道した朝日新聞も、そんなことにはまったく言及していない。そして朝日新聞は、あろうことか、世界に冠たる元祖被ばく強制学者・長瀧重信長崎大学名誉教授の『福島の子どもの嚢胞も、放射線の影響は考えられない』というおまけのコメントでしめるのである。

おしどりマコ氏の記事は、速報でありながら、今回の驚異的かつ悲劇的な出来事について、どの大メディアよりもはるかに意義のある情報を提供してくれている。この問題に関する彼女の過去記事も含めて、必読である。彼女の記事のしめは、大朝日様などとは比べものにならない格調がある。

『行動記録などからの線量評価が「基本調査」、小児甲状腺検査、血液検査などの健康診査などが「詳細調査」となっている。この基本調査と詳細調査が、県民健康管理調査の2本柱なのだが、結果について、それぞれバラバラに発表されるだけで、線量評価と健康調査の相関の考察が全く発表されないというのは、本当に疑問である。原発事故による健康へのインパクトが無い、というのであれば、健康調査の結果が、線量評価の区分においても偏りが無いということをきちんと公表してほしいと、筆者は考える。』

おしどりマコ・ケンの二人は、まったく何の組織的なバックアップもなく、これだけのことをしてくれている(以前、テレビで、中尾ミエさんが二人に向かって「あなたたち、これ、私費でしているの!?」と驚嘆と讃嘆を込めて叫んでいた。ケンはそのとき、「まっ、二人でいきますから、ちょっと旅行ってところもあって…」云々と言っていた。ケンって、ほんとにいいやつだな、と私は思った)。おしどりマコ・ケンがんばれ!こういう人たちが、私たちの正気を御用メディアの洗脳からかろうじて守ってくれているのだ!


付記(20130215):
日本臨床検査薬協会のサイトのQ&Aに、『チェルノブイリ原発事故後、特に小児において甲状腺がんが増えました』という項目があり、その中で、当地での甲状腺がん発生数のグラフを示し、

『一般に小児の甲状腺がんの発生は100万人当たり1~3人といわれていますが、原発事故の2~3年後から急な増加が見られます。』

と、記述している。このサイトは、「低線量の放射線でがんのリスクが増えても、どうせもともとみなさんがもっているがんで死ぬリスクに較べたらたしたことはありません」、と書くような極めて科学的精神に満ち溢れているサイトで、決して住民を放射線被曝から守りたいなどという、『反原発』の風評を垂れ流しているサイトではない。それでも、甲状腺がんの発生は、『原発事故の2~3年後から急な増加』が見られると言明している。

付記2(20130217):
チェルノブイリにおける小児甲状腺がんの増加が事故後1~2年目から始まっていることは、なんとダマシタ教授自身の報告からも見てとれる。
『被爆体験を踏まえた我が国の役割-唯一の原子爆弾被災医科大学からの国際被ばく者医療協力-平成12年2月29日長崎大学山下俊一』

この報告のデータをグラフ化したのが、
『チェルノブイリ原発事故後の健康問題 - 表2ベラルーシゴメリにおける小児甲状腺がん登録数 (2000年山下俊一さんによる資料)をグラフ化。』

これを見れば、福島の被ばく強制医師団の自己矛盾は明らかだ。ダマシタ先生は『放射能はにこにこ笑っている人には来ない』とおっしゃっていた。統計数値に還元されてしまったこの子たちは、事故当時ににこにこしていることができなかった罰を受けてしまったのだろうか。ちなみに、これらの資料は、『福島で新たな小児甲状腺癌が見つかった事に関する重要ツイート一覧』を通して見つけた。


付記3(20130217):

上で言及した『ベラルーシの小児甲状腺ガン 発生率は、明らかにチェルノブイリ事故直後から上昇している。』ということを示した研究は、その他のチェルノブイリ関係の大事な研究とともに『チェルノブイリ事故による放射能災害―国際共同研究報告書』に入っている。この本は、紙版ではもう手に入らないが、電子版が売られているのを見つけた。お値段も¥3150とリーズナブル。

チェルノブイリ事故による放射能災害―国際共同研究報告書

この本は、東電福一事故後の情報操作に対抗するために、一家に一冊の必読書だ。当ブログ『土壌汚染とチェルノブイリ移住基準:148万ベクレルと55万5千ベクレルどっちがほんと?』で取り上げた基準値も詳しく論じられている。


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